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2023年05月24日05:16

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田中角栄の方言の信憑性

ロッキード事件の丸紅ルートの捜査と公判を見て、まず疑問が湧くのが請託の有無です。 受託収賄事件の場合、請託は立証のための要となり、必ず争点の一つとなります。特捜部は、請託がなされたのは、檜山が大久保と田中邸を訪問した「1972年8月23日午前7時ごろ」と決めつけています。

特捜部の構図において、檜山は大久保を田中角栄に紹介したあと、「ロッキード社が全日空に航空機の売り込みをかけているがスムーズにいかない」と現状を説明。その後、もし全日空がロッキード社のトライスターの導入を決定した場合、ロッキード社が五億円を支払うので、全日空がロッキード社のトライスターを導入するようしかるべき閣僚に働きかけるなど、協力してほしいと依頼したといいます。

これに対して、田中角栄は「よっしゃ、よっしゃ」と応え、承諾したとしています。檜山は1995年2月、最高裁が上告を棄却、懲役2年6月の有罪が確定しましたが、その5年後、病死しています。檜山が生前、家族に胸の内を明らかにしていないかと思い、記者が自宅を訪ねています。JR五反田駅から歩いて十分前後のところです。

檜山邸は高台の静かな高級住宅街の一角にあります。総理公邸は目と鼻の先です。家の周囲を竹柵で囲まれた建物がそれで、事件当時と変わっていないといいます。静かな住宅街だけに、当時マスコミ関係者らが押しかけ、近所の人たちも交え、異常な興奮状態になったことは容易に想像できます。

門からインターホンを押すと、奥さんらしい女性が出たが、取材の向きを伝えようとすると「忙しいから」の一言で、取りつくしまがない。何度か足を運んだが、結果は同じだった。今でも強いマスコミ不信に陥っているのだろうとの印象だったといいます。

そこで請託について、弁護人だった宮原守男氏に意見を聞いてみたそうです。宮原氏は即座に「請託については外形的事実としてある。 全日空は確かにL1011という機種を買いたいという気持ちがあった。ロッキードとしても売りたいという気持ちがあった。檜山はコーチャンに頼まれたという心証はあった。しかし、よろしく頼むとは言っていない。」

「それは檜山から話を聞いて確信が持てた。田中についていうと、特捜部は(よっしゃ、 よっしゃ)と言ったとしているが、絶対に言っていない。国立国語研究所(東京・練馬)で調べたところ、新潟地方では「よっしゃ、よっしゃ」という言葉は使わない。田中はこんな言葉は使わない」と請託の事実を否定したのです。

当時、国立国語研究所と文化庁の国語課で、新潟県地方で「よっしゃ、よっしゃ」という言葉を使うかどうかを確認した方がいます。答えは二カ所とも 「新潟では使わない。高知県や岡山県など西日本で使う方言」。新潟弁の専門家で新潟大学教育人間科学部名誉教授の大橋勝男氏に確認をしたところ、やはり「使わない」とのことでした。

ただ、大橋氏によると、新潟地方では「よしたや、よしたや」という方言を使うが、これは人を讃える褒め言葉で、了解や了承という意味ではないといいます。この方言のことを調べているとき、「よっしゃ、よっしゃ」は、主任検事だった吉永氏が使っていたといいます。「吉永さん」とは、のちに検事総長になる吉永祐介氏のことで、当時は特捜部の副部長として捜査の陣頭指揮をとっていた方です。

吉永氏は岡山県生まれで、岡山大学出身。とすると、吉永氏が勢いで「よっしゃ、よっしゃ」を付け加えたのだろうか。弁護側が公判で指摘したが、解明されていないのです。次に小野正典氏に同じ質問をぶつけています。

小野氏にいたっては「調書は検事の作文。 航空業界は中曽根康弘さんの縄張りだった。たとえ総理といえども、他の政治家の縄張りを侵害すれば、政治生命を失いかねない。田中氏が中曽根さんの縄張りを食うことは考えられない。それに、そもそも民間の会社が総理に頼んで、民間の航空会社に働きかけてもらうなんてことを考えつくだろうか」と頭から請託を否定したのです。

いったいどうして検察側と弁護側で、こんなにも開きがあるのだろうか。田中角栄は逮捕されて以降、公判を通しても、檜山からの請託を否定しつづけていました。請託は密室の行為で、それを裏付ける物的証拠などあるはずがないのです。請託の存在を裏付けたのは檜山調書だけだったのです。

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