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2022年01月16日07:08

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医者に接種を諦めさせた女性


医者である志賀貢先生が、なぜワクチン接種に二の足を踏んでいるか、ワクチンを打たないのか打てないのか、を語っています。2021年に入って医療従事者からワクチン接種が始まると決まったころは、診療所のスタッフからは、何をさておき、経営者でもある高齢の院長から打ってほしいという声が聞こえてきたと言います。

ところが、ワクチン接種が進み、ワクチンとは因果関係が不明な死亡者が続出し始めると院内の空気は一変しました。そして、その亡くなった人の数が500人を超えるころになり、80代、90代の高齢者に死亡者が集中しているというニュースが流れ始めると、院長もワクチン接種は急がないほうがいいのではないか、という声が多くささやかれました。

志賀貢先生もこのニュースには、正直言って落胆してしまったと言います。同世代の人が短期間のうちに次々に亡くなっていくというのは、決して気分のいいものではありません。どうしたものかと、院長室で考え込む日が続くようになりました。

その気落ちした姿に同情したのでしょうか、院長秘書のIさんが、「先生、私も今回はワクチンを辞退しますから、そんな淋しそうな顔をしないでください」と慰めてくれるようになりました。彼女は志賀貢先生と同じ北海道生まれで献身的に私の仕事に協力してきた女性です。志賀貢先生は彼女の言葉に慌てました。コロナ感染への道連れにはできません。

何としても打たせたいと思い、説得しようとすると、彼女は意外なことを打ち明けました。Iさんは25歳のときに上京して、役所勤めのご主人とは32歳のときに結婚をしました。その後、2人の男の子に恵まれました。しかし、横浜での夫婦共稼ぎ生活は大変だったようです。その夫婦と二人の子どもの暮らしを、10年以上支えてくれたのは夫の母でした。

Iさんに傾けてくれた愛情は、語りつくせないほどで、今も義母の姿を見る度に思わず涙があふれてしまうそうです。おそらく義母の援助がなければ、今の生活はなかったでしょう。その母が90歳の坂を超えた3年前から、認知症の症状で悩むようになりました。

同居を始めたIさんたちが目を離すと、家を飛び出してよく転倒し、病院通いが続くようになりました。高齢者の介護は想像以上に大変です。しかし、病院通いの付き添いから、三度の食事の世話まで、Iさんは仕事をパートに切り替えて母親中心の生活を続け、面倒を見ています。

「もし私がワクチンを打って倒れるようなことがあると、母は生きていけません。絶対に最期まで母の面倒を見て、あの苦しかったころの助けてくれた気持ちに報いたいのです。だから私は死ねません」

そう言って彼女は目に涙を浮かべながら、最後にこう付け加えました。「先生を一人ぼっちにはしませんから、安心してください。私もワクチンは打ちません。これで少しは先生も心強くなったでしょう?」

この話を聞いた病棟師長は、涙声になり顔を両手で覆い肩をふるわせました。彼女も志賀貢先生と同じ道産子で、早くからこの横浜の地で、志賀貢先生の片腕として働いてくれています。おそらく師長にも、たった一人故郷に残した母親がいることを思い出させたのでしょう。

「先生、じつはお願いしようと思っていたんです。今回の医療従事者優先枠のワクチン接種は控えて下さい。それは病棟スタッフ全員の気持ちです。もし、今ここで先生が倒れると、診療所はその瞬間に終ってしまいます。大変でしょうけれども、ワクチンは諦めて、今までと同じように自粛を心がけ、頑張ってください。」

「それが診療所のためでもあり、患者の命を守る先生の気持ちを貫く道だと思います。偉そうなことを言ってごめんなさい。でも先生のそばには秘書のIさんのほかにも、もう一人ワクチンを打たない強い味方がいます」

それは誰のこと?という志賀貢先生の問いに、師長はニッコリと笑って自分を指さしながら、「私です。私はBMIがちょっと高くて太り過ぎなのです。このとおり」と一回転して見せ、「だから打ちません。先生の道連れです。安心してください」

その師長の言葉で、志賀貢先生はワクチンを打たない不安を吹き飛ばしました。思わず握手を求めると、師長はその手を強く握り返してくれましたが、頬には幾筋もの涙の川ができていました。コロナワクチン3回目打ちますか。医者の私が接種しない理由。医学博士・志賀貢/幻冬舎、参考。

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