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2024年06月11日19:49

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アンゲリッシュによるリスト『巡礼の年』

・リスト:巡礼の年第1年「スイス」、第2年「イタリア」、第2年補遺「ヴェネツィアとナポリ」、第3年「イタリア」

ピアノ独奏:ニコラ・アンゲリッシュ
録音:2003年
Mirare MIR714(3CD)

クラシック鑑賞歴ん十年ですが、嗜好には偏りがありまして、これまで食わず嫌いだったりあまり縁がなかったものも聴くようにしたいと思うこのごろ。その候補として真っ先に挙げられるのが、ロッシーニとリストです。ロッシーニの場合はほぼオペラで、映像とセットで鑑賞できる機会が少ない。輸入CDだと対訳が付いていないから、解説本持ってるかそれが必要ないくらい内容に詳しくないとついていけません。最近は衛星放送でオペラを観ることもできるようになりましたが、ロッシーニなかなかやってくれないんですよ。CDでも入手できるものが限られていて、もしかして忘れられようとしている? ピアノ曲もあまり熱心じゃなかった。関心が薄かった点ではショパンも同様ですが、とくにリストは音楽家というより曲芸師とかパフォーマーの印象が強くて。シューマンが好きな分、リストに向ける視線が冷たくなるという傾向もあったかもf^^;。だけど何年か前に、オケで『レ・プレリュード』を弾く機会があり、つまらん曲だと思っていたのが案外いい!と見直すようになりました。

ここまでが長い前置き。この『巡礼の年』は、アンゲリッシュ追悼として再販された3枚組CDです。アンゲリッシュの訃報でリストのこの曲が代表的録音として紹介されていて、ぜひ聴きたいと思ったのですがその時点では廃盤でした。2003年録音でもう廃盤て、早くない? 日本での評価はどうだったか知りませんが、アンゲリッシュの活動は順調で、録音もエラートからブラームスの協奏曲などをリリースし始めていましたから、世界的には有名ピアニストだったはず。それなのに、死なないと再販されないとは……。同時期にベートーヴェンの録音もあるらしいのですが、こちらはどうなったのかな?

『巡礼の年』は、リストの生涯のかなり広い年代にわたって書かれていて、みっちはほとんどが初めて聴くものばかり。「エステ荘の噴水」あたりはさすがに知っていましたが。音楽は曲芸的・描写的なものはあまりなく、むしろ哲学的要素が感じられます。詩的幻想という点では、シューマンと同床異夢だったらしいのですが、音響的にはドビュッシーがすぐそこまで来てるというか、重なっているいるともいえそう。ほぼ素人が語れるのはこのくらい。しかし、アンゲリッシュの演奏は素晴らしいと断言できる! ジャケット写真でもわかるように、まだ少年の面影を残している時期の録音ですが、万全とも思えるテクニックで、緻密で滑らか、しっとりした情感すら漂うアンゲリッシュの特徴はこのころから明瞭です。美しい反面、デモーニッシュな迫力には欠けるかも。ホロヴィッツの「メフィスト・ワルツ」みたいなのを期待してはいけないでしょう。あるいは、リストといえば超絶技巧みたいな一般的イメージを刷新する演奏なのかもしれません。作曲年代の幅や隔たりを考えるなら、初期と後期では表現も変えるべきという指摘もあり得ますが、そういう意味では後半の曲に適性があるかな?

とはいえ、初期の録音がこのリストやラフマニノフ(ハルモニア・ムンディ・フランス)だったことからして、アンゲリッシュはいわゆるコテコテ系のヴィルトゥオーゾとして売り出されようとしていたのかもしれません。彼の音楽性はしかしその方面だけではなかったということでしょう。録音を見れば、ブラームスやフォーレの室内楽を始め、次第に活動の範囲を広げて、自分がやりたいことをやれるようになっていったことを示しているように思います。録音は、後年のエラートもいいですが、それよりまだ上ではないかと思えるくらいクリアで輝かしいピアノで、曲にもよく合っています。

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