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2016年05月08日17:07

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ルーム(Room)


  アイルランド出身の作家エマ・ドナヒューのベストセラー小説「部屋」を映画化。監禁された女性と、そこで生まれ育った息子が、長らく断絶されていた外界へと脱出し、社会へ適応していく過程で生じる葛藤や苦悩を描いたドラマ。第88回アカデミー賞で作品賞ほか4部門にノミネートされ、息子とともに生きようとする母を熱演した「ショート・ターム」のブリー・ラーソンが、主演女優賞を初ノミネートで受賞した。監督は「FRANK フランク」のレニー・アブラハムソン。7年前から施錠された部屋に監禁されているジョイと、彼女がそこで出産し、外の世界を知らずに育った5歳の息子ジャック。部屋しか知らない息子に外の世界を教えるため、自らの奪われた人生を取り戻すため、ジョイは全てをかけて脱出するが……。(映画.comより)







 たった17歳の少女を拉致・監禁し、重い扉に外から施錠したうえに、自分が来たいときに来て女性を抱くなんて、言語道断・・・そう思わせる設定なのですが、映画にそんな重苦しさはありません。冒頭から、賢そうで健康な男の子ジャックと若い母親ジョイの仲睦まじい生活が描かれ、彼らは床の絨毯を片付けてストレッチや運動をしたり、一緒にお風呂に入ったり、明日が誕生日となると「ケーキを焼こうね」などと言ったりしています。そしてその生活の端々から、一つの部屋に長年監禁されていることが、徐々にわかってくるのです。

こんな救いのないシチュエイションでも、暗くならないのは母が精一杯息子を愛しているから。「部屋」以外を全く知らない息子ですが、運動不足にならないように、またきちんと知恵をつけれるよう教育もできるかぎり施し、本当にこの場面だけ見てると、母親にこれだけ構ってもらえる息子って少ないのではないかと、幸せに見えてくるほどです。

監禁の張本人オールド・ニックは、もちろん悪い人ですが、それでも生活の必要最小限のものはきちんと差し入れし、「ジャック(息子)の具合が悪いから病院へ」と懇願しても連れて行ってはくれませんが、次の日に抗生物質を買ってきてくれるくらいの良識はある人です。「半年前から失業していて、生活が厳しいんだ」と、母親に当たる場面もあるにはありますが、「仕事は探しているの?」と聞かれて激高するのは普通の男でも充分ある態度。普通に暮らしている夫婦でも、薄給なのに「俺が稼いでる」と妻に当たる夫はいくらでもいるし、そう思えばオールド・ニックは監禁している女性をぶつわけでもなく、子供の誕生日にはリモコンカーを買ってくるあたりは、むしろ優しいなぁと思いました。だからと言って許されるものではないですけれど。

まぁそれでも、5歳になるまで一つ部屋しか知らないのはやはりいただけません。だんだんといろんなことに興味を持ち始めるし、テレビの中のことは全部ウソで、この部屋の外にはなにもない、なんて言う母親のウソも通じなくなってきました。この子の未来も考えて、母親は大きな賭けに出ます。「具合が悪いと言ってるのに病院に連れて行ってくれなかったから死んでしまった」そう言って泣きわめき、絨毯にぐるぐる巻きにした息子を「わからないところに捨ててきて。絶対に見ないでね」と念を押して男に託すのです。もちろん、息子と二人、訓練と予行演習はたくさん重ねました。車が止まったときに飛び降りることや、息を止める練習もしました。車から降りれたら全速力で走ることや、最初に逢った知らない人に手紙を渡すことなども頭に叩き込みました。

そうして、無事に救出された母子。でも、これはまだ物語の前半に過ぎないのです。これから7年ものブランクをどうやって克服するのか。社会にすんなり戻れるのか。これから新しい世界が開ける息子よりも、元へ戻れない母親の方が、より問題を抱えるようになってしまいます。両親は離婚しているし、母(少年にとっては祖母)は若い男(いい人だけど)と暮らしているし。父親は息子のことを認めてくれないし。「ジャックを見て」と言っても「すまない。見れないんだ」と返すばかり。比較的裕福に見える実家なので、誘拐犯の息子というのが許せないのかな、と思いました。子供に何の罪もないことなんですけどね。

もちろん、息子だって最初はすべてに戸惑っていました。でも、子供の適応能力の高さって、やっぱり大したものです。その上彼は賢い。壊れてゆく母の姿に戸惑いながらも、徐々に適応してゆきます。

いやらしいマスコミの姿は、やや紋切り型ですが、でも「裁判を起こす」とか、なんらかアクションを起こすにもお金がいるから、背に腹は代えられず母は特番にも出演します。バッチリメイクを施されて。でもやっぱり信じられないことを質問されて絶句。このレポーター、子供はいないのかしら、と私も思いました。

この映画、もちろん悲惨な経験をどう克服してゆくかを描いてますし、ラストは希望のある展開となっています。でも、個人的にはいろんなことを考えさせられるお話でした。まず、監禁されるなんて悲惨です。それはジョイに深く同情するのですが、じゃ監禁されずに生きてきた私がそれほど自由か?というとどうでしょう。毎日朝から晩まで働いて、職場と家を往復しているだけ。あんまり変わらんような気もします。場所が1カ所か2カ所かだけの違いのような・・・。また、部屋が一つじゃない息子は幸せか?というと、どうでしょう。両親が働いているので充分に構ってもらえず、学校が終わっても家に帰ることもできずに暗くなるまで学童保育に入れられてる。果たしてジャックより幸せでしょうか。監禁されてるのとさほどに違うでしょうか。なんだか考えてしまいます。

映画は彼が5歳のまま終わるので、密な母子のその後はわかりません。壊れかけた母親をいたわる息子は、きっと大きくなっても優しいでしょうし、母親だってきちんと持ち直す(語弊があるかな)でしょう。あんまり密だったらダメ、という意見もあるでしょう。でも、個人的には、この子はある意味幸せだったんじゃないかな、と思ったりもします。

あ、そうそう。オスカーを獲ったブリー・ラーソン、なんか見たことあると思ったら「ショート・ターム」でした。あの映画も好きだったなぁ。

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