とても有名な「孫子」の1文である。「孫子」は「兵法書」と言われることが多いが、私は「戦術書」だと思っている。目的をきちんと達成するためにどう考え、何をすべきか、うまくいかなかった場合のことまでしっかり考えることを教えてくれる名著のひとつだ。
私が「イラン」という国を意識したのは半世紀ぐらい前のこと。短波で「イランラジオ」を聞いたとき、正倉院に青瑠璃杯・白瑠璃椀というペルシャで作られたであろうガラス器がある、と知ったときだと思う。学校ではササン朝ペルシャなんて名前も習った。
それ以来、中東の不思議な国としてずっと気になっていた国だし、インターネット上でイランラジオ(現在のParstoday)サイトが見られるようになってからはなんとなく眺めていた。
今回読んだのが「イランと日本〜駐日イラン大使の回顧録2008-2011」。著者はセイエド・アッバス・アラグチ氏。現在のイラン外務大臣その人だ。年齢は私と一つ違い。
残念ながら私はペルシャ語はまったくわからないので、翻訳されたものが論創社から出版されている。
実に内容が濃い。もともとイラン人向けに、イラン人の大使が日本を紹介するために書いた本なので、日本人から見れば誤解もあるし、それは違うやろ、とか、いまさら?とかツッコミいれたくなる部分も多く、だいぶ割引して考えなければならないが、イランのことを知る良書といってもいいと思う(本に書かれていることを信じてしまう人にはおススメしない。しっかり自分の意見を持ってから読むべき本だ)。
まず驚かされるのが、アラグチ氏がとんでもなく頭のいい人物であること、そして実に敬虔なイスラム教徒であること、国家間の信頼と敬意をとても大切にする人物であること、だ。
大使としての日本での活動は政界・経済界はもちろん、日本の刑務所に収監されている受刑者まで及ぶ。日本の書物は英訳などで読まれたのだろうか、日本の歴史・文化についての知識も半端じゃない。
そして私は知らなかったのだが、アラグチ氏が日本にいた時期に、イラン核交渉に日本政府も参加する可能性があった、という話まであった。テヘランの研究用原子炉用としてイランが当時保有していたウランと引き換えに、日本が核燃料を提供する、という話まであったらしい(当時、鳩山由紀夫内閣だったこともあり頓挫した)。
そして2011年に発生した東日本大震災と津波において、イランは帰国する自国民のためにチャーター機を飛ばした(放射能が東京に及ぶことを恐れてイランに帰りたい人がいたらしい。これはもっともなことだ)。が、まずは缶詰食料5万個を被災地に届けてくれたし、その後大使館メンバーで炊き出しも行ってくれている。被災したひとびとが「ひとり1皿だけを受け取って行った」ことも書かれている。
もうひとつ、重要なことに日本側は世界各国からの支援(物資・募金・人員)を断らなかったことが「日本の国際的地位と信頼を示すものとなった」と書かれていることだ。
このような人物が現在のイラン外務大臣であることに感謝したい。そして日本の内閣総理大臣がイスラエルとアメリカの暴走を止め、イランと中東諸国の平和と復興に尽力できる状態になることを強く望んでいる。そして生きているうちにイランも訪れたい。
最期にひとつ。この本のはじめのあたりに「日本人にサプライズは禁物」と言う言葉があるけど、うれしいサプライズ・楽しいサプライズは日本人も大好きだ。それと並んで記されている「イラン人を決して脅してはならない」という不気味な言葉があったことも特記しておくべきだと思う。
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