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FCYCLEコミュの北海道Tour13

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 今年からはこちらにUPさせていただきます。
 予定はこんな感じです。相変わらずの道東→道北コースですが、十勝を真ん中に持ってきました。でも十勝〜旭川盆地と中日が暑いのは自殺行為かも(笑)。今年はどこで雨が降るかなあ(降らないでほしいんですが)。

#1 8/8(木)たんちょう釧路空港→開陽
#2 2013/8/9(金)開陽→落石
#3 8/10(土)落石→札友内
#4 8/11(日)札友内→置戸
#5 8/12(月)置戸→幾寅
#6 8/13(火)幾寅→大村
#7 8/14(水)大村→辺毛内
#8 8/15(木)辺毛内→抜海
#9 8/16(金)抜海→仁宇布
#10 8/17(土)仁宇布→旭川

■■■2013/8/2
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔

コメント(45)

北海道Tour13#1 2013/8/8 釧路空港→開陽-2

 丘陵を越えてから中幌路で谷間に下る。下雪裡第三で乗り換えた道道53には、やや交通量の多い雰囲気の他にも、そこかしこに見覚えがある。というより忘れもしない景色の中に道があるのだが、道自体は記憶よりかなり拡幅されていて、明らかに規格が上がっているようだった。久しぶりに訪れる道道によくあるパターンだ。
 なぜこの道を忘れられないかというと、2004年に泊まったどさんこ牧場で、19時過ぎからちょっとした宿の場所間違いをしてしまったからだ。実際の場所から数km丘陵アップダウンの向こうにあったこの道沿いを暗い中必死に捜しまわったり、ようやく見つけた(実は別の)鶴居村営施設に不法侵入してからようやく目的の施設と違うことがわかったり、泣きそうになってこの辺りを走り回ったあげく、軽トラで救出されて到着したのだった。
 道道53号から分岐した町道は、まさにその時の宿、牧場体験施設「どさんこ牧場」が建つ道である。一つ丘を越えた谷の端、昼間のどさんこ牧場は、体験コースに大きな厩舎、平屋の食堂宿泊棟が何とも楽しそうだ。確か牛ステーキがとても美味しかったと思う。また泊まってみたい。

 丘陵を越え、下久著呂からまた次の丘へ。道を乗り換えるように道道の番号は変わらないままだが、下久著呂から先の道は急に道幅が細くなって再び丘陵越えへ。くねくねカーブの森の細道は路面も粗く、ここまでの、いや、この辺りの高規格気味の道道群とはかなり表情も異なる。釧路湿原脇では、地図上でも目を引く道である。
 最後の谷間のヌマオロは、去年も通った国道274から弟子屈へ向かう道道53へ乗り換える谷間の地名として近年の私には馴染み深いが、本来釧路湿原際から拡がるかなり広い範囲の地名である。今日は標茶手前の最後の谷の地名として、ここで道道243に乗り換えだ。ちなみにこの辺りには、やや離れてはいるが別海から弟子屈経由で美幌へ向かう国道243もある。最初に通った10年以上前には、国道と道道と一桁の番号違いと、国道274と243のダブル思い込み間違いで、地図まで読み間違えてしまった苦い記憶がある。
 嫌な印象を思い出しながら通る現在の道道243は、その時やや焦りながら力づくで通った記憶通り、細道のやや急な坂で標高差80mの丘をを越えてゆく。焦っていたそのときの苦しい思い出がトラウマになっていたこの道、今日は正しく地図を眺めながら事前の予習通りのボリュームを適切に感じつつ、細道の緑と日なたから逃げる木陰を有り難く楽しんで通れる道である。行程の余裕は自分を助けてくれる、とつくづく思う。と同時に、私は無理のできない人間であり、自分のツーリングはつくづく無理しないことが大切なのだ、とも思う。
 もう14時前。そろそろ腹も減り、水のがぶ飲みでごまかせなくなり始めていた。こうなればもう標茶のセイコーマートに一刻も早く到着したい。

 最後のアップダウン回避の大回りをやめてショートカットした西標茶の丘越えの後は、南標茶から国道391へ。追い風に乗って標茶直行だ。
 14:00、標茶着。国道391沿いのセイコーマートは、パン屋併設というか、同じ建物の隣がパン屋さんだ。ここのオリジナル総菜パンが、確かサイクリング中だと問題無いぐらいカロリー系だった。あるいは近くの標茶高校対応型なのかもしれない、と思ったような記憶がある。
 Hotchefの無いセイコーマートでカップ麺やら袋野菜やらみかんジュースなどを集中補給した後に携帯食目当てでパン屋さんに入ってみると、しかしながら今日の在庫はほとんど売り切れに近く、残っていたミニクロワッサン3個入袋を仕入れておく。何かめぼしい物を見つけるためには、お昼前に来る必要があるのかもしれない。

■■■2013/10/20
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour13#1 2013/8/8 釧路空港→開陽-3

 14:35、標茶発。
 釧網本線に沿って北へ向かうと、駅の向こう側に新しいセイコーマートを発見してしまった。しかもなんとhotchef付である。お昼過ぎのせいか豚丼は売り切れていて、わざわざ食べ直さなくてもよかったのが不幸中の幸いだったが、標茶にセイコーマートが2つもあり、しかもこちらがHotchef付だということは覚えておかねばならない。というか、知らなかったのが悔しい。またいつか標茶に来るときには必ず寄らねば。と、このときはそう思っていた。まさか翌日、更に2日後も利用することになろうとは。
 いつの間にか空は暗くなり始めていた。雲が厚く低いのだ。時々小雨もぱらつくどんより雲の下、谷間裾の道を、町道から道道13に乗り換えつつ北上、小山の裾から狭い谷間を農道に入り込む。谷間はそのまま次第に高度を上げ、しかし突然急斜面に出会うこともなく、牧草地や冴えない低木の森の中淡々と続いてゆく。なんとなくこんな斜度のまま次第に根釧台地へと登ってゆくのだ。
 途中から突如道はダートに変わったが、地図上で自分の位置は把握できているし、少なくともこの道が行き着く多和平までの距離もせいぜい数km。やはり森や牧草地の中に細道が続く。周囲に人家はないが、開けた牧草地の中、熊の不安もあまり感じられない。なかなか良い道である。そんな道を牛に眺められながら少しずつのんびり北上、降ったり止んだりの天気は冴えないものの、良い気分である。

 砂利道が丘を上り詰めると、その向こうに丘が拡がった。
▼動画43秒 多和平を望む丘
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2013/hokkaidoutour13/1/r0001297.wmv

少し向こうの丘の上のあずまや、建物は、忘れもしない多和平だ。多和平は中標津町の開陽台と並び称される、根釧台地の展望ポイントだ。開陽台は中標津町のカントリーサインになっているが、多和平も同じく標茶町のカントリーサインになっている。両方ともその売り文句は地平線なのだが、両者の趣はやや異なる。開陽台は広々と拡がる平地が感動的だが、こちらは起伏のある丘が自分の周りに拡がる、そのうねりが見物だ。地平線にそれぞれの地形が反映されているのである。そしてその風景はそれぞれ好みが分かれるようで、道東ファンの間ではどちらが好きかが語られることが多いが、しかしだからといってどちらが優れているというものではないと思う。両方楽しんでしまえばいいのだ。ちなみに私は開陽台にはほとんど毎年訪れているが、多和平は2002年に1度来たっきりなので、開陽台派といえるかもしれない。しかし、開陽台の展望台で美味しい軽食が食べられるように、多和平の美味しいシチューが忘れられない。しかし今日はややどんより曇りでもあり、とりあえず通過することにした。この後開陽台にに立ち寄りたいし。やはり自分は開陽台派かもしれない。

■■■2013/10/20
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour13#1 2013/8/8 釧路空港→開陽-4

 虹別までは道道1040。いよいよ根釧台地の西の縁、丘の起伏が大きく緩い。広々とした道東独特の雰囲気が、辺りに明らかに漂い始め、また道東に来て、来れてよかったと確信できる。と、ここで遂に雨雲に捕まってしまった。雨具を着込むと、そういう時に限って雨が弱まり始める。雨は止んでも雲は低く台地を覆い、数100m向こうは完全に霞んでいる。そろそろ広がり始めるはずの地平線の景色も、今日はまるっきり雲の中だ。まあしかし、根釧台地の雰囲気に身を置けるのが、とりあえず嬉しい。
▼動画31秒 道道1040で虹別へ降りる こちら側の路面は乾いている
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2013/hokkaidoutour13/1/r0001304.wmv

 16:35、虹別着。そのまま農道から道道885へ入り込む。もう終着の北開陽まではほぼ1本道。雲が低く辺りがなんだか湿っぽいのは相変わらずだが、さっきと較べて一気に涼しくなっているのに気が付いた。やはりさすがは根釧台地だ。
▼動画45秒 標茶町の道道885
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2013/hokkaidoutour13/1/r0001320.wmv
 空は更に暗くなってきた。雲も低く濃くなって、拡がる牧草地と防風林の先の、西別岳の山姿をイメージしながら、雲を眺め回す。こういう感じだと、今日は開陽台に行ってもあんまり景色が拡がらないんだろうなあ、と思いながら進む道道885になっていた。

 17:00、養老牛着。ここまで来たら開陽まであと1時間。自販機でコーヒーだけ飲んで、道道150へと名前の変わった1本道を粛々と先へ。
 スノーシェッドから旭新養老牛、虹別からここまで一直線だった道が左右に曲がり始めて北進にさしかかる辺りから、次第に周囲がガスってきた。更に北進台辺りで、100mぐらい先の防風林が霧で霞み始めた。これで今日の開陽台は無くなった、と思った。まあここまで距離の短さにかまけてややのんびり進んできた。寄り道せずに宿に18時頃到着できるぐらいに、いつの間にか時間も押し気味だ。助かった。
 北進から俣落へ、一気に段丘を下った後、更にだらだらっと根釧台地の大きな傾斜なりにさらに高度を下げ、結局100mの下りとなる。明日またここを登り返すのだ、と思いながら、ならば今日はありがたく下りに乗じてペースが上がるままに任せ、もう一気に下り来てしまう。その間、濃い霧はますますその濃度を上げ、俣落の開陽台方面への分岐でも、もはや1グリッド向こうの牧草地が見えないほど。
 開陽台への町道19の分岐でも、もう最初から開陽台を諦めて、というか登り返しを避けてというか、とにかくそのまま直進する。一応だめ押しに、開陽台の下辺りで町道北19沿いの恒例定点観察ポイントを見上げるものの、「やはり今日は開陽台に向かわないでよかった」と素直に思えるほど、上手の町道北19周辺と更に開陽台の辺りは、とっぷり霧に包まれているのであった。もう18時。宿到着も目前である。

 18:10、北開陽「民宿地平線」着。
 盆休み前だけあって、今日のお客は私を含めて2人。もう一人のお客さんも明日から1週間の研修にはいるという獣医さんだった。なんだか一人で遊んでいるような申し訳なさを感じつつ、明日の私の予定の「虹別まで戻って矢臼別演習場沿いに南下、根釧台地を味わう」という話題が出たところで、宿主さんから凄いものをいただいた。それは40年の根釧台地ドライブ経験に基づく、根釧台地1周ベスト202kmコースである。ノンスケールの手描き地図がコピー紙に描かれたそれは、しかしながら「ああ、ここを通れば良かったのか」という驚きと、それ以上に宿主さんの「この道をみんなに通って欲しい」という熱さとしかいいようがない気持ちに溢れたものなのだった。一度ルートラボに落として是非ともコースを検証せねば、というより、来年は「民宿地平線」に連泊し、走ってみないと、思った。幸い過去この道は2名しかチャレンジした人はいないとのこと。それもバイクと車の人らしい。
 食後はいつもの中標津の温泉へ。しかし諸般の事情で出発時刻が遅れたのと、ちょっと補給タイミングをミスってあまり腹が減っていなくて、中札内地鶏は断念することになった。

■■■2013/10/20
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour13#2 2013/8/9 開陽→落石-1

開陽→(道道150他)養老牛→(道道885)虹別
→(農道)萩野→(道道13他)標茶
55km

 目覚ましで4時に起床。毎年北海道の初日早朝は絶好調の高地タイマーにより、自動的に4時に目が覚めるのだが、今回はアラームが鳴るまで目覚めなかった。のみならずなんとなく身体がすっきりしない。窓から朝日が入ってこないのも大きいが、むしろ自分で感じている以上に東京での猛暑に身体がすっかりやられてしまっている。しかも昨日はなんとなく21時半過ぎまで寝なかった。せっかく職場の人目を憚りつつ、有休を2日も付けて望んでいるのだ。ちゃんと睡眠を取って、早く身体をツーリングのリズムに持って行かねば。
 等と思いつつ準備を進め、6:10、開陽「民宿地平線」発。出発は6時で十分、という根拠の無い思い込みがあって、なんとなく起床から出発まで2時間も掛かっているが、もっと早く出発できる、とも思った。明日から試してみたい。
 折角6時に出発しているのに、民宿地平線が建つ防風林から町道に出ると、辺りは絶望的に霧の中である。もう頭から開陽台へ向かう気はなく、昨日と同じ下手の道へ向かう。途中で霧の向こうの開陽台方面を見上げ、とりあえず諦めを付けておく。
 今日は昨日通ったばかりの道道150・885を丸々逆走、虹別から根釧台地の西縁、自衛隊矢臼別演習場の北を上風連、西円朱別を経由し、晴れると太平洋の眺めが素晴らしい恵茶人を眺めて、終着は落石の予定だ。根釧台地と太平洋岸の素晴らしい景色をたっぷり楽しめるように、やや余裕を持った行程としてある。抜かりない計画での訪問の筈だったが、開陽台へのWチャンスはあっけなく潰えた。しかしこの後は、着々と予定をこなして太平洋岸へ向かうべきなのである。

 俣落、北進段丘の坂から北進台、「牧舎」前、そして旭新養老牛と、高度が上がって霧は更に濃く、霧はやがて霧雨に変わった。しかし、今日の予報は曇り。朝のうち雨っぽいのは、道が山裾に近づくこの辺りでは珍しくない。
 7:20、養老牛の交差点「ながかわ商店」着。
 近年すっかり人気が感じられないこの店には珍しく、昨日は下部が少し開いたシャッターから灯りが漏れていたような気がしたが、今朝は何とそのシャッターが開いていて、中にテントが見えた。よからぬ旅人が入り込んだのか、等とも思うものの、何らかの乗り物は見あたらない。まあどんな事情であれ、私には関係の無さそうな出来事でもある。あまり気にせず、こちらはいつものように自販機でコーヒーなどを仕入れることにしよう。
 そんなことより、もっと気にしなければならないことがあった。いつも天気が好転し始めるはずのこの辺りで、一向に晴れないどころかますます雨が本降りに変わり始めている。これはおかしい。コーヒーをぐいっと飲んだところで都合良く交差点に停まった、地元車っぽいおばさんに訪ねてみると、早朝まで曇りだったはずの天気予報は、7時過ぎから1日雨に変わったとのこと。「そうですよねえ、確か曇りでしたよね。今年はほんとに天気が不安定ですね」と、おばさんも天気のあてが外れたようだ。
 そうこうしている間に雨はますます強くなり始めていた。この先向かう予定の根釧台地のまっただ中は、ただでさえ毎回天気が不安定な傾向がある。予報で1日雨なら、ますます雨の可能性が高い。根釧台地の大雨がどんなに恐ろしいか、以前一度思い知ったことがある。大幅な予定変更が避けられないように思えた。というより、少しこの先の身の振り方を考え直す必要がある。というわけで、交差点の反対側に建つバス停へ。

■■■2013/12/8
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■■■高地 大輔
北海道Tour13#2 2013/8/9 開陽→落石-2

 考え直すとはいえ、こうなるともう輪行が可能な以上、輪行が大前提だ。今日の宿である落石「カジカの宿」へは、最終的に根室本線で落石下車、というのは決まりなので、落石までどう行くかだ。選択肢は3つ。中標津から厚床行きのバス、標茶から釧網本線、弟子屈から釧網本線、である。このうち中標津からのバスは、交通機関利用距離は一番短そうなのだが、たった今中標津方面から来たばかりなのに、また中標津へ帰るのは気が引けた。しかも、これから中標津方面へ戻ると、今悩まされている雨雲の中に向かうことになるようにも思える。
 弟子屈へは既知の安心できる道が続くが、弟子屈は明日通る予定でもあるし、弟子屈より釧路に近い標茶の方が区間運転の本数から言って有利であるように思えた。それに、昨日民宿地平線で教わった道も、ほんの少しながら通ることができる。というわけで、あまり悩むことなく標茶輪行が決まった。

 7:45、養老牛発。雲の粗密の都合か、気が付くと雨がだいぶ弱まっていた。
 引き続き昨日通った道道885を、昨日とは逆に西へ向かう。西別岳登山口、中標津・標茶町界、西虹別の牧場農家が霧の中から現れ、過ぎ去って行く。大好きな道の大きな要素である景色はあまり楽しめないが、道の雰囲気自体は訪問の実感に満ちているのがとりあえず嬉しい。それは、紛れもなく今この道を走っているのだ、これが確かに今回の訪問だったのだ、と断言させてくれるものである。

 とはいえ西虹別を過ぎると、意外に早く道が大きく曲がっているのが見えてきた。この道もいよいよ終盤、去年から通り始めた最後の農道区間へ進み、国道243を渡って萩野方面へ。
 前述の民宿地平線お奨めコースにも含まれていた区間でもあるこの道。いつもは国道243の丘で根釧台地の地平線を眺めるのを常としていたため、丘の裏手を通るこの道を訪れたことはなかったが、防風林に囲まれた牧草地が続く、なかなか落ち着いた雰囲気のいい道だ。
 途中で根釧台地の西縁高台の道、道道13に合流。雨が降っては止まって雨具を着込み、雨が弱まっては止まって雨具を脱いで再度バッグに仕舞い、あまりぴりっとしない気持ちで最高地点の標高197mを越える。本来なら、ここから東に下って行く平野と地平線を見渡す場所である。しかし今日の道道13は、単純に霧で視界が利かないだけの道になってしまっている。しかもところどころで雨が強くなる。こんな天気でも意外に気温が高いので、雨が強い時以外は雨具を脱ぐ必要もある。
 そこから先はおもむろに標茶への下りとなった。ちょっと走っては雨具を着たり仕舞ったり、こんなのんびりした行程で標茶を目指していると、同じような時間とペースでこの道を標茶へ向かった、1991年冬のツーリングを思い出す。昨日も眺めた展望ポイントや、2002年に悪態をつきながら登って下った盛大な意味無しアップダウン等を過ぎると、もう標茶の谷間である。昨日通ったばかりの農道に合流し、昨日発見したばかりのセイコーマートへリベンジを果たし、9:55、標茶着。

■■■2013/12/8
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour13#2 2013/8/9 開陽→落石-3

 まずは列車をチェックすると、12:28発快速しれとこまで釧路行きの列車は無い。あと2時間、かなりのんびり輪行して荷造りして更に1時間余裕がある。これはまあいい。しかし、去年も乗った落石までの根室本線普通列車への接続が、東釧路で1分しかない。駅員さんによると「規定では3分差じゃないと乗り継ぎ対応ではない」とのことだが、まあこれも過去何回か、根室本線のこの列車に乗っていて、釧網本線からの乗り換え客を待って発車するのを見かけている。その時は「釧網本線から乗り継ぎする奴なんているのかよ」と思っていたが、そういうのは必ず自分に返ってくるものなのだ、世の中。
 というわけで、乗り継ぎ計画はできた。釧路で昼食を仕入れる時間が取れないが、ならば標茶での2時間の間に、何か食べればいい。
 というわけで、駅前食堂の「江戸一」でラーメンを戴くことにした。

 店から出ると、再び雨が降り始めていた。さっき乗り継ぎを教えてくれた駅員さんが、「12:28の列車、遅れてるらしいんですよ。ここで停車時間8分あるので取り返せるんだけどね」と、気を揉んでくれていた。
 12:28、快速しれとこで標茶発。キハ54は快調な走りで雨の釧路湿原脇を走り抜けてゆく。その間、雨はやや強まってきていた。

 列車が東釧路に次第に近づく間、やきもきしながら進行方向を眺め入っていると、島式ホームの反対に、根室本線の根室行きが停まっているのが見えてきた。13:18、東釧路定刻到着。
 雨の中速攻で乗り換えようとするが、ワンマン運転で開けられた前のドアに乗り込もうとすると、乗客が多すぎて乗り込むことができない。自転車を置く場所が無さそうなのだ。見かねた運転手さんが、後ろの乗務員室のドアを開けてくれて助かった。まあそんなわけで何とかきわどいところで乗り換え完了、13:19、東釧路発。

 上尾幌の密林、門静からの海岸、厚岸湖、糸魚沢の低地湿原から浜中の台地に登るまで、雨は降り続いた。車窓から眺める道のアスファルトは黒々ぬらぬらとして、今日やはり走らなくて良かった、と思わされた。
 厚岸では一転して道が乾いていた。しかしやはり、遠景はかなり霧っぽい。

 15:05、落石着。
 落石へは2年連続での輪行訪問となってしまった。駅で自転車をてれてれ組み立てて1時間。去年もこの駅には同じ時間の列車で到着して、のんびりと自転車を組み立てた。1年ぶりの待合室で、去年と同じ一人きりで自転車をのんびり組み立てていると、去年の気分を何だかまるで昨日のことのように思い出す。駅から宿へ向かうときにも霧が海から押し寄せてきて、いかにも霧の落石らしいと言えば落石らしい。おまけに天気予報通りだと、明日も輪行出発っぽい。これもまあ期待はしていなかったが、道東らしいと言えば道東らしい旅の風景ではある。確か1990年代後半、道東へ来ても滅多に晴れなかったこともふと思い出す。

 今日のカジカの宿では、夕食に毎年楽しみなサンマが出なかった。今年は根室のサンマが不漁で、まだ全く水揚げされていないとのこと。何だか全てがおかしい今年の北海道である。

■■■2013/12/8
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour13#3 2013/8/10 落石→札友内-1

標茶→(道道13)萩野→(道道951・830・町道・農道)虹別
→(国道243)仁多→(農道)弟子屈→(道道717他)札友内 72km
ルートラボ>http://yahoo.jp/q_B4n9

 4時に起きても、辺りは薄暗い。この時間なら薄暗さの程度で晴れか曇りかは判断できるが、そもそも明らかな雨の音が聞こえている。草や木々が揺れているぐらいに風もやや強い。夕べの天気予報通り、今日は根室は1日雨ということで何の不思議も無い。
 今日の予定コースは弟子屈まで。出発前に悩んで組んだ、2日がかりの根釧台地三昧コースである。昨日の雨でその半分が流れてしまっていたが、1日潰れてもまあ楽しめるように組んだコースだった。しかしいくら何でも、この天気で無人区間10数kmの道道142に踏み込みたくない。
 でも、根室から釧路へエリアと天気予報が変わる浜中町までワープすれば、何かが変わるかも(というより天気が良くなるかも)しれない。つまり、浜中駅で現地の天気を確認して、走れれば走るという方法はあり得るのだ。とにかく持てる希望は持つ、ということだけである、今できることは。

 5:40、カジカの宿発。自転車で5分ぐらいの落石駅待合室で自転車をゆっくり解体しつつ、ここで自転車を組み立てたのはたった14時間前なのだとか、今年は去年以上にカジカの宿に泊まりに来ただけになったとか、晴れの根釧台地、恵茶人海岸に会いたかったとか、未練たらたらの1時間が過ぎていった。
 それにしても何だか全然寒さを感じない。いつも早朝は半袖ポロシャツだけでなくフリースを着込んでようやく我慢できるこの辺りのはず。この不安定な天気は、西から押し寄せてくる暑さのためかもしれない、と思った。

 濃霧と雨の中からまず籠もったジョイント通過音とエンジン音が、突然ライトが、そして意外な近さでキハが54の輪郭が現れた。霧は思っているより濃いのだと思った。その輪郭がはっきりした像になり、近づいて目の前に停まった。6:19、落石発。
 根室本線乗車中はずっと雨が降り続いた。しかし、当初予定コースの根室本線横断は浜中で9時頃で、今日この後浜中町、標茶町の天気予報は曇り。このため、浜中到着時点で雨でも、9時の段階で雨が上がれば、予定通りに根釧台地へ向けて出発、事前に丹誠込めた珠玉の根釧台地区間経路を何の変更もせずに再開可能なのである。

 7:05、浜中着。まだ雨は降っていたが、このまま9時過ぎまで駅で雨が上がるのを待っていればいい。問題は果たして雨が上がるのかどうかだ。
 釧路行きから浜中駅には何人かの乗客が降りたが、地元客らしい方が迎えの車で三々五々去っていった後、待合室には朝の無人駅の訪問客らしくない軽装の女性2名と私だけが残った。私も含めて3人とも全員別口の旅だったが、雨の待合室で20分、30分経過するうちにお話しするようになり、2人がこの目的がわかった。浜中町のルパン関係のイベントが霧多布で行われるために、今日ここに来たとのこと。作者のモンキー・パンチさんも直々に来られるそうだ。けっこう賑わうイベントらしい。
 9時過ぎに2人はバスに乗って去っていった。一方、雨が止む気配は無く。まだ私は出発できない。北海道の田舎では、大雨だったのがすっと雨が上がって風が吹いて、一気に晴れてしまうことがよくある。しかし今、その気配は全く無い。そんなはずは、と思って天気予報を再び確認すると、何と朝より悪化していて、浜中町・中標津町とも1日雨とのこと。それなら今の天気は天気予報そのまま、順当で当たり前である。

 しばらく悩んだが、今日はもう根釧台地はずっと雨っぽい。だとすると、次に輪行でワープして何とかなりそうなのはもう釧網本線方面だけ。仕方無い、もう宿近くの弟子屈へ行ってしまって、現地でできることをしよう。

■■■2014/1/12
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour13#3 2013/8/10 落石→札友内-2

 9:28、浜中発。釧路行きで昨日の逆送りのように釧路へ向かう。

 途中厚岸までは雨が降り続いたが、居眠りしている内にいつの間にか上尾幌到着直前にはもう雨は上がっていた。まあしかし、根釧台地の縁を上がると天気が一変することはよくあるのだ。今日の自分の決定は間違いではなかったと思いたい。
 10:38、釧路着。雨はすっかり上がっていたが、折り返し乗り換えの釧網本線普通列車まで1時間しかない。あまり駅から遠くに行く気になれず、目に付いた駅の食堂でラーメンを食べると、かつて急行まりもや夜行おおぞらの寝台車や座席車で6時に着いた釧路駅を思い出す。いや、夜行列車が到着する6時頃にはまだ食堂はやってなくて、確か1時間ぐらいかけて自転車を組み立てた後、手持ちぶさたでも駅の食堂に入る気もせず、露骨に日食っぽい食堂の日食っぽい定食メニューをウインドゥショッピングしていたのだった。駅弁のかにめしが好きだったこともあり、釧路駅の食堂の思い出は、どちらかと言えばそんなけだるい屈折とともにある。しかしそういう私的な事情とは別に、今日のラーメンはなかなか美味しい。昨日ちょっと走っただけで疲れていて塩分が欲しいだけかもしれない。
 釧路が意外に晴れている。根釧台地から釧路まで来たら天気が変わっているというだけのことか、または遅れ気味ながら事態が天気予報通りに展開しているのか、あるいはその両方か。何にしても、弟子屈まで列車で行かなくても、途中で下車して走れる可能性が出てきたように思える。ならば列車で向かうのは、弟子屈より手前の標茶辺りがいいだろう。昨日、そして一昨日と3日連続の標茶訪問になってしまうが。

 11:36 釧路発。
 すっかり雨が上がってはいるものの、未だ厚い雲の下、釧網本線は釧路湿原の際に沿って続く。本来の広々とした湿原の外れでは、森のような灌木帯もしばらく続く。そういえば意外にもしばらく釧網本線に乗っていなかったかもしれないが、こんな明るい森は全く記憶に無い。
 釧網本線に乗るのは、思い出してみれば何と10年以上ぶりである。ちょっと待て、ほんとか等と驚きつつ2004年まで思い出して、その先は止めてしまった(結局2002年だった)。根釧台地には毎年来て走っているので、大変に意外だ。30年前の初渡道時、私は釧網本線に釧路から確か塘路まで乗って、昼の普通列車を何本か撮影してからまた釧路に帰った。土地勘と手持ちネタの全く無い状態で、1日の行動を委ねた路線なので、のんびりした実態とは裏腹にそれなりに印象はある。しかし途中の釧路湿原駅などは、もう旧駅名をすぐ出てこないぐらいに忘れてしまっていた。確かかなり何の変哲もない駅名だったような気もするし、あるいは本当は昔から釧路湿原駅だったかもしれないし、釧路から塘路までは何駅も無いので、元○○駅と言われれば思い出すかもしれない。しかし今日の釧路湿原駅では、30年前の駅名など全く関係なさそうな若者達が途中下車したり、近くで観光してきたらしく乗り込んできたり。旧駅名もそんなもの関係なさそうなお客さんが多い。別に私が思い悩む筋合いも無いのだ。こんなことで思いが巡るのは、昔の弟子屈駅が今では摩周駅だったり、斜里が知床斜里だったり、他にも何駅かそんな観光っぽい裁けた駅名に変わってしまった駅が、この釧網本線にあるからである。
 釧路湿原区間から釧路川上流部酪農地帯へ、そんなとりとめ無い考えも久しぶりの車窓風景も、10年以上ぶりなりに意外に新鮮でそれなりに楽しい釧網本線が続き、12:28、標茶着。
 着いてみれば何と昨日乗った快速しれとこ釧路行きと交換する列車なのであった。大きな輪行袋と荷物を抱えて、たった24時間振りに降りてきた私を、昨日乗り継ぎを心配して下さった駅員さんが笑顔で迎えてくれた。嬉しい再会である。

■■■2014/1/12
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour13#3 2013/8/10 落石→札友内-3

 標茶駅前に立つと、曇り空も妙に生暖かい風も全く冴えない。それでも走れそうなまでに回復しているのは間違い無い。一昨日から3回目の標茶駅で、釧路空港から数えて5回目の輪行作業を着々とこなし、13:10、標茶発。
 まず何は無くとも町外れのセイコーマートへ。念願のHotchef豚丼を、2年以上ぶりに食べることができたのは大変嬉しかった。

 その後は昨日の逆行で道道13で、少しづつ根釧台地に登ってゆく。。序盤の盛大で無駄なアップダウンは昨日通ってわかっていたので、農場をつなぐ旧道でクリア。雨で予定が大幅変更になっても昨日の経験は生かす。只では起きないぞ。
 等と無理矢理気分を盛り上げるのも、天気が冴えないからである。

 そのまま今日の宿の鱒やに向かうと2時間弱ぐらい時間が余ってしまうなと思っていた。すぐに降りだしそうな気配は今のところ無い。弟子屈〜屈斜路湖岸でもこの状態なら、以前から課題になっている屈斜路湖林道を片づけるチャンスかもしれない。ただ、弟子屈まで行ってしまうと天気はがらっと変わることがよくある。それに屈斜路湖は宿の先なので、宿まで行って帰ってくる分、しかも明日の予定コースと一部重複する分、見かけ上のお徳用感には欠ける。
 一方で、昨日民宿地平線で伺った根釧台地ベスト202kmコースが頭から離れない。コースの一部は今通っている道道13のもう少し先で分岐し、私が過去通った記憶がない道をある程度南下した後、根釧台地の縁辺りを東に向かっている。1/5万地形図で見ると、コースになっている道は牧草地の平原を通っていて、平行する別の道が何本かある。そこでコースの道を4〜50分ぐらい南下して、別の道で戻ってくることにした。ちょっとだけでも根釧台地ベストコースは味わえるし、時間も有効に使えるだろうと思った。

 というわけで、道道13の分岐を、昨日ちらっと眺めていた道道931へ。
 道は緩いアップダウンを経て、根釧台地の縁へ次第に乗り上げる。この辺りは根釧台地でも高台である。緩い傾斜で遠くに拡がってゆく牧草地や森に、防風林や点在する牧場が適度にリズムを刻み、景色は開放感と変化に富んでいる。道の傾斜も行程を阻むようなものではない。これで天気がいいと、きっとところどころで地平線まで展望が拡がるのだ。別の道だがこの辺りで過去に何度かそういう記憶もある。さすが決定版というだけあり、これだけでも202kmの素晴らしさの一端が伺えた。
 しかし今日は早めに引き返さないといけない。取り急ぎ一直線の道が終わる東海林牧場まで行ってから、少し悩んで泉川の道道で東へ。途中で町界を越え、曲がりなりにも浜中町北端に足を踏み入れた。別海町と浜中町を経由したのであれば、これはもう根釧台地を十分通ったと言えなくもない。実際には時間も距離も短いのだが、なんだかそれだけでこれが今回の根釧台地訪問だった、という気になれた。

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北海道Tour13#3 2013/8/10 落石→札友内-4

▼動画40秒 道道13 多和平手前の展望ポイント
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▼動画43秒 道道931 居心地のいい牧草地の道が続く
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2013/hokkaidoutour13/3/r0001488.wmv

 光進まで少し東に進んで、光進で北西に向かう町道で道道13方面へ戻ることにした。
 曇り空の下、防風林のグリッドをひとつひとつ進む間、根釧台地そのものの広々とした風景が続く。往きは追い風で調子良かったが、帰りはやや強い向かい風気味、しかもほんの少しだけ登り基調で、往路の快調さと比べるとややしんどくかったるい。そんなこともあって、さっきのベスト202kmの印象を思い出してしまう。エリアとしては何度か通ったことはあったので雰囲気はあまり目新しくないが、いい道だった。

▼動画42秒 広々と拡がる牧草地
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2013/hokkaidoutour13/3/r0001513.wmv
 コースを全部決めてGPSに入れておいて、しかも3日間掛けて根釧台地をたっぷり楽しめるはずだった今回の訪問。結局予定通りのコースは辿れず輪行ばかりだったが、予想外の展開で今回もいい訪問になった。3日間という期間の長さによってできることが増えただけかもしれないが、まあこれで今回は満足である。

 元の道道13に戻り、虹別に着くと16:10。弟子屈まで確か1時間ぐらい、セイコーマートで明日の行動食を買ってちょうど良い時間だ。そのまま通過して国道243で弟子屈を目指す。
 標茶町界の丘を越えて弟子屈へ下り始める途中、スノーシェッドを抜けたところで仁田農免農道へ。去年初めてチャレンジしたこの道、静かだし景色は良いしで大好きになってしまった。今回も抜かりなくこちらへ向かい、更に抜かりなく弟子屈まで2本ある道の未済の方を潰しておくことにした。

▼動画46秒 仁田から弟子屈へ緩斜面を急降下
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2013/hokkaidoutour13/3/r0001561.wmv
 牧場や牧草地のアップダウンを抜け、おもむろに弟子屈へ下り出す緩斜面を、一直線に下ってゆく道は、何だか去年通った方より雰囲気が良いような気がする。次回もこちらを使うことにしよう。

 17:00弟子屈着。
 早速町の西側にあるセイコーマートへ。明日の津別峠越えに備え、Hotchefもあるこの店で、美味しいクロワッサンを明日の朝食として仕入れておく必要があるのだ。
 Hotchefには更に弁当やらフライドチキンが並んでいるのを眺めていると、何だか食べたくなってきてしまう。せっかくのHotchefだ。でもあと1時間ちょっとで宿の夕食だしな。でもフライドチキンぐらいは食べておきたい。でも宿の夕食まで我慢しないとな。全部心の中で自問自答していたのに、いつの間にかそれが音声になって耳に入ってきていることに、
「そうなんだよ、我慢しないと。」
とつぶやいて気が付いた。声のする方向には、なな何と今日の宿「鱒や」の宿主さんが立っていた。橘さんが後ろで、にやにやしながら私にささやきかけていたのだった。ちょっとロードで走りに出て、今から変えるところだという橘さん。それっぽいタイミングだなと思ってセイコーマートの前を通ったら、案の定(笑)私の自転車が置いてあったとのこと。中に入ったら私が案の上の場所にいたらしい。

 セイコーマートからは橘さんと一緒に道道717から国道243へ。17:40、鱒や着。
 夕食は例によって美味しくバランス良くたっぷりで文句の付けようが無い。サイクリング中のバランスのいい食事は大変助かる。楽しみにしていたサンマの煮付けも出たのは大変嬉しかったが、やはり根室のサンマはかなり不漁で、仕入れに苦労されたとのこと。今日のサンマは釧路の遠洋サンマらしい。
 明日の天気予報は曇り時々晴れ。雨続きで毎日輪行ばかりして動いている間に時は過ぎ、なんと明日でもう4日目。そしてせっかくの晴れなのに、明日の終着は置戸、津別峠とチミケップ湖対策で距離を抑え気味なのだ。なかなか上手くいかないものだが、津別峠越えに向け、雨じゃなくて暑すぎないのは大歓迎だ。願わくば、チミケップ湖では具合良く晴れていただけると大変有り難い。

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北海道Tour13#4 2013/8/11 札友内→置戸-1

札友内→(国道243)ウランコシ→(道道588・ふるさと林道上里線)津別峠展望台
→(ふるさと林道上里線・道道588)津別津別→(国道240)本岐
→(道道494)チミケップ湖町営キャンプ場→(道道494)大谷
→(道道986他)境野→(道道50・農道他)置戸 116km
ルートラボ>http://yahoo.jp/adnfrL

 4時に目が覚め、荷造りしているうちに次第に周りが明るくなってくる間、聞こえないようにしていてもやはりしとしとと弱い雨音は聞こえてくる。外の明るくなる速度も遅い。ようやく何とか明るくなった空を見ると、雲はまあ曇り時々晴れの天気予報だけで絶望的にならないぐらいに厚く重く濃い。

 すっきり完全に雨が上がらない空模様を伺いつつ、出発前に橘さんが淹れてくれたコーヒーを飲みながらついつい話し込んでしまう。雨だしどうせ距離も短いと思っていると、いつもより出発も遅れ、6:30、札友内鱒や発。
 走り始めるとやはり小雨だが、天気が山裾から谷の真ん中へ場所によってすぐ変わるこの辺り。期待しすぎないように期待して進むと、果たして山裾の森に入る前、牧草地の途中で雨はぴたっと止んだ。その時点ではまだ黒々ぬらぬらだった路面も、更に釧路川河岸の低木林から屈斜路へ進むうちに乾き始め、今まで降っていた雰囲気すら少なくなってきた。しかし、意外にも気温はそう低くなく、ウインドブレーカーが必要無ければ是非とも脱いでしまえ、というぐらいに蒸し暑い。
 屈斜路湖岸では去年開発した裏道へ。低山の麓に続く開けた畑の中、細道は何とも静かで気持ちが落ち着く。それに湖面へ向かって下ってゆく地形は、伸びやかで開放的な景色を見せてくれる。相変わらず山にかかる雲は低く重いが、路面は更に乾いてきたような気もする。これなら津別峠へ向かえる。それにこの雲の低さ、ある程度登ったら逆に晴れ渡ってくれるかもしれない。たとえ湖の展望は無くても、明るい緑の森と涼しい風に身を置けるだけで大満足だ。今年はまだまともに晴れの中を走っていないのである。

 7:20、ウランコシ発。毎度のことだがすぐに始まる森の直登区間、頭上の開けた一直線の登り。カーブの先で更に少し開けた道が続いてから、おもむろに津別峠らしい森の中に突入。同時に道がぐっと細くなった。
 風も無い森に漂う霧、湿った空気が、じっとりと身体に絡まってくる。ややひんやりと、身体に優しいぐらい気温が低いのが、登り途中では大変に有り難い。湿気の中をふわふわ漂う小さい蛾を眺め、茂みの中の時々がさっという音におびえ、何度も額の汗を拭いてつづら折れを何段か登ると斜度が一段落。

 つづら折れ区間が終わり、密だった辺りの森がやや開け始める。ちょうどその辺りが400m、涼しい風もこの辺から吹き始める。暑い日に助けてくれるこの風、こんな湿気の多い日でもやっぱり吹いているのが何だか意外なような気がする。ちなみに北海道の峠道では、どこでも400m辺りでこういう風が吹き始めるように思う。それはどういうわけか道東でも道北でも変わらないのが面白い。
 しかし相変わらず霧は濃い。道の外は真っ白で薄暗く、行く手の視界も100mぐらいしかない。そろそろこの辺りから屈斜路湖が見下ろせるはずなのに。

 道が最後のつづら折れを過ぎ、峠まで最後の斜面巻き区間に入った。霧は峠まで残り100mを切った辺りから、何となく薄くなり始めた。霧の中も明るくなってきて、切れ間から青空すら見え始めている。津別峠から続く向かいの山々の稜線の、濃い緑も見えている。大変良い傾向だ。初日以来の青空である。頼む、このままどんどん晴れてくれ。

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北海道Tour13#4 2013/8/11 札友内→置戸-2

 8:40、津別峠着。
 さっき一瞬晴れそうになった空には次から次へとかなり高速で雲が動いていて、ちょっと前より辺りの霧が何となく濃くなっているような気がする。しかし更に200m登って津別峠展望台を目指すのには何の問題も無さそうだ。
 道道588からふるさと林道上里線が展望台へ向かってゆく分岐には、いつもの「蕎麦・うどん」の幟が立っていないのがちょっと気になる。そういえば何年か展望台へ着いても、売店は営業していないことが多かった。今年は営業を完全に止めてしまって、もう幟すら立てていないという事態なのだろうか。そんなことを考えていると、展望台から自動車が下って来て、津別側へと下っていった。

 ふるさと林道区間は斜度10%以上、こちらもインナーローを投入、ふらふらよたよた登ってゆく。津別峠までの道道588自体道内ではそこそこ以上に厳しい峠だが、峠を登り切った後で、この期に及んで目に見えて斜度が上がるのが津別峠の凄さである。
 尾根を回って更に直登区間へ。まだ際限無く続く登りはいい加減にして欲しいが、まああと100mぐらい。ゆっくりでも進んでいさえすれば、行く手のカーブは淡々と近づいてくる。何度かそんな曲がり角があって、登りが一端収まる最後の区間に到着できた。決して平坦ではないものの、ここまで来たらもう最終段階である。

 9:15、津別峠展望台着。
 展望台に登っても、激坂に一杯一杯になっている間に、いつの間にかさっきまでの明るさは収まって、雲は灰色に変わっていた。青空が見え始めていたさっきと比べて、明らかに雲は増えていた。というより、高速で次から次へと雲が押し寄せて、その辺に溜まっているのであった。辺りはもはや霧で真っ白、目をこらそうが心の目で眺めようが、10mぐらい向こうには断固不透明な灰色の雲があるだけで、視界はそれで終わり。あっけないものだ。強い風も大変肌寒い。風に乗って時々水滴もやって来る。まあ雨と言うほどではないのだが。
 展望台でちゃちゃっと写真を撮った後は、昨日セイコーマートで買っておいたおにぎりやクロワッサンを食べ、その後は身体が冷えそうなので屋内で一休み。やはり蕎麦屋も売店も営業していない。それどころか、どうも今年営業した形跡が見あたらない。何だか寂しいが、まあとても採算などと呼べるほどの客が見込めるとも思えないし、仕方無いことなのかもしれない。
 霧しか見えない展望台には、まあ寂しくない程度に訪問客が切れることが無い。皆さん15分〜20分ぐらい展望台やら下の広場で佇んで、帰って行くのと入れ替わりに次の車がやって来る。幼い子が「ちょうちょがいっぱい」と言っているが、親に言わせると「きゃー、それガよ、なんでこんなにいるの!?きゃー」ということで、何とも微笑ましい。

 10:10、展望台発。
 さっきインナーローで登ってきた景色が、面白いように次々と過ぎてゆくのは毎度のこと。下り始めてすぐ、忘れ物してるとしんどいぞ、と思ってフロントバッグに手を突っ込んでみるのも毎度のこと。
 峠を過ぎると多少斜度は緩くなるが、やはりそこは津別峠、緩急ある下りで当たり前のようにすぐに高度が下がり、見下ろしていた山々はすぐに正面に、そして更に見上げる位置へ、谷底の森へと急降下。そして気が付くと、周りは明らかに屈斜路湖岸より暑さを感じるようになっていた。こんなに曇りの日なのに。

 谷底へ下りきって峠区間が終了、カラマツの森の比較的緩い下りを、軽く脚を動かす程度でどんどん下ってゆく。これも毎度の事だが、しばらく下るうち両側の山の間は少しづつ拡がって、やがて道ばたに牧草地が現れ、畑が狭い谷間に拡がって農家がまばらに登場。更に谷間が拡がって上里から美都へ降りると、辺りはすっかり田園地帯。
 その辺りから、空の雲が切れ、青空が広がり始めた。気温もどんどん上がり始めているが、まだ危険を感じるような暑さではないのが有り難い。道東から北見へやってきたことを感じるが、今日は熱中症の心配をする必要はないだろう。

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北海道Tour13#4 2013/8/11 札友内→置戸-3

 11:05、津別着。下りは津別峠展望台から1時間。覚えておこう。しかし登りは確か3時間ぐらいかかったはず。
 展望台で長居したので、早いお昼にしてもおかしくない時間である。幸い津別にはHotChef付きのセイコーマートがあり、津別の先もう少なくともチミケップ湖を下りきるまでコンビニは無い。なら是非とも、というより津別で食いだめする必要がある。
 町中のセイコーマートへ向かう途中、通り沿いに洒落た木造の平屋建て多目的施設「さんさん館」を発見。そう言えば、確か去年津別に泊まった時、夕食後のセイコーマート買い出しでこんな施設ができていたことを発見していたことを思い出した。食堂も併設されていて、そうだそうだと思って覗くと、「野菜カレー」の文字が見えた。その途端、頭の中が地元産の野菜で一杯の美味しそうなカレーの映像で一杯になってしまった。こういう地産の食べ物に、私は極端に弱いのである。それにここ2年の懸案事項、セイコーマートの豚丼は、一昨日目出度く修了している。
 というわけで、野菜カレーを普通盛りで注文。外は、特に町中の通りは日陰が全く無く、かなり暑い。こういう状況では、大森のご飯はちょっとつらいものがある。一方でここで一杯食べておく必要はある。相反する必要条件だったが、出てきたカレーはやや大盛り気味。しかも野菜たっぷりで美味しく、全ての条件を満たしてくれたのは大変有り難かった。

 店を出ると空にはまたもや雲が拡がっていたが、もう先へ進むしか無い。セイコーマートにも立ち寄って、パンなどを補給。こういうときには問題無く豚丼があるのが悩ましい。
 12:05、津別発。

 国道240は意外に車が少なく、直射日光が無いとそんなに暑くもなく、やや追い風気味なこともあり、そう気分は悪くない。しかし、本岐からケミチャップ川の谷間の道道494に入ると、雲は次第に低い位置に下がってきてしまった。曇らないでくれ、折角久しぶりに青空のチミケップ湖に出会えると思っていたのに。雨の根釧台地を2日連続輪行で移動して(という程でもないが)、ようやく今日1日フルで走れてチミケップ湖目前だというのに。等と思っていると、残り3kmのダート区間では再び青空が現れ、明るい緑の木漏れ日が輝くようだ。

 13:15、チミケップ湖着。
 森の向こうの湖面をのぞき込むと、チミケップ湖の上空の、そう高くない位置を、再び雲が覆い始めていた。対岸もやや霞っぽい。柔らかい光に照らされ、木立に囲まれた浅い入り江は澄み、底に溜まった落ち葉や枝、泳ぎ回る小魚がよく見えるので、少しそれだけ眺めて先へ。まあ雲はどんどん動いているようだし、すぐにいは雨にならなさそうだし、希望的観測で行こう。
 湖岸ダート区間はいつにも増して砂利が少なく、走りやすい。曇りのため木漏れ日は無く、路上は木立の粗密でなんとなく明るくなったり暗くなったりするだけだが、チッチゼミの声が響く中をのんびり廻ってゆく楽しさは、ここならでは。私的最上級のダートである。毎回高くて泊まれないチミケップホテルを眺めるのも楽しい。
 キャンプ場へ着いたらまずは岸辺近くの定位置へ。バイクのカップルが隣の木陰にやってきて、こちらをちらちら眺めつつ昼食を始めた。何となく時々視線を感じるものの、写真を撮らずに定位置の木陰を明け渡すほど私はお人好しではない。でも、あまりやかましく傍若無人な行動を取る人たちじゃなかったので、ちょっと意地悪だったかもしれない。

 曇りであっても辿り着いたチミケップ湖はチミケップ湖、予定通りしばらくのんびりぼうっとする。晴れていないのはあまり予定通りじゃないが、先の行程はもう目処が付き、去年ほど天気の心配も無い至福の時間であることは間違い無い。この水際なのにアブが何故か少ないこの場所、虫刺されの心配は少ない。時々人畜無害のマルハナバチが好奇心旺盛に近寄ってきて肌を歩き回る。何もしなければ何もしないハチだとはわかっているが、やはりハチなのでちょっと怖い。しかし、湖面のさざ波の水音と、トンボの羽音が、何だか慌ただしく平和なハチを追い払うのをためらわせてくれる。
▼動画39秒 湖岸からチミケップ湖を展望
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北海道Tour13#4 2013/8/11 札友内→置戸-4

 さっきから低い位置で空を動く雲の動きがかなり速い。もしかしたら雨が近いのかもしれない。時々水滴も感じる。そう思っていると、雲が切れて明るい陽差しがかっと現れたりもする。大急ぎで写真を撮っておくものの、湖岸から湖を望む定番アングルだと青空は入らない。うまく行かないものだ。
 この陽差しが雲に隠れると、次の雲の巨大さから言ってしばらく陽差しは隠れたままになりそうだ。そろそろ潮時かもしれない。

 14:50、チミケップ湖発。
 湖岸からはどこへ行くにも外周の山越えダートとなる。今年は道道494で日の出方面へ。YMCAのキャンプ場脇を過ぎ、何故か少し山間の舗装区間を経由してから、森の稜線を越えて北見盆地へ降りる道だ。出発すると何故かまた青空が見え始めたが、どうせ湖岸へ戻ったらまた雲が空を覆うのかもしれない。たっぷりチミケップ湖岸を楽しめたので、今日はもう満足だ。
 道は年によって所々砂利が深いものの、概ね最上級の良好ダート。前回大雨の中で越えた道だが、時々現れる覚えている景色や曲がり角の登場の順番が記憶の順番と違ったり、登りだと思っていた場所は下りの景色だったり。前回大雨でいかに苦しかったか、自分がカワイソウになってきてちょっと可笑しい。今日は至ってのんびりと穏やかな森で、何となく茂みの中から熊が出てきそうなのが心配なだけだ。ちょっとだけしんどい稜線越えも、インナーローさえあればのんびりこなせる、静かなとても楽しい道だ。
 稜線区間、ピークを乗り越えて北見側に出た辺りから、いつの間にか緑色の木漏れ日が道を包んでいるのに気が付いた。陽差しが再び現れていたのだ。

 緑の森、緑の木漏れ日の中を、おもむろに下り始めた道のままにポンオロムシ川の谷間へ。狭い谷底に下りきっても、川と細い道が寄り添って少しづつ追いかけ合うように高度を下げ、林道と合流、舗装に替わって更に下る。下っているとけっこう長い下りである。どんどん通り過ぎる森の緑に、さっき降りてきた津別峠からの下りをふと思いだす。
 道幅が拡がって、更に谷間が急に開けると、辺りは突然畑に変わった。北見盆地の山裾に降りてきたのだ。空には再び青空が拡がっていた。

 大谷からここまでとは打って変わった開けた平地、幅広一直線の道となる。根釧台地の一直線道路と違って、両側を山に挟まれた平地に続く道は、どこまでも開けた開放感は少ない。しかし行く手は果てしなく一直線、何だかひたすら単調な印象がある道だ。
 しかも夕方とはいえ北海道有数の暑さで知られる北見盆地。目的地の置戸は西方面、谷間の方向と眩しい夕陽に向かって続く単純な道を、とぼとぼとひたすら脚を回す。こうなると、車の少なさだけが救いである。

 17:00、置戸「若者交流センター」着。食事提供の無い町営の宿ということは予約時点で知っていたが、それにしてももの凄く直截な名前の施設である。置戸という町は、町の規模としては珍しく、他にそれっぽい宿は無い。それで選んだこの宿だったが、到着してみればその実態は、飾り気無いもののかなり小綺麗でびっくり。尋ねてみると、元置戸高校の冬期の寮とのこと。そういえばシャワールームも各部屋付きで、ちょっと高く造ってあるベッドの下に棚があるのが何とも学生寮らしい。
 夕食が無いのが玉に瑕だが、置戸にはセイコーマートがあるのを知っていたので、全く問題は無い。更に3年前に熱中症直前で避難した、美味しい蕎麦屋もある。これ以上何が要るだろう。
 というわけで、汗を流した後、まず3年ぶりの美味しい蕎麦を戴いてから、セイコーマートへ。翌朝のカップ麺まで買い込んで部屋に戻る段階で、ようやく辺りが完全に暗くなった。風も涼しくなっている。
 こんなことをしていると、ようやくいつものツーリングらしい気分になってきていることに気が付いた。いつの間にか4日目が終わろうとしているものの、まだこれから6日ある。天気がさんざんだった道東から今日は北見へ、明日は十勝経由で南富良野へ。また明日も希望を持って前に進もう。

■■■2014/1/20
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北海道Tour13#5 2013/8/12 置戸→幾寅-1

置戸→(町道・道道211他)勝山→(道道1050)常元
→(道道88)芽登→(国道274)上士幌→(道道337・農道・町道他)瓜幕
→(道道593)岩松→(道道718他)新内
→(国道38他)幾寅 166km
ルートラボ>http://yahoo.jp/2AaNAL

 前夜見た天気予報は晴れ時々曇りだったが、4時に目覚めてみると、まだ薄暗い夜明けの空は紛れもない晴れ。辺りがどんどん明るくなるにつれ、空の色は明るく透きとおった色に変わっていた。
 今日は久しぶりの道道88。長大無人区間を擁する、十勝と北見を結ぶ道である。十勝へ出たら、これまた久しぶりの十勝北部横断コースから狩勝峠越え、そして夕方の北落合を眺めて、幾寅へ向かう見所一杯のコースだ。北落合は、今日夕方と、明日早朝のW訪問の一発目だが、十勝も含め、各展望ポイントでは是非ともおちついて風景を味わいたい。また幾寅では、宿の夕食の代わりに、大好きななんぷ亭のなんぷカレーを食べるというミッションもあり、今日の営業も確認済みだ。
 雨が続いてぶつ切り気味の今回の行程、思えばまともに150km以上走るのは、今日が初めてなのだ、5日目にして。迷うこと無く出発しよう。今日は幾寅まできっちり走らねば。

 5:25置戸発。周りは朝日で真っ赤っか、町中であっても鮮やかだ。空気はきりっと冷ややか、風も無く爽やかとしか言いようが無い。空には夜の霞の残りのような薄い雲が漂っているが、むしろ今日の晴天を予感させるものに見える。
 基本的に進むべき方向は道道211沿い方面だが、周りの麦や背の高いトウキビ畑が赤みを帯びて鮮やかなのを見ると、どうしても畑の中を走りたくなって、町外れから谷間の反対側に並行する町道を経由。静かな道をてれてれ流しながら、早出によるまだ自分自身が寝ぼけているようなのんびり感を味わいつつ、むしろこういう景色が一昔前の道道だったよなあ、と思う。道道は近年拡幅が進んで、冬の暮らしには間違い無く便利なのだと思うが。夏の自転車ツーリングには高規格になりすぎた。

 谷間が次第に狭くなって再び道道221に合流すると、この谷間最後の町、勝山に到着。
 勝山で十勝へのメインルートは道道1050と名前を変え、同じ谷間を進んで常元へ向かい、道道88と分岐して小さな丘を越え、一つ南の谷間で十勝へ向かう。一方道道211は勝山で終わりなのではなく、勝山から分岐するその一つ南の谷間を峠無しのダートの春日林道として遡り、最後は道道88に合流する。つまり、新ルートの道道1050の方が現在はメインルートなのだが、谷筋として道道211〜春日林道の方が、連続している谷間なのだ。
 この道道211〜春日林道は、私にとって長年の懸案となっている。初めてこのルートを通った2000年、既に道道1050を経由した全舗装コースは開通済みで、当時道道211〜春日林道は長い間通行止めだった。その後も通行止めだったり時間に余裕が無かったりして、毎回通りそびれていたのである。
 今日は特に通行止め表示は無い。何となく道道211へ向かおうかどうか、さっき置戸で飲んだばかりなのに、ちょっと缶コーヒーを飲みつつ悩んでみる。しかしまだ6時。狭い谷間の森では熊が怖いような気がする。2005年ぐらいに全国で熊が里でも目撃されるようになって以来、もう以前のように気軽にダートに突入するわけにはいかないのである。まあちょっと脚を停めるネタが欲しかっただ、などと思いつつ、取り急ぎ勝山を出発。

■■■2014/1/26
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■■■高地 大輔
北海道Tour13#5 2013/8/12 置戸→幾寅-2

 常本手前の鹿の子温泉には2002年に泊まったっきり。その後営業をやめたとの情報を耳にし、時々通る度に様子を伺っていた。毎回営業しているとも閉鎖されたとも確信は持てなかったが、今回は建物にもう完全に人気が無く、茂りつつある草の中で次第に朽ち果てつつあるのが確認できた。

 常元で道道88、芽登方面へ分岐。隣の谷への丘越えは標高差160m程度だが、毎回そう思っていると7%基調の登りはなかなか堪える。取付の一登りが一段落する頃には、早くも汗だくになった。今日も木陰はまだ爽やかなのに、早くも陽差しは高く上り、厳しくなり始めているのだった。勝山で道道211へ向かっていれば回避できた坂だなどと思ったりもするが、たかだか160m。誰が考えても熊の危険を避ける方が優先する。

 丘からちょっと下ると、峠へ続く山間の谷間が眼前に開ける。あまり無駄は無いのが心の救いの丘越えである。なだらかに前方へ向かってゆく谷間には高いカラマツが広がり、道はその中を直線基調で延々と、標高711mの峠へ向かって登ってゆく。カラマツの大森林が拡がる谷間はこの先峠を越えた十勝方面にも続き、谷間には小山がぽこぽことアクセントを効かしてこの道の特徴ある景色となっている。
 芽登まで47km、非常に長いこの道の峠には、名前が付いていない。峠の名前があるにも無いにもいろいろな理由があって、どちらが偉いということは無いのだとは思うが、この峠には何だか名前があってもいいような気はする。しかし一方、名前が無いのも、いかにも延々続く無人のカラマツ大森林を単純に登って下るこの道らしいような気もする。
 そんなとりとめないことや、普段の生活のどっちでもいいようなことが頭の中に浮かんでは消えつつ、カラマツの森と長い直線の行く手のカーブ、周囲の山を眺めながらのんびり進む。北海道の山中らしい大樹海の中、延々と続く1本道の俯瞰をイメージすると、その中心にいるのは、かなり緩い坂でも坂というだけでペースががくっと落ちる自分であり、雄大な景色に一気に哀愁が漂う。目の前の景色は素晴らしく、いつもツーリング中考えるのは、今考える必要の無い下らないことばかり。無人で単調な景色が、混沌たる思考を更に助長する。
 まあ早出すると、たとえ20分の余裕であってもこういう状況下での心理状態が全然違って、のんびりと落ち着いた気持ちで進めるのだ。気持ちだけの問題ではないかとも思うが、いや、こういう気持ちの問題はとても大切なのだ。

 辺りの陽差しが急に消えて気が付いた。いつの間にか空には青空が無くなっていたのだった。いや、時々辺りが再び明るくなったり、青空が雲の切れ間から現れて消えたりしていたが、雲はもう頭上の低い位置を素速く動いていて、前方下手から一気に空の低い位置全体に押し寄せた。峠手前辺りでは何だかその色が白から明らかな灰色に変わり始めた。あまり良くない傾向だ。

■■■2014/1/26
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北海道Tour13#5 2013/8/12 置戸→幾寅-3

 7:50、峠着。7時台に峠を通過できた。間違い無く早出効果が大きい。しかし峠部分はもともと景色が拡がることは無く、だだっ広い駐車帯と、ガだらけのあずまやがあるだけだ。おまけに今朝は先客の車がいる。ここはそのまま通過しておく。

 本来かなり距離がある北見地方と十勝地方の間を、たかだか700mちょっとのそう高くない峠で越える道だけのことはある。峠部分下手の60mはまあ下りらしい下りが続くものの、その先には果てしなく延々と下っているのか何なのかわからない下りが延々と続く。あきれるほどに景色は森と茂みだけ。ぽこぽこっと丸い形の低山が、開けた谷間の行く手に現れては通り過ぎてゆく。
 下るとともに、さっきの厚い雲により、空はもう完全に覆われ始めた。最後の青空が現れてすぐ消えると、行く手の彼方が何となく霧雨っぽく霞み始め、路面には次第に濡れた痕跡が現れた。痕跡は次第にあまり時間が経っていないものとなり、路面一杯に黒く拡がって、もう雨は時間の問題かもしれないと思い始めたところで、ちょうど水滴がぱらぱらっと落ちてきた。
 水滴は最初ちょっと感じてはすぐ止む程度だったが、美利別ダムを過ぎる辺りで完全に、しかも本降りの雨となった。地図上に描かれているものの何故か毎回記憶が無かった美利別ダム。道から近くとはいえ、森の中のダムはみちからはかなり見えにくいのが理由だが、今回初めてその端っこを認識することができた。それもこれも雨具を着込むために停車したのが「ピリベツ取水堰」の看板前だったからで、そこで停まった理由も、本来屋根か木陰を探していたが全く見当たらず、それだけが目立つ人工物だったからだ。

 芽登温線への分岐がある西芽登辺りまで降りてくると、この道特有のだらだら下りは更にだらだらとなり、下っているのか何だかほとんどわからない程度となった。時々上りもあるようだが、全体的に脚を回すと何だか快調なので、下り以外にあり得ないのがわかるという程度。それでも西芽登から芽登までまだ8kmもある。全く長い道だ。
 結局芽登に着く手前まで雨は降り続けたが、さすがに集落だけあって芽登手前で急に雨は弱まった。9:10、芽登着。

 勝山以降の長い道の後、初めての集落であり、十勝の縁から少し外に位置する芽登。段丘から降りてきた谷間の底の低い家並みのこぢんまりとした集落は、実用的にはあまり商店らしいものは無いのだが、私的には初北海道ツーリングの1986年から印象的な集落だ。そんなことを考えながら集落片隅の軒先で雨具を脱いでいると、また雨が降り始めて止んだ。もう今日はずっとこんな感じなのかもしれない。

 国道241の、その名も「芽登坂」という十勝平野縁への登りでは、再び雨が降ってきた。雨に打たれて登る乗用車や大型車の通過する国道は、さっきまでの静かな道の後だけに気持ち的に大変つらい。なるべくつらいということを考えずに十勝平野の縁を越えると、再び雨は止んでくれた。しかしその代わりかなり濃厚な霧が現れ、せっかくのこの場所で急に拡がる十勝の畑も、今日はほとんどど視界が効かない。しかも夕方かと思うぐらいに薄暗い。やはりこういう天気なのだ、今日は。朝は今日1日快晴が続くはず、いや、そういう目論見だったのになあ。

 十勝平野の縁を越えたら、もう上士幌までだらだら下り。道はずっと広々とした畑や牧草地の中に続いているはずだ。国道ではあるが、その開放感や遠望する大雪の山々が楽しみな道なのだが、今日の霧と低い雲はひたすらその景色を薄暗く単調にしていた。上士幌に近づくにつれ、次第に路面は乾き始め、濃霧はそのうち視界300mぐらいまでに晴れてきたものの、下り貴重なだけが救いだった。
 10:05、上士幌着。
 上士幌には一昨年訪れて、セイコーマートがあるのがわかっている。確か帯広で豚丼を買ったばかりで豚丼を諦めなければならなくて勿体無いという印象があるので、Hotchefもあった気がする。その上士幌にお昼前到着、ここは豚丼を食べる絶好のチャンスである。果たしてセイコーマートにはHotchefがあり、更に目論見通りにちょうど作ったばかりのセイコーマートの豚丼を目出度く食べることができた。一昨日もそうだったが、チャンスを狙えば何とかなるものである。合宿合流前のサイクリング部の学生さん達とお話しすることもできた。

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■■■高地 大輔

北海道Tour13#5 2013/8/12 置戸→幾寅-4

 10:45、上士幌発。
 音更川に沿って町道へ。以前の私的十勝北部横断コースは国道274主体だったが、今回大幅にバージョンを上げて(?)みた。
▼動画50秒 十勝北部横断 上士幌〜上音更 十勝広々
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 上士幌の手前辺りからだいぶ視界は改善されていたが、やはり空の雲は低く厚い。2年前に通って見覚えのある景色のそのまま上半分だけが雲に切り取られている。実際に山裾に近づくと小雨となったり、平地へ向かうと打って変わって路面からしてすっかり乾いていたり。

 瓜幕西では、少し高度を上げ、道が平野部の縁へ。広々と高原状の丘陵地帯、牧草地に続く道は大雪の山裾に囲まれ、何とも見晴らしがいい。ほんの短い区間だが、さっきまでの長かった十勝平野北端の景色とは、このコースの印象の中では相対する。
 以前の国道274もずいぶん延々と長い区間だったが、今回のコースで上音更、東瓜幕と辿っていると、更に道のりが長く感じられる。基本的には縦横をまとめてこなすか道を乗り換えて分割払いするかの違いなのだが、登ったり下ったりの変化が距離感と走り応えにつながっているのかもしれない。まあそれだけに、以前より十勝の縁をよりディープに走れているという印象はある。グリッドを乗り換え、十勝平野の北端あたりを西南へ向かう上で、曲がり角を悩まずにすいすい道を辿れるのは、ルートラボで事前に描いたトラックをGPSに入れていることが大きい。
 上りが続いたり山裾に近づくと、時々雨がぱらつき始める。山裾に近づくと、低い雨雲に捕まるのだ、と思った。
▼動画36秒 十勝北部横断 鹿追辺り
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2013/hokkaidoutour13/5/r0002078.wmv

 東瓜幕から先は、ここまでの十勝平野からおもむろに200m以上の標高差を一気に下り、十勝川の谷間へ。豪快な谷間の眺めに、逆方向だと登りが大変億劫なのを納得。ここで再び雨が降って、谷間から屈足の段丘平野部に出て雨が止んだ。やはり山裾では天気が不安定なのだ。
 屈足の台地からは十勝北部横断道最後の区間だ。100mぐらいのアップダウン2回の初めての道だが、いきなり狩勝峠へ登る国道38の新内下手に出るのが大きなメリットである。この十勝横断道の西部は区間が分節的で、なかなかボリュームを記憶や印象として把握しにくい。

 新内の下手で遂に国道38に合流、狩勝峠への登りとなる。高速無料化でやや印象の変わった道内幹線国道の例に漏れず、やはり以前より車は減っているが、まあそれでも国道の範囲内だ。何より辺りの雲が厚く濃厚で、峠からの十勝平野展望は無理みたいな気がする。
 14:30、新内着。上士幌から4時間近く掛かったが、まあ思えばそれぐらいのボリュームはある区間で、通過時間としては私的には順当だ。しかし途中の自販機をことごとく通過してきたお陰で、ボトルの水が無くなっている。それに一昨日まで、いや、昨日午前中までいた道東の涼しさから十勝は別世界で、ちょっとした坂で身体中から汗が出る。十勝平野である限り人里は途切れないので、さっきまであまり水の心配は無かったし、実際単純に面倒で寄らなかった。そこでさっきの国道合流点辺りで一気に何か仕入れようと目論んでいたのだが、期待に反して国道沿いは想像以上に寂れていたのだった。
 しかし捨てる神あれば救う神あり、ちょうど良く登場したSLホテルに、吸い寄せられるように立ち寄ることにした。今まで前を通過するだけだったSLホテル、ひょんなことでお世話になる機会ができたのだった。
 根室本線旧狩勝峠の主役だったD51と、営業車両としての北限は青森止まりで北海道を走ることの無かった20系客車が置かれている元根室本線の新内信号場跡。なかなか注目したい状況ではあるものの、取り急ぎ水問題を解決したいのであまりしげしげ眺め入る気にはならない。なんとなく水を戴けそうな場所を探して広く高低差のある構内を少し右往左往し、結局レンタサイクル置場裏手の給水栓で有り難く給水することができた。

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北海道Tour13#5 2013/8/12 置戸→幾寅-5

 14:45、新内発。SLホテル敷地の裏手を抜け再び国道38へ、幅広の道とやや高速で素っ気なく通り過ぎる車が、私を待っていてくれた。狩勝峠らしいと言えば狩勝峠らしいし、走り始めてしまえば意外に気にならないものでもある。ただ、ますます雲の色が濃くなっているのが何とも不気味である。頼む、もうこれ以上降らないでくれ。
 という願いもむなしく、間もなく標高500m辺りで、雲が限界まで低く頭上に近づき絶望的に真っ暗になり、満を持してぱらぱらっと水滴が落ち始めた。と思ったら、もう50mぐらい向こうに白濁したような壁が立ちはだかってにじり寄ってきて、辺りは一気に豪雨に包まれた。速攻で雨具を着込むものの、すぐに路面が川に変わるもの凄い大雨である。不幸中の幸いというか、帆布バッグの荷物は全部内防水の袋に入れてある。しかし、あっという間に帆布バッグの防水コーティング上に水たまりができているのが凄い。
 峠まで標高差は140m。とぼとぼでものろのろでも、進んでさえいれば残りは確実に少なくなる。峠まであと80m辺りからの盛大なスノーシェッドが、今日は大変有り難い。雨から逃れた、ここ独特の広いコンクリート覆道の中も、何だか湿気で曇っていた。

 スノーシェッドが峠直前で終わると、峠周辺では雨がかなり弱くなっていてくれた。助かった。しかし前方も頭上も、濃霧で真っ白である。50m先の視界が効かない、かなりの濃霧である。弱いものの雨はまだ普通に降っている。計画前からずっと期待していた十勝の展望は、もう望むべくも無い。
 15:45、狩勝峠着。そろそろ空腹も感じ始めていたし、最初からここで何か食べようと思っていたので、お馴染みのドライブインあくつの「展望閣」で蕎麦を戴くことにした。

 蕎麦を食べている間に雨が止んだのは良いが、一方霧は更に濃くなっていて視界は50mを下回っていた。もうこの先北落合の景色も絶望的だと思った。そもそもここまで何度かの雨宿りで時間も押し気味、自動的に幾寅直行である。
 16:15、狩勝峠発。
 どれぐらい茂みに埋もれているか、国道からの眺めを楽しみにしていた狩勝信号場辺りでは視界は50mぐらいに復活した。まだ道の外は何も見えなかったが、その先霧は次第に薄くなり、斜度ががくっと一段落する辺りではまあまあ行く手の視界は通るようになった。更に北落合への農道北落合線が分岐するルーマ手前で、空の隙間に青空が見え始めた。下ると共に回復傾向で、こうなると北落合に向かう自分をイメージし始めるのが我ながら現金だが、いやいや、騙されてはいけない。北落合まで標高差は100m以上、さっきの狩勝峠より高い場所もあるし、それに谷間のこの辺で雲が高いからと言って、山裾の北落合で霧がこのままだという保証は何も無い。それに北落合は明日も訪れることができる。こういう場合のための2段構え計画なのである。今日は幾寅に着いてからのミッションもあるし、早めに幾寅に向かうべきだ。

 落合から幾寅までは更に下り。適当に脚を停めたり動かしたりしながら、距離感と印象よりすぐに到着する。16:50、幾寅着。
 町の先にあるセイコーマートで、明日の朝食と行動食を仕入れてから、今日の宿坂井旅館へ。

 風呂の後は、いよいよ本日最大のミッション、なんぷ亭でなんぷカレーに望まないといけない。
 いつも幾寅に努めて立ち寄って戴く私的幾寅名物のこのカレー。前回食べたのは2年前だった。今回は豪華になったメニューにお品書き、食べる前は何だかお上品な佇まいの食品に変わってしまっていたような気もしたが、食べてみるとボリュームたっぷりでとても美味しく、充実ぶりに驚いた前回から更にパワーアップしていて心配は杞憂だったことがわかった。

 明日の天気は曇りのち晴れ。行程は北落合経由で美瑛まで、展望ポイント各駅停車でかなりボリュームは少なめだが、晴れの北落合を朝イチで訪問することになっている。狩勝峠で悩まされた雨雲は通過しつつあるような気もするし、予定通り早朝から出発し、余裕ある行程としたい。

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北海道Tour13#6 2013/8/13 幾寅→大村-1

幾寅→(北落合農免農道他)北落合→(北落合農免農道他)幾寅
→(国道38)西達布→(農道・道道253)麓郷→(道道253)布礼別
→(町道ベベルイ基線他)東中→(道道298)上富良野
→(道道298・農道他)美瑛→(農道・町道)大村 119km
ルートラボ>http://yahoo.jp/9cXWnF

 夜中、外に雨音らしい音が聞こえて耳を疑った。せっかく2日北落合へ向かえる行程を組んでいたが、昨日は雨と霧で北落合への訪問を断念していた。明日も北落合へ行けなくなるのは大変残念なことだ。
 しかし、夕方晴れていても夜中に雨が降るのは別に珍しい事ではない。ましてや上川地方の一番山奥なのだ。それに、布団の中で耳を疑ったからって天気が変わるというものではない。気にしたって気付かなくたって、朝には降っているか雨が上がっているかのどちらかなのだ。

 4時に起きるとまだ雨は少し残っていたが、何とか5時過ぎには順当に相当弱くなり、5時半過ぎにはほぼ完全に止んだ。それでもまだほんの少し、顔面に水滴を感じつつ、6:10、幾寅発。
 まずは幾寅川沿いの谷間を、農免農道北落合線で遡る。雨はとりあえず止んだものの、谷間の空気にはまだ湿気がたっぷり残っている。水分とともにしんと静かな森や茂みは、なんだか大型野生動物が潜んでいそうで大変ブキミである。そんな森と茂みの中、誰も通っていないアスファルト道路の範囲だけの人里の香りと、この先の北落合のイメージを心の支えに、少しづつ段階的に上がる斜度で落ちたペースで、そろそろおそるおそる進んでゆく。しかし時々路上を寝ぼけたように歩いているミヤマクワガタが、その不安な気持ちを和らげてくれた。中にはけっこうな大型クワガタまで登場した。

 道ばたの畑が狭くなり、森と川原と道だけになり、ぐいぐいっと道が登り始めて少し経つと、突然牧草地の土手が前方に登場。土手を回り込むように登り詰めたところで、突如それまでの狭い空間からは想像しにくい北落合の畑が拡がった。
 7:10、北落合着。
 頭上には相変わらず低い雲が垂れ込めているが、動き続ける雲の隙間から、ほんの一瞬青空が見えた。少し待てば晴れの北落合に出会えるかもしれない。今日はどうせ美瑛へ行くだけだ。個々北落合で680m地点に行かないと時間が余ってしまうぐらいに余裕があるのだ。というより、北落合でゆっくりするための、2日がかりの計画なのである。夜中には一度諦めかけた北落合に、今到着したのである。焦らずに落ち着いた訪問にすべきだ。

 元学校などが点在する北落合中央には、商店の類は一切無い。小学校には給水栓はあるものの、まだ敷地内に入り込むのも気が引けるぐらいの朝である。しかもそもそも水はまだ一杯ある。
 そのまま680m地点に向かって進んでゆくと。隆起する丘には牧草地や野菜畑、防風林が広がり、農家が点在する。しかし、拡がる畑や丘を縫って続く道は、目の前の景色として眺める分にはなんだか開放的だが、脚に感じる抵抗は間違い無くこの道が5〜6%ぐらいの坂であることを教えてくれる。まあしかし、昔の美瑛とよく似ている景色を、落ち着いてのんびりゆっくり眺めることができるとも言える。思えば昔巡った美瑛の丘は、ここ数年ますます観光化して親近感が無くなってしまった。北落合の風景には伸びやかな印象と個人的な郷愁が感じられ、北海道の中でもとても好きな場所なのだ。

 680m地点は、北落合の一番上手にある。一直線の道が最後の10%ぐらいのひと登りで、畑の縁に乗り上げるこの場所で、しばらく休むことにする。
 昨日の狩勝峠から今朝未明まで、天気で何かと危ぶまれた北落合訪問だったが、思い切ってきてみて良かった。のみならず、昨日の狩勝峠より標高の高いこの場所で、何とまだ7時台。幾寅泊の効果が遺憾なく出ている。しかし、空気は朝の爽やかで一杯だが、いかんせん天気は曇りで湿度も高く、ややぬるいそよ風と共に頭上のかなり低い位置を薄いグレーの雲が高速で次々に通り過ぎてゆく。さっき北落合中央で青空が見え始め、辺りが明るくなってはきたものの、今は再び薄暗くなって、顔に水滴がぱらぱらっと落ちては止むこともある。
▼動画46秒 北落合680m地点到着 曇りだけど私的に感動的
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2013/hokkaidoutour13/6/r0002206.wmv

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北海道Tour13#6 2013/8/13 幾寅→大村-2

 上川地方の天気予報は曇り。しかし、この山奥では予報はやや危険側に見込む必要がある。このまま天気が悪化しても、何の不思議も無い。更に言えば、今日この先の行程で、途中天候が悪化しても何の不思議も無いのだ。そう考えると、今目の前の風景を精一杯楽しんだら、あまり必要以上に長居せずもう次に進む方がいいような気もしてきた。いや、そもそも必要以上の必要とは何なのか、という問題はあるが。

 しかしあまりうじうじ考えていても、天気は一向に変わらないような気もしてきた。ちょうどまた水滴をぱらぱらっと顔に感じ始めたところで、もう下り始めることにした。これが今年の北落合訪問なのだ。
 8:10、北落合680m地点発。

 登ってきた景色が次々逆回しで現れて過ぎてゆき、北落合中央を過ぎて再び谷間の森へ。更に幾寅へ下る途中、頭上の雲が切れ始めた。と思ったら青い部分がどんどん晴れてゆく。しまった、もう1時間最高地点にいても良かったかもしれない。しかしもう、登り返す気はしない。
 一方で路上はどんどん気温が上がっている。あまり未練がましく北落合に思いを残さずに、まだ朝の涼しさが残っている内に先に脚を進めなさい、というツーリングの神様のお達しかもしれない。
 再び下って来た幾寅に、もうあまり用は無いようにも思えた。が、セイコーマートがあるならと、表敬訪問のように立ち寄って缶コーヒーぐらいを飲んでから、9:00、幾寅発。

 国道38の樹海峠は、幾寅側だと登り総量は80mちょっと。まあまあ車も少ない。斜度も緩い。学生サイクリング部の合宿部隊っぽい集団も、楽しそうにみんなで登っている。まあこちらは荷物も少ないし鍋もお米も積んでいませんし、順当に樹海峠を越え、展望の写真を撮るぐらいの余裕はあった。
 下りきって西達布に降りてくると、もうすっかり晴れ。陽差しがじりじり、広い道と谷間を焦がすように照りつけ始めている。気温がぐんぐん上がり始めていたのだった。道ばたの商店前の自販機で早くも水をがぶ飲みすると、面白いように水が身体に浸みてゆく。
 9:35、西達布発。緩斜面に隆起する老節布の畑と、しらはぎ、あやめ、くろまつ、いちい、とどまつなど、平仮名の植物でで名付けられた小集落をじぐざぐに登ってゆく農道、道道253を、緩登りに乗じてのんびりのんびりゆっくり進む。ジャガイモ、とうきび、人参、麦、玉ねぎ等々色とりどりの畑が覆う周りの丘は、北海道の田舎らしくカラフルな農村風景で、地形の隆起による空間の変化もとても楽しい。本来麓郷から西達布へは西瓜峠経由のダートも通っているが、西達布・老節布・麓郷は、北落合同様ここ数年私的定番コースとなっているのだ。

 老節布を登り詰めると、麓郷への峠の手前に拡がる、平沢の丘である。平沢は「北の国から」最終回となっている2002年版でも、最後に重要な役割を担う登場人物の住む地として登場する。その平沢の下手の丘は、麓郷へ向かう登りの途中で一端ピークになっていて、老節布方面から占冠方面の山裾へと続く広がりと、振り返ると平沢の畑が一望にできるのだ。この道のいい休憩展望ポイントというか、展望の無いこの先の峠部分より景色上のハイライトとなっている。今日は先客もいた。
 もうすっかり晴れて明るくなった景色を眺めてから、麓郷への最後の登りへ向かうと、暑くて汗がだらだら吹き出る。もうそんなに登りは無い。水をがぶ飲みして何とかごまかして徒然なるままに峠部分を過ぎると、森の中を下って、大きな十勝岳と大麓岳が立ちはだかる麓郷の畑に降りてきた。下りきる直前に蛍橋なんていう橋もあるが、これは何だかドラマを現実が追いかけているような楽しさがある。

 10:55、麓郷着。いつもの交差点のAコープ前の野菜売店で、いろいろお土産関係をこなしたり、いつも楽しみなここのトウキビを4本も食べたり、ついつい長居してしまった。まあここで長居してしまうのも毎度のことで、「仕方ねえなあ」という感じではあるのだが、予想していようが承知していようがやはり否応なくあっというまに然るべき時は過ぎ、陽差しは更に頭上に高く登り、更にじりじり鋭く厳しくなっていた。

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北海道Tour13#6 2013/8/13 幾寅→大村-3

 11:55、麓郷発。
 十勝岳と大麓岳を眺めながら麓郷の畑を布礼別へ。布礼別からは十勝岳に向かって、開けた畑の中100mの登りとなる。開放的な風景の直登は、視覚的にはあまり坂であることを感じないが、景色と関係無く脚だけが異様に重く、いつもの逆方向からの下りの記憶も鮮明である。坂は知っていれば諦めも付くしそれなりにゆっくり登ればいいだけだが、今日は鋭い陽差しがじりじりと照りつけて、路面の上はまるで焼かれるように暑い。こうなると、陽差しを遮ってくれる雲が大変有り難い。雲は次々にやってきては周囲に影を落としたり、すぐに去って行き、前方の景色を明るくしたり暗くしたりしていた。なるべく陽差しが照りつけないうちにベベルイ基線のカラマツ区間に移動せねば。

▼動画40秒 ベベルイ基線 見渡す八幡丘、十勝岳
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2013/hokkaidoutour13/6/r0002332.wmv
 十勝岳山裾の等高線にほぼ沿って続くベベルイ基線では、やはり森から風が吹いてくるのかだいぶ涼しさを感じる。いや、それは道が登りじゃなくなって、身体が楽になっているというだけかもしれない。まあ、何しろここまで来てしまえば、この道はあとは上富良野へ200m下って終了なのだ。

 道がカラマツの森から畑の中に出て、おもむろに下りが始まる本幸で、またもや休憩。しかし、緩やかに隆起する丘が印象的なこの場所は、私にとって麓郷から上富良野へのハイライトなのだ。ここで脚を停めずに何の訪問なのだ。
 道ばたの大きな樹、畑の向こうに並ぶ樹の列、反対側の十勝岳は毎回お馴染みの景色で、「また来たよ」と景色に話しかけたい気分になる。いつも自転車を立てかける道ばたの幅員表示柱は、ところが今回見事に根元から折れて、盛大に斜めに傾いていた。何かぶつかったのか。
 写真を撮ったり休んだり、のろのろ進んで今日もお昼になってしまった。数年前から畑の向こうにできた「ジンギスカン」に向かう車が時々目の前を通り、お店方面へ向かってゆく。いつもここを通過するのは朝9時ぐらいの場合が多く、なかなか訪問できなかった。今日なら店も開いてるしお昼だし、時間そのものは決して悪くない。しかし、麓郷のトウキビ4本で、ジンギスカンが食べたいほど腹も減っていない。

 ひとしきり写真を撮ってから、おもむろに上富良野へ下り始める。途中からは前方に、富良野盆地南端の上富良野と、その向こうの盆地外周の山々が開けてくる。
▼動画1分8秒 ベベルイ基線本幸〜東中 前半 最後は終了し忘れ(笑)
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2013/hokkaidoutour13/6/r0002355.wmv
 なだらかに開けた谷間の一直線道路なので、下っている間は行く手に富良野盆地がどんどん近づき、大変迫力があり、その印象は麓郷・布礼別・ベベルイの台地上から富良野盆地へ下る儀式のような象徴性すら併せ持つのだ。この道は下りの方がいい。
▼動画1分25秒 ベベルイ基線本幸〜東中 後半 次第に迫る富良野盆地
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2013/hokkaidoutour13/6/r0002360.wmv

 13:30、上富良野着。
 ベベルイ基線から下って来た東中ですでに思い知っていたが、やはり富良野盆地はかなり暑い。田んぼの多い東中で既に暑さでふらふらだったのに、市街地の上富良野ではさらに暑いのだ。さっきまでのベベルイ基線がいかに涼しかったか、そして富良野盆地がいかに暑いかを、改めて思い知った。思えばここ数年、美瑛を早朝出発して、ベベルイ基線には暑くなり始めるぐらいで登り始めていたので、この暑さを忘れていたのだ。
 たまらず既知のセイコーマートにピットインとする。ちょうど昼食にも都合がいい時間だ。去年来たこの店、HotChefが無いのは知っていたが、何日か前の標茶でセイコーマートのPBカップ麺が美味しいのを、私は知っていた。
 カップ麺を食べたところで一息付くと、眠くなっていた。気が付いたら店の影で寝込んでいた。目覚めても、まだ美瑛へ向かって走り始める気にならない。うーん、かなり疲れているか暑さにやられているか、どっちかだ。あまり良くない傾向である。

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北海道Tour13#6 2013/8/13 幾寅→大村-4

 こういうときは、目に付く物全てがサボるネタに結びつく。ホームセンターが登場したところで思い出した。ちょうど雨具の撥水が弱くなっていたのだった。ここで撥水スプレーを吹きつけておく必要がある。
 撥水スプレーは希望のスコッチガードが無かったが、まあ何と言っても気象条件の厳しい北海道で売られている撥水スプレー。間違いは無いだろう。念入りに雨具の前後に吹付け、乾かしているうちに時間がどんどん過ぎていった。
 さすがにもう15時前、さっきまでの猛烈な暑さは何とか少しは収まっていた。こういうところが東京との決定的な違いである。そして陽差しもそろそろ赤くなり始めている。8月も次第に中旬に移行しつつあるのだ。美瑛までもうあまり距離は無いが、のんびりでも美瑛に直行することにしよう。もちろん最短距離で。
 14:50、上富良野発。

 富良野線沿いにダート含みの細道から美馬牛へ。以前部分的に通ったことはあった道だが、意外に美馬牛手前まで富良野前沿いの道が続いていて、木陰の下あまりアップダウンの無い道を通れて助かった。しかし、以前通ったことはあるのかもしれない。
 美馬牛付近ではやはり丘陵横断は避けられない。舗装道路へ出るとさすがに美馬牛、道には観光バスが急に増えた。普通の乗用車も多い。なだらかにドラマチックに起伏する美瑛の丘を、遠くから観光バスが次々やって来るのはなかなか壮観で、慌ただしい。美瑛の畑に観光客が入って農家が困っているという話は最近耳にするが、事態はかなり進行していそうなことを実感した。
 富良野線を渡って憩の丘へ向かう。もうここまで来ると美瑛まっただ中。前後左右、丘の上からの眺めがいちいち絵になる。近景の畑、森から連なる丘へ、遠景の旭岳や芦別岳、様々な緑や麦の色が、夏らしい青空と赤っぽい光の中で見応えがある。ようやくこの景色に会えた。
▼動画55秒 美瑛 憩にて 路上からこの展望
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2013/hokkaidoutour13/6/r0002411.wmv

 一方、ソフトを食べに立ち寄った展望休憩所には、観光客がうじゃうじゃ。特に外国人観光客のやや大ぶりな行動と大声が目立っているように思えた。それは今年の北海道のトレンドでもある。まあ私も外様の観光客であり、基本的には観光地である以上、その風景は訪れた人みんなのものなのだ。
 展望休憩所や駐車場から少し離れると観光客は減って、再び路上から赤っぽく染まりつつある丘を見渡せる。この道で思い出のアングルは多い。ある場所では木立や農家の形が変わっていたり、ある場所では昔通りだったり。また来れて良かったと思う。あまり惑わされずに自分の美瑛を楽しめばいいのである。

 美瑛の町へ降りて、再びセイコーマートを探す。明日は歌登までの長丁場、早出のために朝食を仕入れておかないといけないのだ。去年通った旭川盆地裏道コースを行けば、行く手には東神楽の先旭川盆地北端山裾の愛別までコンビニは無いし、美瑛に近い東神楽のセイコーマートにはHotchefは無いので、今入手しておかないと朝食として手っ取り早く食べるのに都合がいいクロワッサンが無い。
 しかし、美瑛の町中にあると思っていた、いや、かつてあったはずのセイコーマートが移転していたようで、町の北外れにしか無く、駅前からけっこう足を延ばす必要があった。セブンイレブンでもいいんだけどね、ほんとは、などと思いつつ、まあ時間もあることだしセイコーマートに寄っておく。
 日陰で休んでいると、風が涼しい。もうすっかり夕方で、風も涼しくなっているのだ。

 西側の丘へ登り、大久保協生の丘でもう一度景色と細道と観光客の喧噪を鑑賞し、裏道を大村へ。
 16:55、大村「美瑛ポテトの丘YH」着。食事まで1時間半。余裕を持って風呂も洗濯もこなせる、いい時間である。

 毎度の如く、夕食は美味しくたっぷりの充実ぶり。施設は小綺麗でバランス良く、人気ぶりも納得のいいYHである。しかしそれにしても、今年は外人のお客さんがかなり増えているのにはびっくり。YHも北海道の観光トレンドを影響を受けまくっているのだ。
 明日の予報は道北曇り、降水確率30%とのこと。話だけ聞くと曇りなのに降水確率がやや高く、山間の天気は心配だ。しかしとりあえずは万が一のために輪行接続だけ押さえて、今日のこの晴天が長引くことを信じ、もう寝るしか無い。

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北海道Tour13#7 2013/8/14 大村→辺毛内-1

大村(農道・町道他)→東神楽(道道37・町道・市道)
→日の出(道道140・市道他)愛別→(道道101)下川
→(道道60)上幌内→(道道49)仁宇布→(道道120)辺毛内 198km
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 目覚めがいい。昨日距離が短かったし、しょっちゅう休んでいたので、昨日上富良野で感じた疲れは必要十分ぐらいには取れている。まあ純粋に暑さによる不快感だったのかもしれない。
 今日は道央から道北へ向かう日である。距離も200km近く、愛別・岩尾内湖・下川・仁宇布経由の長丁場。去年は今日の終着の辺毛内よりだいぶ手前の仁宇布からここ大村まで、2009年には辺毛内から旭川の少し北の永山まで走っている。両方ともやや余裕のある行程だったので、今日は順調に走れれば全く問題無いと考えてはいる。しかし、天気予報は曇りに道北の降水確率40%とかなりきわどい。きわどいと言うより山間では多少降られるのを覚悟しないといけないというか、確実にどこかで降るし、事態によってはほとんど雨になってしまうおそれもある。
 このため、一応昨夜は輪行乗り継ぎ時刻を何通りかリストアップして迎えた今日の朝だが、果たして雲は高く、細かい雲の間から青空が見えている。序盤で2日も輪行含みになってしまった今回の実施行程、走れていない感が非常にある。今日は絶対に走らねば。そのためにはなるべく早出せねば。

 手早く荷物を纏めて外に出ると、そこは冷やっと涼しい微風が時々吹いてくる美瑛の朝。茂みでコオロギやカンタンが鳴いている。観光客さえいなければ、いつも通りの美瑛がそこにあるのだ。
 5:15、大村「美瑛ポテトの丘YH」発。
 農道をつないで美瑛の丘を北上する。畑から森を抜け、また拡がった畑で立ち止まる。丘の向こうには、やや雲っぽい空の下、森や色とりどりの畑が、丘が連なって遠くへ霞んでゆく。東の彼方には、美瑛の象徴とも言うべき旭岳のシルエットに出会うこともできた。やはり美瑛、朝は静かでなかなかいいではないか。
 段丘部の森を一気に下って千代ヶ岡へ。国道237を渡り、段階的に段丘を下って、旭川空港の脇から東神楽へ一気に降りてしまう。さすがに旭川盆地、東神楽まで降りてくるともう美瑛の丘とは別世界。地形も町っぽさも雰囲気が全く違う。
 まだ6時前、振り返らず先へ進まねば。

 旭川盆地南端の東神楽から北端の愛別までは、去年開発?した旭川盆地裏道北上コースを使う。旭川を通らずに、盆地の東縁を車の少ない道を辿って北上する、我ながらなかなか画期的なコースだ。アップダウンも後半ちょっとだけあるものの、基本的に極力少なくなるように計画している。
 まず当麻までは、盆地の東側ながら平地まっただ中、どこまでも一直線の細道。道の周りに拡がる田んぼは、稲穂で青々と瑞々しい。低い路盤の農道からは、田んぼの水面がより近くで眺められるのがいい。トンボも飛び回っている。北海道では実は田んぼもよくみかけるものの、やはりこれだけの広がりとともに眺められるのは旭川盆地ならでは。そういえば、昨日の美瑛ポテトの丘YHの夕食で、北海道産ゆめぴりかが日本で一番美味しいお米のひとつになったという紹介を受けて、そのゆめぴりかを食べてきたばかりなのだった。

 当麻から先は、道が丘陵裾に近づき、町道や道道をつないで森や集落、田んぼや畑、森を通り抜けてゆく。特に後半では軽い起伏も始まり、森の狭間の田んぼなどは北海道というよりまるで東北地方のような風景だ。以前ここを午後に通った時にもの凄い数の赤とんぼを見て感動したが、今日は曇り、トンボは飛んでいるようだがあまり目立たない。気が付くと、いつの間にか陽差しは薄れて雲はすっかり厚く低く、色は濃くなっていた。このあと旭川盆地から一気に道北南部の山中へ突入することになるが、愛別の空模様次第では、何らかの判断が必要かもしれない。

■■■2014/1/28
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■■■高地 大輔
北海道Tour13#7 2013/8/14 大村→辺毛内-2

 7:55、愛別着。
 愛別にはセブンイレブンしか無いが、今日のコースは、この先人口密度が一気に減り、愛別ダムから先はコンビニどころか自販機すら無い。順当に行けばお昼頃到着予定の下川でようやくセイコーマートが登場するだけだ。ここで補給しておく必要がある。とはいえ、天気予報は道北の降水確率が概ね40%。山中の私的基準上限値である。部分的にどこかで降られることを確後して、この先進むかどうか。
 行程上の時刻的には、早出貯金が効いて大変理想的というか、希望到着時刻より1時間以上早い。なんたって愛別でまだ7時台。余裕はある。もし山中で大雨に襲われそうなら、まだ朝日から士別、下川から名寄へ向かい、名寄本線エスケープが可能だ。まあ歌登から最後は自走が必要だが、それはこの先ずっと自走行程を続けるのと変わらない。
 というわけで、不安要素は大きいが、あまり悩まずにこの先の行程継続を決めた。

 8:20、愛別発。
 しばらく田んぼの農村風景が続く。僅かに登り基調で続く谷間の、田んぼが拡がる両側には山が次第に迫り、もう旭川盆地の風景じゃない。次第にその山々が高く、谷間が狭くなって、愛別湖畔へ一気に登る。

 ダムから先の湖畔は一気に山中の森へ突入。湖岸の向こうの最後の農家から先は完全に無人区間、軽いアップダウン後に於鬼登トンネルまで約200mのの登りとなる。
 於鬼登トンネルへは直線気味に緩めの斜度で狭い谷間の森を遡って、進むに従って地形なりに斜度を上げ、旧道峠の100mぐらい下でトンネルで向こうに出る、北海道で良くあるパターンの峠道である。登りが始まると、身体から一気に汗が出始めた。今日ももう9時、曇りとは言え温度が上がっているのだ。しかしそれでいてやはり山間、時々ぱらぱらっと雨が降りはじめ、雨具を着ると止む。大丈夫、まだ本降りじゃない。
 9:30、於鬼登トンネル通過。
 トンネルを抜け、山腹から谷底へ下りきると茂志利の集落だ。かつて向こう側から2回来て、開けて平地のように見えた農村と畑の広がりは、こちらから来ると意外にどんどん下っている。脚を止めてもブレーキをかけないとかなり快調に進んでくれる。まあいつかまた逆から来てこの貯金を返すことになるのかもしれない。下りで楽だと想像は取り留めない。しかし、伸びやかな谷間の広がりも、今日は雲が低く何だか遠くの山姿が霞んでいる。空は旭川側より明るく、時に陽差しっぽい明るさが辺りを照らしたりもするものの、のんびりと静かな田舎道も既知の風景。特に脚を停めて見入るに至らず、気が急く方が勝ってしまう。雨具だけ脱いでしまい込み、今日は粛々と脚を進めることにする。

 岩尾内湖畔で上紋峠からやってきた道道61に合流、十和里まで少しの間重複区間となる。上紋峠、茂背牛山方面を眺めると、やはり何だか全体的に山の姿は霞の中だ。上紋峠へは2008年に勢いで訪れてから、行程や天気の都合で行けていない。旭川盆地から一つ峠を越えただけなのだが、なかなかの山中に入ってきたことを実感できた。
 湖岸区間には一気に通過できないぐらいのアップダウンがあり、所々でちょっと人里離れた雰囲気が漂う巨大な岩尾内湖の展望、湖岸の森のキャンプ場の眺めが楽しめる。ぱらつく雨に、さっき茂志利でしまった雨具を再び着込み、ダムから谷間を見下ろしつつ一気に十和里の谷間へ。

 少し先で道道61と分岐、再び単独道道となってこちらは糸魚トンネル越えへ登り返し開始。
 糸魚トンネル越えは、下川から登ると距離は長く標高差は260mだが、こちらから登ると標高差140mのほぼ一発登り。途中の糸魚で少し斜度が一段落して、なかなか登りやすい。
 糸魚トンネルは「出る」らしいとどこかで聞いたことがあるが、基本的には短いトンネルだ。その下川側は少しだけぐいっと高度を下げてから、延々と森の谷間にだらだらと緩い下りが続く。遂に下川側、もう道北南部まっただ中にやってきたのだ。
 とは思うものの、同じような深い森が浅い谷に延々と続く。長い下りだ、わかってはいたが。長い長い下りの途中、雷が鳴り始めて雲色が限界まで濃くなったと思ったら、一気に雨が降ってきた。しかも大粒の大雨である。やっぱり降られたか。
 森が切れて谷間が拡がった段階で、下川市街までまだ8kmもあるが。いや、ここまで降りてきたらもう大雨でも何でも下川に着かねば。いつの間にか、もうお昼前である。名寄から輪行するかどうか、下川で考えよう。

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北海道Tour13#7 2013/8/14 大村→辺毛内-3

 大雨の中、11:50、下川着。
 いつものセイコーマートに逃げ込むと、お昼どきのHotChefで、豚丼が私を出迎えてくれた。今回は狙い定めているせいか、豚丼との遭遇率が高い。意識して物事に当たることは重要なのである。今日はこの先もうセイコーマートも他のコンビニも無い。豚丼、カット野菜、ヨーグルト、オレンジジュースと軒下で集中的に昼食を食べているうちにいつの間にか大雨はとりあえず上がった。
 ここ下川が今日の最終撤退場所である。この先終着の辺毛内まで、輪行の可能性は断たれるのだ。もう何があろうと前に進むしか無い。
 一方、いろいろ買い込んで店から外に出ると、意外にも空は再び明るくなってきた。いや、今まで通ってきた南側の空が更にどす黒くなっているが、こちら側は明るいのだった。しかも雨がかなり弱くなっていて、いろいろ食べているうちに止んでしまった。しかも、天気予報をチェックすると、この先美深、枝幸とも降水確率は10%。朝の愛別での判断時とは条件が全く違う。これならこの後はもうあまりたいしたことにはならないだろう、と思える。例えさっきのあんな大雨の後でも。
 というわけで、この後も予定通り進むことに決定した。しかしちょっとどきどきではある。

 12:25、下川発。
 相変わらず雲は低く冴えない空模様、まだ空気中には水滴を感じる。路面は黒々ぬらぬら、さっき決断はしたものの、山間に入り込むのは憚られるような気もした。おまけにサンルダム新道区間に入ると、雨までぱらつき始めた。まあそれでも、戻るほどでもないような気もする。とりあえず山間をどんどん先へ、いや、奧へ。
 去年までの旧道入口は、新道全通によって今年は閉鎖されている。いい道だったのに、と思いながら突入した新開通区間では、山間を幅広の道が、ここまでの区間にも増して豪快に、直線やら大きなカーブを描き、築堤やら掘り割りでばんばん通り抜けてゆくのが痛快だ。無駄に登って下る今までの部分開通区間と比べて、アップダウンが少なく、線形がスムーズなのもやや意外だ。それでいてサンル牧場の牧草地を間近に通過する辺りは、去年まで谷底の旧道から眺めていた以上にダイナミックな展開で、それでいて既知の景色を新しい角度で眺める発見がある。また、ずっと楽しみにしていた、谷間と旧道を渡る大きな橋からの眺めは、遂にここからこの景色を眺める日が来たのだという感慨と、やはり広々とした谷間の眺め、大森林が迫力たっぷり。代わりになかなかの名所(私的だが)が登場したと思う。

 山腹から谷底に降りてからも少し新道区間が続くのは意外だ。ようやく旧道区間に合流すると、独特の山深い開けた谷間の雰囲気は相変わらず以前のまま。旧道ののんびりした山深い雰囲気は微塵も無く、無人細道のたっぷり感もやや薄れたものの、なかなかバラエティに富んだ良い道に変わったと思う。今後はダムが完成し、湖に水が張られたところでまた新たな展開があるに違いない。
 もう幌内越峠手前の最後の牧草地。この頃から路面が乾き始めた。しめた、こんなに山奥に来ていい傾向である。北上効果が勝っている。このまま今日は最後まで行けるかもしれない。行っていただきたい。更に周囲は牧草地とカラマツ森林から、原生林に替わり、ゆるゆるっと幌内越峠手前の坂へ。その辺りから空に青い色が現れ始めた。気が付くと辺りもだいぶ明るくなっている。

 しかし、上幌内へ下って道道49に分岐し、イキタライロンニエ川の谷間に入り込むと、流石に今日の道で一番深い森だけあって辺りはかなり薄暗い。近年は早朝にびくびくしながら下りで一気に通過することが多いこの道だが、昼でも静かな茂みは何となくヒグマの雰囲気一杯で大変不気味だ。
 美深松山峠へは登り初めで高度を上げ、途中のやや浅い谷間で斜度が一端落ち着き、峠手前できりきりっと最後の80mをまた一気に登る。大鷲も毎度のように登場、今回はキタキツネも一杯出迎えてくれた。何でもいいから熊だけは出るな、頼む。
 美深松山峠を越えてしまえばもう仁宇布までは下るだけ。雨こそ降らなくなったものの、相変わらず雲は低く予断を許さない。それだけに、仁宇布手前の白樺の森が見えてきたときは嬉しかった。希望を持って朝から着々と進んだ結果、終着地に近づいているのだ、という確信がそこにはある。

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北海道Tour13#7 2013/8/14 大村→辺毛内-4

 15:10、仁宇布着。
 交差点の軽食店「コイブ」には今日は人気が無かったので、ここでさっき仕入れた補給食の一部を安心感とともにむしゃむしゃ腹に入れておく。食べ終わってから、そういえば少し向こうで賑わっている仁宇布トロッコの蕎麦店で蕎麦を食べることができた、と気が付いて少し後悔するが、いやいやここで気を緩めずに粛々と脚を進めよう。
 もうここまで来たら、あと100mぐらい登って西尾峠を越えてしまうだけ。その先は天の川トンネル、大曲、最後の志美宇丹峠でちょっとだけアップダウンがあるものの、宿のある辺毛内までは基本的に下り基調である。

 15:25、仁宇布発。
 山間の広々とした牧草地は、今日は雲の下やや薄暗い。美幸線未成線の築堤や、明後日泊まるファームイン・トントを経営する松山牧場を眺めて淡々と粛々と通過、始まった森の中を60m登ると西尾峠だ。
 峠を越えると、無人のもの凄い森の谷間が延々と続く。狭い谷間の木々はそう高くなく、天の川トンネルまでは下りだが、何しろ深いオホーツク山中。いつのまにか雲は俄然薄くなり始め、いよいよ陽差しが辺りを照らしてくれるようになった。あまり暑いのも困りものだが、やはり陽差し、緑の木漏れ日が、心を明るくしてくれる。途中のダート道道分岐も、何だか人の息吹のようで、懐かしい気がする。

 天の川トンネルを抜けた織姫駐車場で、少し休憩することにした。
 終盤で余裕のある行程はいい。道北スーパー林道から下ってくるバイクも今日はいない。西尾峠までの下り途中で、路上で発見した大型のミヤマクワガタを撮影させていただいたり、下川で仕入れた補給物資を腹に入れたり。静かな山間の休憩である。

 大曲からは廃墟と牧草地が登場。仁宇布以来久しく無かった人の営みの証しである。いつの間にか、もう陽差しはすっかり赤くなっていた。
 上徳志別で一気に谷間が拡がると、静かな牧草地の谷間はすっかり赤みを帯びている。
▼動画1分 夕暮れの上徳志別 空も晴れてきた
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2013/hokkaidoutour13/7/r0002739.wmv
いつも楽しみなこの盆地を、優しい赤みがかった牧草地の色、空色とオレンジ色が混じり始めた空と共に眺められるのがとても嬉しい。もう16時半過ぎ、到着まで完全に先が見えた。

 牧草地の景色に脚を停めつつ志美宇丹も通過。志美宇丹峠ももうのんびりした気持ちで速度も落ちるに任せ、歌登の盆地に下る途中、遂に辺毛内の「歌登休暇村」の看板が登場。
 17:25、辺毛内「うたのぼりグリーンパークホテル」着。
 仁宇布から先、特に織姫橋休憩所以降はかなりのんびりした行程だったが、到着してみれば17時半とかなり余裕の到着である。それもこれも5:15発の早出が効いている。でも、例え6:15発で18:15着だったとしても、1時間早いと気分は全然違うものなのだ。
 というか、1日終わってみたら予定通りの順調な行程。雨にはずいぶん心配したものの、途中で止めないでよかった。結果的に。

 辿り着いたホテルはその名の通り普通にホテルで、さっきまで雨風と野生動物に気を揉んでいた気持ちからはかなりギャップがある。床も絨毯敷きなのを始め、客室や大浴場など、かんぽの宿らしく、少なくとも自転車ツーリングの宿としてはかなりゴージャスであることは間違い無い。
 食堂はその名も「函岳」、歌登を訪れる旅行者としては、わかってるとしか言いようが無いネーミング。夕食は標準セットだったが、やはりゴージャスで、もう腹一杯である。

 しかし、明日の天気予報はかなり絶望的に大雨予報で確率50%。目的地の稚内市は30%に確率が下がるようだが、この時点で全行程輪行を覚悟した。それ以上に、朝、このホテルからバスに乗れる歌登まで果たして脱出できるかどうかが問題である。

■■■2014/1/28
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■■■高地 大輔
北海道Tour13#8 2013/8/15 辺毛内→抜海-1

歌登→(道道120)辺毛内
8km
豊富→(農道他)開源→(道道118)兜沼→(道道510・811)抜海
42km
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 曇りの予報に希望を持ってはいたものの、一方で夜中に、谷間を揺るがすもの凄い低周波で目が覚めた。雷だった。ホテルのビル用サッシュがびりびり響いていた。雨もばしばし窓を叩いていた。
 悩んでも仕方無いので、とりあえず眠りこけ、4時に再び目覚めてはみたもののやはり大雨は止んでいなかった。いや、天気予報は曇りなのである、今日は一応。この後必ず雨が上がるはずだ。粛々と準備を進め、荷造りしておけば、雨が上がってすぐ出発できるではないか。

 5時にはとりあえず荷造りを完了。その段階ではまだ雨は上がっていない。よくあることだ、こういう場合6時には大体雨は上がるのである。部屋を撤収し、荷造りを完了して5時半前。この段階で少し弱まっていた雨は、再び土砂降りになった。うん、これが降り切ると完全に雨がすっと上がるはずだ。いつものことだ。
 しかし、5時50分になっても6時を過ぎても、一向に雨は止む気配は無い。というか土砂降りが降り続いている。さすがの私も天気予報がまた変わっているかもしれない可能性に気付いていた。しかし、この山奥でスマホの電波が入らない。フロントで尋ねると、枝幸町全体で天気予報は雨後曇りだが、降水確率は70%。この予報だと走り始めるのは危険である。

 今日の行程はこの後道道120で歌登から中頓別、知駒峠を経由し、あとはずっと内陸の道道で宗谷湾を目指す。行ければ宗谷丘陵を経由し、長年宿題の道道889を目指したい。しかしこの経路で、歌登の先兵知安峠と知駒峠を終えるまで、輪行撤退場所は無い。また知駒峠を越えた先の雄信内では、駅には各停しか停まらず、輪行で使える列車がかなり少ない。つまりバス輪に切り替えるなら今しかないのだ。一方、知駒峠とその先の小さい名無し峠まではかなり深い山の中だが、それ以降は比較的開けた台地の道となる。つまり、雨の危険は知駒峠の向こうの雄信内、幌延辺りからぐっと減りそうに思える。
 実はもう昨夜の内に時刻表を調べ、宗谷本線の稚内方面に連絡がいいのは、8時36分歌登発のバスだということがわかっている。歌登を8時36分に出発して9時10分に音威子府に到着できるということが、この区間を去年走った身としては驚異的だが、バスはやはり偉いのである。そして音威子府で稚内行きの普通列車に乗り、車窓から空模様を伺って、雄信内とか幌延の先の出発できそうな所で列車を降りればいい。これなら今日のコースを、雨の危険が危ない知駒峠周辺だけを飛ばして、残りは予定通りに辿ることができる。
 8時36分に歌登でバスに乗るためには、少なくとも8時半には歌登で輪行を完了しておきたい。その気になれば輪行荷造りの時間は30分で十分行けるが、まあどうせ雨で気分も盛り上がらないので、できればちんたらちんたら1時間ぐらい掛けてのんびりやりたい気がする。ここ辺毛内から歌登市街までは8km強。歌登周辺でありがちな強向かい風を見込んでも、のんびりちんたら走ってまあ30分みれば十分ではあるが、ということは7時には出発しておきたい、雨でも何でも。でもどうせなら、雨が弱まったときに出発したい。

 しかし更に時が経ち、6時半を過ぎても雨は一向に弱くならない。そもそも雨が弱まったら出発しよう、という前提が間違っているのかもしれないと、遂に気が付いた。雨具だってあるのだし、30分弱我慢して走れば歌登に着けるのだ。ならばいつ出発しても同じだ。
 というわけで、大雨の中6:40、歌登グリーンパークホテル発。

 以前このホテルに泊まったとき、この谷間だけ雨が降っていることは珍しくないなどという話を聞いたことがあったが、今日は辺毛内の谷間から道道120に降りてきても雨は弱くならない。次第に谷間が拡がっても、一向に雨は弱くならなかった。まあこれなら疑いなく歌登でバスに乗れる。
 しかし歌登に近づいて農家が断続し始めると、順当に雨が弱まり始めた。

■■■2014/2/1
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■■■高地 大輔
北海道Tour13#8 2013/8/15 辺毛内→抜海-2

 7:05、歌登バスターミナル着。歌登は普通の雨である。そして輪行を完了する少し前、完全に止んだのだった。
 解体袋詰めが済んで、次に荷物まとめに入る前、もう一度空を眺めてみた。北側の山々に係る雲は、低く濃いものの、なんだか明るい気もする。一方、あんなもんに騙されてはいけないという気もする。悩ましい。
 結局、早朝の大雨が忘れられない。大人しくバス輪を決め、予定通り8:36の札幌行き特急えさしまで待つことにした。缶コーヒーと共にけだるい1時間が過ぎてゆくうち、路面はどんどん乾いていった。ちょっと後悔した。

 しかし、バスに乗ってからの道道12では、やはり歌登の町外れからいきなり雨になった。さっき騙されて出発しなくて良かったと、心から思った。そんな乗客の気分を余所に、バスが雨と去年眺めた景色の中を、バス速度で淡々と過ぎてゆく。音威子府までわずか40分足らず。自転車ではあり得ない時間なのに、乗車感覚としては自転車に乗って眺めているより間延びした時間である。人間なんて勝手な物だと思うが、やはり退屈なものは退屈なのだ。自分で脚を動かして移動することは大変なのだが、移動と時間が感覚として完全に一致している実感があるのだと、つくづく思う。それにしても天気が悪いと、やはり思考が取り留めなくどっちでもいいことばかりだ。

 9:10、音威子府着。
 音威子府は9:06発の上りスーパー宗谷2を上下各停が待避、各方面からの特急バスと地元路線バスが次々接続する、朝のピーク時間である。ちなみに本バスは札幌行きのスーパー宗谷に4分遅れで乗り換えられない。札幌へはバスでどうぞ、ということだろう。上手くできている。
 私的には去年も訪れているので、音威子府の朝の賑わい自体は珍しくも何ともない。速攻で上り列車へ乗り込むと、上り列車は混んでいたが、何とか辛うじて座ることができた。というか、夏休みの鉄道マニアが荷物を座席に載せてボックスを占拠していて腹が立つ。みんな20台から50台ぐらいのおっさん達だ。

 列車の外はかなり風が強いようで、防風林が大きく揺らされている。しかし天塩中川を過ぎ、雄信内を過ぎると、雨は完全に止み、幌延の先では路面が乾き始めた。相変わらず雲は低く風は強いが、これなら走れるかもしれない。
 そこで、豊富から今日の行程に戻って、道北縦貫コースで北上することに決めた。兵安峠、知駒峠、その先の道道785上問寒トンネル(だったかな)越えと、3つも峠越えを省略できて、時間の余裕もある。宗谷丘陵はオイシクいただけるに違いない。

 11:00、豊富着。
 前来たのは確か2007年だったか、あの時も雨で予定を諦めて、朝ここで輪行して列車で乗り込んだのだった。今日も厚い雲の下、駅前は何となく薄暗い。強風を避けて駅の軒下で自転車を組み立てている間、同時に列車を降りた何人かの客がバスに乗り込んで去って行った。
 ちんたら自転車を組み立てていると時間が掛かる。お昼前なので、とりあえず国道40沿いのセイコーマートで休憩と昼食をこなしておくことにする。豚丼やら袋カット野菜、オレンジジュースにヨーグルト、フライドチキンなど次々食べている間、何だか暖かい風が吹き荒れているのには気が付いていた。強い、という強さではなく、吹き荒れているのだ。幸い方向的には追い風なのが救いである。とりあえず風に乗って出発することはできそうだ。

■■■2014/2/1
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北海道Tour13#8 2013/8/15 辺毛内→抜海-3

 更に使用済みの地図を送り返し、時間を食い、12:35、豊富発。
 既知の農道で内陸の有明へ向かう。道北特有の低く広がりのある丘陵の谷間に道が続く。薄暗い空の下ではあるが、車がいなくて路面もそこそこ荒れ気味、のんびりと開放的な気分である。追い風で楽に走れているのも、当然その気分に輪を掛けている。楽なのはとてもいい。
 しかしそれにしても凄い風だ。25km/hぐらいで走っても、まだ追い風なのである。暴風は道の角度と丘の場所により、あるいは無関係で、時に横風気味に襲いかかってくる。しかし、概ね追い風なのは心から有り難い。この風が向かい風になることだけは考えたくない。しかし追い風なのであまり気にしていなかったのだが、気が付くと風が生暖かい、というより蒸し暑い。道北のこの辺でこういう風が吹く状態は、過去あまり経験が無い。なんたって稚内では朝平気で8℃に下がったりするのである。 上空の雲も凄い速度で動いていることに気が付いた。雨もぱらついたところで後ろを振り返ると、真っ黒な低い雲がかなり近くにやってきていた。というか、雲の下、すぐそこの丘が、何となくというか明らかに霞んでいる。すぐそこに土砂降りが近づいていたのだった。
 しまった。あの雲にだけは追いつかれてはいけない。
 追い風に乗じて逃げた。走りながら思った。丘陵に入り込むとこんな天気なのだ。大変残念だが今日は走れる状態ではない。道北中がこんな変な天気なのだ。

 とりあえず再び国道40を渡る頃には、次の谷間に出たということか、雨雲からは取り急ぎ逃れられたようだった。もう今日の宿の抜海「ばっかす」まで直行することにした。
 目梨別、開源、兜沼と、道道1118〜510は丘陵をまともに横断してゆく。時にはほぼ並行する宗谷本線に比べ、明らかに無駄なアップダウンも見受けられる。もう少し化石燃料による移動ではなく、人力交通機関に優しい経路であってほしいと思うのは2度目だ。2008年に計画ミスの延着で、夜暗くなってからこの道を通るかどうするか迷ったことがあった。結局1本道と追い風に期待して、日本海側の道道106を選んだのだが、こちらにしないで良かったと心から思えた。

 もはや余裕以上の、ひたすら風と雨を避ける行程となった。
 勇知では再び雨が降ってきた。古びた農協の前に自販機があったので、他に自販機は無いだろうから、ここで缶コーヒーを飲んで雨宿りしておく。相変わらず風は強い、というか吹き荒れている。空を見上げると、雲が低くて早い。何と雲の隙間から青空も見える。と思ったら、雨具が必要なぐらいの小雨がいきなり降ってくる。そしてかなり蒸し暑く、明らかに道北の気温ではない。
 抜海駅前を通過すると、海岸沿いの抜海の集落へはもう数km。2009年以来の道だが、4年振りぐらいだと何だか昨日来たような気もするのが我ながら可笑しい。
 鉄道写真を撮る人間には、抜海という駅名は大変有名だ。宗谷丘陵を行く宗谷本線の列車を、日本海と利尻島を入れて撮影できるアングルで、特に真冬の銀世界の写真を見たら、誰でも一度は撮影してみたいと思うであろう、道内屈指の名撮影地だ。特早朝、札幌から夜を徹してようやく最北端に到着しようとする急行宗谷は、このアングルと共に有名であり、いつかは抜海で駅寝しないと、と思っていた。そんなわけで抜海という駅名は、その強烈な音とともに印象深かったのだ。
 しかし今は2013年。私が実際に抜海を訪れてこの道を通るのは専らサイクリングであり、夜行の急行宗谷はいつのまにか廃止され、昼の列車も特急スーパー宗谷になってしまっている。何故か晴れている抜海駅前だが、強風に飛ばされそうによろめきつつ、とにかく前へ進む。道道510の一本道、行く手の茂みの先に海が感じられる。その上の空も何となく明るい。海岸は雨の心配は無いのかもしれない、と思った。

■■■2014/2/1
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■■■高地 大輔
北海道Tour13#8 2013/8/15 辺毛内→抜海-4

 14:45、抜海着。岬の裏側に集中し張り付いている抜海の漁村には、ごうごうと熱風が吹き荒れていた。ここまでのどこにも増して蒸し暑い。不快である。曲がりなりにも日本最北端の稚内市なのに、こういう感覚は初めてで、何となく今日の天気の奇妙さが納得いった。
 空を眺めていると、確かに何となく海上は明るい。そしてその海から吹いてくる熱風に乗って、次から次へと雲がやって来ているようだった。雲は海上から陸地に移ると何故か濃厚な色に、つまり雨雲に変わってゆく。1週間前東京で悩まされ、札幌まで押し寄せていた暖気が、道北までやってきていることを実感した。雲が海上から内陸に移ると雨雲に変わるのは海面の気温の関係か、何か理由があるのだろう。
 稚内、サロベツまで、きっとこんな天気なのに違いない。無理に走らないでよかった。そして、明日の行程は天気予報次第で大幅変更する必要があると思った。

 15時を待ってばっかすに入れて貰う。
 宿の中はやはりというか、大変蒸し暑い。室温29°、じっとしていないと汗が出る温度である。宿主さんと奥さんによると、今年の夏はずっとこんな感じで、「おかしい。こんなの初めてでみんな参っている。」とのこと。今年の夏は数少ない扇風機全開だが、全く焼け石に水らしい。

 注目の天気予報だが、すぐ結論が出た。ダメだ。
 明日も稚内周辺と枝幸は雨予報で、降水確率50%。一方内陸部の美深は曇り予報で、10%まで確率が下がる。明日の予定はもともと日本海沿いに道道106を天塩まで南下し、ロクシナイ峠から佐久、音威子府から歌登経由で昨日通った道道120、というコースだ。例えば輪行で途中を抜かし、音威子府から行程を戻すとすると、歌登から先西尾峠までずっと降水確率50%の枝幸町である。しかし枝幸町でも歌登と道道120はずっと内陸部であり、オホーツク沿岸の天気に左右される傾向はあるものの、基本的には別の天気であることも多い場所だ。内陸部の美深が曇り予報なら、少しは期待が持てるかもしれない。しかし、朝の歌登の厚く不安定な雲も思い出される。
 一方、道北を自転車で脱出するのにどこへ走ってゆくにも、昨日豊富の丘陵で遭遇したような暴風と高速低空雨雲に悩まされるに違いない。しかも昨日北上方向で追い風なら、基本的に南下する今日は間違い無く基本的に向かい風だろう。
 もうその先はあまり想像も葛藤もせず、とりあえず輪行で脱出しないといけない、という考え方をすることにした。ならばJR宗谷本線一拓である。
 問題は今日の終着地の仁宇布までどう行くかだが、とりあえず稚内からサロベツ原野とか猿払原野、そして枝幸沿岸辺りまでは似たような天気だとして、内陸部の地形にそこそこボリュームが出てくる雄信内〜音威子府まで行けば天気が変わるかもしれない。まあ、今回毎度の現地日和見パターンである。ここで時刻表を調べると、抜海6:40→音威子府840の一拓で、その後はお昼になってしまうのである。ちょうどそこで、宿主さんが助け船を出してくれた。「明日は輪行でしょ?走るんだったら止めますよ、こんな大風の日、危ないですよ」というわけで、明日の輪行がほぼ決まってしまった。

 今年の北海道も今日で8日目。もはや完全に輪行の旅になってしまっているが、悩んでも悩まなくても確実に時は過ぎ、今はやがて1時間前、そして昨日になってゆく。ならば前向きに今抜海にいることを楽しまねば。
 とか何とか思いつつ、暴風吹き荒れる外の景色を眺め、屋根の上のごうごう吹き荒れる風音を聞き流し、真っ昼間からサッポロクラシックで泥酔してゆく私なのであった。

■■■2014/2/1
■■■http://takachi.no-ip.com/
■■■高地 大輔
北海道Tour13#9 2013/8/16 抜海→仁宇布-1
音威子府→(村道他)咲来→(道道220)歌登→(道道120)仁宇布
82.3km
ルートラボ>http://yahoo.jp/nVRA3y

 4時に起きると、やはり屋根の上で暴風が唸っている。雨は今のところ降ってはいないようだが、路面は黒々ぬらぬら、窓には水滴が付いている。昨夜の天気予報だと、稚内から枝幸で1日雨。今確かにここ抜海で降ってはいないものの、雨という言葉以上の始末の悪い事態なのだろう、1日じゅう。そしてそれは宿主さんから聞いている、今年の道北の普通の天気そのままである。

 昨日のお話通り、まずは自転車を輪行状態に。暴風が吹き荒れる屋外は、やはり時々雨が集中的にざざっと降っては止むが、幸い軒下などではなくシャッター付きのガレージで作業できて、非常に助かる。
 手短に自転車を片付け、宿主さんの車のトランクに押し込んで6時20分。抜海から抜海駅までは車で5分もかからない。
 少し無人駅の抜海で列車を待つ。貨車に変わっていたと思った抜海の駅舎は、昔ながらの木造の、正しい国鉄駅舎とも呼べるような佇まい。こういう駅で駅寝したくなるが、周囲に門下は皆無。かなり寂しい一夜になるかもしれない。

 などと妄想するうちに、まずジョイント音が、次にエンジン音がして、キハ54が登場。昔初めて登場した頃は、ステンレスだし安っぽい前面だし、何て裁けた鉄道車両だと思っていたのが、いつのまにかこういう黄昏れた旅によく似合う、逞しい面構えの頼れる車両だと思うようになった。一方車内はと言えば、昨日と同じように朝っぱらからマニアっぽい方で一杯。お前もマニアだろと言われればそれまでだが、しかし皆さんお疲れ様なことである。
 抜海6:40発。キハ54は多分音威子府か終着の名寄かのどちらかだけに向かうマニア達と、数名の区間利用の地元客を乗せて、低い曇り空の下暴風の中を時刻通り突き進んでいった。豊富、幌延と列車が進んでゆくうち、空は次第に明るくなってきた。しかし、相変わらず雲は低い。雄信内で降りる気にはならなかった。どうせ降りるなら、補給食を仕入れられる方がいい。それならセイコーマートのある天塩中川か、音威子府どちらかしか無いが、コース的にまとまりやすそうなのは絶対音威子府である。

 というわけで、8:40、音威子府着。昨日と同じ音威子府のスーパー宗谷ショーに、今日は一番乗りの各停である。今回の北海道では、こういう状況が標茶に続いて2回目である。更に言えば、落石へ向かった列車も去年乗ったのと同じだった。列車本数が少ないと、輪行しやすい列車は限られる。つまり、雨にやられまくっている証拠なのである。
 昨日に続いて2日目、しかも去年もこの時間の音威子府駅に訪れている。基本的に、何も珍しいものは無い。それにこの先一切雨が降らないとは限らないのだ。時間に余裕があるとは言え、粛々と出発すべきだろう。
 9:20、音威子府駅発。まずは町外れのセイコーマートへ。記憶と違っていてHotChefの無い店だったが、まあここまでにも買い置きのパンを食べてはいる。この先歌登でお昼も確実に食べられるので、ここであまりしっかりお10時を仕込んでおかなくても問題は無い。最近美味しいことを発見したPB焼きそばやカップ麺を食べておくチャンスでもある。
 いろいろがつがつ食べたり飲んだり、居合わせたツーリストの方とお話しなどする間、雨が上がったばかりの雰囲気だった周囲は、陽差しに照らされ始めた。空を見上げると、厚く低い雲が大きく切れ、青空がまとまった面積となって切り替わり始めていた。風も皆無ではないものの、もはや暴風は完全に収まっている。目論見ばっちりの移動効果が出た。と同時に、道北最北端がいかにおかしな天気だったかを思い知った。

■■■2014/2/1
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■■■高地 大輔
北海道Tour13#9 2013/8/16 抜海→仁宇布-2

 10:00、音威子府発。
 まずは国道から降りて、去年バスに乗って通った天塩川沿いの農道へ。天塩川の土手から畑の中を咲来の集落へ向かう、細くて車がほとんど通らない、とても静かな走りやすい道だ。更にこちらを通らないと、大型車の高速走行にうんざりしながら国道40を登って下ってになるが、こちらはあくまで天塩川沿いのほぼ平坦な道だ。こういう横道が国道40の途中には何カ所かある。以前に比べて交通量も変化しているし、一度天塩川の谷間で音威子府から美深とか名寄辺りまで走り直してみるのも悪くないと思っている。事実今回も検討していた。
 天気のいい路上でそんなことを考えながら、木陰や土手の茂みに続く細道を辿ると、咲来の集落から道の名前が唐突に道道220に変わる。そして集落外れで道道220は東へ方向を変えるとともに幅が拡がって曲がりなりにも道道っぽくなり、国道40を渡って咲来峠への上りが始まるのである。
 10:15、咲来発。森の取付部から開けて牧草地に進んでいくと、もうすっかり天気はなかなか夏らしいいい晴れになっていた。空の青さははっきりと濃く明快でだ。白い細切れの雲は、まだ多めで低いが次々と流れている。元気な夏雲だが、何か悪さをしそうな気配は全く無い。
 陽差しが出ると路面は一気に暑く、つらさを感じるほど。立ち止まって牧草地の写真でも撮っていると、適度な雲が陽差しを隠してくれる。こちらに戻ってきて良かった。

 10:45、咲来峠着。峠のすぐ向こうで見渡せる、歌登へ下ってゆく広がりも、もうすっかり夏空の下だった。森の緑も青々と勢いがいい。
 本幌別の牧草地の中、歌登まで標高差140mを20km、ほぼ均等な下り。ここへ来て風も追い風、軽く脚をくるくる回すと、草や森や山影、様々な緑が通り過ぎてゆく。こういう快調な日もあるのだ。まあ歌登で道の方向が120°変わるので、風向きも向かい風になる可能性はある。あまり有頂天にもなれない。

 11:35、歌登着。
 さっきの目論見通り豚丼を食べながら、結局昨日に引き続き、またもや歌登でのんびりしていることが何だか可笑しい。いや、予定通り走れていれば、昨日も今日ももともと歌登は通る予定だったので、歌登に来ていること自体は可笑しくない。真ん中がすっぽり抜けた輪行の旅なってしまい、事前のイメージと全然違う状態なのと、今回前半の標茶に何度も訪れたのを道北まで来て再現されているのが可笑しいのである。結局道東でも道北でも似たような下方修正になってしまっている。悔しさは全く無いが、今年の天気の過去経験したことが無い異常っぷりが可笑しさにつながっているのだ。
 まあでも今日あと半分、そして明日。天気が良ければありがたくそこで楽しむ、ということだけだ。とりあえず今日は仁宇布へ向かおう。仁宇布には早めの時間に着けるだろうから、風呂で汗を流して、食堂で生クラシックでも飲んで牧草地を眺めよう。

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■■■高地 大輔
北海道Tour13#9 2013/8/16 抜海→仁宇布-3

 12:20、歌登発。
 盆地を南へ向かうと、風向きは横風主体でせいぜいそよ風程度。心配したほどではない。雲は多いが、青空に緑、夏らしい色彩の中を盆地概数の山に向かってゆくのは、大変いい気分だ。
 辺毛内では、昨日朝出発したばかりの休暇村脇を通過。そもそも道だって一昨日、昨日走ったばかりである。天気は上々、何も違和感など感じる必要は無い。以前はこれぐらいの時間発で下川に18時に着けたこともあるのだ。何も考えず、余裕の行程でのんびり楽しんでしまえばいい。
 辺毛内からしばし森と志美宇丹峠を越えると、そこは明るい緑の牧草地が拡がる志美宇丹。一昨日夕暮れのこの道を通っているが、北海道に来て、これこそが見たかった景色であることを実感できた。この景色の中にいることができる、これこそ北海道へ来た意味である。今朝も昨日も予定が滅茶苦茶になったことなど、一気にどうでも良くなってしまった。今現在の気分としては。
 途中まで志美宇丹の中央武へ向かってから、思い返して今日は旧道を経由することにした。どうせ仁宇布に着いても時間はあるのだ、のんびりしても全然問題無いし、むしろ行動時間が増えることは大変望ましい。元小学校を回り込む旧道には、道道120を道北への私的幹線として通り始めた頃に見た風景があった。裏通りになってしまった旧道は、新道の道幅を見慣れてしまうと、寂しい印象すらある風景だ。しかし、確かもう10年ぐらい見ていない風景は懐かしく、こちらへ足を向けてみて良かったと思った。
 下り基調で道が続く志美宇丹から、やや狭い谷間を経由し、上徳志別へは再び登りとなる。こちらも牧草地が広がり、緑の世界に身を置くことができた。
▼動画1分1秒 お昼の上徳志別 エゾゼミも鳴いている 晴れでやや露出オーバー(GRのカラープロファイルが原因??)
http://takachi.no-ip.com/cycletouring/2013/hokkaidoutour13/9/r0002960.wmv
 晴れ基調ではあるがさすがオホーツク山中。風も涼しく爽やかで、快適そのものだ。

 上徳志別から先は、仁宇布まで約26km無人の世界である。
 大曲からの一登りでは、天気は晴れ基調で陽差しもあまり変わらないのに、途中から路面がかなりしっとり濡れ始めた。雲が低く動きが速いので、ちょっとした何かの加減で雨が降り始めるのかもしれない。そういえば以前薄日が射しているのに雨だったことも何度かある。さすがオホーツク山中、天気の常識というものが全く通用しない。晴れて穏やかだと、森深いいい道なのだが。
 14:15、天の川トンネル通過。もうそのまま無人の森を淡々と西尾峠へ。仁宇布に18時到着とかではなく、まだ午後早めの時間だと、最近の行程で毎回感じる森の圧迫感のような妙な雰囲気も薄いように思われる。やはり余裕のある行程が一番だ。というぐあいに、気分上々の最終日1日前の午後なのだった。

 峠近くで気が付くと、いつの間にか雲が濃くなっている。たかだか標高360mのだらだら峠だが、こういうところはやはり道北まっただ中の峠、さすがの貫禄十分である。
 15:10、西尾峠通過。
 そのままするするっと下ってしまえば、仁宇布の盆地では再び雲が切れて明るい空が登場。仁宇布からは北側山裾のファームイン・トントへまで80m登り返し。開けているのであまり意識しないが、いきなりペースががくっと落ちるのももう毎度の事。とにかく急がず、畑明るい日なたの農道で写真など撮っていると、宿主さんの車が手を振って通り過ぎていった。

 15:45、「ファームイン・トント」着。
 早速念願のひとっ風呂を浴び、待望の生クラシックをいただきつつ、テラスの外に拡がる夕暮れの牧草地を眺める。今回の行程屈指の素敵な風景に、ビールが面白いぐらいあっという間に身体に染み渡る。あまり泥酔しないようにしないと。

 居眠りしてもまだ薄暮。日の入り前の牧草地を外のテラスでもう一度眺めると、夕食のお知らせだ。
 新鮮なラムと野菜のジンギスカンは大変素晴らしいものの、明日の天気予報はどうやら曇り、その前の夜の大雨が少し気になる。天気が遅れない方向だといいのだが。

■■■2014/2/1
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■■■高地 大輔
北海道Tour13#10 2013/8/17 仁宇布→深川-1

仁宇布→(農道・道道49他)美深→(国道275)幌加内
101km
ルートラボ>http://yahoo.jp/RTS8mq

 4時に起きると、やはり雨が降っていた。雲も極限まで低い。
 それでも、5時半過ぎには朝食を作っていただく事になっている。余程の雷雨でない限り、6時には粛々と出発せねば。そのためには粛々と出発準備を進めなくてはならない。そうでなくてももう最終日、今日はちゃんと予定通り出発し、予定通り旭川に到着したい。大丈夫、今日の天気予報は1日曇り。雨は夜半だけの筈だ。

 朝食はいつものように牧草地を見渡す食堂で。曇りでも雨でも、最終日の朝にこの景色を眺めて食事ができる、ということがうれしい。
 TVニュースを見ていると、道南の函館本線森・八雲間で、貨物列車が大雨による倒木に衝突脱線、上下線とも運休中とのこと。何年か前のように、今日夜はまなすで帰るんだったら、とんでもないことになっていたと冷やっとした。いかにも天候不順に振り回された、今年の北海道らしい話だと思った。
 しかし、次に出てきたニュースに凍り付いた。幌加内町で1時間90mmの大雨、国道275の市街地から18kmの地点で冠水通行止め中とのこと。今日これから向かう道である。これからどうしようという気持ちより、こんなことってあるんだ、珍しい、などと他人事のように驚く気持ちの方が強かったのが、我ながら可笑しい。まあそれぐらいショックなニュースだ。
 大雨で冠水通行止めとはどういう状況なのか、崩落ではないのか。そもそも幌加内市街地から18kmで崩落か冠水しそうな場所って、一体どの辺りなのか。政和の辺りなら冠水だろうし、政和から雨煙内の渓谷なら崩落の可能性もある。でも、冠水らしいしな。いや、むしろ幌加内の南側かもしれない。それなら今日のコースには関係無いかもしれない。
 とりあえず雷が鳴っていなければ、粛々と6時には出発し、美深の国道入口に何か掲示か通行止めが出ているか見てみよう。そこでダメなら通行止め地点もわかる可能性が高い。その情報と美深の天気で、今日1日の行動が決まることだろう。

 5:55、ファームイン・トント発。
 小雨の牧草地を下って仁宇布の交差点へ向かうと、ちょうど小中学校の辺りで雨がすっと弱くなった。交差点の缶コーヒーをぐいっと腹に入れて、6:10、仁宇布発。
 道道49を美深へ下る。約24kmで標高差は200m、脚を時々動かすぐらいで快調ペースで進めるのが、朝一番の道としては有り難い。ただ、気温はやや低く、あまり楽でも寒くなってきてしまうのは困りものではある。トロッコ転回所を過ぎると、路面が乾き始めた。しかし雨は上がっているものの、山々はガスっぽく、空は暗い。
 熊笹の中の築堤や川に掛かるコンクリート橋など、転回所の先も時々残る美深線の遺構を眺めながらしばらく下ってゆくと再び雨が降り始めた。どうも今日は開けた谷間の美深方面に近づいたからといって、雨が上がるわけではないようだ。というか、内陸の美深の方が雨っぽいのかもしれない。それは、国道275の大雨被害情報と一致している。良くない展開である。更に
下る途中で雨は強くなってきたが、美深の盆地に出たところで雨は何とか弱まり、国道40の手前で何とか完全に収まってくれた。

 7:10、美深着。
 何度かお世話になっている国道40沿いのセイコーマートへ、とりあえず表敬訪問。かなり昔からあるセイコーマートではあるものの、hotchefが設けられていた。さっき朝食を宿で戴いたばかりなのが勿体無い。今日この先国道275へ進むなら、もうHotChef付きセイコーマートに立ち寄れる場所は、旭川ぐらいしか無い筈だ。ホテルのある札幌に行ってしまえば、HotChefがあるセイコーマートが思いつかない。等と考えつつも、缶コーヒーを飲むだけにしておく。
 7:35、美深発。
 町中の国道275への分岐には、通行止め措置などは見当たらない。ちょうど向こうからやってきた軽自動車がいたので、状況を尋ねてみた。すると運良く、
「今幌加内から通ってきたところだが、開通したばかり。通行止めは、政和と雨煙内の間だったみたいだけど、大丈夫でした。もう行けます」
とのこと。ついてるぞ、運が向いてきたかもしれない。空は相変わらず暗いが、ここは予定通り行くしか無い。

■■■2014/2/2
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■■■高地 大輔
北海道Tour13#10 2013/8/17 仁宇布→深川-2

 しかし、天塩川を渡って国道275の谷間に入り込むと、すぐに再び雲がもの凄く低くなってきた。「頼む、このまま何とか持ってくれ」という願いもむなしく、六郷辺りで早くも小雨が降り出した。更に少しづつ進む間に小雨が3歩進んで2歩下がる的に段階的に勢いを増し、美深峠への上りが始まる泉の一番上手辺りで、遂に本降りに捕まった。結局、雨の美深峠越えになってしまったのであった。
 国道275はいくら交通量が少ないとは言え、基本的には国道規格の道。幅広で頭上の開けた長い直線の坂道が続く。晴れた日には陽差しが非常に厳しいこの道、今日は雨が頭上からまともに降りかかって、途中隠れる場所が一切無い。まだ朝で気温がそう高くないのは助かるが、それにしても雨具の中が蒸れる。標高が上がる中盤以降からは、谷間を豪快に横切る橋が何度か現れ、その度ごとに脚を停め、深い谷底や天塩案地裏手の山裾まで続く樹海などを眺めてみる。山裾辺りはすっかり雲に隠れていて、しばら天気が絶望的らしいことは理解できた。

 美深峠を越えると、こういう日にありがちな峠の霧のような雲が、今日も峠にまとわりついていた。お構いなく、というか仕方無くその中へ進むと、豪雨が雨具やバッグをばしばし叩き付ける大雨になった。路面は川なのに、下っていかなければならない。滑らないように十分速度を落とし、注意して進む。
 そんな大雨だったので、谷間に降りきって斜度が一段落して、まずはひと安心。更に谷間が拡がって、母子里の牧草地が見えてきたときは嬉しかった。集落のこちら側には、1986年に牧草運びのアルバイトをさせていただいた岡本さんの牧場がある。しかし、今日はこの大雨、逃げるように通過せざるを得なかった。また挨拶に来なければ。

 9:10、母子里着。
 母子里で目当てにしていたのは、どこかで雨宿りできると思っていたからだ。とりあえず真っ先に思い出していたのは、交差点のホクレンスタンドやその周辺の公民館の軒先である。しかし、交差点がある集落中心部の少し手前に、クリスタルパークと名付けられた駐車場公園があり、そこに確かあずまやぐらいはあったかもしれないことを、集落の手前で思い出した。果たして見え始めたクリスタルパークには、運良く管理事務所のような深い切妻屋根を持つ建物が建っていて、その軒先には軽トラも停まっていた。地元の方も雨宿りしているのだ、この大雨では。とりあえず逃げ込もう。

 管理事務所の軒下で自転車を停めると、軒下には地元の方お2人と、ツーリング中らしいライダーがいた。そのうち地元っぽいお一方には見覚えがあった。というより、前述の岡本さんだとすぐわかった。一度は諦めた岡本さんに、目出度く母子里で会えたのであった。
 1986年、泊まり込みアルバイトでお世話になったのは3日間だけだったが、その後何度か、母子里に来る度に岡本さんには挨拶に顔を出していた。しかし2005年以来、母子里を通過しても岡本さんのお宅前を通ることは無く、それにかまけてご挨拶には伺っていなかった。すごく嬉しい再会である。
 ツーリング中に事務所で40分近くも話し込んだのは、私にしては珍しい。お互いお話しするのは、「お互い全く変わっていない」ということ。1986年以来もう30年近く経つが、しかし何だか昨日お会いしたばかりのような、とても懐かしいような、強烈に嬉しい再会である。岡本さんは後進の酪農家育成にご熱心らしく、毎年のようにそういう方との再会があり、最近も尋ねてきた方がいたと仰っていた。
 今年の異常気象の話も出た。ご多分に漏れず母子里も毎日蒸し暑かったり雨続きだったり相当変な天気で、また、政和の辺りでは、よく畑や国道が冠水するとのこと。政和にお住まいの岡本さんのご親戚の畑でも、ソバが冠水して大変だったらしい。今日の国道通行止めも、「政和辺りじゃあないの」とのこと。

■■■2014/2/2
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■■■高地 大輔
北海道Tour13#10 2013/8/17 仁宇布→深川-3

 その他、朱鞠内湖岸から遠別へ向かう、元国鉄名羽線未成トンネル含みとの噂もあった道道688が何と工事再開進行中とのお話しを伺って、耳を疑った。私が始めて朱鞠内を訪れた1985年、既に「いつ開通するのかわからない放置状態」だったこの道が、何と工事中で、4年後ぐらいには開通するんじゃないかということなのだ。
 2013年の実態としては、国鉄名雨線どころか両側の深名線、羽幌線が廃止されて久しい。この道が開通しても、両端部も含めてどれだけ交通量に影響するのかはわからない。しかし、天塩辺りの日本海沿岸から旭川・札幌方面への交通状況は一変するはずだ。自転車ツーリング的には、程良く枯れた長大無人区間を持つ道北縦断系ルートが、全く新規に1本開通することになる。それは多分、今後の私的道北ルートに大きく影響するだろう。
 話し込んでいる内に雨が上がったようだった。そこで記念撮影させていただき、出発することにした。
 2人並んで写していただいたGRのモニタをチェックして、驚いた。あんなにお互いあんなに昔と変わらないと思ってお話ししていたのに、そこに写っていたのは、紛れもなく1986年から30年後の老人と中年だったからだ。何だか浦島太郎の気持ちがわかったような気になった。そうか、玉手箱の煙が消えるというのはこういうことなのか。

 という衝撃は一瞬で些細なこと、やはり嬉しかった再会を有り難く噛みしめ、9:50、母子里発。
 信号のあるホクレンの交差点、交差点からのぞき込む元北母子里駅への通り、そして写真を撮ってとぼとぼ歩いた丘など、母子里の景色は全て何だか懐かしい。初めてこの景色に出会った1985年の渡道以来とても好きな母子里なのだが、自分の中でその景色達がすっかりこなれた物になっていることに感慨を覚える。好きな場所は何度訪れてもいいものだ。
 何度かのアップダウンで湖岸の縁に乗り上げると、まだ雲は低く厚く暗いものの、路面が乾き始めた部分が登場。あまり遠くまで見通せない分、あまり展望で脚を停めすぎること無く粛々と進み、朱鞠内へ。

 谷底への最後のひと下りでは、えんじん橋から湖畔の集落を眺めることができる。私にとって80年代の北海道旅行は、湖畔にあった「しゅまりの宿」を訪問するのが常で、母子里の岡本牧場も、湖畔の高山牧場も、しゅまりの宿でアルバイトを紹介してもらったのだ。
 谷底に下りきると、朱鞠内である。朱鞠内も昔と比べてだいぶ変わった。元深名線の駅の痕跡は、除雪センターなどに残っていると言えば残っている程度だが、昔からワカサギの佃煮を売っていたお店は今でも国道沿いに残っていて、今回も缶コーヒーを飲むことができた。何かと思い出深いこの辺りだが、今日はもうささっと通過してしまうことにした。天気が予断を許さないためである。
 朱鞠内から幌加内へは約35km、ほぼ全区間下り基調となる。たまに登り返しもあるが、大したことは無い。バスの運転手さんが「出る」と言う朱鞠内トンネルを抜け、しばらくそう広くない茂みだけの谷間を抜け、快調にどんどん進む。北星で谷間とソバ畑が一気に拡がると、まもなく士別からやってきた国道239に合流。添牛内の少しの間の重複区間を過ぎると、国道239は霧立峠に向かってゆく。ほとんど車も来ないのに、分岐では国道239がせり上がり、まるでジャンクションのように立体的でなんだかゴージャス感が漂う。

 添牛内では天塩山地が左側間近に迫ってくる。一直線に彼方へ続く道と白樺並木、迫る山々の姿は、国道275の中でも幌加内の北部を象徴する眺めで、一直線の道路にはツーリング中の自転車やバイクがよく似合う。驚くことにこの人の来ない道で、最近はバイク入りの写真を撮るライダーを見かけるようになった。中標津の町道北19のような名所になりつつあるのかもしれない。今日は雲が低く薄暗く、やや残念だ。
 山肌が迫る白樺の森も見所一杯の添牛内から、1面にソバ畑が拡がる政和に降りる段丘部分には、いつも立ち寄る展望ポイントがあった。もともとなんだか単に砂利敷き広場みたいな場所だったのが、去年は遂にそこに観光バスが止まっていたような記憶があった。今年は一気に展望台ができていてびっくり。何と出店も出ている。

■■■2014/2/2
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■■■高地 大輔
北海道Tour13#10 2013/8/17 仁宇布→深川-4

 ソバ畑の中を一目散に下りつつ、路上の冠水の痕跡を探してみるが、どうもそれらしいものは見当たらない。まあもう全通しているんだし、ほんとに路上を水が通過して、持ってきた物を全部また持っていたのかもしれない。そんなことが果たしてあるのかどうかわからないが。無いような気もするが。
 いつか脚を停めて蕎麦を食べてみたい政和の市街地を過ぎると、谷間が狭くなる手前に道の駅「せいわ温泉ルオント」がある。美深から立ち寄る店が無かったので、何だか強烈にここでソフトを食べていきたい。蕎麦のお土産を送るというミッションもある。

 道の駅を出発するときに、再び雨が降り始めた。毎年ここでちょっと天気が不安定な方向に変わるように思うが、ちょうどここから谷が一気に狭くなるのからかもしれない。少し進んだ先で、路面が急に泥っぽくなり、山側の法面に土嚢が詰まれている箇所が現れた。雨具姿の方やガードマンが道の脇に立っている。作業や点検を行っているのかもしれない。尋ねてみると、国道通行止めの原因はここらしかった。

 その後、雨煙内で雨は大雨に変わった。更にいつものように、谷間が拡がって幌加内盆地に出てくると、かなり強い向かい風まで襲ってきた。大雨が雷雨に変わった段階で、ダメだと思った。幌加内でバスに切り替えよう。確か14時台か15時台には深川行きがあったはずだ。
 今日こそは予定通り旭川に到達したかったのだが、天気に悩まされた今年の北海道の、大変あっけない終わりである。そんなことより、大雨と強風で全然前に進まない。まるで幌加内へ到着することを拒まれているような気分になる。とにかく幌加内町役場の、バスターミナルに着かねば。

 12:45、幌加内着。まずは何より先にバスの時刻をチェック。と、12:50過ぎに深川行きが出てしまうが、15:05にもバスがある。確かバスターミナル1階の蕎麦屋はとても美味しかったはず。今からゆっくりてれてれ輪行して、蕎麦を食べて多分14時過ぎ。時間が余ったら蕎麦をもう1杯食べよう。理想的な時刻である。
 次にバスターミナルの蕎麦屋「せい一」へ。「せい一」の「せい」は政和のせいなのか、とにかくソバ日本一の産地幌加内での念願の蕎麦である。という以上に、しゃきっと切れと香りのいい、大変美味しい蕎麦だ。
 とりあえずソバの1杯目が終わったら、引き続き輪行作業と荷造りを開始。両方ゆっくりのんびりと、むしろ今後飛行機輪行で荷物がばらけないことを主眼に、ややきっちり目に自転車各部を緊結しておく。あらかた輪行作業が終わるころ、気が付くと辺りの雨はほとんど上がってしまっていた。
 まあしかしもう輪行を決めてしまったのだし、遠くの空はどす黒い。生暖かい風も相変わらず強く、きっと町外れからまた降り出すパターンなのだろう、と自分に言い聞かせる。真相など後でわかるのだ。
 ちょっと勢いがそがれてしまったが、次のミッションは蕎麦の2杯目だ。しかし、「せい一」は売り切れとのことで、ちょっと前に営業終了になったあとだった。仕方無く小雨の町に出るものの、近場の蕎麦屋は全て営業終了。仕方無く缶コーヒーと共に手持ちぶさたの30分ほどを過ごすことになった。

 深川行きのバスは、しばらく国道275を経由してゆく。途中2007年から訪れていない幌加内峠では、何とトンネルが開通していた。そう言えば確か前回工事中だったような気もする。降りきった鷹泊の南辺りで空が真っ黒、風も大風が吹き始め、その後深川まで大雨は降り続いた。
 スーパーカムイで到着した札幌駅では、函館本線の運休により、函館方面の特急が滅茶苦茶だった。発車案内表示の「運休」「長万部」「臨時特急ワッカ」の文字に、非常事態がよく感じられた。更にラーメンを食べに街へ出ると、マイマイガの大発生が私を待っていてくれた。道の脇も街灯下もビルの壁もガだらけのぐちゃぐちゃ。翌朝の千歳空港ではかつて見たことが無い大混雑だし、最後までさんざんな2013年夏の北海道だった。

■■■2014/2/1
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■■■高地 大輔

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