北海道のブラックアウトについて「泊原発が稼働していれば避けられた」というご意見があるのだが、私はけっこう懐疑的である(あった)。
というわけで考えてみることにする。
まず、原子力発電は「ベースロード」であり、稼働中はずっと同じ電力を出し続ける。稼働・停止には時間がかかる。という特徴がある。言い方をかえれば「出力調整ができない」。
泊原発は65万キロワットの発電機が2基、102万キロワットの発電機が1基ある。
原子力発電はどうやっても24時間程度の起動時間が必要である(冷温停止からの場合)。
石炭火力発電もボイラーで蒸気を作っているタイプは原子力と同じで起動・停止には時間がかかる。が、出力調整が可能である。北海道電力は合計で225万キロワットの発電能力を有する。もちろん、いつでも全部稼働できるわけではなく、ボイラーもタービンも発電機もメインテナンスが必要なので、一定期間は止まっている。
石油・天然ガス発電はいくつかの種類があるが、ガスタービンを使ったコンバインドサイクルが主だと思われる。北海道電力は165万キロワットの発電能力がある。
ガスタービンは基本的にジェットエンジンと同じもので、起動・停止にかかる時間は数十秒〜数分以下と短い。ただし、コンバインドサイクルはガスタービンエンジンの排熱を使った発電(蒸気タービンなど)で、こちらはそれほど早い起動はできない。
水力発電は約120万キロワット分ある。うち、揚水発電は最大80万キロワット。ダム〜水路式の水力発電は短時間での起動が可能である。というか、もともと大規模石炭火力発電所の「調整能力」として水力発電があった、といっていい。
ただし、つい先日まで揚水発電所が故障しており(13日運転再開)発電量としては20万キロワットすくない。
もうひとつ、本州からの送電施設がある。こちらは青函トンネル内を直流送電していて、60万キロワット分を融通してもらう能力がある。
さて、電力事業は「電力を余らせる」ことはできない。電力が余ると発電機の回転が速くなって電圧・周波数が上がってしまう。そうなるとタービンや発電機、送電網まで故障しかねないので「出力調整」が必ようになる。つまり、電力が余らないように、足りなくならないように常に監視し、制御し、どこかで調整しなければならない。
逆に大きな負荷(いきなり大量の電気が必要になったなど)では発電機にブレーキがかかり、電圧や周波数が落ちる。これも避けなければならない。最悪の場合、どこかを停電させてでも供給する電圧・周波数を一定に保つ必要がある。
さて、地震発生時、電力消費量(深夜3時ごろだったので)300万キロワットのうち、停止した火力発電は約160万キロワットを担っていた。いきなり半分以上の発電能力を失ったということであり、他の発電所では需要を支えきれなかったということでもある。
ここで問題になるのが調整能力である。つまり、160万キロワットをいきなり発電・送電開始できる力があるか、ということだ。
水力発電の送電量がゼロだったら即時100万キロワットが送電可能だが、それでは足りない。本州からの受電能力が60万キロワットあるのでこれを足せばぎりぎりである。
足りない分は部分停電でなんとかなっただろう。が、この仮定はだいぶ無理がある。
泊原発65万キロワットが稼働していればどうだっただろう。300万キロワットの需要量は変わらない。そこで160万キロワットが抜ける、という地震による影響そのものは変化がない。
即時調整能力をもつのは水力発電と本州からの融通で、これも最大160万キロワットであったことも変化がない。
これが「原発が稼働していればブラックアウトは防げた」という主張に対する私の疑問の本質である。
泊原発が65万でなく、フルパワーの232万キロワットを出していたとしても、調整能力には変化がない。
が、泊原発が一部でも稼働していれば他の発電所が止まっているということでもある。石炭火力のように起動に時間がかかるものは無理でも、ガスタービン・コンバインドサイクル発電であれば数分で需要を賄える電力を供給開始できる。
その間は調整能力+大規模停電で間に合わせることもできただろう。
ブラックアウトは避けられた可能性が十分にある。
ただし、大規模停電を避けようとすれば、かえってブラックアウトを招く可能性がある、という現実にはかわりがない。
これは北海道電力に限った話ではない。
ここでもうひとつの要因がある。太陽光や風力といった「自然エネルギー」である。これらには「調整能力」がない。電力事業者の指令系統には入っていないので、これらの再生可能エネルギー発電施設は電力事業者の「調整能力」にとって「重荷」になっている可能性も十分にある、ということだ。
原発再稼働はすべてを解決する「魔法」じゃない。再生可能エネルギーが理想的なわけもない。
大規模蓄電施設はバッテリーを使うかぎり、そこに莫大なエネルギーが集中した状態を作り出すわけで、ある意味爆弾を設置するのと変わらない。
比較的小規模のガスコンバインドサイクルやディーゼル発電施設も「非・常用」発電施設群として調整能力になり得る。また、水力発電・揚力発電にもう少し目を向けてもよいのではなかろうか。
完全で安定な電力供給は自然破壊を伴わなければできない。よくよく考えなければ将来は描けないね・・・
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