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スピリチュアリティーの学際研究コミュの「高次元意識」に関する現代心理学による説明

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1.はじめに

 本稿の目的は、伝統的な学術文脈、特にポジティブ心理学を中心とした現代心理学における「高次元意識」の位置づけを考察し、心理学における超越概念研究の一例を紹介し、その限界と可能性を記述することである。まず、一般的、哲学的,心理学的な意識に関する定義を概観した上で、アサジョーリのトランスパーソナルサイコシンセシスと、マズローの至高体験に関し、「高次元意識」との関連を論ずる。その後、伝統的心理学の文脈における「高次元意識」研究の一例として、筆者のスピリチュアリティ研究を紹介する。

2. 哲学における「意識」

 「高次元意識」とは何かを考える前にまず、意識とは何かを明らかにしておくこととする。広辞苑によると、意識とは「? 認識し思考する心の働き。感覚知覚に対して、純粋に内面的な精神活動。? 今していることが自分でわかっている状態。われわれの知識・感情・意志のあらゆる働きを含み、それらの根底にあるもの。」である。つまり、高次な精神的機能全般を意味する場合と、その精神活動を主体が把握している状態という二つの意味を成す。 睡眠時、夢を見ているときの意識を問うような場合は、第一の用法であり、「意識不明」で意味する意識とは第二の用法である。
 哲学概念として意識を捉えた場合、唯物論的立場と超越論的立場では次のように異なっている。まず、唯物論的哲学においては、意識の生理的基礎は脳髄の活動であり、個人の意識は環境の主観的反映として時間的・空間的に限定すると捕らえる。一方超越論的哲学においては、「考える我」「意識一般」「超越論的主観性」などと呼ばれる意識の働きが、われわれの認識ならず、世界の構成原理の根底をもなすと考える。「高次元意識」を問題とする意識概念は、言うまでもなく超越論的な立場のものである。

3.心理学における「意識」
次に、伝統的心理学において、意識・無意識をどのように記述しているか概観することとする。まず心理学で前提となるのは、意識とは人間だけの主体的な機能であるという考え方である。無意識は、意識がない状態(意識喪失)あるいは、フロイトやユング理論で説明されるように、意識化されていない領域をさすという二種類の捉え方がある。また近年、変性意識状態に関する研究が一部盛んになってきた。意識変容とは、個人意識の境界を越えて、他者・他の生物や物質、共同体や人類、あるいは地球や宇宙との統合、一体感の意識、という超正常な意識体験をさす。意識変容は、主にトランスパーソナル心理学・精神医学の研究対象となる分野であり、伝統的学術領域ではまだ保守的な態度が見られるのは否めない。

4. 学術データベースにおける「高次元意識」の扱われ方
 この説では、「高次元意識」に関する学術研究の現状を文献検索によって明らかにすることとする。CINII並びにグーグルスカラーにより日本語で「高次元意識」とその関連語を検索してみた結果、 「高次元意識」「超意識」「トランスパーソナル意識」をキーワードとしてヒットする論文は皆無であった。それに対し、英語でキーワード検索してみた結果、「High (er) dimension(ioal) consciousness」はヒット数が0であったが、 「Higher consciousness」で3320、「Transpersonal consciousness」は146、「Cosmic consciousness」は620の論文がヒットした。日本における「高次元意識」に関する学術研究はほとんど見当たらない状態である。一方欧米では「高次元意識」に関し、Higher consciousnessとして一定の学術研究の蓄積があることが明らかになった。
また、この検索でヒットした関連語のうち、「宇宙意識」に関する論文が多数報告されていた。宇宙意識とは、バック(1902)によって提唱された概念である。彼によると、意識は次の3層からなる。1.単純な動物意識 2.人間性の集合意識 3.宇宙意識cosmic consciousnessである。宇宙意識とは、「突然訪れる情動的効用と知的認識」として詳細に説明されている。ここで、宇宙意識と「高次元意識」と呼ばれるものとの類似性が示唆される。

5. トランスパーソナル心理学のモデル

現代心理学においては、唯物的に意識を捕らえる立場が主流である。人間性心理学ではスピリチュアリティという言葉への言及はないが、マズローの自己超越的自己実現や欲求階層説でB認識などとして、根源的な価値を問うような、高次の意識状態との関連が記述されている。祈りやスピリチュアルヒーリングの実証研究で知られるドッシーは、この意識状態を「拡張した非局在意識」と呼ぶ。また、現代トランスパーソナル学の旗手であるウイルバーはスピリチュアリティを定義し、その発達段階を論じている。しかしウイルバー理論はいまだに伝統的な学術分野ではまだ正統的な地位を得ていない。トランスパーソナル心理学は、実証研究の蓄積がないまま伝統的心理学からはやや亜流という扱いを受け、アメリカ心理学会でもいまだに分科会として認知されていない。
しかしながら、トランスパーソナル心理学の伝統的理論には、「高次元意識」研究に有益な理論が存在する。人間の可能性を追求する方向で発展してきた人間性心理学、さらにポジティブ心理学といった流れの中で「高次元意識」の現象を説明しようとするモデルを、以下に二つ論じることとする。

5.1 アサジョーリのモデル
 ユングの無意識モデルは、個人的無意識と、元型といったすべての民族・文化に共通な集合的無意識とで成り立つ。イタリア人精神科医でユングの弟子であるアサジョーリは、ユングの無意識概念をより詳細に記述し、上位無意識・中位無意識・下位無意識に分類した。このうち、上位無意識とは、超意識とも呼ばれる。フロイト心理学における無意識領域は抑圧された過去の遺産といったイメージが付きまとうのに対し、アサジョーリは無意識の輝かしい側面を強調した。つまり人類が、神・超越者・宇宙・秩序などと呼ぶ真善美の源となるような意識がすべての人の内奥に存在しているとし、それを上位無意識、その中心をトランスパーソナルセルフと呼んだのである(図1)。

5.2 マズロー理論
欲求階層説や自己実現理論で知られる人間性心理学の巨匠マズローは、至高体験を高次の成長に不可欠のものであると記述している。その特徴は、自然や他者との一体感、能動性、創造性、自発性、天真爛漫、今・ここの意識、自然発生的な無欲,無私、至福、恩寵、喜び、驚き、感謝であり、至高体験は一種のポジティブな変性意識状態である。自己実現には二段階あり、通常の自己実現(self-actualization)は自己の能力を十分に発揮していく状態をさすが、自己超越的な自己実現(self-realization)は、恒常的な至高体験とでも説明されるような意識を通常の意識状態と同時に経験する(プラトー)ことをマズローは記述している。

6. ポジティブ心理学におけるスピリチュアリティ研究
トランスパーソナル心理学におけるこのような研究は、現代のポジティブ心理学における美徳や人格を表わすスピリチュアリティ研究に暗黙の影響を与えていると考えられる。そこで、高次元あるいは超越的次元の意識研究の近接領域として、近年学術論文が急激に増加しているスピリチュアリティ研究を取り上げることとする。
スピリチュアリティは、わが国の「スピリチュアル」ブームにおいては、サイキックな能力やオカルト的現象に人々の関心が向いているが、経験科学の文脈においては、高い精神性を表わすことが多い。それに対し、認知心理学という科学的心理学の流れから起きてきたポジティブ心理学は、元米国心理学会の会長セリグマンが率先して進めている正統派心理学の一分野であり、圧倒的な研究資金を得て米国では現在最も注目されている研究分野である。ポジティブ心理学では、スピリチュアリティを人格の強み・美徳(智慧・勇気・慈愛・正義・節制・超越)の一領域として捉える。美徳としてのスピリチュアリティは超越性の下位概念に位置する。超越性とは、より大きな宇宙とのつながりを創生したり意味を提供したりするような強さを指す。超越性の5つの下位概念は1.美の評価 2.感謝 3.希望 4.ユーモア 5.スピリチュアリティである。そしてスピリチュアリティとは「人生におけるより高い目標や意味に関する一貫した信念を持つこと」と定義されている(Peterson et al., 2005)。
筆者はこのような文脈で青年における健康的なスピリチュアリティ教育を行ってきた。次説では、その理論と実践を紹介する。

7. スピリチュアリティ教育

7.1 スピリチュアリティ3因子モデル
 筆者はまず、アサジョーリのサイコシンセシス理論に基づき、彼の臨床チェックリストを参考にスピリチュアリティ測定尺度を作成した。その探索的因子分析によって抽出された3因子により、健康的なスピリチュアリティを図2のようにモデル化した。抽出された3因子は、意志・喜び・気づきの3因子であり、それぞれ次のような項目群から構成されている。「」「」「」。これらは喜びを中心とし、「選び取る喜び」「沸きあがる喜び」「降りてくる喜び」と表現できるものである。
このスピリチュアリティ測定尺度は、SOC尺度・本来性尺度・フロー体験チェックリストとの高い相関により、首尾一貫感覚・本来性・フロー体験の各概念との類似性が示唆されている。すなわち、自己や運命に対する信頼・楽観的な態度・自分らしくあること・集中した自我没入状態との関連である。

7.2 教育プログラム
 本教育プログラムは、ホリスティック教育の理念(Miller,1988)に基づき、岡野によるコスモロジー教育(岡野,2002)、アサジョーリによるサイコシンセシス(Assagioli,1965)、WHOによるライフスキル教育プログラム(WHO,1994)などを参考に構成した。
ホリスティック教育とは、人間性心理学からトランスパーソナル心理学の成果を広く取り入れて発達してきた教育学の一分野である。Millerは、教育にスピリチュアルな次元を取り入れることを不可欠とし、「魂のケア」としてオーセンティシティ(本来性)を最重要課題としている(Miller,1988)。また、自己・他者・環境や超越次元とのつながりをスピリチュアリティにおける重要な側面であるとし、その意識化や回復を具体的目標としている。
 コスモロジー教育とは、岡野守也によって提唱された、生きる自信回復をモットーとした教育実践である。それは、後述のサイコシンセシスや、仏教心理学における唯識理論などを組み合わせた「つながりコスモロジー」を、理論と体験によって学んでいくものである。まず現代宇宙理論・量子力学など最新科学による標準的な理論仮説を根拠として講義し、さらに、サイコシンセシスのイメージ療法や論理療法的テクニックなどを応用したワークにより深いレベルでの「つながりコスモロジー」理解を促す。
 サイコシンセシスでは誘導によるイメージ療法の有効性が知られているが、トランスパーソナルな技法でありながら、まずパーソナルな統合を目指すところにそのプロセスの健全性と一般への応用可能性を見ることができる。サイコシンセシス、つまり精神統合へのプロセスとして脱同一化という技法がある。それは、通常同一化している部分的な自己を客観視していくことにより自己の統合を促し、本来の自己への気づきや関係を回復していく技法である。
ライフスキル教育とは、健康教育分野においてWHOの精神保健部が先導し提唱している実践的な健康増進教育である。WHOによると、ライフスキルとは、「日常生活で生じるさまざまな問題や要求に対して、建設的かつ効果的に対処するために必要な能力」(1994)である。実際的な対人関係スキル向上に力を入れた教育プログラムであり、内面の変化を行動かするためのスキル学習である。
クラスでは、コスモロジー教育・サイコシンセシス・ライフスキルプログラムを中心に、エンカウンターグループワーク・プロジェクトアドベンチュアーまた、ハコミなどトランスパーソナルな技法から選ばれた、瞑想・エッセーライティング・各種ボディーワーク・イメージワークなどの体験ワークが行われる。このような実践の効果は目覚しく、至高体験といった好ましい「高次元意識」状態を安全な形で経験していくことが報告されている(尾崎、2008ほか)。

8. 「高次元意識」研究・実践に関する限界と可能性
伝統的学術分野における「高次元意識」研究は少数であるが、肯定的無意識領域としてポジティブ心理学におけるスピリチュアリティ研究にその一端を見ることができる。
「高次元意識」研究・実践における大きな課題は、そのリスクマネージメントであろう。トランスパーソナルな技法は、本質的な変容と人間性のさらなる発達を目指しているが、自我肥大や自我没入による逃避といった危険性をはらみ、客観的な評価が困難な状況の中で玉石混交の状態である。本稿では、サイコシンセシスを基にしたスピリチュアリティ教育を紹介した。これは高次元意識に対する気づきも含むが、目的はあくまで日常生活に則した心身の健康である。この実践によって、気づき・意志・喜び3因子のバランスの取れた健康増進・高次の成長が確認されている。
「高次元意識」研究・実践は、危険性を含むからこそ、伝統的学術分野の保守性を重んじ、蓄積された研究から積み上げていく姿勢が不可欠である。伝統分野での研究者との対話をとおしてこそ、信頼性の高い「高次元意識」研究が発展していくものと考えられる。 対立や排斥ではなく、互いの立場や役割、限界を認識しつつ対話が可能になっていくことを期待している。

コメント(2)

大変勉強になりました
(特に後半)
質問
アサジョーリ亡き後、サイコシンセシスはどうなりましたか?

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