一応、私も電気屋さんの端くれなので概説しておく。
まず、今回のブラックアウトについては私の友人が見事な例えを出してくれた。
・300キロのバーベルを数人で支えていたのが北海道電力の状態。
・その中にひとり力持ちがいて、165キロをささえていたのだが、そこに膝カックンをかけた地震というヤツがいたので、力が抜けた。
・残りの力で300キロを支えることはできず、みんなあわててバーベルを離した。
・一番の力持ちはケガをしてしまったので、残りの135キロ分の力で300キロのバーベルをどうやって持ち上げるかが問題。<ここはちょっと現実とはずれている
さて、実際に電力を供給しはじめるためには、どうしても必要なことがある。
「電気が必要」なのだ。
もうちょっと詳しく言うと、商用電力は「交流」という形で送電・配電されている。北海道では50Hzなので、1秒間に正確に50回、プラスとマイナスが入れ替わっている。その形は sin(x) になっている。
そのため、各発電所は全部同じタイミングで電力を出さなければならない。他の発電所がプラスの電圧・電流を出しているところへマイナスの電圧・電流を出してしまえば何万キロワットものエネルギーがショートして大事故になってしまう。
外部から送電を受けて、受けた電気と同じタイミングで少しだけ高い電圧を出すように調整していく(同期)必要があるのだ。
記事中にもあるが、発電機は負荷(需要家に使われている電力)が小さいと軽く回るために回転数が上がってしまう。イコール、50Hzより高い周波数になってしまう。周波数がずれるとタイミングがずれていき、上記のような事故になりかねない。
北海道と東北電力の間には60万キロワットの電力融通システムもあるのだが、受電施設側はこれまた「同期」なしでは送電ができない。(青函トンネル内は直流で送電されているので、交流に直さなければならず、これまた同期が必須)
さて、火力発電はいくつか種類があるのだが、蒸気タービンなどで発電している場合、外部からの電力で発電機に電流を流してやらないと、発電が開始できない。
これは大型発電機や大型モーターは永久磁石が使えない(温度が高い!など理由はいくつか)ため、外部から電流を流して電磁石をスタートさせないと発電ができない、ということだ。つまり、ここでも外部からの電力が必要になる。
また、一般に火力発電は「ずっと一定の電力を出す」ように作られているため「ちょっとだけの発電」は苦手だ。ちなみに原子力は火力より調整が苦手だ。
そんなわけで、調整が比較的やりやすい水力発電所(ダムから流す水の量で調整できる)を最初にスタートさせて、他の発電所をひとつづつ、順番に同期・起動させていかなければならない。同時に需要家に送電・配電を行っていって、需要と供給のバランスをとっていく必要もある。
同期といっても、すぐできるわけではない。ものすごい重量のタービンと発電機(の回転子)をその速度まで時間をかけて加速していき、電気的にも同期させて、やっと送電開始ができる。そのタイミングで需要家に送電するか、他の発電所で調整をしなければならない。
もちろん、専門の超専門技術職が何人もカンヅメになって行う必要がある。一種電気主任技術者は日本全部で約3000人しかいない。当然、他の発電所でも必要な人材なので全部北海道に貼り付けるわけにはいかない。
当然、時間はかかる。
一種に限らないが、電気関係の技術者は寝る暇もないぐらい働きづめだろう(福島第一事故のときも手があいていた技術者が数多く福島第一まで自主的に来ていたという)。
彼らには敬意の一言しかない。
どうか、事故のないように、安全第一で作業をしてほしい。
最後になるが、大規模な発電所がいきなり停止し、調整能力を超えればどこの電力会社でも起こり得ることだ。そのためには十分な電力の余力と調整能力を確保しておかねばならない。これも簡単なことじゃないんだよ・・・
■一斉に電気遮断、そして全系崩壊 北海道特有の停電理由
(朝日新聞デジタル - 09月07日 05:19)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=5277937
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