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2024年08月22日13:35

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マケラとウルバンスキ ショスタコーヴィチ交響曲第5番の聴き比べ

・クラウス・マケラ指揮、オスロ・フィルハーモニー管弦楽団(2023.5) DECCA UCCCD-45030/1

・クシシュトフ・ウルバンスキ指揮、北ドイツ放送エルプフィルハーモニー管弦楽団(2017.12) Alpha-Classics 427

若手指揮者で評判のマケラがオスロ・フィルを振ったショスタコーヴィチの交響曲4・5・6番が2枚組で出ると知り、予約を入れたのですが、その際アテがほしいと思い、追加でウルバンスキ/北ドイル放送エルプフィルによる5番も同時購入しました。

マケラは、プレミアムシアターの録画でコンセルトヘボウOとの演奏会とドキュメンタリー番組を観て、聴きたくなりました。いつもならまだこれからの人だからとかいってスルーするのですが、マケラはぜひ今の演奏を知っておきたいと。まあ、彼が巨匠などと呼ばれるまで待っていたら、こっちの寿命が保たないだろうというのもありますが。

ウルバンスキは、何年か前に実演に接して魅了されました。この人は録音活動が活発でなく、エルプフィルとは何枚か出ていますがレパートリー的にそそられなかった。実はルトスワフスキのCDを買ったんだけど、曲がわからん(ーー;)。それから手を出さないでいるうちにエルプフィルとの契約が切れてしまったらしい。そういうわけで、いまさらながら、ショスタコ5番の聴き比べというわけです。

マケラ盤は4番と6番を後回しにして5番のみ聴きました。第1楽章冒頭からオケの積極性が引き出されているのが実感でき、これが最後まで持続します。ドキュメンタリー映像でもショスタコーヴィチを振るシーンがあり、マケラからショスタコ好き好きオーラが出ているのがよくわかるのですが、各パートのさまざまなフレーズが理想的ともいえる姿で現れ、実によく鳴っています。スケルツォ楽章での音響とリズムの饗宴的な楽しさ、緩徐楽章での弦と木管の美しさも出色で、フィナーレでは圧倒的なコーダまで一気呵成に聴かせます。うーん、素晴らしい。テンポ設定としては、例えばムラヴィンスキーやコンドラシンといった往年の録音と比べても違和感のない、そういう意味では正統派であり常識的ともいえる解釈ですが、その中に意欲と鮮度が汪溢しているのが好ましい。好録音もあって、この曲の新しいスタンダード、決定版の登場といっていいのではないでしょうか。

一方のウルバンスキ盤は、結論からいってしまえば、問題提起型のクセモノ的演奏です。オケの音色とバランスがまずオスロ・フィルとは対照的。明確に弦が主体であり管楽器や打楽器はきわめて抑制的でストイックな響き。こちらを基準にすれば、マケラはこの曲にしては楽しすぎるだろう、といいたくなるf^^;。実演でも、このコンビによるベートーヴェンのこれぞドイツ的という響きにハッとさせられたものでした。ただこのバランスが見事にハマっているところとそうでないところがある(気がする)。第1楽章では、ユニークなテンポ設定が特徴で、前半かなりゆっくりからじわじわ加速していくのですが、この加速が止まらない。もうだれか止めてやれといいたくなりそうな狂おしさはウルバンスキの独壇場かも。反面、クラリネットの印象的なフレーズはほとんど聞こえるか聞こえないかぐらいに抑えられていて、ここが好きなみっちとしてはいささかショック。スケルツォ楽章では、スタッカートを長めにとって一歩一歩踏みしめます。マケラ盤のような弾みや愉悦感はないのですが、ホルンの強力な響きが魅力。緩徐楽章は弦楽主体ならではの美しいアンサンブルで、とくにクライマックスのチェロが素晴らしい。でも中盤の木管のカンティレーナは抑え気味で、これはやはり意図的なものでしょう。フィナーレでは、第1楽章で衝撃的だったテンポ設定を呼応させています。遅いスタートからなかなかテンポが上がらないのですが、後戻りできない怖さがここでも再現します。そして迎えるコーダは、やってることは同じなのに、マケラのような大団円とはおよそかけ離れたものに聴こえます。第8番の予告のようなものを感じました。

言ってみれば、陽のマケラ、陰のウルバンスキ。おそらくは、ロシアとドイツに挟まれたポーランド人指揮者にとって、ショスタコーヴィチは抑圧や戦争との関わり抜きには語れない存在なのかと。フィンランド人もロシアに対する思いは当然あるはずですが、なにしろマケラは世代が若く、純音楽的に捉える傾向が強いのでしょう。

最後に両者の演奏時間を比較しておきます。マケラに対し、ウルバンスキは前半2楽章が遅め、後半2楽章が速めという傾向が見て取れますが、総時間ではどちらも46分台でそれほど変わりません。それでも演奏はまったく別物といっていい。この曲の二面性を味わうには最適なサンプルかもしれません。

・マケラ  15:56 5:20 13:57 11:36
・ウルバンスキ 16:38 5:52 13:43 10:43
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