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2026年01月08日22:52

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【シネマ歌舞伎】『歌舞伎NEXT 朧の森に棲む鬼(幸四郎版)』

調べてみると、『三人吉三 コクーン歌舞伎』以来、実に10年半ぶりとなるシネマ歌舞伎(この場合は「映画館で上映される歌舞伎」の意味)。シリーズ名としての松竹「シネマ歌舞伎」は、前に『天守物語』を見て、その映像作品としてのクオリティの低さにうんざりして、その1本きりで足が遠のいてしまった。しかし本作は演出・脚本が劇団☆新感線のコンビだ。その映像版もゲキ×シネと同じようなクオリティになるはずだと予想がついた。『朧の森に棲む鬼』という演目自体、2008年にゲキ×シネで見た面白かった記憶があるので、作品としてハズレはないはず。そんなわけで、実に久しぶりにシネマ歌舞伎に足を運んでみた。

大まかな感想は一言で済む。「歌舞伎役者が演じる劇団☆新感線」だった(笑)。

昔見て面白かった記憶はあるものの、具体的なストーリーはほとんど忘れていて、ほぼ初めて見る物語のような印象。「確か主人公が一人二役だったはず」と思っていたが、途中でそれは『髑髏城の七人』だと思い出した(笑)。これはゲキ×シネで見た『髑髏城の七人 アオドクロ』が同じ松本幸四郎(当時は市川染五郎)の主演だったため、よけい混ざったのだろう。

あらためて見ると、シェイクスピアの『マクベス』と『リチャード三世』をベースにした見事なピカレスクロマンだ。他にも「生き別れのきょうだい」などシェイクスピア的なモチーフが散りばめられ、ワイルドの『サロメ』そのまんまのシーンもあってニヤリとさせられる。そのような西洋的物語を、「架空時代劇」の意匠で描く手腕は相変わらず巧みだ。立ち回りは昔以上に派手だし、ギャグも多く、202分もの長尺をまったく飽きさせない。

実質的に「歌舞伎役者が演じる新感線」なので、いかにも歌舞伎っぽい演出は少ない(それだけにラストで見せる宙乗りの外連が生きる)。しかし女性の役もすべて男性が演じるのは、さすがに歌舞伎ならではで、そういう点からもツナ役の中村時蔵がゲキ×シネとの違いを決定づける大きなポイント。「役としては女性だが、武芸に秀で猛々しい性格も備えた男性的な女性を、男性が演じる」という何重もの屈折が非常に興味深かった。
主人公ライ役の松本幸四郎はまさに千両役者の貫禄。そもそも新感線版、つまり2008年に見たゲキ×シネ版『朧の森に棲む鬼』でも、彼は同じ役を演じているので、彼にとっても1つの当たり役だろう。具体的なことは忘れているが、ゲキ×シネ版ではもっと線の細い印象があったので、17年ほどの時を経て、さらに自家薬籠中の物とした節が伺える。

久しぶりに見たシネマ歌舞伎(実質ゲキ×シネ)は期待に違わぬ…いや、期待を超える素晴らしい出来だった。娯楽の粋を尽くした贅沢すぎる3時間半。実際の舞台が1万数千円もすることを考えれば、この程度の値段で気軽に映画館で見られるメリットは大きすぎる。最近すっかり足が遠のいていたが、今年はシネマ歌舞伎/ゲキ×シネ/NTLiveのような舞台映画作品を、もっと積極的に見ていこうと決心した。

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