小説　空の高さから海の深さまでコミュの空の高さ⑭

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「これが僕らの始まり」
　都会の夕日が池をキャンパスにしてオレンジ色を写している。
　美優は静かにたまに頷きながら僕の話を聞いていた。
「なんかドラマみたいだね。あっ、冷やかしとか疑いとかじゃなくてね。」
「話にするとそうだね。でも、僕らはただそこにいてお互いを好きなって。他のカップルとなんら違いはないんだ。ただそこにいて恋をした、それだけ。」
　僕は立ち上がり背伸びをした。
「そうだね」
　美優も立ち上がり背伸びをする。
「なんかとてもいい話を聞いた後に悪いんだけどお腹空いちゃった」
　照れたように笑い舌をだす。
「あはは、ほんとだね。もうこんな時間か。そろそろ帰ろっか」
　僕が言うとごめんねと言い頷いた。
「続きはまた今度聞かせて。あっ、君に今度はやめたほうがいいかな」
「なんで？」
「だって、絶対連絡してこないんだもん。私、また寝てるところを起こさなきゃいけなくなる」
　真面目な顔して僕の反応をうかがっている。
「さーね。今度は見つからないように寝よっかな」
「なにそれ～」
「ふんふふ～ん」
「やな感じだっ。じゃあ今度はよかったら展望台に連れてって。見てみたいんだ。波の音しかない世界。それに流れ星！！」
　僕が帰る方向とは逆の方向に少し走ってくるっと振り返った。
「約束だよ！」
右手をあげ小指を立てる。
「誰も話すなんて言ってないよね？」
　いつかと同じ台詞で返す。
「け～ち」と笑いながらいい手を振って美優は走っていった。
　ホントは探していたのかもしれない。こうやって話を聞いてくれる誰かを。
　しかし、同時に不安もどこかにあった。言葉にすることで何かを失いそうで。
　そんなことを考えながら僕は家路に着いた。
　右手の小指を空に向かって立ててみた。
　もう時期、梅雨がやってくる。