スカッとしませんか?
昨日、また同僚を駅まで車で送っていた。
途中でガソリンの警告灯がついたので、近くのスタンドに寄り、ついでにトイレに行った。
戻って精算しようとしたら、同僚が先に支払ってしまっていた。
メーターには「給油:2000円」。
彼は車のドアにもたれながらスマホをいじり、ふっと笑って言った。
「いつも送ってもらってるし、これくらい当たり前でしょ。」
実は、彼を駅まで送るのはもう三週目。
毎朝7時半にマンションの前で待っていて、時々コンビニのコーヒーやおにぎりを買ってきてくれる。
完全な“便乗”というわけでもない。
「ダメだよ、ガソリン代は払うから。」
そう言ってスマホを取り出すと、彼は手で制してきた。
「じゃあ今度、昼飯奢らせて。ほら、乗って乗って。」
あまりにも自然で楽しげな口調に、断る隙がなかった。
会社に着く前、私はコンビニに寄ってコーヒーを二本買い、一つを渡した。
「アイスコーヒー。眠気覚ましにどうぞ。」
彼は一瞬驚き、私の手に触れた指先が少し熱かった。
「……ありがとう。じゃあ本当にお昼、ご馳走するよ。」
昼休み、食堂で向かい合って座ると、彼はぽつりと言った。
「実は最近、車を買おうと思っててさ。納車されたら、もう迷惑かけなくて済むから。」
私は笑って返した。
「そんな気にしなくていいよ。どうせ同じ方向なんだし。」
すると彼は急に顔を上げた。
「いや……毎回待たせたら悪いと思って、十分早く下りてきてるんだ。遅れたら困るだろうから。」
ああ、と思った。
一見気軽に“送ってもらっているだけ”に見えたけれど、彼なりにずっと気を配ってくれていたのだ。
ガソリン代をこっそり払ったあの仕草を思い出す。
人と人との「お互い様」って、どちらか一方がただ与えるものじゃない。
誰かが少し譲ってくれれば、もう一方は自然と心を返す。
そのさじ加減が心地よいから、人との距離はやわらかく保たれるのだと思った。
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