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アンチ(反)・デマコギー(嘘)コミュのMPJより転載

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文/青山繁晴(独立総合研究所 代表取締役社長)

 日本のマスメディアへの国民の不信は、ひとつには、これではないか。わたしは新米の事件記者のとき、先輩記者たちがわぁわぁと話しているのを横で聞いて愕然としたことがある。妻をDVで殺した男が、車に閉じこもった。記者たちは車を取り囲み「出てこい」と叫んでいた。ところが男が意を決してドアを開け、いちばん近くの記者に掴みかかると、すべての記者がその仕事仲間を見捨てて一斉に逃げたという。「中にいたときは弱っちい奴に見えてさ、安心して怒鳴ってたら、そいつが出てきただけで友だちを見捨てるんだから」と自他をともに笑いとばす先輩をみて、『俺はいつか記者を辞めるだろう』と思った。

 トヨタ車の「急加速」をめぐる報道ぶりを見つつ、わたしの脳裏に真っ先に浮かんだのは実は、この記憶だった。

 海外から日本の何かが貶められるとき、マスメディアはまず反撃ではなく、萎縮する。帝国の時代の日本が果たしてそうだっただろうか。敗戦後の精神性に深く根ざした癖ではないだろうか。

 日本のもの作りを貶めたい国、企業は世界に多い。多いのは、日本製品が世界を席巻した証拠であり、むしろ当たり前と受け止めてよい。これまでの事例で言えば、萎縮でも反撃でもなく、ただ無視するだけでもよい。

 しかしトヨタを含む最近の事例には、悪質な執拗さが増している。その原因を安直に語ってはいけないが、欧米のひとびとと接しての印象を申せば、一昨年のリーマンショック以降、アメリカ経済も欧州経済も中国頼みとなり「アジア人に支配される」という恐怖と嫌悪感が強まっている。しかし中国に物は言えない。現実に中国をアテにしているし、何か言えば反撃も凄まじい。一方、日本はもはや頼みとしないし、何を言っても反撃はない。そこで日本のもの作りや食文化などを攻撃してうっぷんを晴らす、という気配がある。

 トヨタ車の「急加速」問題も、その側面が色濃い。わたしは関西TVの報道番組で、プリウスのブレーキは電子制御に課題があるだろうと指摘した。トヨタの副社長が「フィーリングの問題」と発言したのは間違いだ。トヨタはまた、フロアマットや米国製アクセルペダルの不具合による急加速については、対応が遅れた。

 しかし、こうしたトヨタのミスに乗じて偽計の行われていることは、ひとつの新しい事件のおかげで、ようやく鮮明になってきた。

 それは、アメリカ西海岸サンディエゴの高速でプリウスを運転中の男性が「アクセルが戻らない」と警察に通報し、パトカーが前に出て止める画像が全世界に流された一件だ。

 このプリウスの車載コンピューターをトヨタが調べると、アクセルとブレーキが交互に踏まれスピードを調節しつつ走っていた跡が歴然と残っていた。米政府担当官と下院議員も同席しての調査だったから、米政府と議会の結論を待たずに米国メディアは一斉に、この運転者が破産していて、トヨタの補償金目当てに自作自演したという説を流している。

 すると日本のメディアも安心したかのように、この件を「疑惑」として積極的に報じ始めた。しかし疑惑が事実とすれば、事件が起きるには、日本のメディアのこれまでの報道ぶりも一役は買ったとも言える。

 なぜか。下院で公聴会が開かれたとき、ロンダ・スミスという女性が、レクサスを運転中に急加速してギアをニュートラルに入れても速度が落ちなかったと涙ながらに証言したとき、日本のメディアは、その泣き顔を繰り返し伝えつつ、さしたる疑問も差し挟まなかった。ギアがニュートラルになった車は、エンジンの回転を車輪に全く伝えられないから、空気抵抗と道路の摩擦で速度は必ず落ちるはずだ。しかしトヨタの母国である日本で疑問を提示したのは、はばかりながら前述の報道番組でわたしが述べただけであり、世界の受け止め方は「日本も認めた」となった。

 トヨタ車を使い「急加速」の演技をすれば儲かると考える御仁がアメリカに出てきてもおかしくはない環境が、こうやって作られた。

 ところがメディアはこうでも、日本国民にはまともな人がちゃんといる。自動車部品メーカーの社長が、安全を確保したうえで実際にレクサスを使って公平な再現実験をし、わたしに報告メールをくださった。

 なぜマスメディアにはそれができないか。

 強きには、まず萎縮する、その精神構造があるからだ。日本は民主国家であるから、メディアは国民に似ている面もある。その敗戦国の民であることから脱皮するように、果敢に自ら確かめてフェアな反撃を準備する国民がちゃんと出てきている。ここに希望がある。
(了)

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