80年代に公開された映画。辺境 の村に住む老姉妹の穏やかな日常を描いた導入部と、主人公バベット の調理風景やゴージャスな晩餐会の様子を詳細に再現したクライマック スが見事なコントラストを醸し出した映像は、見る者を一瞬たりとも退屈 させません。人生の収穫期を生きる女性たちの理想郷を滋味深く描いた、 心に残る名作が、デジタル・リマスター版にてよみがえります。
スクリーンから匂い立つ極上の風味。 美食のユートピアここにあり!
19 世紀後半、デンマークの小さな漁村で牧師だった父の遺志を継ぎ慎 ましく生きる初老の姉妹。ある日、彼女たちのもとにひとりのフランス人女 性がやってくる。パリ市の動乱(パリ・コミューン)で家族を失ったバベッ ト。彼女はメイドとして姉妹に仕えるが、ある日偶然買った宝くじで大金 を手にする。かつてパリのレストランの名シェフだったバベットは、賞金 を使って豪華なディナーを計画するが…。(公式ウェブサイトより。一部省略)
<2024年1月21日 劇場鑑賞><午前十時の映画祭>
私の勝手なイメージで、なんとなく「A24」配給、みたいな、おどろおどろしい作品だと思っていました。芸術的過ぎて理解できない類の映画かもしれん、とまで考えていました。ところがどうでしょう。ふたを開けてみれば、なんて心温まる映画。じんわりと感動するとともに、勝手なイメージを描いてしまったことを反省したのでした。
デンマークの小さな村。荒地のようなその村で質素に暮らす牧師とふたりの美しい娘たち。宗教を深く信じ、贅沢を慎み、地域の人たちの心の支えになりながら父と共に暮らす若い娘の姿は、ある意味かわいそうなほどです。しかし、彼女たちの信念は揺らがず、年老いても二人で手を取り合って質素に暮らしています。
そんな時、若い頃からの知り合いに頼まれ、パリを逃れた女性バベットをメイドとして引き取ります。パリの動乱でフランスに住めなくなったのだそうです。料理の腕はピカイチとのこと、住むところさえあれば給料は安くても構わないとのことでしたので、姉妹も快く引き受けます。
実際、彼女はよく働きました。お料理も上手です。長く住むうちに、彼女もこの田舎にすっかり慣れてきました。そんなとき、バベットがパリの知り合いに毎年買ってもらっている宝くじが当たります。姉妹は「パリに帰ってしまうのだろう」と当然のように思っていましたが、さにあらず。バベットは、そのお金を使って、豪華なフランス料理を姉妹を始めとする村人たちに振舞うのです。見たこともない材料が運ばれ、最初こそ疑心暗鬼に「不徳なものを食べさせられるのでは」と震え上がっていた村人たちはしかし、実際にディナーが始まると、そのあまりのおいしさに心溶かされ、皆がハッピーフェイスに。人の悪口や詮索をやめ、楽し気な話題ばかりになったうえ、老夫婦もお互いをじっと見つめるほど幸せに。「おいしいものを食する」ことが人間にとっていかに幸せなことか、頭だけでなく視覚的にも納得できた作品でした。
劇場を出るころは、私も笑顔に。あれだけの料理なら、味オンチの私でも幸せになれるでしょうね。書き忘れましたが、バベットはパリでは有名なシェフだったのです。
総じて幸せな映画でしたが、一つ難点をあげれば、美しい姉妹を本気で愛する男性も現れたのに、宗教に殉じるために嫁に出さなかった父親でしょうね。相手の男性も本気でしたし、彼女たちも恋をしていました。そこでお嫁に出せば、さらに跡継ぎができたかもしれないことを考えると、父親が考えていた「宗教を続ける」ことにも合致したのではないかと思うのです。彼女たちは、さらさら不幸だったなどとは考えていないでしょうが、真面目な恋愛くらいは許されるべきだったのではないかと、個人的には思います。まぁ宗教のことは詳しく知らないのですが。
さすが「午前十時の映画祭」名作揃いなんですね!
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