10月23日、市ヶ谷左内坂方面で用事がありました。
本題に入る前に、
市谷といえばトルコ料理レストラン「ボスボラスハサン」ですよ。
串本のトルコ料理屋が廃業してしまったので、このお店が頼りです
https://www.bosphorushasan.com/
ランチセットの値段は平日と週末ではかなり差があるので要注意です(逆に言えば平日は超破格値)
そこでここは思い切って平日と値段の変わらないスペシャルセットにしました。
手前左は赤レンズ豆のスープ、右はサラダです。
奥は「キュチュックメゼ」(前菜三種)。
味はインド料理がイメージとして近いです。
「エキメッキ」(トルコパン)
トルコ料理らしくモチモチ感がたまりません。
ケバブは「ドネル」(牛肉積層回転焼き)とチキンから選べますが、両方ミックスにして頂きました。
味付ジャポニカ米と玉ねぎが付いてます。
食べ方は自由、そのままでもパンに挟んでも美味しいです。
背景はヨーグルトとトマトのソース。スパイシーが苦手な人はヨーグルトソースが中和してくれて、流石は世界三大料理の優れもの食文化ですね。
店内装飾や調度品も油断なりません。
お客が次々とやってきて繁盛しています。
トルコ人は勿論、チャイだけ飲んでテレビ観てる近所?の老人も。
チャイと「カザンディビ」(トルコプリン)
やはりモチモチ感がポイントだと思います。
皿にはボスポラス海峡に架かる日土友好の象徴の一つ「ファーティフ・スルタン・メフメト橋」のマークが、さらにチャイの皿に描かれた魔除けの模様「ナザールボンジュウ」も見逃してはなりません。
このボスボラス海峡の絵画の数々を見て燃えない者がありましょうか?、いや、居やしません!
因みにハサンは主人の名前です。
さらに画面右、レジ上のキュタフヤ陶器の絵皿には「ケマル・アタテュルク」の肖像と思われるものが!!。これを見て胸が熱く成らない者がありましょうか?、いや、居やしません!
ご主人に「アタテュルク」ですか?と聞いたら、満面の笑顔で「アタテュルク」と返答が。
店を出る時はトルコ飲食店での礼儀として主人に味の正直な感想を言って後にしました。
さて、「定火消発祥の地」碑や「全日本遊戯事業共同組合連合会」の建物やら見ながら「佐内坂」を登ります。
結構キツい坂ですが、国本大将でさえ登れるんですから大抵の人は平気なはず。
坂の下が市ヶ谷駅とお堀です。
交差点を左に曲がって行くと防衛省「防衛研究所」資料室への入口ですが、この日は真っ直ぐ進みます。
「DNP」と書かれたビルは「大日本印刷(株)」の新築本社。元々工場だった敷地を再整備して建てられたものです。ところでDNPって日本語と英語のチャンポンの略ってよくあるパターンの一つですね。
「市谷の杜 本と活字館」に到着しました。
元々は旧「秀英舎」(現大日本印刷)本社事務所で、1920年築、設計は土居松市・宮内初太郎。通称「時計台」と呼ばれてました。
その後増築増築で改装されて外観が変わっていたものを、三階を始めとする合体増築部などや追加内装を撤去。曳家、免震構造化を経て博物館としたものです。
陸橋の日陰でトラックの運ちゃんが休んでおり構図的に残念な感じですが、労働中の方の都合を優先するべきだと思うので何も言いません。
免振の都合上、元々の位置や高さと微妙に違った形となってます。勿論周囲には陸橋も林もありませんでした。
陸橋の上から。
復元された時計。
窓のサッシも新造したようです。
裏側はモロに切り取られた痕跡が見えます。
周囲の樹木は植えられたばかり、散策路の工事や工場施設の建築もまだ終わっていません。
そしてDNPのロゴがあらゆる場所から見える仕組み・・・
博物館の辺りは神田川に向かう谷筋の底だと分かります。
因みに秀英舎の工場が建つ前は高い位置は桑畑で、谷筋内は棚田だったようです。
建築計画看板には着工が10年前、完了予定「平成38年3月」とあるので5年先ですね。
免振の境目ウオッチ。流しの排水の受けが過剰に凝ってますね。
建物の位置が上がってるので、手前の階段は元々無く、本来は免振の隙間が見える階段の高さが地面でした。
勿論、新造復元された塀との高さの関係も本来と合いませんが、保存建築物の価値を落とすものでは無いですね(原理主義者は何から何まで元と同じにしろ、経時劣化や天災被害など有り得ないから耐震・防火ルールは無視せよ、だが我々は人的金銭的協力は一切しない、とか狂信的な強要をしてくるので閉口してしまいますね)
装飾は全て作り直されてます。
元来た方向を見ます。
本来の工場正門は塀の向こう側にあって、地形から造成し直されており旧来の面影は全くありません。
再現された社章や書体復元された縦書き一文字改行で右から左に向かって読む戦前スタイルの看板「社會式株刷印本日大」が文字通り光ります。
バリアフリーのスロープと建物の間に免振起動の際に作動するエキスパンションジョイントがある事に注目。
エントランスを入って内部へ。
開館時間の10時に予約していたのは私だけだったので完全貸し切りです。
床には建設時のタイルが。
不足する部分は同じに見えるタイルを調達し復元しました。
まずは「作字」の工程です。
デザインされた書体はエッチングの亜鉛板に転写され、これを「パターン」(左)と呼びます。亜鉛と説明はされているものの、色や耐性を考えると亜鉛と銅の合金である「真鍮(黄銅)」ではないでしょうか。
さらに彫刻機を使ってパターンを縮小し「母型」(右)へと彫り込みます。
「原図ロッカー」。
「活版」の現物。
それを使って実際印刷された本(2017年
https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b295160.html)
該当ページを受付に居た職員の背が高いお姉さん、仮称「メガ姉さん(高)」が他に予約客も居ないので出てきて教えてくれました。
因みに1階の展示室係の方達はどう見ても容姿がビブリオマニアです。
「パターン棚」。
津上製作所「パントグラフ縦型母型彫刻機」(1948)
パターンを縮小転写し母型に彫刻する機械です。
説明係の仮称「メガ姉さん(小)」が寄ってきて話をするも、例によってこちらの方が圧倒的に詳しい。
使い方とか、優れてる点とか、普通の工場では横に「パンタグラフ」がある横型彫刻機を使っていたが現在はCNC加工が主流とか、引退した彫刻機はタイやベトナムに輸出とか、逆に私が解説してメガ姉さん(小)が熱心に聞くという構図。
下の台にパターンをなぞる部分。
母型を彫刻する部分は上のゴテっとした部分。側面のツマミを緩めて上下に動かし縮尺率を変える仕組みです。
上が動力を伝える部分です。
動力ベルトが劣化すると、新品のゴムロープを適当な長さに自分で切って、切断面を合わせライターなどで炙って溶かし繋げて輪っかにします。
彫刻部。画面真ん中に下がっている針が彫刻ビットです。
銀色の四角い部分が母型を固定する台。
おそらくツマミ状の部品は上の針が付いてる円盤にも本来はあって、彫る彫らないのビット上下コントロールをしていた筈です。
「母型庫」。
母型は蝋原型とメッキの技術を応用した「電胎母型」(ソフビの電鋳みたいなもの)から、上記の「彫刻母型」へと進化しました。
展示ケースの上だけ見ていると、下にもある物を見逃します。
建物は免振化と同時に最近の主流である床下空調に換えたようで、オリジナルの構造では無いと分かります。
「万年自動活字鋳造機」と道具類。
母型を使ってモノタイプ活字を量産する機械です。動態保存の為にレストアはしたものの上手く稼働しないそうで、活字の原料を入れて溶かす部分は分解された状態です。
稼働部は安全の為に透明カバーが追加されました。
鋳造された活字は右から左に流れて行きます。
ゴムパイプは急冷冷却水用。
工場萌えの人達が喜びそうな光景です。
動かない主な原因は鋳造の原料に鉛(有害指定材料)を使えない事。
土日は機械担当者が居ないので、代替材料の事などをメガ姉さんに伝言しました。
以後、高・小のメガ姉さんが交互に車掛かりでやって来て色々質問され長話する事態に。
「輪転円圧式凸版印刷機」。
一階は模擬印刷所となっており、見学は柵の外から覗き込む感じで。
右はガードの透明板の光の反射でよく見えませんが「枚葉円圧式凸版印刷機」でしょうか。機械の手前側はインクのローラーです。
活字ケースを配置する台「ウマ」。
「坊ちゃん」直筆原稿(複製)
「写真凸版」のロッカー。各出版社で分けられてます。
右は「植字台」。
植字台の下には活版の「樹脂板」「金属板」も説明なく無造作に置いてあって油断なりません。
ここまでの実際の作業の流れは動画で見ると分かりやすいです↓
https://www.youtube.com/watch?v=jsxtOmKBJNQ
https://www.youtube.com/watch?v=UpXRCsTGU5E
https://www.youtube.com/watch?v=p4xuskVV1Jc
https://www.youtube.com/watch?v=7shMKY6uIlM
https://www.youtube.com/watch?v=i241rV85m7o
https://www.youtube.com/watch?v=ATYWAD-tgvE
https://www.youtube.com/watch?v=vvKsk-6AAWs
https://www.youtube.com/watch?v=QQOH9zXYSzg
「広辞苑」(初版)や、坊ちゃんが掲載された雑誌「ホトトギス」など実際に活版印刷された書籍が並びます。
「枚葉紙平台印刷機」推定1930年代。
私一人の為に動かしてもらってます。
動態保存の為にレストアの際に機械下に電気モーターを取り付けてますが、今は保護カバーが付けられた巨大はずみ車プーリに現役時代は天井から動力ベルトが繋がっていて蒸気機関の集中動力システムだった筈です。
メガ姉さん(高)が「階段から見下ろして観察するのもオススメです」と。
https://www.youtube.com/watch?v=u53wPYCtado
https://www.youtube.com/watch?v=g0BJIdf6sEY
空調や電源などの為に改修工事で追加された天井は撤去され、元々の彫刻意匠が見えます。
手で製本を行う道具。
製本用「糸かがり機」。
https://www.youtube.com/watch?v=7PjObDAhVZg
二階へ向かいます。
階段は幅や傾斜を現代の建築・消防法の合わせているので、建物の構造を切り取って新造したのが分かります。
2階の企画展示室。
「市谷の杜 本と活字館 開館記念展 時計台の修復・復元」をやっていました(会期終了)
https://www.youtube.com/watch?v=-zU-vvZJqaM
https://www.youtube.com/watch?v=jjSfsKwZ6CU
中心付近に博物館。
大日本印刷の用地が谷筋の中に沿ってるのが分かります。
竣工時。
赤い部分が現博物館。
改修工事の際に外されたオリジナルの内装類。
博物館化する際、文字の書体の復元、新たにデザインされたもの、壁やフローリング等の検討素材など。
奥の時計は現物ではなく、文字盤の再現の為の図案。
他のスペースは体験工房に成っており、各種グッズを購入する事もできます。
「ダブルループリング製本機」「角丸機」「穴開け機」。
「手締機」(右)
「箔押機」「カッティングプロッタ」「中綴じミシン」「アイロンプレス機」。
奥黒「UBプリンター」、赤「レーザーカッター」。
まだ非常事態宣言解除直後だった為に工房体験の選択肢が2つのみで、実際に機械を扱う栞製作を選びました。
1時間貸し切り状態で、ようやく11時で予約していたお客さんが3名(若い男性と熟年ご夫婦)来て、4人で体験しました。
「手動卓上活版印刷機」(通称テキン)を職員の方が操作手本を行います。
レバーを下げると、インクの付いた円盤からローラーにインクが転写されます。
今度はローラーから凸版にインクが移ります。
さらにレバーを下げると凸版から紙にインクが圧着される仕組み。
円盤の裏側はラチェット構造に成っていて、ローラーにインクが転写される度に少しずつ回ってインクが片減りしないよう工夫されてます。
大正時代の活版見本。
私はピエロの図柄台紙を選択。
赤文字が自分で印刷したもので、インクは乾くのに数日かかるのでキット袋に戻して持ち帰ります。
この後、紐で結んで完成。
一階にはカフェスタンドもあり、インク三原色C(シアン)・M(マゼンタ)・Y(イエロー)と黒をイメージしたドリンクや菓子を販売してました(定期的に変更)
半地下スペースや中庭、お持ち帰りで頂く事が出来ます。
半地下階から中庭に出てみます。
何の説明も無い棚。
竣工時の基礎だった松杭。
印刷所学習装置。
キューブを左画面外の台にはめると、その情報が文字や写真、動画でスクリーンに映し出されて楽しい&勉強に成ります。
「コツをつかむ」の語源は物事を為す核心を骨格に例えたものや、雅楽の笙の指孔の一つ「乞」の扱いが上手に成る、等の説がありますが、難しく考えず普通に骨で作った道具の扱いを掌握する事から来てると考えるのが自然な気がします。特ににネット上の説は検証無にコピペで孫引きされて広まってるので信用出来ません。
12時30分にも成ると、ようやくお客さんが続々とやってきました。
都合2時間半居ましたが全然お腹一杯になりません。
帰る時はメガ姉さん達が玄関で丁寧に見送って下って、またそこで立ち話に成ってしまうという。
https://ichigaya-letterpress.jp/
向こうが防研の入口です。
おまけ。
10月24日、新宿樽一で「復活!落語の会」があったので印度総督(本名)と行ってきました。
噺は勿論、桂扇生師匠です。
師匠、女性より酒より何より「わらび餅」が大好きで、差し入れ食べてお腹が一杯です。
宴会を前に高座で思い切りエネルギーを消費するしかありません。
演目は「看板のピン」と「宿屋の仇討」でした。
師匠はゴルフも大好きで、この日はZOZOチャンピオンシップが気に成って仕方がありません。
噺と噺の間の休憩が長いと思ったら・・・
松山英樹の優勝間違いなしと判断出来てから次の噺が始まりました。
お噺の後はお待ちかねの宴会です。
樽一のお水は「浦霞」の仕込み水(非売品)なのです。
ご時世柄、宴会の料理は一人分ずつ分けて使い捨てトレーで。
上列「鶏笹身のタルタル風」「鯨ベーコン辛子醤油和え」「鮮魚と鯨刺身盛り合わせ」。
左手前「生かき」「帆立の燻製」「脱皮渡り蟹の唐揚げ」「舞茸チーズ」。
右手前「豆腐の味噌チーズ焼き」。
お酒、後列「十四代 本丸」「天の戸 美稲」「飛露喜 特別純米」。
手前列「勝駒 純米」「九郎右衛門 純吟 スノーウーマン」「稲寿 純吟」。
三浦常務が集めた希少酒や、SNSでブレイクして山師が買占め転売するので市場から消え去り地元でも中々飲めない十四代や勝駒が普通にあるのがこのお店の恐ろしいところ。
中でも木曽藪原の湯川酒造店社長女将(旦那が杜氏)肝いりの限定酒スノーウーマンが素晴らしいです。
https://yukawabrewery.com/。見学は受け付けていませんが、砦跡見分のついでに蔵元外観を見に行った事があります。
この後、師匠の音頭で乾杯です。
勿論、お酒が二勺×6だけだと暴動が起きますので、二合徳利で「基峰鶴」(佐賀)やら、佐藤社長が浦霞の樽一用限定生酒など持ってきます。
師匠は各テーブルを巡ってます。
師匠曰く、ここは一番危険な一角です。
師匠が着てるのは樽一のTシャツ。
師匠専用の四勺お猪口。
最後も師匠の三本締めで落語の会は終了です。
が、常連は即二次会開始です。総督も引き続きお付き合い頂きました。
三浦常務がこれでもかとオススメの酒を持ってきます。
背景には初代の写真が。
季節柄「松茸の土瓶蒸し」も頂きますよ。
そして「ひやおろし」(秋あがり)の季節でもあります。
こうして師匠も私も翌日記憶を無くしていきます。
おしまい。
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