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2023年03月08日09:13

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メディアを味方にした政治家


2005年8月、郵政民営化法案が参院本会議で否決され、衆院を解散する断をくだして記者会見に臨んだ際の「ガリレオ発言」が出ました。「約400年前、ガリレオ・ガリレイは、天動説の中で地球は動くという地動説を発表して有罪判決を受けました。そのとき、ガリレオは、それでも地球は動くといいました。

「私は今、国会で郵政民営化は必要ないという結論を出されましたけれども、もう一度国民に聞いてみたいと思います」と熱く訴えた小泉純一郎氏。 郵政民営化を主張している自らは正しく「善」で、否決した国会がまちがっている「悪」という図式でした。そのあとの衆院選での「刺客」作戦も、善悪二元論そのものでした。

郵政民営化法案に反対した自民党の造反組に対抗馬を擁立、悪玉の造反組に立ち向かう善玉の刺客といった図式をつくりあげたのです。小泉氏の言葉ではないのですが、「くの一」「マドンナ」と呼ばれた女性の対立候補の闘いぶりがテレビのワイドショーの話題を独占しました。ワイドショー政治の小泉劇場が演出されたのです。

これが、劇場型政治といわれたゆえんでしょう。ややこしい話もできるだけ短い言葉で、それも極めて簡潔に一言で伝える表現力も見逃せない。新聞なら見出しにあたるワンフレーズの巧みさがあります。「自民党をぶっ壊す」にしても「改革なくして成長なし」にしても、それだけで分かったような気にさせるところがあるのです。

見出しなら10数文字、テレビなら15秒以内で気のきいた言葉を発すれば、とくにワイドショーは繰り返し放映します。短い時間で人々をとらえる政治的なフレーズを駆使する「サウンド・バイト」といわれる手法になります。

逆もありました。2004年6月、岡田克也民主党代表との党首討論で年金加入問題について「人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろ」と島倉千代子の歌をもじったような発言をして、ふまじめと批判をあび、7月の参院選での敗北に繋がりました。

小泉流は「ワンフレーズ・ポリティクス」そのものでした。こうして獲得した支持で小泉氏は、国会議員の頭数では圧倒していた田中派・竹下派の流れを政治の土俵の外に押し出しにかかる。 永田町での劣勢を外から支持を調達することで逆転しようとしたものです。

そのために使ったのが有権者への直進発信でした。首相番記者による通称「ぶら下がり取材」を最大限に利用しました。森喜朗内閣までは、首相番記者は官邸や国会の廊下で、首相との一問一答のやりとりができました。

全国紙、通信社、放送局、ブロック紙の記者10数人が首相を取り囲み、立ち話で、時の話題について質問し、首相の答えを引き出しました。小泉氏は歩きながらの番記者との一問一答をやめました。昼と夕方の二回、官邸で質問に答えることにしたのです。

昼は新聞を念頭においてカメラなしのやりとり、夕方はテレビカメラを入れてのぶら下がり取材としました。とりわけ夕方のテレビカメラのぶら下がりが効きました。月曜から金曜まで毎日、首相がテレビに向かい、つまり有権者に直接、発信したわけです。

それも小泉流のワンフレーズです。テレビのニュースの時間枠は限られているから、一言でずばり言いきることが必要になります。ワンカットにうまくおさまれば、ニュースの時間ごとに繰り返し流されます。ワイドショーでも使われます。

小泉氏はたくみに使いました。それだけでなく、スポーツ新聞の取材にも応じたし、雑誌編集者とも懇談するなど、それまで政治とは縁遠かった層を引きつけようとしました。2010年4月の内閣発足後すぐに「小泉内閣メールマガジン」を週刊で発行、計250回続きました。

1年からは「小泉総理 ラジオで語る」も月1回、土曜日に放送しました。2016年11月からは政府のインターネットテレビもはじめました。首相の一週間の動きなどを動画で配信しています。メディア戦略が徹定していたのです。小泉純一郎氏はメディアを味方にした政治家だったと言えるでしょう。

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