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半蔵門かきもの倶楽部コミュの第101回 王都作「なじみの酒場」(テーマ選択「ろうば」「芸術」「グラス」)

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<あらすじ>
前回の続き。里世のぶっちゃけ話に合った場所へ連れ立って向島から横川の飲み屋街へ歩きながら語らい、早紀さんの馴染みの店で長話。途中から居合わせた噺家に絡まれる。

<登場人物>
◯鍋島早紀(ナベシマ サキ(85)):かなり元気なご隠居さん。速歩きに慣れていて飲める口。里世と武尊の[いとこおば]。今回、里世の悩みの聞き役に。東京女子大OG。
◯大原里世(オオハラ リセ(37)):早紀の[いとこめい]。利発で知りたがり。早紀に異性問題の相談をする。
込み入った話ができる背景:
里世の母が早紀と親しく、母が困ったときによく頼って、早紀もそれに応え続けた。

◯おやっさん(枡富生 マス トミオ(53)):通称、トミさん。元塗装工。
◯女将(小網律子 コアミ リツコ(77)):通称、リッちゃん。「たろう」の雇われ女将。家政大OG。
◯噺家(三游亭楽丁 サンユウテイラクチョウ):おじさんなのかじいさんなのかよくわからないお年頃の常連男性。洋服で来店。
〈話に出る〉
●枡太郎(マス タロウ(82)):大昔に早紀の近所に居た男の子。逃げ足早い。のちに富生をもうける。
●山口志現(ヤマグチ シゲ(故人)):早紀の死別した内縁の元夫。日本財団の元構成員でもあった。
〈LINE〉
◯国後武尊(クナシリ タケル(45)): 旧姓、月岡。早紀の[いとこおい]で里世の従兄。某中堅ゲーム会社のweb担当者。


<本文>
◯テロップ “うれしかな(悲・愛)しともに”


◯ロケ・墨田区押上、京成橋上(夜)
    向島から横川へ向かい歩く早紀と里世。
    里世、橋上からのスッキリとした景観に感激し、
里世「めっさ久しぶりすぎて新鮮だわ!」
早紀「でしょ?」
里世「数年前に友人の誰かとスカイツリー目当てで行ったきり…だったはず」
    早紀、一しきり頷くと、
早紀「こないだ久々にかなり遠くから来た古い友達とソラマチで買い物とお茶して楽しかったわ〜」
里世「超あるあるですっ♪」

◯墨田区横川3丁目・路上(夜)
    目的の店の前に着く。
    目の前に年季の入った紺地の暖簾。
    そこに白く太い字で書かれた店の名は、
    「たろう」。
里世、店の引き戸を開ける。
里世M「なんか珍しいなぁ、、、」
    二人で暖簾をくぐる。

里世「(少しはにかみながら)はじめまして」
    おやっさん(店主・枡富生)が迎え入れる。
おやっさん「(歯切れよく)おぅ、らっしゃい」
里世「あの〜、こちらのお店「たろう」って?」
おやっさん「それは、、、オレの父ちゃんの名前。馴染みの客がたくさん居てね、それでまんま使ってるんだ」
    温かい眼差しを向ける早紀。

◯たろう・店内(夜)
    先客たちはすっかり談笑し、
    女将(小網律子)は仕上がった品を順々に運んでいた。
    早紀と里世、空いている二人席に座り、店の品書きから卵焼きと枝豆を選んで待つ。
    その間に里世から、単刀直入にアノ悩み打ち明ける。
「あれは4月中頃…クラブ行ってた頃からのイベ友が開いてるパーティーで踊り疲れて座ったロングチェアで、すぐ隣に従兄が。匂いと汗の感触で即判って離れた。そ…したら、アイツすがるような寂しげな目でコッチ見んのよ。多分酒入ってたからだろうけど、ソノ気っつーかムラムラきちゃってね。ヤバくなってその場は逃げちゃって、翌日朝一、眠さと戦いながらLINEでメール。すぐに既読はついたけど数日返事は来なくて、いつだったか後日会って謝りたいってことで…」
    早紀、ここまで神妙な顔して聞いた。
    里世、息を整えてから、
「今年の夏に再び会いました。お茶してたら、突然その気になっちゃって…近くのビジネスホテル入って、ベッドイン。でも彼がゴムつけて入れたはいいけど中折れオチ即ジ・エンドって話」
    早紀、ゲラゲラと盛大に吹き出し、すぐ我に返り小声で、
早紀「イこうにもイクにイケナカッタのね。
で、そこでむしろ苦しくなって…」
    里世はコクリと頷く。
里世「(残念さを滲ませながら)ここ一番押さなきゃ!って時に出なくていい理性が邪魔するんです。もう嫌……」
里世M「実は、早紀さんもかつて件の太郎と二十歳ころにバッタリ会って……しちゃったそうで。彼女曰くとても精悍でひと皮剥けたように映った、らしい。それでワンラブあったことにワタシは妙に感心してしまった」
    ✕   ✕   ✕
    店の女将から、卵焼きと枝豆が出される。
    更に彼女から作りの良い【グラス】で清酒を出される早紀と里世。
    早紀、訝しげな顔で、渡されたグラスを指しながら女将に聞く。
早紀「リッちゃん、どうしたのこれ?」
    女将、少し困り顔をしながら、
女将「見栄張る親戚から送られてきちゃって。こっちは要らないって言ってるのに……。試しに店に出して「よかったら貰ってよ」って声かけてもとんと、ね。…早紀さんどう?」
    早紀は数秒俯いた後、里世を見る。
    里世、自らを人差し指で指しながら、
里世「わたし?」
    早紀、首を縦に振る。
里世M「ワタシから店の公式Xでフォロワーに向けて募れば貰い手さん見つかりやすくなるかも、とアドバイス。女将は明日トライすると約束し、この話はエンド」

里世M「さらに早紀さんから、太郎との出あいと関係、別れることになった経緯についてまで話してくれた。」
早紀「あのコとは幼なじみでね。工場の敷地突っ切ったり横丁から土手周りまで走り回ったり色んなところでよく遊んだっけ…。で、私のほうが足が遅くて大人たちに捕まってこんこんとお説教聞かされたわ。そんなときつくづく“太【郎ば】っかり”ってね」
    今度は里世が吹き出した。
里世「なんだか早紀さんカワイイ♡」
    少し照れる早紀。続けて、
早紀「結局私は進学先の寮へ出て、太郎は漁船に乗っちゃって…そこからしばらく連絡すら取り合わなかった。お互いになかなか、ね。たまに帰ったとき例大祭で会っても、挨拶くらいでそそくさと」
    里世、真面目な顔で、
里世「まあ、そんな感じですよね」
    ×   ×   ×
女将さん「ハイ、揚げ出し豆腐ね。今回これまででいいの?」
    早紀さんと里世、微笑みながら頷く。
    それと一緒に出された小瓶一つ。
    里世、貼られた紙に目を通すと、蓋を開け一匙だけ揚げ出し豆腐にかける。
里世M「後の方に出た揚げ出し豆腐の辛味に使える香辛料、【ロウバ】。女将さんいわく、ほかの常連さんが台湾行ったときのお土産で貰って試しに店で出してるけど、結局激辛すぎてなかなか使ってもらえないって。ワタシ、早紀さん共にヒーハーマニアだから辛さを期待しつつ食すと…激辛ウマーーー!」
    他の先客が退店した後片付けをしている女将の口から、吹き出す音が少し洩れる。
    早紀、女将の居る方へ顔を向け、苦笑いしながら会釈。

    二人の辛さヒーハーが収まった辺りで、早紀から、
早紀「そういや、タロウから伝言が来ててね。この歳まで生きてると、不思議なこともあったりするの」
里世「へぇ〜どんな話です?聞かせてください!」
早紀「ナ・イ・ショ♪」
里世「え〜っ?」
    里世、持って来ているバッグから小さいメモ帳とボールペンを出し、早紀さんに向き合う。
    早紀、その静かな迫力にあっさり負け、しぶしぶ話を続けることになる。
早紀「要は、私と会って何か作業したいらしいの。全くこの手合のめんどさったら…」
    早紀、太郎からの手紙を開く。
太郎M「(昔、百花園近くにあった松の木の跡地に、子狐の骨壷と玻璃の珠が入っているはずです。是非一緒に掘り出しましょう!」
    ひとしきり話を聞いた里世は、乗り気な表情を露わにしながら、
里世「この際だから会っちゃってサッパリ!…なんて無理ですかねたらーっ(汗)
    苦笑いをする早紀。

◯同・店内(別の席)
    狭い通路を挟んで向かい側の席に座る、存在感消してる風のおっさん客が一人、早紀と里世の居る席を見ていた。
    気づいた早紀からその客に近寄り、話しかける。
早紀「ちょっと、あんた何者だい?」
おっさん客「は、噺家…です」
早紀「そうかい」
    早紀、座っていた席へ戻る。
    二人は内心訝しげに思うも、表には出すことなくそのまま話し続ける。
    それでも二人を覗き続ける噺家。
    しびれを切らした早紀、噺家の顔を直視しながら早口でまくし立てる。
早紀「随分としつこいね。で、お前さんどこの門下かい?言えないならこの後一切話さん」
自称噺家「…」
    早紀、愛想を尽かした面差しで噺家を見る。
早紀「あ、そ。そんなもんか」
    噺家、途端に焦り口調で早紀に話す。
噺家「さ、さんゆうてい、、、らくちょう、と、もうしますあせあせ(飛び散る汗)
    里世がすかさずメモを取るなり、スマホ検索。
    落語【芸術】協会運営サイトの真打ち紹介画面を二人に見せる。
里世「あります、三游亭楽丁。ちゃんと落語家ですね」
    噺家、胸を撫で下ろす。
    早紀、安堵した表情をする。
    楽丁、先に注文していた冷酒を呑みながらついつい、
楽丁「うひぃ〜♪ちゃんと噺家って言ってもらえると嬉しいなぁ〜ヒック!」
    出来上がるとポンコツがバレる。
    早紀と里世、ほぼ同時に、
二人M「このド阿呆!」
早紀「楽丁って、堂々たる名跡なのに目の前にいるコイツは何てだらしがない。すぐに返上しろ!」
    二人の怒気に押されまくって滅入った楽丁。
    おやっさんに追加の酒を注文。
    おやっさん、少々困り顔をする。
    里世から、溜め息が洩れる。
里世M「思い出してしまうことがある。
楽丁・実父・赫音…もれなく全員どアホ。
何なんだワタシの周り・・・」
    ✕   ✕   ✕
早紀「ねえ、もうひとつあの話」
    真剣な表情で頷く里世。
里世「従兄(アイツ)からLINEの返事来てます?」
里世が話すなり、二人それぞれのスマホにLINEからの通知が届く。それぞれ画面を注意深く見つめる。
武尊M【今週予定埋まってるので、来週頭以降の月曜もしくは水曜どちらかの18時〜22時の間でどうでしょうか?お手隙の時にでも返信ください。】
    早紀、即答する。
早紀M【早くに返信感謝。私はどちらの日時でも可能です。決まった日の当日、拙宅の二階へ上がる際のスリッパだけご持参ください。こちらのそれは既に処分したので。勝手ですみませんが。】
    早紀の横から、早紀のスマホ画面を覗く里世。
    見た文面を参考に自らのスマホに打ち込み始
    める。
里世M【すぐにありがとうございます。月曜のその時間帯は私用があるので、水曜の同じ時間帯でしたら空けられます。】

◯[回想]鍋島早紀邸・二階室内(昼)
    早紀と里世、一階から移動した。
    大きな窓から、未だ強めの西日。
    にもかかわらず、室内を埋めつくし、足下が狭くなるほどの物量。
    早紀は両腕を固く組み、悩んでいた。

◯たろう・店内二人席(夜)
    席上で本題について話す早紀と里世。
里世「何で美術品ばかりたくさん…」
早紀「いまは亡きシゲ(山口志現)さんが無類の【芸術】好みで、いつしか集まってしまった骨董品とかあの辺。ウチの二階にたくさんあって、どうすれば片付くか……ほとほと困るわ(フゥ)。それで、里世ちゃんたちがどのくらい引き受けてくれるかどうか心配。とりわけ、大きな壺と床の間に飾る彫刻ね。
まぁ、ただ、私の甥で里世ちゃんと武尊のふたいとこの秀隆サンが、伊万里の大皿を相続予定だけど。ただ…」
里世「何か気がかりでも?」
早紀「お金に変えて暮らしの足しにしてもいいから、あなたのご両親にだけは渡さないで。絶対に、って伝えたわ」
    これについて、里世は納得した面持ちで即、
里世「質にすぐ流しそうですから」
    早紀も、強く頷く。
早紀「そう!」
    早紀、ハッとした顔で、
早紀「それはそうと、一等厄介な大きい壺!あれがラスボス幸子なのよね。譲り先が見つかるかどうか……」
里世「ラ ス ボ ス w」
    ✕   ✕   ✕
    楽丁がまた声かける。
    その先には、里世が居た。
    里世、振り返り、楽丁と目が合う。
楽丁「あの〜」
里世「まだ何か?」
楽丁「さっき話してた…」
里世「美術品の!」
    早紀、里世と楽丁に話しかけ、
早紀「ソレがどうかしました?」
    楽丁、早紀に改まって向き合い、
楽丁「その、、、捌けるアテが有るンですヨ。アッシの知り合いにその道の鑑定師が居りまして」
    早紀と里世、楽丁を見据えて、
二人「ホントに!?」
    突然の食らいつきぶりにかえって面食らう楽丁。
楽丁「それなら、アッシが責任持って紹介しやす!その大きな壺、悪いようにはしないよう伝えるンでぴかぴか(新しい)
    言うなり満面の笑みを、早紀と里世に向ける楽丁。

(了)

※この物語は架空であり、実在の人物・店舗・組織等とは一切関係ありません。


―― 素材 ――
「ロウバ」(香辛料)
https://folk-media.com/2898956/3
物品画像元
https://m.media-amazon.com/images/I/71Q3h14swqL._AC_SX679_.jpg
お酒のCM、特に日本酒
iPadの画面
オバケーヌのミニメモ帳(里世の私物)
落語芸術協会 真打ち一覧
https://geikyo.com/lite/profile/index.php?disp=1
笑点
名跡・屋号の話
壺画像元
https://www.pinterest.se/pin/694750680006348474/


―― cahier ――
他のろうば候補:蠟梅、老梅、太「郎ば」っかり、釣「ろうば」いの数の魚を、など

早紀さんと里世の話の続き。書けるわ。
ここは「太「郎ば」っかり」で行くかウッシッシ
→香辛料の「ロウバ」でもイケる☆
・この店には、お通しがない。かつてはあったが、品がよく、手数増えるわりに稼げないから。
・梨とリンゴシリーズからは武尊が早紀と里世のLINEトークに同じ文面を送信。二人は酒場でそれを見ながら話した。今話の時点でLINEグループ未作成のため。
里世はメモ帳好き。ギリギリ紙ベース世代でもあり。

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