芸術の日本　美術・評論を中心にコミュの蔦屋重三郎と平賀源内と鈴木春信

大河ドラマ『べらぼう』の英語タイトル
“UNBOUND”とは「解放された」「とらわれない」という意味

さて、『吉原細見』の編集を任された蔦屋重三郎は、序文を当時売れっ子の戯作者、平賀源内に依頼するが…

源内は、「けど、マジメな話、俺じゃねえほうがいいと思うんだけどな。あのさ、オレ、男一筋なのよ」
重三郎も、はっと気づいて「平賀源内っていえば、有名な男色じゃねえかよ…」と、気付きがっかりするが…　重三郎の奇策で依頼成功

1774年　蔦屋重三郎は男色家としても有名な平賀源内に、『吉原細見』序文で吉原遊女の評論を書かせるというサプライズで話題をさらった

源内は1766～73年頃、鉱山開発で訪ねた秋田久保田藩の江戸屋敷で家臣の小田野直武に蘭画の知識を与えた
直武から藩主の佐竹曙山にも伝えられ「秋田蘭画」が誕生する
また、源内は、1760年代、同じ町内の絵師鈴木春信と交流し錦絵の技法開発に関わった
こうして、世界初のカラー印刷“錦絵”が誕生する

戯作者としての源内は、1760年代にベストセラーを発表する

平賀源内　『根南志具佐』『風流志道軒伝』　1763年刊行

『根南志具佐(ねなしぐさ)』のあらすじは、
地獄の閻魔大王が江戸の人気アイドル、女形の瀬川菊之丞に恋をして、手下の龍王に菊之丞を召し捕るよう命じる
龍王はその役目を河童にふり、河童は若侍に変じて隅田川に舟遊び中の菊之丞に近づく
河童の願いを聞いて，菊之丞が水中に飛びこもうとすると、親友の荻野八重桐が身代りになって死んでしまう

(1763年に人気女形の荻野八重桐が舟遊び中に溺死した実話を荒唐無稽な物語にしている。瀬川菊之丞と平賀源内は男色関係にあった)

この二代瀬川菊之丞は、鈴木春信の「風流艷色歌ゑもん」中錦　二十四枚組物　1770年　にも登場する

色道修行のため一寸法師のようになった豆男・真似ゑもんの諸国巡礼物で、後半十二図は吉原が舞台

吉原の郭の縁側に座る三人
左に花魁、人気女形の二代瀬川菊之丞が花魁の妹分に手を出している

それを、真似ゑもんが桜の木の上から覗いている
菊之丞の振る舞いに憤慨した真似ゑもんが、菊之丞に向かって屁をこいている

盟友平賀源内のためか？

蔦屋重三郎と平賀源内の関係は、1779年に源内が死去したため、1774年の『吉原細見』でのコラボ以外記録には登場しません

しかし、戯作や、秋田蘭画、錦絵誕生などに関与した平賀源内の足跡はまさに“UNBOUND”そのものであり、蔦屋重三郎と繋がる時代精神だった

写真①　蔦屋重三郎(横浜流星)と平賀源内(安田顕)
写真②　鈴木春信　錦絵　
雪中相合傘、夜の梅
写真③　鈴木春信　春画　中錦　二十四枚組物　風流艷色歌ゑもん
吉原で遊ぶ、瀬川菊之丞の振る舞い(花魁の前で妹分に手を出す)に憤慨した歌ゑもんが、桜の木から屁を菊之丞にかます
右下は陰間茶屋での情交、よく見ると魔羅が二つ