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2025年02月15日11:47

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あいことば

「まったのでしょうか?」

いったいどうしたのだろうとおうかがいすると
「娘には内緒なのですが実は主人が歩く練習をしているんです」
「娘の結婚式が決まってからというもの時間ができると
 『リハビリに連れて行ってくれ』と言うようになって
 それも子どもたちには内緒で」

「バージンロードを歩くために、ですか」
私は胸がいっぱいになりました
「わかりましたぜひ、お父さまにお願いしたいです。」

支度を終えた新婦がバージンロードの前で待機していると
車椅子のお父さまとお母さま、そしてお兄さまがこられました
「お兄ちゃん、よろしくね」
新婦が声をかけると、
ウエディングドレス姿の妹を見つめながら
お兄さまは黙って首を横に振りました
「えっ、どういうこと?」

答えの代わりにお兄さまが少しかがんで
お父さまに肩をかされました
お母さまは既に涙ぐみながらお父さまに杖を手渡されます
「え・・・、お父さん?」
「行くぞ」
「・・・・はい」
新婦は瞳をうるませて
お父さまの腕に手をかけました
お父さまがエスコートするのではなく
新婦がお父さまを助けるかのように支え
歩みを合わせているのが
こちらからもわかります

お父さまは堂々と前を向かれ歩みを進めていきました
新郎の背中をぽん、と叩き「頼んだぞ」と
お父さまの声が聞こえたような気がしました

披露宴の半ば突然司会者がこう切り出したのです
「本来、ここで祝電を披露させていただくのですが
 ここに一通のお手紙をお預かりしておりますので
 ご披露させていただきます
 差出人は新婦のお父さまです
 それでは、代読いたします
___
しのぶへ
私は静岡の田舎で
男兄弟ばかりの中で育ったものだから
女の子をどう育てていいのかわからず
母親に任せっきりにしていました
運動会や学芸会もほとんど行けず
仕事ばかりしてきた父親でした
すまないと思っています
ただ
父親の務めであると思いながら
どんな仕事も一生懸命やってきました
それだけは自信を持っています
とはいっても
あなたにとってみれば
厳しくて門限にもうるさくて
うざったい父親だったでしょう
でも
君がうちの娘に生まれてきてくれたこと
本当にうれしかったんだ
今まで言ったことなかったけど
本当にありがとう
今日
あなたが花嫁となって
岡崎家の人間から梅村家の人になっていくこの日に
どうしても何かしたくて
恥をしのんでお母さんとリハビリをがんばった
これで今まで何もできなかったことは
許してもらえるとうれしいです
寛くん
どうぞ
しのぶをよろしくお願いします
___
あふれ出る涙をぬぐう新婦
その横では
新郎がお父さまに向かって頭を下げています
会場のあちこちで鼻をすする音が聞こえてきました
読み終えた
お父さまからの手紙をしまった司会者が
もう一通封筒を取り出しました
「実は、新婦からもお手紙を預かっております
 続けてご披露させていただきます」

その手紙にはこんなフレーズがありました
「・・・いつも怒ってばかりで門限も厳しくて
 お父さんの存在が   になったこともたくさんありました
 でも
 今は厳しく育ててくれたことにとても感謝しています」

先ほどまで堂々とされていたお父さまも
目を真っ赤にしていらっしゃいます
会場は感動に包まれ温かく
やさしい拍手がしばらく鳴りやみませんでした

「結婚式で本当にあった心温まる物語」
〜 山坂大輔 著 あさ出版より 〜
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