mixiユーザー(id:6769408)

2025年05月16日22:00

15 view

屋根の上のヴァイオリン弾き

2025年5月15日(木)、博多座公演

奥方の付き添いでミュージカル鑑賞f^^;。『屋根の上のヴァイオリン弾き』は、ずいぶん昔にテレビで上演を観た記憶があります。テヴィエは森繁久彌、そして「サンライズ・サンセット」の歌。ストーリーなどは全然覚えていませんでした。

舞台となるアナテフカは実在しない村のようですが、キーウの大学で学んで革命運動に共鳴する青年パーチック(内藤大希)が登場することからして、19世紀末からロシア革命前にかけてのウクライナか。前半に考えていたのは、そこで展開されるユダヤ人の物語をいま上演することの意味でした。ウクライナ戦争やパレスチナ問題の背景もしくは関連として示唆がありそうに思えたわけです。しかし後半に入って、テヴィエ(市村正親)の葛藤や煩悶、神への愚痴に泣き笑いしつつ、妻のゴールデ(鳳蘭)や娘たちとのやりとりから彼らの境遇や生き様、親娘の思いなどにはまり込んでしまえば、もう理屈抜きで涙腺崩壊していました。考えるな、感じろ(爆)。出演者それぞれの充実して熱のこもった演技に拍手です。

表面をなぞるだけで考察といえるほどのものではありませんが、物語はテヴィエの娘3人の結婚が軸となって進行し、テヴィエの対応も三様で興味深いので、取り上げてみます。まず長女のツァイテル(美弥るりか)。肉屋ラザール(今井清隆)からの縁談が申し込まれ、テヴィエはいったんは承諾するのですが、ツァイテルは仕立屋のモーテル(上口耕平)と恋愛関係にあったことがわかり、恋人二人に懇願されたテヴィエは翻意してツァイテルとモーテルの結婚を認めます。ラザールは金持ちだけど、テヴィエよりも年上で元々二人の関係がよくなかったという設定があり、方やモーテルは貧乏で引っ込み思案だが、それ以上悪くはなるまいというテヴィエなりの計算が働いていました。問題は、妻ゴールデがラザールとの縁談に大乗り気だったのをどうして説得するかでした。ここでテヴィエがひねり出したのが夢のお告げ大作戦で、テヴィエのお婆さんのツァイテルとラザールの亡き妻フルマセーラが舞台上に現れてテヴィエ夫妻を脅すというでっちあげの幻想シーンが繰り広げられるのが面白い。

次女のホーデル(唯月ふうか)は、先に触れた社会主義思想のパーチックと恋仲になります。二人は仲人を通じての結婚の申し込みという村のしきたりを無視してテヴィエに直接交渉し、しかもパーチックはテヴィエに対し、相手の親に求めるのは結婚の承諾ではなく祝福だと言います。パーチックの「理論家」ぶりに、テヴィエはツァイテルとモーテルのときは二人から懇願されたこととの対比で不満を示すのですが、もともとテヴィエがパーチックを気に入って娘たちに勉強を教えてもらっていたこともあり、「してやれることは祝福くらいか」と納得します。テヴィエがパーチックをピーチックと呼ぶギャグは、みっちも言いたかった(爆)。

三女のチャヴァ(大森未来衣)は読書好きで、それが縁となってロシア人のフョードカ(神田恭兵)と結ばれます。しかしこの結婚をテヴィエは認めませんでした。テヴィエはロシア人とユダヤ人を鳥と魚に例えて一緒に住めないと言います。異民族・異教徒との結びつきは、ユダヤ人社会とその信仰を根幹から揺るがすものであり、「この話は金輪際するな」として、その後チャヴァとフョードカがいくら許しを請おうとしても耳を貸しませんでした。チャヴァは結局家を出て、ロシア正教の教会でフョードカと単身で結婚式を挙げます。テヴィエは「チャヴァは死んだ」と言い放ちます。

以上の3ケースについて、自分ならどうする?と問われてはないけど、考えました。長女も条件的にけっこう厳しかったと思います。ラザールの方が仲人も妻もいい話だと考えていたわけで。先約を破棄したのは、テヴィエが本人の意志を尊重したことが大きかったでしょう。次女は、男の態度が気に食わないので、許せないかもf^^;。ミュージカルの開始で歌われるのが「しきたり」の歌で、しきたりは当時の社会・地域では守るべき規範ですし、手順をふもうと思えばふめるのにそれをしないのは身勝手で傲慢ともいえます。革命を危険思想だとして否定しなかったテヴィエの寛容さがむしろ凄い。三女は、そんなに抵抗ないんですよね。異民族といっても同じ人間、異教徒といっても信仰心なしで、そういう関係を真剣に考える状況も日本ではあまりない。だからテヴィエの拒絶はとても厳しく映る。思想には寛容なのに。いまのパレスチナとイスラエルの関係と照らし合わせると、立場は逆のようですが、じゃあ逆ならいいのか?とはいえるでしょう。

物語はその後、パーチックがロシア当局に逮捕されてシベリアに流刑となり、彼を支えるためにホーデルはシベリアに旅立ちます。ユダヤ人排斥の激化によってテヴィエが住む村もユダヤ人全員が追放となり、別れの場面で劇は終わります。このとき、テヴィエたちはアメリカをめざすと話していましたが、ポーランドに向かうという者もいて、その後の運命が分かれることになります。最初に書いたように、答えは必ずしも明確ではないけど、現実と重ね合わせていろいろ考えてしまうというだけでもいま上演する意味はありそう。

音楽面では、博多座のミュージカルは生演奏がいい。舞台後方が坂道で、右側に向かって上がっていくその下に楽隊が配置されていて、スクリーンを透かしてある程度様子が見えました。なおタイトルになっている屋根の上のヴァイオリン弾きは実際に登場しますが、象徴みたいなもので、その場にいてヴァイオリンを弾く以外は物語に介入しません。また、ツァイテルとモーテルの婚約場面では、ユダヤ人の踊りとたまたま同席していたロシア人たちの踊りが対比され、それぞれ典型的なユダヤ風、ロシア風な音楽が楽しめました。
0 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2025年05月>
日 月 火 水 木 金 土
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031