半蔵門かきもの倶楽部コミュの第六十回　けんご作　『哀愁の町に雪が降るのだ』

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第六十回　けんご作　『哀愁の町に雪が降るのだ』

mixiユーザー 2020年01月05日 08:40

男がスポーツジムから出ると、雪が降り始めていた。
秒速20センチメートルの白い落下物を見上げながら、ふと思う。

中年にとって、サウナは最後の砦だ。
必死にトレーニングするほどの覇気は、もう無い。
体はあちこちガタがきて、健康に気を使わなくてはいけない。
その板挟みの中、サウナは刹那の汗を与えてくれる。

男はサウナのためだけに、もう3年もスポーツジムに通っていた。

流れる汗を見つめながら、じっと時をやり過ごす。
からだの線はだらしなく崩れても、かすかな矜持を頼りに、ただただ耐える。
家庭のこと、会社のこと、答えのない思考を頭に浮かべながら。

サウナの火照りを残した背中に雪が落ち、男は家路へ向かう。

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