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意味不明小説(ショートショート)コミュのぼくですぼくです

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コミュ内全体

「皆、机に顔を伏せろ!」
 怒号と紙一重の山根センセーの号令、クラス全員が一斉に机に顔を伏せた。これから犯人探しが始まる。

「田中の給食費を盗んだ奴、手を挙げろ」

 嫌な間、見なくても分かる。黒板の上に架かった時計の針がもたついるのが。
 犯人は、わかっている。クラスの全員が同じ意見だろう。犯人はきっと、貧乏ネタで皆を笑わせるのが得意な和田君。今まで一回も給食費を持ってきたことないのに、今月だけ持って来ている。怪しすぎる。でもきっと和田君が悪いんじゃない。和田君はいい奴だ。和田君には借りがある。
 美術の授業で僕の緑の絵の具が無くなったとき、和田君は自分の持っているガリガリの緑のチューブをグイグイ絞って僕のパレットに乗せてくれた。結果、緑が足りなくなった和田君の山は夏なのに秋の紅葉になってしまって、咎める美術の平井ジイに、「俺、皆より常に先を見てるから」って言い訳して、「ふざけるな」って怒鳴られて、その後も延々と小言を食らっていたのを、黙って見ていてごめんなさい。
 和田君、多分今、心臓バクバクだろう。山根のビンタは、打たれた3日後に急激に腫れるため、『三日殺し』と呼ばれている。和田君がビンタで吹っ飛ばされるのを見たくはない。当然三日後にほっぺたをぱんぱんに腫らせて登校してくるのも見たくない。そりゃあ、悪いことをしたら罰を受けるのは当然なんだろうけど、今回のことはきっと、そんなに悪気があってやったことじゃないと思う。多分真相は、和田君が皆より先に教室に帰ってきて、給食費が落ちてたのを見つけて、ついついランドセルに入れちゃったとか、なんかそんな感じだと思う。まぁそれも悪いことではあるんだけど、でも、あんな強烈なビンタを食らうのは可哀そうすぎる。
 (和田君、心配しなくていいよ)
 僕はゆっくりと右手を挙げる。このあと確実に執行されるであろう刑、山根の三日殺しを想像し、手がぶるんぶるん震えている。心臓のバクバクが耳たぶの先に行き着いて、じゃっかじゃっか鳴ってうるさい。

「もういい皆、顔を上げろ」
 
 恐る恐る顔を上げる。山根、唇をワカワナと震わせている。キレてる?ヤバい。あのテンションで本気のビンタされたら、三日と待たず確実に即死だ。
 「覚悟を決めなくちゃ」と自分に言い聞かせた瞬間、山根が意外なことを言った。
「このクラスに犯人は居なかった。ひょっとしたら俺の勘違いだったかもしれん。いや、俺の勘違いだ。田中玲奈の給食費、ちゃんと届いていたみたいだ。念の為、職員室に戻ってもう一度確認してくる」
 急かされるように、ガラガラ勢い良くドアを開け教室を飛び出した山根、僕はさっきまでの心臓の高鳴りを抑えられず、熱に浮かされたように、後を追う。
「センセー」
「ん?なんだ?」
 山根、目が真っ赤だ。泣いてる?
「どうして、ですか?僕、手を挙げたのに」
「ああ、分かってる。もういいんだ」
「いや、教えてください。どうして先生は皆に嘘ついてまで僕を庇ったんですか?」
「俺は庇ったりしていない。庇ったのはむしろお前等の方だろう」
「え?」
「まさか、全員挙手するとはな。本当にお前らって奴は、ガキのくせに……思わず熱くなっちまったじゃねえか」
 ポタリ、一粒廊下に落ちた。慌てて後ろを向く山根、僕は色々と驚いたが、すぐに一つの疑問が浮かんできて。
「センセー、全員って、女子もですか?女子も全員手を挙げたんですか?」
 山根は困ったように笑いながら。
「アイツ、女子に人気無さ過ぎだろ」

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