ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

懐かしい未来ネットワークコミュの「シューマッハー思想に学ぶ」報告

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
サティシュさんのイベントに向けた学びの会(第3回)
「シューマッハー思想に学ぶ」

2007年3月1日木曜日19時〜21時
下北沢のらぷらす研修室3にて
講師:尾関修
参加者:25名
主催:懐かしい未来ネットワーク

■お話いただくポイント
1.シューマッハーの思想から何が学べるか、未来にどのように活かせるか?
2.(1)シューマッハーとサティシュのつながり
(2)尾関さんとシューマッハーやサティシュとのつながり(サティシュさんの思想に共鳴していったいきさつ、シューマッハー・カレッジで学んだこと・感じたこと、翻訳の苦労話など)

■ 尾関修(おぜき おさむ)さん
『君あり、故に我あり:依存の宣言』の翻訳者
1942年東京生まれ 長野県北佐久郡御代田町在住。
シューマッハー、福岡正信、サティシュ・クマールを手がかりとして「資源・環境制約時代の国際経済」に取り組む。
東大教養学部の経済学演習で、玉野井芳郎(1918-1985)教授に師事。
17年間、三菱総合研究所に奉職。
現在は、横浜商科大学商学部貿易観光学科 教授 (1991年から)
所属学会:国際経済学会、景気循環学会、エントロピー学会、 
関わっているNGO:地球の友ジャパン、自然住宅・住まい方ネットワーク



----------------------------------------------------------------------
尾関修さん講演緑
----------------------------------------------------------------------

1.尾関さんとサティシュの関わり、本を翻訳した経緯
1)出会い(1992年)
○尾関さんはバートランド・ラッセルの本をたくさん読んでいたので、サティシュが欧米を徒歩で縦断したのはラッセルに刺激を受けてのことだった話を知り、サティシュに親近感を持った。
○初来日したサティシュに会う。
○サティシュが編集長を務める雑誌『Resurgence』から記事の翻訳の了承をサティシュに求める。快諾をもらい、尾関さんのHPにアップロードを始めた(最近はあまり増えていない)。
http://www2.ocn.ne.jp/~ozeki/

2) シューマッハー・カレッジの菜食料理の短期コースに参加(02年9月)
 * 大学が休みの間という制限があったので、選択肢はあまりない。
 * 9月に開催された菜食料理のコースへ参加。
 * 鈴木大拙の道場で料理人をしていたアメリカ人の先生。
 * 道場で実際に使っていたオリジナルのレシピを紹介。
 * 午前中は禅の話と料理の話。午後は料理の実習。
 * 尾関さんは料理は苦手だが、面白かった。
 * 「The Tassajara Resipe Book / Edward Espe Brown」という本を回覧。

3)シューマッハー・カレッジの「Design for Life」という短期コースに参加(03年3月)
 * バイオミミクリの考え方など。
 * オーストラリアのエコビレッジ、クリスタル・ウォーターズの勉強会。
 * サティシュから、「You are therefore I am」の翻訳許可をもらう。出版社を探してくれと依頼を受ける。

2.「You are therefore I am」翻訳作業。
 (この経緯は『君あり、故に我あり』の訳者あとがきに詳しい)
○シューマッハーの「Small is beautiful」を訳した酒井懋(つとむ)さんの協力。
 * 酒井さんは引用文の原典を探してくれるなどさまざまな協力をしてくれた。
○酒井さんに紹介してもらった、唯称寺住職新作博明さんの協力。
 * ヒンズー語やサンスクリット語の音のカタカナへの置き換え。
 * 地名のチェック。
○家族の協力。
 * サティシュの「You are therefore I am」も、一種のファミリー・プロジェクトだった(娘さんが口述筆記、奥さんが校正)ので、翻訳もその同じスタイルを採りたいと思った。
 * 息子さんが翻訳の手伝い、奥さんが読みやすく校正。

3.サティシュとシューマッハーのつながり:仏教経済学
○シューマッハーの「Small is beautiful」に記されている‘仏教経済学’という考え方に惹かれたサティシュがシューマッハーに会いにいく。
○シューマッハーはビルマを訪れたとき、そこに根ざしている‘仏教経済学’に気づく。
○例えば日本の江戸時代や、『懐かしい未来』の舞台ラダックも、仏教経済学で成りたっている。GNHのブータンも。
○インドで、その‘仏教経済学’が崩壊していることを目の当たりにする。
○つくりだされた貧困から経済を立てなおすことに取りくんだのはガンジー。
○仏教経済学とガンジー経済学のつながり。
○シューマッハーは「Small is beautiful」執筆に取りかかる。
○副題の'as if people mattered' に当てられた「人間中心の経済学」という和訳が、自然や動物をないがしろにするという誤解を招く恐れ。シューマッハーの言うPeopleは「人間」というよりは、「民衆」「庶民」。だから、「民衆、庶民中心の経済」という思いだった。
○そうして書かれた「Small is beautiful」にサティシュは感銘を受ける。

4. E・F・シューマッハーについて
○1911年、ドイツに生まれる。第一次大戦中に幼少期。20年代、敗戦ドイツのインフレ期に成長。
○29年、世界大恐慌の年に大学入学。シュンペーターに師事する。
○台頭してきたナチスを逃れイギリスへ。ケインズに師事する。
○第二次大戦が始まり、そのままイギリスへ亡命、マルクスの勉強を始めるが、戦時中は敵性外国人ということで収容所に。
○戦後、オックスフォード大学の任命を受け、ドイツ復興に奔走。
○ケインズ経済学とマルクス経済学の融和を目指すが、うまくいかない。
○イギリス炭坑公社に入り、エネルギー源としての石炭の可能性に注目。日本にも来ており、三池炭坑を訪問するが、安全性に関するデータが危険性が高いことを示しているということで、入坑を拒否。その直後に爆発事故が発生した。データを重視する人であった。
○後にイギリス首相となるハロルド・ウイルソンに請われて、英植民地だったインドの経済研究チームに参加。
○ガンジー経済学に出会う。
○ケインズが亡くなったときに弔辞を読んだ。そのようにケインズの一番弟子とも言える存在だった。シュンペーターとケインズを師としていたが、ビルマやインドでの体験を経て、考え方が大きく転換した。『スモール・イズ・ビューティフル』は、近代経済学批判の書。
○長生きしていれば、マルクスが『経済学批判』を書いた後、『資本論』を書いたように「自然資本論」とでも呼ぶべき体系的な経済学を打ち立てることもできたかもしれない。
○伝記によると、シューマッハーはシュヴァイツァー博士に傾倒していた。シュヴァイツァーは、アフリカで医療活動に従事、「生命への畏敬」という概念に到達し、世界平和への活動家として、ガンジー、マザー・テレサと並び20世紀のヒューマニストとしても知られる。シュヴァイツァーとガンジーへの傾倒が、サティシュとの結びつきの契機かもしれない。
○ケインズ経済学は、マネー中心。魔法の経済。この大きな問題を掘り起こさない限り、世界は救われない。

5.尾関さんとシューマッハーとの出会い
○1973年、石油ショックのとき、当時三菱総研にいた尾関さんは、エネルギー源としての原子力について調査依頼を受けるが、原子力発電の危険性と高速増殖炉の非現実性などを報告書で指摘したところ、依頼主であるに政府からお叱りを受け、上司とともに頭を下げに行く羽目になった。特に高速増殖炉に関しては、「これはいかん。大変なことになる」との思いを強くし、ソフトエネルギーへの傾倒が始まる。また、シューマッハーに習い、石炭の利用を訴えるレポートも提出。当時話題になっていた『ソフト・エネルギー・パス—永続的平和への道』(エイモリー・ロビンズ著)の分散型エネルギーの発想に刺激を受ける。
○ちょうど「Small is beautiful」がベストセラーになっていた年。
○そこには「原子力」という章も含まれていて、ITはITでもIntermediate Technology(中間技術)、中小企業のための経済、という考え方などに、尾関さんも感銘を受ける。
○2004年、国際経済学会という、ほとんど近代経済学の集まりといっていい会で尾関さんは、「シューマッハー経済学と国際経済論」という論文を出す。大学では、「Small is beautiful」をテキストとして活用している。

「シューマッハー経済学と国際経済論」
http://www.fbc.keio.ac.jp/jsie/17-3_Ozeki_full.pdf 

「シューマッハーの国際経済論」
http://www2.ocn.ne.jp/~ozeki/schu.html 


質疑応答
○鎌田さん:シューマッハー思想を現代にどう活かせるか?
●尾関さん:シューマッハーはわかりやすい。
 いわゆる一般の「経済学」と違って、現実の生活にリンクしている。
「お金」が中心の経済から「人」を中心とした経済へのシフトという考え方は、必ず現代の中で活きてくるはず。民衆の生活に戻って考えていかなくてはならない。
ただシューマッハーは、一部にマルクス経済学がわかっていないと理解しにくい部分もある。

○つるたさん:メイン・ストリームの人たちとの共通の言葉をどうやって持つか?メッセージをどのようにメイン・ストリームの人たちに伝えるか?
●尾関さん:三菱総研に務めてはいたが、自分自身はメイン・ストリームではなかった。
課長から外されたりもしたし、ほとんど窓際のような状況。
降格されたのは、東京ディズニーランドの建設時のアセスメントを、「海を埋め立てるのはよくない」として断ったため。おかげで、尾関さん一家はディズニーランドの入場券が福引で当たったにも関わらず、「お父さんが降格させられたきっかけ」として、券を捨ててしまう。
●娘さん:当時は悲しかった。
●尾関さん:苦労したんですよ(笑)。組織の中にいると難しい。
 別にメイン・ストリーム側にどうこうしようとがんばったわけではない。
 ただ、つい最近、住んでいる御代田町で、嬉しい出来事があった。ゴミ焼却炉を建設して軽井沢など周辺の町からゴミを受け入れ、収入を上げて地域振興しようなどという計画があり、それを推進する町長がいた。対抗馬として選挙の18日前だったが候補者を立て、見事1,000票以上の差をつけて勝った。新聞記事には選挙運動で奮闘した家内がインタビューされて載った。町長の力は大きい。変化のためには政治が重要。

○大畑さん:77年の原子力に関する調査の結果はどうなったのか?
●尾関さん:提出した報告書は受けいれられず、調査から外された。こういうことはシンク・タンクでは駄目、限界がある。やはりNPO、NGOの皆さんにがんばってもらわないと。
○大畑さん:大学で教えていて、シューマッハーに対する学生の反応は?
●尾関さん:わかりやすいとはいったが、やはり若い学生には理解するのが大変なようだ。
 難しいのではなく、彼らが送っている生活とあまりにもかけ離れているから。
 ラダックのDVDを見せるなど、何らかの予備知識を与えることが必要。

○勝俣さん:少なくとも国民に選ばれた人たちがコントロールするという一点において、
まったくそういった手の届かない市場の論理だけで動いてしまう新自由主義よりは、ケインズ主義はまだましに思えるが?
●尾関さん:言いたかったのは、金利をどうこうするとかで、国が経済をコントロールできるというのは幻想にすぎない、ということ。いずれもマネーの経済学である。
 新自由主義vsケインズ主義ではない対抗軸としてのシューマッハー経済学を、具体的にどうやって表出させていくかが問題ではないか。
○勝俣さん:『スモール・イズ・ビューティフル』を大学の教科書として使っていると聞いて、勇気づけられた。
●尾関さん:しかし大学ではやはりメイン・ストリームが強い。自由な研究は弾圧され、なかなか果たすべき機能が果たせない。

○湊さん:シューマッハー経済学を私たちにとってわかりやすいものにするためには、その価値観を反映した指標が必要なのではないか?
●尾関さん:今、そういうものはいろいろ出てきているように思う。経済の本当の指標は、水や空気や土であって、「マネー」ではない。
○湊さん:サティシュさんが編集長をしている雑誌「Resurgence」の意味は?
●尾関さん:よみがえり、復活。何のよみがえり、復活かといえば、それは懐かしい未来ということなのかも。

○森田さん:実際問題、太陽エネルギーなどの代替資源でやっていけるものなのか?
●尾関さん:やっていけます。
『ソフト・エネルギー・パス—永続的平和への道』(エイモリー・ロビンズ著)という本をお読みください(ちなみに、同書は現在絶版で、Amazonでは、7500円という高値が付いている)。
 たとえばソーラーパネルもプラスチックを使わないとできないから、材料としての石油を否定することは非現実的だけれども、エネルギーとしてなら、十分、そこに頼らずにやっていけるはず。

○鎌田さん:国際協力の仕事をしていると、シューマッハーの影響が今も生きているのが感じられる。例えば、ネパールではシューマッハーが設立したITDG(中間技術開発グループ)が、大規模な発電ダム開発計画の代替案として、マイクロ水力発電の普及を進めている。

しかし、日本では適正技術の考えが省みられることは、ほとんどなかったのではないか。そんな中で埼玉県の小川町では、NPOふうどがバイオガスによるゴミを循環し、消費者と生産者のつながりを生み出すことに取り組んでいる。日本政府が策定したバイオマスの国家計画は、従来型の考えを抜け出せず、相変わらず大規模なプラントを大きな企業に作らせる考えであり、経済的にもペイしない(補助金頼み)し、お金も地域外に流出してしまう。ところが、シューマッハーの適正技術の考えを深く学んで作られている小川町のバイオガスプラントは、地域の材料や技術を上手に活用して地域の人たちが中心になって作っているため、経済的にも充分成り立つ。お金や物質、エネルギーが地域内で循環し、地域の経済と社会が少しずつ豊かになっていく。

去年嬉しかったのは、バイオガスに関する報告会が小川町で開かれ、そこに全国から人が集まったことだ。ようやく日本でも、こうした地味な適正技術の有効性が評価されるようになってきたのかもしれない。本当に持続可能で豊かな社会を創っていくために、シューマッハーの思想は日本において、これからますます大切になってくるのではないか。

フィードバックシートに記された参加者の感想
○国際的な公正や開発の問題にシューマッハー経済学が寄与しうるということが興味深かった。
○企業人だったころの体験談が面白かった。
○家族や知人の力を借りて本の翻訳を完成させたというのが興味深かった。
○いろいろな側面や視点を、みんなのやりとりを含めて、聞けてよかったです。
○内容的には知らないことばかりでしたが、尾関さんの淡々としたお話がとてもおもしろかったです。
○いろいろな分野でこの地球や世の中をよくしていこうという方々が、集まって分かち合うことで、社会を変化させるという側面と意識を変化させるという側面の両方に、大きく働きかけられたらと思います。

(記録:中川哲雄、加藤久人、鎌田陽司)

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

懐かしい未来ネットワーク 更新情報

懐かしい未来ネットワークのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング