セレンは染色体損傷を予防し、細胞機能を守る。動物においてセレン欠乏は脳機能障害および循環器系、肝臓、筋肉の障害を生じ、胎児の発育に影響を及ぼすと考えられる。疫学的には、セレン欠乏は特定の癌に関連しており、実験症例では、セレン摂取量がRDA(1日所要量)より多く、毒性量より少ない場合に発癌が抑制されることが示されている。ラットを用いた動物試験では、セレンの十分な補給が腫瘍の形成を妨げるということが証明された。セレンを補充しなかったコントロール群のセレン欠乏動物では全例に癌が発症した。統計学的に、癌の発症は土壌のセレン含有量が低い地域において著しく多い Dr. Steven Levine(カリフォルニア州アレルギー研究グループ創始者)はセレンが化学物質に対するアレルギーおよび過敏反応に拮抗することを報告した。
Dr. Brad M. DworkinらはAIDS患者12例の血漿および赤血球中セレン濃度を検査し、栄養障害と合併したセレン欠乏症が多いことを見出した。検査した患者12例の59%において、極端な血漿セレン低値が観察された。また、患者の約24%には極端な 赤血球中セレン低値も認められた。著者らは、一般に栄養障害、とりわけセレン欠乏症はAIDS患者において多く見られ、セレン補充などの特殊栄養療法がAIDS治療の重要な一部でなければならないということ示唆している。