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紅い竜と四天王女コミュの王女との出会い1

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シャラントは広大な平野が広がり、肥沃な大地に温暖な気候に恵まれた実り多き土地。
平原には街道が一本だけ続き街道を歩いて行けば奥には森がある。
遠くからではその森の深さは分らないが奥深い森。
シャラントにいる民でも時おり迷うほど深い。
 その森の中で少年が一人馬を連れて歩いていた。
 年相応の体格をしているが、服の袖から伸びた腕からでも分かるように身体は鍛えている。
矢筒を背負い手には弓を持っている。
 少年の名はアルシアス・シャティオン。
親しい者たちにはアルスと呼ばせてる。
まだ、少年で領主たる覚悟や器も発展途上であるがシャラントの領主である。
アルスの父アルヌルフ・シャティオンは一年前に戦で討ち死にしてしまった。
そのためアルスが家督を継ぎ領主となった。
領主の職務に追われ忙しい日々を送っている。
こうした非番の日には狩りに出掛け気分転換をする。
「おっ! いたいた」
 矢をつがえ獲物に標準を合わせる。
 獲物は勇ましい角を持った牡鹿。
 まだ、牡鹿はアルスに気付いていない。
 慎重に牡鹿の首筋に狙いを定めて弓を引く。
(今だ!)
 矢は見事に牡鹿の首筋に突き刺さった。
 アルスは腰に帯刀してる剣を抜刀し牡鹿の許へ歩み寄る。
 剣を抜いたのは最後の力を振り絞って牡鹿が暴れ狩人を襲うからで。
 そのような類の事故は珍しくはない。
木々が間隔を空けずに生えて真っ直ぐ歩けない。
 馬を駆けさせることは出来ない。
「角だけもらうよ。もったいないけどな」
 アルスは剣を納め短剣を抜き牡鹿の角を削り落としにかかる。
 角は堅く頑丈で容易には削れない。
 アルスは急いで角を削っていく。
 アルスが急いでいるのは早く牡鹿から離れたいからであった。
 森には獰猛な獣が獲物を探しうろついている。
 血の匂いが獣の鼻孔に入り込んだら唾液を垂らし、迷うことなく一目散に駆けて来るだろう。
 そんな獰猛な獣と遭遇してしまったら角どころではない。
 自身の命が危うくなる。最悪、牡鹿の隣で同じ亡骸の姿を晒してしまう。
「よし、取れた」
 アルスは牡鹿の角を持ち馬の手綱を引き、牡鹿の亡骸から離れて行った。
 収穫は牡鹿の角だけであったがそれが狩りに来た目的だったため、アルスは屋敷へと帰ることにした。
 本当は帰りたくはないアルス。
 屋敷に帰れば侍女のリュイに説教されるから。
(リュイの説教やだな〜)
 一言、狩りに行くと伝えれば良いものの、アルスは言わずに狩りに行ってしまう。
 リュイに伝えれば「ダメです」と二言返事が返ってくる。
 彼女はアルスと一緒に兵法の勉強をしたいのだ。
 昔、アルスが兵法書を読んでいたら、リュイが興味を示し兵法書を読み始めた。
 これが、リュイが夢中になり暇さえあれば兵法書を読み漁っていた。
 今では侍女としての仕事と軍師としての仕事をこなしている。
(仕方ないか。リュイの説教から逃れられないからな)
 重い足取で帰路を歩いていると前方から人がいる。
 眼を凝らして見ると馬に跨った女性と少女たちだった。
 あちらもアルスに気付き近づいて来る。
「迷ったのか?」
 この森で迷っている者たちとアルスは出くわすことは少なくない。
その度に道案内を買っている。
 少女たちと騎士風の女性の身に何があったのかは分からないが、彼女たちが壮絶な体験をした事はアルスにも容易に想像がついた。
 疲弊した身体に土色に汚れた衣服。袖の肩や腕の部分は破け、そこから時間の経過と共に黒ずんだ血色が目立つ。
 双眸も生気を失いつつ虚ろになっていた。
「すみません。道に迷ってしまってシャラントの町はどこに向かえば良いのかしら?」
 白馬に跨った少女が尋ねた。
 困憊した身体に汚れてボロボロになった衣服を着ているにも関わらず、彼女からは気品と高貴なる空気を漂わせていた。

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