アルツハイマー病は、65歳よりも前に発症する「早発型」と、65歳以上で発症する「晩期型」に分けられます。早発型は、アルツハイマー病全体の1%ほどで、30代から50代での発症が目立ちます。
そしてこの早発型の患者の多くは、先天的な遺伝子変異がかかわっていると考えられています。早発型アルツハイマー病の原因となる遺伝子は、おもに次の三つです。一つ目は,アミロイドβ前駆体タンパク質 (APP)の遺伝子です。アミロイドβは、APPが切断されることで生まれます。
二つ目と三つ目は、プレセニリン1 (PSEN1) の遺伝子とプレセニリン2 (PSEN2)の遺伝子。 「プレセニリン」とは、APPからアミロイドβを切りだす酵素である「yセクレターゼ」 を構成するタンパク質をいいます。
これらの遺伝子に変異があると アミロイドβがつくられる速度が上がったり、凝集しやすいアミロイドβの断片が多くつくられます。 その結果、アミロイドβの蓄積がふえ, 早ければ30代でアルツハイマー病を発症することになるのです。
アルツハイマー病を完治させる薬はまだありませんが、進行を遅らせる薬はすでに発表されています。アルツハイマー病の患者の脳内では,記憶や学習などにかかわる「アセチルコリン」という神経伝達物質が減少していることがわかりました。
ニューロンを伝わってきた電気信号は、アセチルコリンが次のニューロンに届けることで伝達されます。役割を終えたアセチルコリンは、「コリンエステラーゼ」という分解酵素によって分解されます。
しかしアルツハイマー病の脳では、次のニューロンに到達できるアセチルコリンが少ないため、情報伝達に支障がでるのです。そこで日本の製薬企業エーザイは、コリンエステラーゼのはたらきを弱める薬の開発を進めました。
コリンエステラーゼの働きを抑えれば、次のニューロンに到達するアセチルコリンがふえ、結果, 情報伝達の助けになると考えたからです。この予想は当たり、コリンエステラーゼを阻害する化合物は、認知症に対する世界初の薬「ドネペジル(商品名:アリセプト

)」となりました。
ドネペジルは、アルツハイマー病の進行を9か月から1年程度遅らせることができます。アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβは、自覚症状がでる10〜20年も前から蓄積されています。
そのため、症状のみられない時期から兆候をつかみ、アミロイドβがそれ以上蓄積しないよう、早期治療を行う必要があります。そこで開発されたのが、「陽電子放射断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)」 を用いた 「アミロイドPET」 とよばれる診断法です。
PETとは,放射線を出す検査薬を注射し、その薬が発する放射線を外部から検出して、体内を画像化する手法です。検査薬には、アミロイドβにくっつきやすい化合物が使用され、アミロイドβだけに目印をつけることができます。
その結果、脳の「どこに」「どれだけの量の」アミロイドβが蓄積しているのかを知ることができます。2013年には、タウの蓄積を観察する「タウPET」も開発されました。タウの蓄積は、直接的にニューロンの死をひきおこすため、アルツハイマー病の早期診断により役立つといわれています。
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