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chopstick undergroundコミュのわたしは海を抱きしめていたい

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デカダンスとは、芸術を理解するための方法論である。

ルキノ ヴィスコンティ




いつだったか西村賢太という作家が芥川賞を受賞した時、ワイドショーが妙に騒がしかった。マスコミが主催する受賞会見での西村賢太の言動が、その是非と共に注目されたからだった。
カメラのフラッシュが点滅するなか、インタビュアーの「芥川賞受賞の連絡を受けた時、何をしていましたか?」という月並みな質問に、作家西村賢太は飄々とこう答えた。
「風俗行こうと思ってました」


舞城王太郎、阿部和重など若い世代の小説文学をクソみそに貶しまくった芥川賞選考委員の長、石原慎太郎はめずらしくこの飄々とした作家西村賢太を推した。
西村賢太は徹底した私小説家で、自らの恥部と半生をむしろさらけ出すようなスタイルで観念化する文学だった。
受賞作「苦役列車」のなかで主人公は、少ない日銭で安酒に酔い、酔っては暴れ、女の肉体と自らのプライドにのみ強く執着した。
まるで時代遅れのパンク作家。アメリカのオールドパンク、チャールズ ブコウスキーにもそれは似ている。
そしてブコウスキーは言う。
「おまえが作家を選ぶのではない、作家のほうがおまえを選ぶのさ」

西村賢太は現代的な作家ではない。
ただ、文学に生きるよりほか道がないような、昔気質の文士然とした姿勢がある。
文学とは生き方である、石原慎太郎はそんなことを思ったのかもしれない。



坂口安吾/わたしは海を抱きしめていたい


東洋大学インド哲学科卒、観念的私小説家、エッセイスト、推理小説家、様々なジャンルを横断する戦後無頼派デカダンの星、坂口安吾。
何カ国語をも猛勉強しマスターし、ヨーロッパの詩や小説を中心に翻訳。哲学、宗教、あれはオモチャだ、と教養をばっさり切り捨てるインテリジェンスはまさに無頼の魂である。
坂口安吾は戦後日本で公然と出回っていたヒロポン、覚醒剤の雛形のハードな常用者であり、打っては書き、酒を浴びて、自らの肉欲と女の肉体をこよなく愛した。
優位になった交感神経、過剰な興奮を鎮めるために睡眠薬の中毒者でもありつまりバリッバリのジャンキーだった坂口安吾。
彼の家族による手記「クラクラ日記」には真夜中に真っ裸で発狂する安吾の奇行の極みがつらつらとつづられている。
そこに生活などという言葉は介在しない。
ヒロポンを打って書く、それが坂口安吾のすべてだ。それ以外は眠っているか、発狂しているか、ふたつにひとつだ。
これほど真摯な日本文学者は、安吾以降絶対にあらわれないとわたしは思う。
その数奇な人生を思うと、坂口安吾は書く以外に道がなく、そのために命を使った生粋の物書きだ。

詩人とは他者のために自らの命を使う者である。坂口安吾の詩人論を最後に添えて、このテキストを了とさせていただく。


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