とあるミニコミ誌に書いた映評です。そのミニコミ誌をお読みになっている人は少ないと思うので、転載します。
「ブラジルのハラボジ」岡村淳監督
(2017年、ブラジル、53分)
今回紹介する映画は、簡単には観ることが出来ない映画である。何故、簡単には観ることが出来ないのかというと、監督の岡村淳さんは、ブラジル在住で、主に、ブラジルにおける日本人移民の今や、ブラジルの社会・環境問題をテーマに、たった一人で取材・編集し、それを記録映画にまとめられているが、長短合わせて50本近くあるその作品は、DVDやネット配信等で観ることは出来ず、年に数回、来日される際に、監督自身が、必ず、その上映に立ち会い、作品について解説し、観客の質問に答えられるという、いわゆるライブ上映方式を、あえて、採用されているからだ。そのかわり、来日中は、スケジュールが合う限り、要請があれば、全国どこへでも出かけていって、どのような規模であれ、ライブ上映会を、積極的に開催している。実に、アクティブな人なのだ。
岡村監督は、1958年生まれで、早大を卒業後、日本映像記録センターに入社し、「すばらしい世界旅行」等の番組ディレクターとして、活躍されていたが、1987年、フリーになって、取材で何度も足を運んだ、ブラジルに移住し、自主制作のドキュメンタリー映画の制作を、開始された。
私が世話人をしている「ラテンアメリカ探訪」で、その岡本監督を、お招きして、上映会を開催しようということになって、その時、その数ある自主制作作品の中から、私たちが選んだのが、「ブラジルのハラボジ」である。
「ブラジルのハラボジ」は、岡村監督が、日本植民地下の朝鮮から日本へ、そして、ブラジルへと、出稼ぎに出て、そのまま、ブラジルの地で、その過酷な生涯を終えることになった、三田ハラボジという朝鮮人移民に、1996年にインタビューした映像記録で、それに、日本語字幕をつけたものである。
三田ハラボジが、聞き取りにくい日本語で語る、その人生には、いろいろ、考えさせられるものがあった。日本では差別を受けなかったと、ハラボジはインタビューの中でいうが、しかし、今の日本をどう思うかと問われて、吐いて捨てるように、このままでは「日本は滅びる」と語る。その言葉の背後には、日本で受けた不当な扱いに対する怒りが、当然、あるはずだ。ハラボジは朝鮮人だが、今では朝鮮語も忘れ、日本語でしか、話せない。その思いを差別者・支配者の言語でしか話せないこと自体、きっと、もどかしい思いであったのではないかと、私は推測する。
その後、ハラボジは亡くなられたので、このインタビューは、一期一会のものになった。日本の現状を許せないという思いから、あえて公開に踏み切ったと、岡村監督は語る。
詳しくは、ネットで検索し、「岡村淳のオフレコ日記」を、ご覧下さい。
(土方美雄、年金では生活出来ない生活者)
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