見知らぬ弟を突然預けられ人生の選択を迫られた女性の葛藤を描き、中国で話題を集めたヒューマンドラマ。
看護師として働きながら、医者になるため北京の大学院進学を目指すアン・ラン。ある日、疎遠だった両親が交通事故で亡くなり、会ったことのない6歳の弟・ズーハンが彼女の前に現れる。望まれなかった娘として早くから親元を離れたアン・ランと、待望の長男として愛情を受けて育ってきたズーハン。親戚から弟の養育を押し付けられたアン・ランは、仕方なくズーハンの面倒をみることに。両親の死すら理解できずワガママばかりのズーハンに振り回されっぱなしのアン・ランだったが、幼い弟を思いやる気持ちが徐々に芽生えめる。
主人公アン・ラン役に「チィファの手紙」のチャン・ツィフォン。(映画.comより)
<2023年1月22日 劇場鑑賞>
今回は中国映画。ちょうど一人っ子政策の終わりごろから、3人持てるようになった時代にかけてのお話。どの家も男の子を欲しがり、男の子に学歴をつけるためなら、姉は犠牲になって当然だった時代。こんなこと、韓国映画の「82年生まれ、キム・ジヨン」でも(キム・ジヨンの母親が)言ってたと思うけど、とにかく女は我慢して当然。優秀であっても、教養をつけているヒマがあったら働いて稼げ、と強いられた時代。そしてそれは、日本でもそうだったはず。親にもよるだろうけれど。今でも残っているかもしれないけれど。
主人公のアン・ランが、なぜ実の弟と、両親が亡くなるような事態になるまで会うことがなかったかと言うと、
<この辺は、本編では徐々にわかるようになっているので、ここからネタバレということで>
当時の一人っ子政策は、最初に女の子が生まれてしまうと、念願の息子が持てないことを意味しました。そこで、アン・ランの両親は、彼女を「障害児」に仕立て上げました。足に障害がある子なので、もう一人子供を持ちたいと政府に願い出たのです。しかし、審査の女性が来たとき、少女だったアン・ランは、スカートをはいて嬉しそうにダンスをしていました。審査員に「障害児には見えないわね」と言われた両親は激怒。審査員帰宅後、父親は棒を持ち出し、娘の尻を何度も殴りつけました。「このバカが!障害児のふりをするくらいがなんなんだ。スカートなんかはきやがって、このバカが!」泣き出した少女は叫びます。「私は障がい者じゃない!」
後に、アン・ランが学校の願書を出すとき。優秀だった彼女は、医学部を希望し、そう記載していました。しかし、両親が「女の子は地元に残って、家族の世話をすればいい」と、勝手に看護学部に書き換えて出していたのです。結果、看護婦になるしかなかったアン・ランは、そのまま看護婦として働きながら、もう一度大学院を目指して勉強しています。その間、両親に家だけを提供してもらい、そこでたった一人で生きてきたのです。だから、自分に幼い弟がいるなんて知らなかったし、両親も普通に”3人家族”として暮らしていました。そこに起きた交通事故。両親は亡くなってしまいます。
また、中国は日本より、血縁を重視する国かと思います。両親が亡くなった途端、親戚中が「姉なんだから、面倒をみて当然」「家をもらってるくせに」「看護婦としての収入もあるし、生活できるはず」とか、姉だったら当然、という価値観の元、誰もかれもがアン・ランに弟を押し付けます。突っ張ってるアン・ランも強情だけれど、誰もかれもが強引で、なんか見ていてしんどかったです。また弟も、甘やかされているからか、最初はわがまま。私なら、頭をひっぱたいたかもしれません。
そこに、大学のロシア語学科に合格までしていたのに、弟(アン・ランの父親)を学校へ行かせるために、働くことを余儀なくされたおばや病気のその夫、若いのに働かずにぶらぶらし、交通事故や幼い子供をお金のネタにしようとする、どうしようもないおじなど、いろんな話も絡んでくるのです。父の姉であるおばは、せめて商売をロシアでやるつもりで、すべて段取りまで整えたのに、始める寸前に「弟に子供が生まれるから、帰って来て手伝え」と言われ、それすら諦めてきた人生なのです。彼女の夫は今でこそ病気で動けませんが、アン・ランが後に告白する場面があります。「子供の頃、おばさんのおうちに遊びに行った時、あなたの息子には散々殴られたし、亭主には裸を覗かれた。おばさんはいい人だけれど、その自己犠牲は結果を伴ってないと思う」と。情けないですね、本当に。このおばが、アン・ランにスイカを切って出してくれる場面があります。そのとき彼女は言うのです。「母は、弟にだけスイカを食べさせていた」と。お母さんって、自分も女だから辛い思いをして生きてきたと思うのに、なんでこんなことするんでしょうね。理解できません。
ともかく、アン・ランは気も強くて、いつも突っ張ってるから、損をしていることもあるとは思うのですが、つらいことのオンパレードで、見ている私は情けなくて悔しくて、泣きそうでした。
でもね、弟も徐々に変わります。姉もまた、変わります。唯一の姉弟ですから、やっぱり心の支えになり得るということです。いい映画でした。ぶらぶらしているおじだって、自分のふがいなさはわかっていて。それでも、やっぱりバカばっかりやって。口ばっかりでどうしようもなくて。お金を勝手に巻き上げていたりして、本当に迷惑な奴で。でも、やっぱりおじで。
DVDでもいいと思います。気が向いたら、是非。
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