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半蔵門かきもの倶楽部コミュの第八十九回 文芸部A 王都作「その気が失せる香り」(テーマ選択「紅茶」「避妊具」「幻聴」)

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このシリーズ前回の話https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1982973493&owner_id=9270648

登場人物
≪主役は先輩≫
先輩(29):
板垣さゆり(本名で活動)。兄弟に揉まれて育ち、気が荒く短い傾向があり。現在は台東区在住。
八王子生まれ川崎育ちのベテラン手前ダンサー。業界ではオバサンの自覚あり。92年12月初めの偶数日生まれへびつかい座
私(25):
白石虹(こう)。若干優柔不断で泣き虫な中堅ランクのダンサー。墨田区在住。仙台市青葉区出身。SNSでの動画チュートリアルとスクール通してフォロワー総計20万人は居る。元々口数少なく、過労と各種の嫌がらせによりしばらく休んでいたが、本作で活動復帰。97年10月12日生まれ天秤座
アイツ=奴(26):《話に上る》
観田光星(かんだ・こうせい)。人懐っこすぎて相手に依存しがちな面が裏目に出るとズルくなる、要注意人物の一人で、虹の仕事仲間。動画プロデューサー兼泡沫アレンジャー。大田区在住。プロフの申告では96年7月生まれ蟹座
先生(50):《話に上る》
小此木マホ(麻穂)。横浜市在住のレジェンドダンサー兼複数のイベントホールオーナー。さゆりと虹憧れの人。
公式サイトによると72年11月24日生まれ。業界内では毎年この日にバースデーフェスを開くことでも知られる。極度の寂しがりで顔が広い射手座

あらすじ
(後輩(虹)が某ジュニアアイドルグループの専属振付師に採用されたことをダンス業界の先輩の一人・板垣さゆりに報告。先輩からLINEで「祝いたいからランチしよ!おごるから」と返信が来て再会)


====================


(さゆりside)
2022年11月、ある晴れた日の待ち合わせ当日、
黄金色がかったセミロングのストレートヘアと付けまつげで薄めのチークを入れたアラサーくらいの女性が1人、西武新宿近くの歩道を足早に進む
突然コンビニの前で、聞こえないはずの田舎の防災放送で鳴りそうなポワーンとした独特の音を聞いた気がした
"あれ?!何で八王子の爺ちゃん家の防災放送が?東京のしかも新宿で???"
"たぶん幻聴"と訝しながらも
「気のせい」と、そのまま店へ向かった

(虹side)
やっとのことで待ち合わせ場所に着いた。JR新宿東口から慣れない通りを数年ぶりに歩くとどこへ向かってるか分からなくなる。
店の名前は「2D CAFE(ツーディーカフェ)新大久保店」。各種のメデイア宣伝の反響か、まだまだ好況みたい。私はオープン当初にSNSフレンドと1度だけ行ったきりで嫌いじゃないのにまた行く気にはならなかった。
そんな店内の日当たりのいいスポットはインスタとかの写真映え攻略向けに明るい。特に白色の反射率凄い!それを証明するように、流行りもの好きな高校生や大学生、中には着飾ったオバからバアチャンたちも…
先に店の奥まったコーナーに居たさゆり先輩に真正面から挨拶。私への祝いと
「会ってくれてアリガトーうれしい顔
「それはこっちですよ!」
「他の子たちアタシに気遣ってか、なかなか会えなくなっててね考えてる顔ほら少し遠慮系の」
と、まあ。
ついでに先月、髪型を思い切ってキャラメルブラウンのベリーショートにして、予想を上回る好感触で浮かれてる気持ち伝わっちゃうかな?どうだろう?

続きのネタにするつもりで来た私らは、
ロングステイなしで、それぞれワンドリンク注文
先輩はバナナジュース、私はココア
私は最初紅茶にしようか迷ったけどチョコ推し♪
そして先輩はこだわりがあってか、
先に店員が差した太めの黒ストローを外し、代わりにあらかじめ持ち込んでた太めの黄ストローをイン(セット)
本人は
「これのほうがしっくりくる」
…らしいなぁ。私には思いつかないわ
私がココアのスマホ撮影終わって話へ

ここで互いの近況とこの業界であるある?な危険なメンバーの洗い出しへ。まず近況から
「七日くらい前?かな、公園で走り疲れてベンチに座ったら横に誰かのスマホが・・・」
「えっ!?」
「それも曲かけっぱで汗」
「で、それどうしたの」
「キモくてそのまま置いてきた。ちょっと触った手洗ったよ」
「そか、おつ」
「先輩お疲れでも最近雰囲気良くなりましたよね。イイことありました?」
「う〜ん…体リセットしたくて毎日プチ断食してたかな。それもあって見た目変わったかも。コウこそ最近調子どう?」
「まだダルい。今飼い猫ロス。それで野菜食べないかも。これガチでどげんかせんといかんくなってる」
「正直でイイ。こっちは一昨日からずっと背中から腰が…明らかに筋肉使いすぎほえーイターイ」
「野外ワークショップとスクールの授業し過ぎですよ。今日も朝レッスンしてきたって、、、もうちょっとオフ増しで」
「コウの気持ちよぉく分かるけど、ここ何年もオファー続いてるしアタシまだ自分のキレイなスタジオ持ててないから、踏ん張りどころ!」
「あ〜、そこで。頑張るのも分かりますが…」

次、洗い出しに移って
「最近悪いほうで気になる奴いた?」
「最近っても今年の夏の話、暑すぎて飛び込んだ漫喫で冷えちゃった体をそこの近くの銭湯で温めて上がったロビーで何故かド変態なガキ(推定18歳)に絡まれて…」
先輩はいかにも嫌そうな表情を向け
「前に言ってたアレか。後で一緒に飲んだ光星があんたを勝手にジャッジしたっつー
「そう!で、9月中頃にまた仕事で会って、作業明けに入ることになったカフェの席で、私ら女メンバー居るのに構わず「かわいい女の子を安い居酒屋誘って軽い眠剤ドリンクに混ぜてカラオケボックスへ連れて俺らの(ここから自粛)」「仲間のAといつもみたく録音ブースで作業してたら隣で偶然キモい癖出してるトコ見ちゃってさぁ〜〜〜むふっ」って、しかもAに聞こえる声で言ったんだよ。最低…それでさ、あの夏の飲みの席で私に「絡み酒」って・・・」

ちなみにこの回の仕事は、ヴォーカリストのバックダンサーちゃんたちの振付と少し演技指導。簡単で超速な動きを皆早く覚えたので予定より1時間くらい早く上がれたはずが…その場の流れで路面展開のカフェに入った。これはそこでの話

先輩、眉間に皺寄せながら
「人外。以上」
「先輩〜あせあせ(飛び散る汗)他に何か言ってくださいよ」
「じゃとにかくソイツと繋がってる手段全部BANして二度と会わなくするか、アイツのハラスメントに対応できる弁護士(男・30代)紹介しよか?」
「是非!!」
結果、観田光星の性悪な本性がバレ、2人とも一気に悪寒が走ったと語り合う。
加えて先輩から
「アタシたち直接モラハラもセクハラもされてないにも関わらず、普段から何かと途中で姿を消すとこも含めてイメージダウン?それと、なにげに反社までいかなくてもヤバみタップリ野郎連中と仲良いし、もう関わるな」
と。

気晴らしにスマホを取り出し、ダンス業界レジェンドの小此木マホ(麻穂)先生の最新シャム猫連作動画で補給しながら2軒目に行くカフェ探し♪
見つけた小さなところで、2人ともブラックコーヒーとパンケーキをオーダー。いつになくがっつきながら揃って完食し追加

「さっき視た先生の動画、いつ見ても明るくセクシーうれしい顔♪♪」
「そこにニャー共のしなやかすぎる仕草がもう!ぴかぴか(新しい)
私、すこし改まった感じで先輩に
「で、また楽しさガチで壊して悪いんですが……」
先輩はすぐ納得した表情を私に向け
「もしかしてまたまたまたモンスター野郎共?」
「お察しの通りです…グスン」
「あの白髪混じってきたツーブロック?」
私は小さく頷いて
「チョロチョロ耳にした噂で、マホ先生の元カレって聞いてますたらーっ(汗)今月の24日、先生の今年のバースデーフェスに絶対来るから顔会わさなくていい知恵ください」
「うーん、何があるか?、、、!そうだ電球ぴかぴか(新しい)
前もってソイツの着きそうな時間帯を押さえてそこを避けるか、毎年リザーブしてそうな所に近づかなければ、幸運が来て何とかなるかも!そこに頼もしい仲間が居たら絶対に離れないで!
あとこれはアタシの話で悪いけど、学生の頃、登校途中に吊り革持ってがら空きの右側の腰周り狙われてちっ(怒った顔)むかっ(怒り)
「板垣先輩もされたんですね…乙です」
先輩は1回だけ頷き、私(虹)の前でその時のポーズをリプレイしてくれた。具体的には足を横に肩幅まで開いて少し前屈みにし、右腕を肘ごと上げ、右手を首の近くまで寄せ、手から腕を上下に勢いよく振り払った。そこに加えて
「お前らにモテてどーすんだ!散れ散れ散れぃ! ってなあっかんべー☆彡
呆気に取られた私に先輩は
「駅員に突き出したら初めは取り合ってくれたけど、あっちも慣れるとのらりくらりかわし始めて…正直悔しくてやるせなかったがまん顔
私は言葉を失った。あまりに理解の外で……
「まぁ、大昔の小田急だからねボケーっとした顔
ちょうどその直後に私が追加したパンケーキ到着

「ま、最悪のことブロックするのはぶっちゃけ女性側に仕込める避妊具がガチ。鉄板ねウインク
そこまで言っちゃうか…でもその案はガチで使える。私は半ば呆気に取られスマホを入れているファーのポーチをガサゴソ・・・
古くて使えなくなったソレが見つかった。中で押しつぶされとても薄く固くなっていた

ここから無自覚な相手から干渉される原因を探り、
「まず向こうはどうしても例えイヤでもあたしら含めた女そのものに反応するんだよな🤔」
「あの…私なんかの何に勝手に感じちゃうんでしょう?探ってみてもいまいちつかめなくて考えてる顔
「そうだなあ……コウの場合"シュッとして可愛い"とこかな。それと案外知的なとこ。そのギャップに奴らが萌える。元はと言えば勘違いしまくる愚か者不届き者がウジャウジャ居すぎ!ド贅沢ほざきやがって全くけしからん勝ち誇り
「手近なアイテムなら胸元隠して、電車の中でも快適でいられるって話題になった小さい布まだ売ってるかな」
早速ググって「ある!」先輩「お気に入りへうれしい顔

とことん話し合った結果、「その気にさせないニオイ」を"近くに限って"振りまくアイデアに行きつく。そしてまた近い時期に再会を約束し解散


――――――――――――――――――――


数日後、新宿NewmanのNOSE SHOP新宿で再会し、数時間後に同6丁目のTHE KAORI BAR・FINCAへ。目的はもちろん「何のニオイが効くか」を試しに。店員さんのヘルプもあってクンクンスンスン嗅ぎ回って嗅ぎまくった結果、
バニラや甘すぎるベリー系、ローズラベンダーフローラル系、ミント系、シダーウッドやレモングラス、ディートなんかのハーブ系の匂いも効くのが判った。
んーっ!3か月前までに知ってたら銭湯のフロアでアイツ(炯・けい)に絡まれなかったのに!!

私が血眼で匂いを探していた一方で、さゆり先輩はひとり静かに鬱々とムスク系のフレグランス売場で紙のテスター何本も指の間に挟みながら嗅ぎ比べ格闘していた。なかなかフィットしないらしい。そして
「ねえコウ?あんたならどの香り好き?」
「ええっ?」
「何かさ、コウの頼みで店入ったら突然!」
「…」
「突然記憶が15年前にバック」
「で?」
「飲み屋に勤めてた母親の香りとカブった」
「!」
体感で3分くらい沈黙のあと、私から
「せ、んぱい、…どっか店変えましょうか」
「…ありがと」

急きょ近くの喫茶店へ避難し、ひとまず持ち直した、かのように見えたが
先輩が突然口元を強く押さえ、もう片方の手を激しく上下に振って私をトイレに引きずり込んだ
やっと状況飲めた私の真横で彼女は、胃から逆流していたと思われる液体状のものを噴射みたく吐き出し、私に語り出した
「あのとき、何十年かぶりの激イヤな光景が頭から消えなくて戦ってた………」
先輩と目を合わせながらゆっくり頷く
その後店内に戻ってからおもむろに
「私が中3の夏頃、母親が当時の恋人だった男と逃げたのよ。その消えた当日夕方に感じた湿気混じりのムスクの香りが…オエッ」
先輩が前のめって再び吐き、辺りに酸っぱい臭いとともに回りの雰囲気も一気に重たくなった。不幸中の幸いか、店内に客はほとんど居なかった
後で知ったが、先輩は軽めの胃炎と重度の自律神経不調が治りきってなかったそう
思い返せば数日前の新大久保カフェ&ランチ、あれガチでヤバかったんじゃ……
なのに先輩は
「アレはあたしがやりたかった祝いだから、コウは悪くない。コレはあたしの判断ミス。まだ若いってナメてて……ホントに済まないわ」
「それより今はまだ安静にしてください。じきに落ち着きますから。もし万一病院行くなら、近くに慶応病院あります」
と、言うものの、モヤモヤがおさまらない
上手く表しきれなくてもどかしく思うけど、先輩はあらゆる害になるものと正面から組み合って、ヘトヘトに疲れてしまったみたいに映る。いつか行きすぎてる正義感?か何かで潰れてしまうんじゃないか、ってさすがに心配

あれから数時間は店内に居たと思う
私は意を決して彼女に伝えた
「しばらく、仕事、休んでください。その間に必要なことあれば私や共通の友人も知人も手伝えますから」
先輩は静かに涙を浮かべるも、それを溢さず淡々と
「アリガト。コウとここの店員さんのおかげで気持ちかなり楽になれたから、"それだけで"心強い」
"それだけで"のところでグッと手を包まれた
今度は、いい意味で、返す言葉がない・・・・
さらに彼女はちゃっかり、偶然店内にいたリーダーっぽい店員と他の店員たちにも目配りしていた。そして
「長時間とても失礼しました」と言い終わるなり一礼して、店を出た



――Materials――
新大久保の2D CAFE(話題のスポットの追跡に)
その他のカフェ
荒牧陽子の歌マネ動画
元PIZZICATO FIVE野宮さんのコロナ緊急事態宣言下でのメッセージ動画
NOSE SHOP新宿の香水ラインナップ
THE KAORI BAR・FINCA(新宿6丁目のオリジナル香水ショップ)の香水ラインナップ
香水テスターたち
慶応大学病院(急患対応)

コメント(1)

若いダンサーたちの、独特なノリ、私には馴染みのないものにも関わらず、雰囲気がすっと伝わってきました。うまく言えないんですが、「今の若い子たちってこんな感じなのね!!」と、とても面白く拝読しました。
そしてキャラたちの会話がテンポよく、魅力的です。前も書いたかもですが、地の文の切れ味がいいので、なんとも癖になる読み心地です。
ポップな感じにまとめあげつつ、内容は重いほうに向かっていく予感なので、今後の展開がとても気になりました。

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