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2024年10月18日21:42

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侍タイムスリッパー

話題の自主制作映画が全国上映となっており、さっそく観に行きました。『カメラを止めるな!』以来のヒットらしい。

主人公は幕末の会津藩士、高坂新左衛門。下命により長州藩士を襲撃した際、落雷によって現代にタイムスリップしてしまうという開始です。「転生もの」や「タイムスリップもの」は、いまどきありふれており、過去の人物が現代にやってくるパターンなら、すぐ思いつくのが『パリピ孔明』だし、『アシガール』はJKが戦国時代にいく話だけど、途中では向こうの若君がこっちにきてました。これについては、自主制作で時代劇を撮るための苦肉の策かもしれません。なにしろ時代劇はコスパが悪いということで近年作られなくなっており、そのためにコストがますます上昇しているでしょうし、資金的に非常に厳しかったはず。監督は愛車NSXを売って資金に充てたらしいですが、他にもあらゆる面で出費を抑える必要があったでしょう。しかし、侍を現代にタイムスリップさせれば、時代劇のセットを「実物」ではなくセットとしてそのまま使えるぞ、ということだったんでは?

時代劇の斬られ役をクローズアップしたドラマとして、NHK朝ドラ『カムカムエヴリバディ』(2021)の京都編で松重豊が演じた伴虚無蔵、もっと前には『オードリー』(2000)で長嶋一茂が演じた大部屋俳優が思い出されます。どちらも古武士のような、寡黙で人を寄せ付けない雰囲気が一種の魅力だったわけですが、今回は「ような」じゃなくてホンモノf^^;。主演の山口馬木也がとてもよかった。彼が演じる高坂が現代社会のあれこれに戸惑いつつも率直に見せる反応が素晴らしい。白米のおにぎりを磐梯山の雪のようだと例えたり、ショートケーキを食べて良い国になったと泣くシーンなどは、観ているみっちもなぜか泣けて仕方ありませんでした。おかげで前半は泣きすぎて鼻が詰まり、口でハアハア息してました(爆)。テレビドラマでは『剣客商売』で秋山大治郎を演じていたことが印象に残っていますが、このころから殺陣のシーンに風格があり、時代劇が盛んだったころなら黒澤映画などで活躍できたんじゃないかと思っていました。

こうして、物語前半は高坂が現代とのギャップに苦しみながらもなじんでいく過程の泣き笑いだったのが、後半では斬られ役からスターに、そして現代劇に転身したという先輩役者の風見恭一郎(冨家ノリマサ)との絡みが増えてきます。まだ観ていない人も多いと思うので多くは語りませんが、この二人の立ち回りがけっこう対照的です。山口馬木也が土埃の匂いがするようなリアリズムとすれば、冨家ノリマサのそれは様式化された舞に近いスタイルです。剣術に流派があるように、殺陣にも違いがあるのかな?

配役については、他に助監督役の沙倉ゆうのがヒロイン的な存在です。劇中で高坂が好意を抱く相手ですが、観客も同様に心惹かれることでしょう。この人、実際の助監督でもあったようでがんばりました。兼務でいえば監督の方がよほど多かったらしいけどf^^;。それから殺陣師の関本役として峰蘭太郎。もともとこの役は福本清三をイメージしていたらしく、厳しくもユーモアを持った人物として魅力的に描かれています。高坂を指導するシーンで、斬られるはずの高坂に逆に何度も斬られてしまうところは、ベタですがいちばん笑いました。他の出演者たちも素晴らしく、斬られ役の侍の断末魔の表情アップなどはトラウマ級。あるいは斬られ役の人たち、全員がタイムスリップしてきたホンモノかも(爆)。

全体として、映画作りへの情熱が伝わる点で『カメラを止めるな!』と共通しています。本作ではとくに時代劇への憧れが強く打ち出されていて、時代劇がんばれ!という気持ちにさせられます。最後に、ちょっと気になった点を2つ。ひとつは、冒頭のシーンが明るすぎ。夜なのに眩しいほど。ここは現代ではなく幕末なので、提灯以外に光源はないはずです。まして雷雨になるわけだし。闇夜にせよとまでは言いませんが、人工的な照明を感じさせないでほしい。もうひとつは、「黒船来航」のポスター。この時点で高坂が「140年」をすんなり読めるのかという疑問があります。ここはプロット上のキーポイントなので、漢数字にするとか、配慮が必要ではないでしょうか。
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