【悼む】服部幸應さん死去、口ぐせだった「嘆かわしい」料理の鉄人は「あくまで仮の姿」
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料理の世界というのは、技芸の世界です。
ある寿司屋の親方が、しみじみと述べていました。
「高卒でこの世界に入って、最初の数年は、夜は日付が変わってから寝て、朝は四時にたたき起こされました。どんな芸能人が売れているだとか、どんなドラマが人気だとかすらさっぱりわからない生活を送っていました」
だが、この人が辛抱したのは、その店でしかわからないこと、本に載っていないことを会得するためです。
そういう生活を続けると、虚飾から自由になります。
たとえば、イワシやサバ、こはだといった光物が職人の腕の見せ所であり、成金の中高年の紳士やおばさんが嫌っても、魚の奥義であることが分かり、
「いい客」というものは、服装や金遣いや肩書きではないということもわかるでしょう。
「奥義」や「虚飾」と言ったのは、飲食の世界は、奥が深すぎるから表面からは見えないものが多すぎる…という意味です。
今日、学会で偉い人にお会いしましたが、この方などは、ある店を「客質がわるい」とバッサリでした。行くと、トレンディドラマから抜け出したような客です。推定、男が一橋、女が東京女子大…という雰囲気で「俺たちは勝ち組です」と臆面もなく印刷物に書くような管理組合がある、タワーマンションに住んでいそうです。
そもそも、よい客の条件は、他の客に興味を持たないということです。まして、比較や値踏みなどとんでもないですが、それにしても、
ひっくり返っても、ぼくの席の向かいにいるおっさんが、日本文化を支えているなんて、想像もつかないでしょう。肝心のその方は、流ちょうな北京官話で、中国人のウエイトレスさんを口説いていましたが(笑)
また、マニュアルを超越して自分の舌を信じれば、夏の一時に相模湾に迷い込む鯖が、至上の味であるし夏にうまくなる真牡蠣もある。旬のカレンダーなんて、漢文の句形と同じであてにならないと実感できるでしょう。
とにかく、実地に修練を続けないといろいろなことが分かってこないでしょうね。
要するに、学校で習うものではないでしょう。
服部調理師学校の文化祭に行ったことがあります。
調理場の裏で、学生たちが楽しそうにはじけていました。
やたらにうまい煮込みがあり、それは、ご父兄か卒業生と思われる中年の男性が作っていました。
批判めいてしまいましたが、ご冥福をお祈りします。
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