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2023年12月27日16:02

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アンゲリッシュの「献呈」

・リスト:ピアノソナタロ短調 S.178
・シューマン:クライスレリアーナ 作品16
・ショパン:練習曲集 作品10より第10曲変イ長調、第12曲ハ短調

ピアノ:ニコラ・アンゲリッシュ
2016年録音、ERATO 0190295990671

2022年4月に51歳で亡くなったピアニスト、ニコラ・アンゲリッシュによるロマン派アルバム。アンゲリッシュは現役ピアニストの中で例外的に追っかけて聴きたいと思っていた人で、カピュソン兄弟たちとのフォーレの室内楽で知り、ブラームスの協奏曲や室内楽などを収録したボックスも最高でしたから、訃報はとてもショックでした。その後まもなくこのCDとバッハのゴルトベルク変奏曲のCDを入手していたのですが、それぞれ一度は聴いたものの、みっちはそもそもピアノ曲をろくに知らない! 語れない! ほかに積ん読状態のCDボックスがいくつもあって、それも消化しなきゃというわけで、この年末に至り、ようやくじっくり聴こうかという状況になった次第。実を言うとまだニールセン・ボックスやカール・リヒターボックスが未消化だけど、あきらめムードが漂っておりますf^^;。

録音は2016年、アンゲリッシュは40代半ばということになります。「献呈 "Dedication"」というタイトルは、リストがシューマンにピアノソナタを、シューマンがショパンにクライスレリアーナを、ショパンがリストにエチュード10番・12番をそれぞれ献呈ということで、献呈で作られた3人の環によるアルバム収録というシャレた趣向になっています。ついでにいえば、リストのシューマンへの献呈は、先にシューマンが幻想曲をリストに贈ったその返礼という意味もあったようで、この二人はなにかと交流があるんですよね。一方で、シューマンはショパンを「諸君、脱帽せよ!」などと紹介したので有名ですが、ショパンの方はシューマンに対して関心がなかったらしい。だから逆回りの環はできなかったのかも。

リストのピアノソナタを聴いていて思うのは、アンゲリッシュという人は決してガチャ弾きしないということです。作品をよくわかってなくて言うのですが、こういう曲はガーン、ドッキャーン(爆)みたいにピアノをぶっ叩くようなド派手な演奏がハマるものではないかと思うところを、やらない。もちろん音階や跳躍などスリリングで悪魔的、恐ろしいほど指が回ってかつ粒ぞろいな凄みは感じさせるものの、むしろ静かで思索的な箇所でなにごとかを求めているような印象の方が強い。シューマンの妻クララはリストを「ピアノの破壊者」と呼んで嫌っていたようですが、アンゲリッシュの演奏で聴けばその印象も変わったかもしれないと思うほど。シューマン自身については、この曲が献呈されたのがシューマンがライン川に投身自殺を図った後らしく、おそらくこの曲の譜面を見ることも聴くこともなかったろうことが残念です。

クライスレリアーナは、シューマンの代表的なピアノ作品のひとつとされていますが、個人的には少々とっつきが良くない。なぜなら、各曲にタイトルがないからf^^;。E.T.A.ホフマンのクライスラーとか言われてもね〜、って感じですよね。ピアノ曲に疎いみっちですが、それでもシューマンは多少持っていて、誰かのなかったかなと探して出てきたのが、ユーリ・エゴロフのCD。両者を聴き比べながら、やはりアンゲリッシュがガチャ弾きしないことを確認しました。第1曲でエゴロフが左手の和音をガンガン突き入れて切迫するところ、これはエゴロフに限らず普通そのように弾かれる曲だと思うのですが、アンゲリッシュは非常にコントローラブルなバスで、上部の細かい音符が織りなすアラベスク模様を克明にしかも繊細なニュアンスをもって浮き立たせています。こんな忙しいところでこんなことやってる人ほかにいるんだろうか? これが最後まで続き、なんというか、一皮も二皮もむけた演奏。とはいえ、この時期のシューマンのピアノ曲には、この時期にしかない情熱的な飛翔感があって、フロレスタンとオイゼビウスの例えでいえば、フロレスタンどこ行った?的な感じも少しあります。エゴロフの存在意義もそこに見出だせそう。アンゲリッシュのブラームスがよかったのは、逆にこうした音楽性が曲にぴったりハマったからかもしれない。いずれにしろ、アンゲリッシュのシューマンをもっと聴きたかった。惜しい、つくづく惜しい。

ショパンは、演奏会のアンコールということで(爆)。いや、すごくきれいですよ。とくに10番。味わい深く磨き抜かれている。ただ前の2曲と規模的にバランスが取れてないし、これがショパンなのかと言われると、少なくともコンクールで大見得を切るような、かっこいいショパンらしさではないかな、と。
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