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半蔵門かきもの倶楽部コミュの第120回 ロイヤー作『6月の雨』

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六月の空は、朝からずっと重たかった。東京の街を包みこむような湿った空気に、僕の心もじっとりと濡れていた。
駅前の小さな喫茶店。そのテラス席で、僕は紙コップのコーヒーを片手に、台本を読み込むふりをしていた。オーディションの通知は、もう何ヶ月も届いていない。

「松川さん?」

その声に顔を上げると、白いシャツを雨で少し濡らした彼女が立っていた。高瀬絵里。数週間前、この店の店内で偶然隣の席になり、そこから少しずつ話すようになったOLだ。

「待ちました? 急に連絡してごめんなさい」

絵里はハンカチでバッグを拭きながら笑った。彼女の笑顔にはどこか、救いがある。別居中の妻にはもう何年も見せてもらえなかったような、柔らかな眼差しだった。

彼女は職場でトラブルを抱えていた。自分の部署の同僚が経費不正で「逮捕」されたばかり。巻き込まれる形で事情聴取を受け、心が折れそうになったと、昨夜LINEで打ち明けてくれた。

「何だか…息が詰まるんです。全部、自分が悪いような気がして」

「君のせいじゃない。濡れ衣ってやつだ」

僕はそう言いながら、コーヒーを一口飲んだ。酸味がきつい。まるで、売れない役者が口にする世の中みたいだ。

彼女は静かに紙袋をこちらに差し出した。

「これ、好きだって言ってたから」

袋の中には、小さな瓶に入った自家製の「ライムシロップ」が入っていた。数日前、僕が昔メキシコ料理店で働いていたと話したとき、ライムのことを懐かしそうに語ったのを、覚えてくれていたのだ。

「いや…ありがとう。嬉しいよ」

彼女はうなずき、小さく「よかった」と言った。

梅雨は人を狂わせる、と誰かが言っていた。だが僕には、梅雨が人の心を近づけるようにも思える。

テラス席に小雨が降り込み始め、僕たちは店内へ移動した。ガラス越しに見える駅前には、傘の花が咲いていた。

雨音が強くなった。雨粒が窓を打つ音が、心の奥をノックしてくるようだった。
そのまま少しの沈黙が流れたあと、僕は台本を彼女に見せた。

「これ、今度ある小さな舞台のやつ。セリフが全然入らなくてさ」

「松川さん、夢…諦めないで追っているんですね」

「うん。まぁ、なんだかんだでまだしがみついてる」

「私、そういう人…好きです」

彼女は唐突に言って、少し顔を赤らめた。

僕は一瞬、言葉を失った。若い頃なら勢いで何か返せたかもしれない。

でも今は違う。言葉を選ぶことが、逆に誠意だと思ってしまう。

「ありがとう。でも、俺はまだ、何も叶えてない」

「練習、付き合いますよ」

「え?」

「家、来ます? ライムソーダ作りますから」

あっけらかんとしたその一言に、僕は驚いた。妻とは違い絵里には、今の僕をそのまま見てくれる優しさがあった。

    ☆  ☆   ☆

彼女の部屋は、こじんまりとして、柔らかなアロマの香りが漂っていた。窓の外では、まだ梅雨の雨が降り続いていたが、室内は不思議と温かかった。

ライムソーダの爽やかな酸味が喉を通るとき、何かがふっと剥がれ落ちたような気がした。
僕の中にこびりついていた「無価値感」や「敗北感」、そんなものが、彼女の静かな時間の中で少しずつ溶けていく。

「この台詞、すごくいいですね」

「どれ?」

「『愛は、傘をさし出すことじゃなくて、隣で濡れること』…これ、なんだか松川さんみたい」

僕はその言葉に、思わず笑った。

外ではまだ雨が降っていた。でも、彼女の隣なら、もう傘はいらないかもしれない。
人生のオーディションには、合格不合格なんてない。
ただ、誰かと一緒に台本を読み、そのセリフに心を動かされる――それだけだ。

六月の雨と、ライムの香りの中で、僕はようやく、恋を始めることができた。

コメント(3)

久しぶりにロイヤーさん作品が読めて嬉しいです!
ちょっとバタバタしていて、きちんと読み込めていないのですが、文体が非常に端正でロマンチックなムードがあふれている気がします。

事前に生成AIで書かかれたと伺ったので、どうしても物語のつじつまや構成やキャラの一貫性に目が入ってしまうのですが、全然破綻していないところはすごいですね…!
強いて生意気なことを言えば、話の運びがきれいすぎて遊びがない感じもしますが…(笑)

生成AIまわりでお聞きしたいことが山ほどあるのですが、、
ちょっと箇条書きで質問させてくださいm(__)m

・小説の文は一字一句、ChatGPTが出力したものですか?それとも、ある程度、ロイヤーさんの手が入っているのでしょうか?

・ChatGPTを使用されたのは、創作のどの過程でしょうか?
例:物語のアウトラインやキャラクターづくりからAIを使用した。
または、書きたいことやアウトラインはある程度、ロイヤーさんの方で作り、執筆作業だけAIに任せた……などなど

・上記と被りますが、この作品はもともとロイヤーさんが着想されたもの(書きたいと思って書かれたもの)でしょうか?それともChatGPTが提案したものをブラッシュアップしていった形ですか?
コメントありがとうございます。
まず、物語のアウトラインやキャラ、その他、私が指示して、それをAIに書かせました。
次に、書かれたものに、矛盾や変な記載があったので、AIが出力したものを初稿とみなして、そのあと推敲するようにして、私がリライトしました。
その意味では、AIはアシスタント的役割になります。
ただ、一から自分で全部書くより格段に楽で、かつ自分では出てこない表現もあり、新鮮でした。
>>[2]
お返事遅くなりました…
ありがとうございます!

ああ、やっぱりロイヤーさんの手が入った形だったのですね!!

あまりに文章や構成、キャラクター描写が端正で完成度が高かったので、AI単体なら、どんなプロンプトを使われたのだろう…と気になっていました

イベントのコメントで書かれてましたが、まだまだAIのつくるものはある程度の及第点どまりのような気はします
ただ、ここ最近の進化を見ていると、それも今だけのような…あせあせ(飛び散る汗)
来年…今年中にはここまで来たか…!みたいなクオリティを軽々達成してきそうな予感はあります

人間側も試されていますが、使いようによってはとんでもない武器になりうるので、これからは表現力や発想力だけではなく、AIをいかにユニークに使いこなすかも小説書きには問われてくるのかな、と思います

いろいろお話したいことは盛りだくさんなので、8月を楽しみにしています〜!

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