真説魏志倭人伝研究会メンバーズコミュの日本書紀

日本書紀で１つトピックを作りました。

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今年、成立から1300年を迎えた国史の原点『日本書紀』。古代を解き明かすツールとして、おそらくこれ以上のものはないのではないでしょうか。それなのに、この歴史書自体が「取扱注意」であるというジレンマ。

今年の勉強会は『日本書紀』を劇薬ではなく良薬とするにはどう扱ったらよいかを考えていきたいと思いますね。

[3] mixiユーザー 01月18日 19:52

　トピックの頭の画像、『最新調査でわかった「日本書紀」の真実』は、出たばかりの宝島社のムックです。関裕二先生が巻頭特集を担当しています。

　関説をざっと紹介。

その①　日本書紀は天皇ではなく藤原氏のために編纂された

　日本書紀は、易姓革命による王朝交代を地でいく「中国方式」と異なる方法で歴史を記すが、王朝の連続性を描きつつも、その中に優れた王（天皇）と、そうでない王（天皇）を組み込んでいる。これはそもそものヤマト王権のありかたに由来している。ヤマトの王は祭祀王であり、複数の有力な豪族、貴族たちが政権を回していた。その中で中心的な役割を担う勢力が変わったことが、日本書紀編纂の動機となった。物部氏や蘇我氏などの旧豪族が没落し、藤原氏が一人勝ちしてきた時代に日本書紀は編まれているのである。

　この構図を如実に語るのが平城京の構図である。東北の隅に東に出っ張った「外京」は藤原氏が占拠し、興福寺や春日大社を建立して天皇の宮を見下ろしているのである。藤原（中臣）鎌足が蘇我氏を倒して英雄となったと記している日本書紀の書きぶりは、推して知るべしであろう。日本書紀に悪い王（天皇）が描かれているのも、天皇家を絶対視していない証左である。鎌足は乙巳の変を起こす前に、頼りない軽皇子（孝徳天皇）に見切りをつけて中大兄皇子に鞍替えしている。皇族を天秤にかけているのである。

　日本書紀が成立したのは、鎌足の子、藤原不比等の全盛期でもあった。

[4] mixiユーザー 01月18日 22:57

（関説その７までつづきます。）

関説その２　蘇我氏は悪者ではなかった

　藤原氏（鎌足）を英雄とする一方で貶められたのが蘇我氏だった。日本書紀は蘇我蝦夷があたかも皇帝のように振舞っていたことを糾弾している。しかし実際には屯倉（天皇直轄領）を増やしたり官僚機構を刷新して中央集権体制の基礎を築いたりもした。乙巳の変以降の大化の改新の内容も、実は蘇我氏の時代から始まっていたことだったし、日本書紀は大化の改新の中で行政区画の「評（こおり）」に代わって「郡」ができたとしているが、藤原京から発見された木簡によって699年の時点でもまだ「評」であったことが確認され、日本書紀の記述に潤色があることが明らかとなった。

[5] mixiユーザー 01月18日 23:28

関説その３　山背大兄王滅亡事件の真相

　乙巳の変の入鹿暗殺シーンで、中大兄皇子は入鹿が王族を滅ぼし、今まさに天皇の位を奪おうとしていることを誅殺の大義として掲げたことになっており、王族を滅ぼしたとは2年前に厩戸皇子の子である山背大兄王の一族を滅ぼしたことを指している。しかし山背大兄王は蘇我氏の血を引く皇子であり、入鹿が滅ぼす動機が見当たらない。山背大兄王を滅ぼしたのはむしろ藤原氏（中臣鎌足）だったのではなかったか。梅原猛は『隠された十字架』の中で、８世紀に権力の頂点に上り詰めた藤原氏は一族が危機に陥った時には法隆寺を丁重に祀っていたが、これは鎌足が山背大兄王を追い詰めたからで、怨霊を封じ込めるためであると推理している。

　日本書紀によると、乙巳の変のあとで、蘇我系皇族の古人大兄皇子は「韓人が入鹿を殺した」と発言している。しかし暗殺シーンにそれらしき人物は見当たらない。このくだりも謎に満ちている。

[6] mixiユーザー 01月18日 23:42

関説その４　聖徳太子は実在する人物だったのか

　ところで、その山背大兄王の一族の墓は発見されていない。この一族（上宮王家）は実在しなかったのではないかという説もある。そもそも、その父親である聖徳太子（厩戸皇子）はあまりにも人間離れした都市伝説ばりの話に満ちている。しかし、このことは中大兄皇子や中臣鎌足、ひいては藤原氏にとっては都合の良い筋書きなのであった。実際には蘇我氏は時代を先読みし、渡来人のネットワークによって大陸や朝鮮半島の制度や文化を取り入れて律令国家の建設に邁進していた。これを藤原氏が破壊したとするわけにはいかないので、蘇我氏の功績を厩戸皇子という架空の聖人にそっくり負わせ、蘇我氏は悪者であるかのように仕立て上げ、クーデターの正当性を書き残さなければならなかった。また、そのストーリーの完結のためには聖徳太子もその子孫の一族も、滅んだことにしなければならなかったのである。

[7] mixiユーザー 01月19日 00:59

関説その５　ヤマトの最初の王は物部氏だったのか

　神武天皇が東征してくる前に、すでにヤマトの地にいたのは物部氏の祖である饒速日命であった。もともとのヤマトの王は物部氏だったのである。神武東征後も、物部氏は祭祀と軍事を担うという、ほとんど最重要な氏族であるにもかかわらず、藤原氏全盛の日本書紀の中では扱いが軽い。その屈折した恨みは『先代旧事本紀』に結実する。『先代』は偽書説も叫ばれたことがあったが、現在は序文以外の評価は見直されている（序文は後世の付け足しとみられる）。

　ところでヤマト建国時期から６世紀末までを古墳時代と呼ぶ。古墳時代の終焉は、まさに物部守屋が蘇我馬子との戦いに敗れたころ（587年）であり、前方後円墳体制とは物部氏体制とも言い換えることができる。

　実は『先代』では蘇我氏を糾弾していない。むしろ蘇我氏と物部氏の真の関係性が描かれている。排仏運動を展開したと思われている物部氏も実際には寺を建てているし、蘇我蝦夷の母親は物部氏である。

[8] mixiユーザー 01月19日 11:22

関説その６　大津皇子は謀反を起こしていない

　朱鳥元年に天武天皇が病没すると、大津皇子が謀反の角で死に追いやられた。大津皇子は天武天皇の皇子で、草壁皇子とは異母兄弟。大津の母と草壁の母（鸕野讃良皇女＝持統天皇）は姉妹で、鸕野讃良皇女は我が子である草壁を天皇にと考えており、天武天皇も草壁を皇太子として朝政をとらせていたが、天武12年には大津皇子もともに朝政をとるようになる。草壁は天武天皇の崩御後3年たっても即位することなく亡くなった。その後、母である鸕野讃良は孫の軽皇子が成長するまでのつなぎとして持統天皇として在位する。

　『懐風藻』（8世紀半ば）によると大津皇子は文武両道に秀で、人間性も素晴らしく人々に支持されていた。実は日本書紀の記述でも大津皇子の評価は高い。一方で草壁皇子についてはあまり記されていない。大津皇子の謀反の話も具体性に欠けている。また、万葉集によれば、大津皇子は天武天皇の殯の最中に抜け出して伊勢神宮に下ったというが、その話は日本書紀にはない。皇子が宮を抜け出して東国に向かうというエピソードは壬申の乱のときの天武天皇と重なるが、そのときの天武天皇（大海人皇子）は兵を集めてヤマトへ攻め込んだのであった。

　藤原不比等は持統天皇に引き立てられた人物である。大津皇子が謀反の角で死を賜ったというくだりは、どうも不都合を隠そうとしているように見て取れる。実は天武天皇が皇太子に指名したのは大津皇子で、鸕野讃良皇女と不比等はクーデターを起こしたのではないか。

[9] mixiユーザー 01月19日 11:36

関説７　名門大伴氏の衰退は藤原氏の陰謀

　大津皇子と草壁皇子は石川郎女を巡って三角関係でもあった。石川郎女は恋多き女性として万葉集にも登場する。万葉集は歌集ではあるが、藤原氏主導の正史である日本書紀とは別の、敗者の歴史を暴露する資料でもある。「石川」という地名は蘇我氏の拠点の一つであり、「石川郎女」は蘇我氏を示す隠語だったのではないか。

　石川郎女は万葉集の中で大伴田主と歌の応酬を繰り広げているが、同じ古代豪族である蘇我氏と大伴氏とのなじりあいを示しているようでもある。大伴氏は多数の伴部を率い軍事職を務めてきた名門で、その全盛期は継体天皇を擁立した大伴金村の時代であろう。蘇我氏や物部氏が主役となる前の時代である。その後もしぶとく生き残った大伴氏だが、大伴家持は石川郎女のような隠語を使いながら万葉集によって藤原氏を糾弾していたのかもしれない。9世紀においても大伴氏は藤原氏によって失脚させられていく。

[10] mixiユーザー 01月19日 11:42

　以上、『最新調査でわかった日本書紀の真実』より、関裕二先生の説１～７を読んでみました。ほとんど「推理」のレベルでとどまっているような部分も多いですが（関先生の話はだいたいいつもそうです）、全体を流れているのは、要するに『日本書紀』を「藤原氏による正史」として読んでいかないと真実は見えてきませんよ、ということだと思います。そのための証拠をいくつか挙げているというところでしょう。もっと詳しく知りたければ関先生の著書を読めばよいでしょうか。その１に書かれているように、ヤマト王権というものの統治機構としての性格を詳しく知ることも鍵になりそうです。

[11] mixiユーザー 01月20日 10:41

藤原不比等が死ぬ前に、
どうしても完成させたいということも、
うなずける説ですね。
大伴から物部・蘇我へ、
そして最終的には、藤原氏へと、
勝者の記録なのかもしれませんね。
そうすると、大王・天皇は、
やはり、単なる祭祀を司る一族でしかなく、
実権は、藤原氏という
豪族が握っていたと言うことですかね？
まあ、それがヤマト王権の本質では。

[12] mixiユーザー 01月20日 12:24

>>[11]
天皇を権威にして豪族たちで回していくというヤマト王権のありかたは、卑弥呼の共立と安易に結びつけてはいけないと思いますが、中国と違った日本的な考え方を感じさせます。

その中で実力で天皇に君臨した天武天皇の特異性は目を見張るものがあるものの、それすらも結果的に利用してしまった藤原一族って、いわば日本のプロデューサーですね。

それと、こういう書き方をすると藤原氏が陰謀をはたらく悪者のように思われますが、そうでない面ももちろん多かったと思います。

[13] mixiユーザー 02月01日 18:24

意外なことに、イザナギとイザナミって記紀からなんですね。万葉集には出てこない。万葉集で創造神に位置するのは大己貴命（大国主）と少彦名で、風土記系にもイザナギ＆イザナミはほとんど出てこない。丹後国風土記の逸文に、かろうじて、イザナギが天橋立を作ったという話が出ている程度だというんです。

日本書紀では創造神である他に、履中＆允恭紀に淡路の土地神として登場するようです。つまりもともとは地域性の強い（海人族の）神様であったものを、国生み神話に再編成したということですね。両神が最初に作ったのが淡路島であるというのは、その反映ですね。

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