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半蔵門かきもの倶楽部コミュの第七十二回 匿名A作 『J・O・I』

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「このお店が心地いいのは、Jさんと私は絶対に恋愛関係にならないからね」
語気を落として、O子はグラスをテーブルに置いた。
「そう? 君がそう言う根拠はどこにあるの? その言い方じゃあ、まるで、未来永劫君と僕とは恋愛に落ちないっていう風に聞こえるけど」
そんな風に返されると、O子は自分の発言に自信が持てなくなってきた。大体O子はいつも自信が無いのだ。Jみたいに、自信家でライオンのような男とは、普通に生きていたらすれ違いもしないのだ。
「だって私のタイプはJさんとは真逆なんだもの。ヘタレでネズミみたいな男性を好きになっちゃうのよ」
一体なぜソフトドリンクを飲みながらこんな話をしているのだろう。O子はそう思い始めた。
「それは君の周りにはヘタレでネズミみたいな男性しかいなかっただけだろう。いわば環境の問題だろ? 彼氏が欲しいなら、もっと色々な世界に出ていかなきゃ」
O子は彼氏が欲しいということを当てられ、顔から火が出そうだったが、気を取り直して、
「それって、私がJさんに対して思うように、Jさんもタイプじゃない私みたいな客はお店に来るなってこと?」
と反論してみた。O子の論はいつもずれている。本人にも自覚はあるのだが、今のところ直っていないようだった。
「いや、君と話すのは楽しいし、お店に顔を出してくれるのは嬉しいけど、出会えるのはあれだよ、婚活パーティーとかじゃないの?」
O子は疑り深いので、「Jさんったら、また誰にでも言ってそうなことを言ってきたわ」と思いつつも、
「Jさん、あれよ。私がこのバーに通いはじめ、つまりJさんと私が出会ってから何年になると思ってるの? その何年間に周りはどんどん結婚やら出産やらして、今は婚活パーティーに行ったとしても、女性として扱ってもらえないのよ??」
と、珍しく一気に語った。
「でもそれは、君の価値観が結婚や出産に向いてなかったってことだろ? 恋愛は何歳になってもできるから、君と僕が恋愛関係に陥らないって確証はないはずだ」
O子は「なぜか会話の頭に戻ってきてしまった」という点と、Jの価値観に思いを馳せていた。
「そんなこと言って、Jさんは初対面の女性への対応の仕方が、見た目のタイプでまるで違うじゃない。私はこのお店に何回か来てもなかなか覚えてもらえなかったけど、可愛い知人を連れてきたときは自分の隣の席に誘導していたのを私はちゃんと見ていたわ」
すると、Jは少し焦りながら、
「それは魂は見た目に宿るからね。O子のことは今はしっかり理解してるよ」
と間隙なしに答えたので、O子はこれだからJは油断ならないと思った。というのも、Jは言動が女性優先というだけではなく、見た目がわりと麗しいのだ。本人に「Jさんって『HERO』のときのキムタクに似てますよね?」と言った日には「悪口を言われているようにしか聞こえない」とやはり間隙なしに返されたので、見た目を褒められることには慣れているに違いない。あとは『HERO』でキムタクとバディを組んだ北川景子の、その二人の歳の差によるバディ具合が、JとO子の具合に似ているとO子は思っていた。
そんなどうでもいいことをつらつら書いていたら、50分が過ぎてしまったことにO子は驚いた。これらの文章は、ネットで見かけた「60分で小説を書こう!」というおもしろそうな企画で書きはじめた企画なのに、肝心なもう一人の人物「1」について、これでは全く筆を割くことができなさそうだ。
しかし、O子はさらなる事実を知る。この企画を更に縛りたかったO子は、「男性二人、女性一人、恋愛なし」という昔の文芸部の企画で文章を書いているつもりだった。それにも関わらず、この文章は冒頭から恋愛恋愛の嵐。デジタル時計が60分へカウントダウンしはじめる。59分30秒、40秒、50秒、、、。

コメント(2)

匿名希望Aさん。「60分で小説を書こう!」という面白そうな企画を、文芸部Bで、ぜひ紹介してください。

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