入院するに当たって、あらかじめ知っておきたいことの1つが、「どれくらい費用がかかるのだろう」ということです。入院にかかる主な費用は、室料と治療費です。室料の差額ベッドですが、これは、健康保険でまかなえるベッドと、まかなえないベッドがあります。
健康保険でまかなえないベッドというのが、いわゆる差額ベットで、1部屋にベッドが4床以下で、1人あたりの金額が6.4平方メートル以上という条件がついています。この差額ベッドの割合は、最大でもその病院の全ベッドの50%以下であることが定められており、国立病院は30%以下となっています。
「国立病院は私立の病院に比べて安い」というイメージがありますが、これは差額ベッドが少ないので、請求される費用が治療費のみになる場合が多いためです。差額ベッドの料金は病院によって大きく異なりますので、入院に際しては料金を確かめることが大切です。
また、入院申込書の用紙に、「差額ベッドは可か不可か」という項目がある場合は、希望する場合は、「可」、希望しない場合は「不可」と記します。こうした正式の用紙ではなく、医師や看護師、入院担当の職員から、「ベッドが空いていないので、差額ベッドでもいいですか?」というように聞かれる場合もあります。
実は、こうした曖昧な表現があとあと問題になるケースが結構多いのです。厚生労働省の通達には、このように書かれています。「特別の療養環境(差額ベッド)の提供は患者への十分な情報提供を行い、患者の自由な選択と同意に基づいて行われる必要があり、患者の意に反して特別療養環境室に入院させられる事のないようにしなければならないこと」。
つまり、「ベッドが空いていない」という理由は「患者の自由な選択と同意に基づいている」とはいえないことになるのではないでしょうか。この問題に対する解釈は微妙で、病院にとっては「ベッドが空いていないという情報を提供し、それに同意した上で差額ベッドの部屋に入院したのだから、当然、室料は支払うべきだ」ということになります。
一方、患者にしてみれば、「一般室が空いていないと、入院が先延ばしになる。それまでに病状が悪化するのではないか」という恐怖感があり、「それではお願いします」ということになりがちです。差額ベッドの費用を支払うだけの金銭的な余裕がない場合、あるいは医療保険に入っていない場合など、患者は意に添わないにもかかわらず、高額の支払いをしなければなりません。
こうした場合には、主治医の意見を聞くことです。「どうしても治療上の必要があって、すぐに入院しなければならない」というような場合は、差額ベッドの費用を支払わなくてもいいからです。先にあげた厚生労働省の通達では、以下の場合、病院は差額ベッドの代金を求めてはならないと規定されています。
※同意書による同意の確認を行っていない場合。
室料の記載のない同意書、患者の署名がないなど内容的に不備な同意書は、正式の同意書とは認められません。
※患者本人の「治療上の必要」により特別療養環境室へ入院させる場合。
救急患者、手術後の患者など、病状が重篤なために安静を必要とする患者、または常時監視が必要で適時適切な介護や介助が必要な患者などは、差額ベッドに入院させても、病院はその料金を請求できません。
また、免疫力が低下して感染症にかかるおそれがある場合、集中治療を行う必要がある患者、著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要がある終末期の患者なども同様です。つまり、治療上の必要があって差額ベッドの部屋に入院する場合は、差額ベッドの費用を支払う必要はありません。
※病棟管理の必要性などから特別療養環境室に入院させた場合であって、実質的に患者の選択によらない場合。MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌による感染。乳児や高齢者が感染すると、肺炎や合併症などを起こしやすい病気)などに感染している患者の場合、主治医などが他の入院患者の院内感染を防止するために、実質的に患者の選択によらずに差額ベッドの病室に入院させた場合には、差額ベッドの費用を支払う必要がありません。
しかし、現実には、手術後に3日ほど差額ベッドの個室に入ったら、3日分の差額ベッドの費用を請求する病院もあります。ありえないような話ですが、厚生労働省の通達を知らない病院の職員もいるのです。また、差額ベッドを無償で提供することの損失を補うために、患者が知らないことをいいことに請求することもあります。
厚生労働省の通達には、「患者が事実上特別の負担なしでは入院できないような運営を行う医療機関については、患者の受診の機会が妨げられる恐れがあり、保険医療機関の性格から当を得ないものと認められる」という一文もあります。
入院するに際して、差額ベッドの費用負担について納得がいくまで調べることは、入院が長引くような場合はもちろん、治療をまっとうするためにとても重要なことなのです。こうした事をきちんと理解した上で、入院する部屋を選択するようにするといいと思います。
よりよい環境を求めるなら、高額の負担が可能なら、あるいは医療保険で差額ベッドの費用をまかなえるなら、差額ベッドの部屋を希望すればいいのですし、そうでない場合は一般室への申し込みをします。なお、場合によっては、差額ベッド料も医療費控除の対象になることがあります。私の場合は個室が開くのを待って入院しました。人それぞれです。
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