「日記 子供たちへ」Napló gyermekeimnek。1980-83・洪・白黒35mm(4K)洪/露語。監脚:メーサーロシュ・マールタ。撮:ヤンチョー・ニカ。編:エヴァ・シンガー。音:デーメ・ジョルト。
出:ツィンコーツィ・ジュジャ、ヤン・ノヴィツキ、アンナ・ポロニ、マリ・セメス、パール・ゾルナイ、イルディコー・バンサーギ、エヴァ・サボー、タマーシュ・トート。字幕訳:森彩子。監修:コロンツァイ・バーバラ、秋山晋吾。
先の作品群同様、マールタ監督の自伝的作品で『日記三部作』の第一作。帰国子女、孤児という設定はデビュー作同様、主人公をはじめ出演者の多くもお馴染みの面々。大戦終結から共産圏併合までの世相をリアルに伝える為に記録映像と融合させたり、ニュース映画を劇場で鑑賞するという演出で時代感を演出してるのが特徴。
ロケはブタペシュト市内のようです。プレス機が稼働する工場内とかも見物。劇中の映画館での上映作品である音楽プロパガンダ映画を始め、私の知る革命歌や赤軍軍歌が多数用いられて鼻血が出そうに。『スターリン生誕70年祭』の記録映像とか東欧史研究的に美味しい。また反革命として『チトー批判』が度々採り上げられます。
冒頭の複葉旅客機アントノフ『Ан-2ククルーズニク』(ウクライナ)は尾翼形状から後期のM(モデルニジロヴァンニー:改良)型のようです。また度々登場する自動車は戦時中にソ連に援助物資として送られたフォード『GPW』ジープの設定で仏オチキス『M201』を調達した模様。
「日記 愛する人たちへ」Napló szerelmeimnek。1987・洪・35mm(2K)洪/露語。監脚:メーサーロシュ・マールタ。脚:パタキ・エーヴァ。出(前作とは別に):イリーナ・クーベルスカヤ、アデル・コヴァーツ、エルベルト・クートヴォルジ、ジェジ・ビンチツキ、ジュラ・バルトゥス。
主人公はあの手この手で『全ソ国立映画大学(Вгик)』への入学に成功。師匠のアンナ・パヴロワは有名バレリーナとの混同を避ける為か字幕では微妙に名前を変えてます。主人公の撮るドキュメンタリー作風や『ブタペシュト蜂起』の極秘情報が入る脚本など、ペレストロイカ・グラスノスチ政策で成立したと思われます。
「日記 父と母へ」Napló apámnak、anyámnak。1990・洪・35mm(2K)洪/露/独語。監:メーサーロシュ・マールタ。出(前作とは別に):トゥルーチク・マリ。。1956年、遂に始まった洪民主化運動とソ連軍による弾圧『ハンガリー動乱』。本作でも記録映像と作品用に撮影されたものの融合が実に自然で見事です。
三部作を自分流に言い換えるなら『少女編』『留学編』『動乱編』で、撮影開始した時点ではまだ共産主義陣営が崩壊するなど予想もされておらず、リアルタイムの時代の流れと作品の時代の内容がリンクしているのが凄いです。主人公役のジュジャが「ジャスト・ライク・アット・ホーム」での幼い姿から大人へ成長して行く様も見物。
『暴虐なファシストによる破壊と殺戮から善良な人民を解放する』というクレムリンによる他国への軍事介入と市民弾圧の口実は80年間全く変わっていないのがよく分かる内容です。一方でオタク的にはソ連軍の『T-55』戦車や『AK-47』自動突撃銃など当時の革新的兵器の記録映像が鮮明な画像で見られるのが嬉しい。
そうした記録映像に対し、『T-34/85』戦車や『БРДМ-2』装甲車(実際の登場はハンガリー動乱よりやや後)が映るシーンは本作用に撮影されており、でも普通の鑑賞者には全く違いが分からないよう相互に溶け込んでる撮影&編集技術に驚きます。撮影中は壁が崩壊したとはいえソ連は健在で、この内容が許されたのが驚きです。
共産主義の否定とはいえ自由主義経済を謳ってる訳ではなく、あくまでハンガリー労働者階級の自由と民主化がテーマなのです。主人公の仮装シーンが『グレタ・ガルボ』なのは『アンナ・カレーニナ』役へのオマージュではないでしょうか。そして最後の無名墓地の老婆は【相互監視密告社会】の到来を暗示していると解釈。
https://www.meszarosmarta-feature.com/
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