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2023年08月30日21:15

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ミシェル・ペイヴァー『青銅の短剣』

・『神々と戦士たち』シリーズ I 『青銅の短剣』

ミシェル・ペイヴァー著、中谷友紀子訳
あすなろ書房

『クロニクル 千古の闇』シリーズ(評論社)で魅了してくれたミシェル・ペイヴァーの新たなシリーズ。今回は古代ギリシアが舞台です。

2015年に翻訳が出ていたのを知りませんでした。ペイヴァーの本は「児童文学」にカテゴライズされているため、図書館では児童書コーナーに置かれていて、まずそっちに行くことがないんですよ。たまたま検索で見つけて、さっそく借りてきました。子供に読ませるのがもったいないくらいf^^;。

青銅器時代ということで、いまからざっと3,500年ほど前のギリシア。『クロニクル 千古の闇』が6,000年前の石器時代だったから、一気に2,500年経ったことになる。とはいえ、ギリシア神話の物語はそこからまだ後の時代で、タイムスケールの差にクラクラします。

読みだしたら一気に引き込まれてしまい、ページをめくる手ももどかしい。めくるとすぐにページの左端に目が行ってしまうのは『クロニクル 千古の闇』と同じ。主人公がいきなり窮地に立たされたところから始まるというのもありますが、自然や動物、人物のサバイバル描写などが濃密で、ちょっとした動きや変化などに読者も敏感に反応してしまうようになります。これは、作者ペイヴァーの生活と実践に裏付けられた感覚らしい。

登場人物たちも、『クロニクル 千古の闇』とどことなく似通っています。『クロニクル 千古の闇』では主人公のトラクとウルフ、レンが中心でした。本作では、主人公のヒュラス、大巫女の娘ピラ、親友のテラモンの3人とイルカのスピリットの視点があります。ウルフは名前通りのオオカミでトラクと同行しますが、イルカは陸には上がれないため、代わりにテラモンが入ったみたいなf^^;。でもヒュラスは12歳でトラクより大人びており、ピラにもテラモンにもけっこう厳しい。まあ状況が油断や楽観を許さないというのもありますね。あと彼には妹?がいますが、行方がわかりません。

この『青銅の短剣』では、ヒュラスのピンチについて一応の決着を見ますが、とりあえずという感じで、彼は元の生活には戻れないし、さらなる波乱が待っていることは明らかです。もう、読んでしまうとすぐ次が読みたくなる。『クロニクル 千古の闇』のときは続巻の翻訳が出るのを首長く待っていましたが、今度はシリーズ全5作がすでにそろっているので、そういう意味では出遅れてよかった。

なお、古代ギリシアということで、登場人物たちの名前はギリシア神話にも出てくるものがあります。以下、今後も登場するであろう主だった4人を高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』から引いてみました。

・ヒュラース:テイオダマースの子。ヘーラクレースの侍童となる。ヘーラクレースとともにアルゴナウタイの遠征に参加するが、キオスで泉に水汲みに出かけたところを水のニンフたちに水中に引き込まれた。

・ピュラー:エピメーテウスとパンドラー(「パンドラの箱」で有名)の娘。デウカリオーン(洪水伝説で有名)の妻。またはアキレウスがスキューロス島のリュコメーデースの宮廷で女装していたときの名。

・テラモーン:サラミス王。アイアコスとエンデーイスの子。ペーレウス(アキレウスの父)の兄弟。大アイアースとテウクロスの父。アルゴナウナウタイの遠征、カリュドーンの猪狩り、ヘーラクレースのトロイア攻略に参加。

・アカストス:イオルコス王。ペリアースとアナクシビアーの子。ラーオダイメイアの父。アルゴナウナウタイの遠征、カリュドーンの猪狩りに参加。ペーレウスをペーリオン山に置き去りにする。

こうして見ると、事件ではアルゴナウタイの遠征とカリュドーンの猪狩り、人物ではヘーラクレースとペーレウスとの絡みがけっこうあります。これらが今後の物語と関係があるのかないのかというのも楽しみのひとつです。
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