芸術の日本　美術・評論を中心にコミュのルノワール×セザンヌ ―モダンを拓いた2人の巨匠

オランジュリー美術館オルセー美術館コレクションより世界巡回展

“ルノワール×セザンヌ ―モダンを拓いた2人の巨匠”

開催概要は、
『本展は、フランス、パリのオランジュリー美術館が、ルノワールとセザンヌという２人の印象派・ポスト印象派の画家に初めて同時にフォーカスし、企画・監修をした世界巡回展です。
ルノワールの代表作《ピアノの前の少女たち》やセザンヌの代表作《画家の息子の肖像》をはじめとし、２人の巨匠による肖像画、静物画、風景画、そして、２人から影響を受けたピカソを加え52点の作品から、
モダン・アートの原点を探ります。
また、この世界巡回展はオランジュリー美術館とオルセー美術館の協力により、ミラノ、マルティニ（スイス）、香港を経て来日し、三菱一号館美術館が日本唯一の会場となります。
ルノワールとセザンヌの交遊と合わせて、自在で多様な表現が生み出されるモダン・アートの誕生前夜に立つ２人の巨匠の、卓越した芸術表現を存分にお楽しみいただけます。』公式HPより

(作品の撮影は一部を除いて撮影可能でした)

写真①
左)ピエール＝オーギュスト・ルノワール（1841―1919）
右)ポール・セザンヌ（1839―1906）

ルノワールの絵は展覧会の他、写真やネット画像で何度も目にしていましたが、今回の展覧会で、「実物を観ることの大切さ」をあらためて実感しました

・絵の大きさはその場で実見しないと感得できない
・作品のマチエール、タッチは写真・ネット画像では分からない
・作品と対面して鑑賞することは、実際にその人に会って会話することに似ている

写真①上右
ピエール＝オーギュスト・ルノワール《ピアノの前の少女たち》1892

作品の大きさ、タッチ、マチエールは実物と対面してはじめて実感できますね

写真①下左
ピエール＝オーギュスト・ルノワール《アルジェリア風景、ファム・
ソヴァージュ（野生の女）峡谷》1881

明確な輪郭線の古典主義回帰前の作風、ルノワールの風景画ではこれが一番好きでした

写真①下右
ピエール＝オーギュスト・ルノワール《ピアノの前のイヴォンヌと
クリスティーヌ・ルロル》
1897

写真②上右
ピエール＝オーギュスト・ルノワール《長い髪の浴女》1895
写真②上左
ピエール＝オーギュスト・ルノワール《風景の中の裸婦》1883
写真②下右
ピエール＝オーギュスト・ルノワール《花瓶の花》1898
写真②下左
ピエール＝オーギュスト・ルノワール《ガブリエルとジャン》　1895―96 65×54cm

ルノワールの次男ジャンとルノワールの妻アリーヌのいとこガブリエル・ルナール
ガブリエルは、ルノワール家で乳母兼メイドとして働きました

写真②中
ピエール＝オーギュスト・ルノワール《横たわる裸婦(ガブリエル)》1906 67×160cm　大きな絵です
(撮影不可ネット画像借用)

微笑むガブリエルはルノワールとの親密さをうかがわせます

『楽しい絵しか描かない』が
口癖だったルノワールの
絵画は幸福感に満ちています

写真③上左
ポール・セザンヌ《わらひもを巻いた壺、砂糖壺とりんご》1890-1894

写真③上右
ポール・セザンヌ《セザンヌ夫人》1885―95

モデルが疲れてポーズを崩すと
『リンゴは動かないぞ！』と叱りつけたエピソードで知られるセザンヌ

独得の緊張感あり、静物のモチーフが放つ存在感に圧倒される

セザンヌと日本美術・雪舟

写真③中左
ポール・セザンヌ《赤い屋根のある風景(レスタックの松)》1875―76

日本の伝統的絵画に記号化されたように見られる“枝垂れモティーフ”(画面の上縁から木の枝あるいは葉が垂れ下がっているモチーフ)

“枝垂れの松”が描かれています

【参考】写真③中右
尾形光琳　紅白梅図屏風
左の白梅が枝垂れモチーフ

『日本の絵画空間においては、画面の枠の規制はそれほど強くない。実際、描かれた「部分」によって描かれていない「全体」を暗示し、喚起するためには、画面の外にも等質の空間が続いているという暗黙の諒解が必要である。光琳の梅の樹は、いったん画面の枠によって切られたように見えながら、そのままずっとつながって、再び画面のなかに戻って来る。日本の絵画において「枝垂れモティーフ」が成立する契機は、絵画空問と外部空問とのこのひそかな連続性にあると言ってよい。それは、西欧における「完結性の美学」に対して、「連続性の美学」とでも呼ぶべきもののひとつの現われにほかならないのである。』「日本美術を見る眼東と西の出会い　高階秀爾」より

写真③下左
ポール・セザンヌ《赤い岩》　1895-1900頃

この作風は、直感的に雪舟の「秋冬山水図」冬景を想起させます

【参考】写真③下右
雪舟　秋冬山水図　冬景　室町時代

異なる性格、作風の2人は実生活でも仲が良く互いに尊敬する関係
だったそうです

今回の展覧会であらためて実物を
観ることの大切さに気づきました

★★★★★

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