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半蔵門かきもの倶楽部コミュの第五十八回 アスカ作 『黒い山』

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頂上からの眺めは想像以上だった。
友人にすすめられて富士山に登った。
はじめてだったし、五合目までは車で行けると聞いていたので、最初はハイキングに行くような軽い気持ちだった。
しかし登山に詳しい友人が、富士山を甘くみてはいけないと忠告してくれた。たしかに調べてみると、富士山は空気が希薄なうえ気圧は低く、登山中に大きな負担が体にかかるのだという。
そのため私はまず、体調を整えることにした。特に胸の病で入院していたので、リハビリに専念したのだ。
煙草は吸わないが、酒を毎晩のように飲んでいた私は、デスクワークだけという労働環境も影響してか、かなり体力が落ちていた。そのため院内のウォーキングからはじめて、階段の昇降へと移行していった。つまり、より登山を意識したプログラムを組んで、着実にこなしていったのだ。その結果、退院してから登山経験者のサポートがあれば、富士山に登ってもいいという了承を、ついに医師から得ることができた。
それからというもの、私はどういうルートで富士山頂を征服するか何度も何度も考えた。それは、息苦しい灰色の空気の中にいるような入院生活を、彩りある日々へと変えてくれた。
登山道としては静岡県側の富士宮ルート、須走ルート、御殿場ルート、そして山梨県側の吉田ルートが一般的だ。しかし、バリエーションとして知られるプリンスルートが私の心をとらえた。
どのルートから登っても、山頂は一つである。しかし、過程が大切であると私は考えていた。
眼下に広がる雄大な景色に圧倒されながら、プリンスルートを選んで良かったと心から思っていた。

ふいに鼓膜が破れるような振動にも似た音が轟いた。
富士山は過去に何度も噴火している。ついにまた活動を再開したのだろうか。
噴火のためだろうか、私の体が宙に浮かんでいた。そして富士山の全景が見渡せた。
溶岩のため真っ赤になると思ったが、なぜか黒一色になり、しかも細長くなっていった。まるでポッキーのチョコレート側のようだった。
右足に炎のような痛みが走った。岩石が当たったのだろうか。
あまりの苦痛に目が覚めた。
私は階段を踏み外し、転倒していた。骨折しているようだ。
憧れの富士山頂が遠のいていくのをひしひしと感じていた。

コメント(1)

アイディアが浮かばず、通勤の途中で書きました。
遅れてすみませんが、よろしくお願いします。

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