里帰りした香川で、昔なじみの店へ妻を連れて行った時のこと。
讃岐の剛麺を浴びて育った私は、一周回って「柔らかい麺」が今の正解。
「お、これこれ。優しさが最高なんよ」と、ゆるふわ麺を堪能していた時のこと。
隣で妻が、静かに眉をひそめた。
「香川まで来て、なんでこれなの? うどんはコシが命でしょ」
私が愛する「癒やしの喉越し」は、彼女の基準では「軟弱」と一蹴されてしまった。
妻は「本場のコシ重視派」。私は「悟りのソフト派」。
うどんの聖地・香川のカウンターで、わずかな弾力の差が静かな冷気を生む。
夫婦の平和のためには、私好みの「悟りの店」より、顎に厳しい「剛麺の店」を選択するのが正解らしい。
いつの日か、両方の麺が共存する店が現れることを夢見ながら、今日も私は、妻の横で力強いコシの麺と格闘している。
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