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神奈川【市民と野党と労組】連帯コミュの広原盛明氏の街づくり論

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*広原氏は、京都府立大学学長や龍谷大学などを歴任しながら、京都市長選にも立候補したことのある民主的知識人です。

広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)
 前回で述べた“京都ブランド”で勝負するとはどういうことか。それは、京都の名前を付けた特産品開発とか観光イベントの開催とかいった浅薄なものではない。また特定企業の「企業ブランド」を立ち上げることでもない。言い換えれば、それは京都という地域のもつ品格すなわち“都市格”を涵養することで地域社会と環境文化の質を高め、地域全体のイメージの向上を通して京都経済・京都企業の持続的競争力を高めていくということだ。

 ガリバー型大企業(いわゆる世界企業)が存在せず、伝統産業や中小企業が数多く集積している京都では、特定の大企業に依存した経済構造や経済活動は地域経済になじまない。また世界企業といえども浮き沈みの激しい昨今では、企業城下町的な経済構造は可能であっても地域の持続的発展にとっては必ずしも好ましいといえない。京都では、企業が市民や行政と協力して「地域全体」「まち全体」で多様な企業活動を支えるような仕組みを作らなければ地域経済の発展はあり得ず、そのような多様な仕組みの総称が“京都ブランド”なのである。

 この点に関しては、京都経済界もそれ相応の努力を重ねてきた。全国でも稀な厳しい高層マンションの高度規制や看板広告の規制が実施されたとき、建設業界や広告業界からの反発は相当なものだったが、経済界全体としては京都の景観や環境文化を守るための必要な措置(規制)として受け入れた。もし京都の景観破壊がこれ以上進んでいたなら、京都を舞台とする日本食文化の世界無形文化遺産登録、すなわち「和食;日本人の伝統的な食文化」のユネスコ登録申請などはとうてい不可能だったであろう。

 学術研究や芸術文化に対する企業の貢献活動も活発だ。「大学のまち」でもある京都は、大学と経済界の結びつきが狭い意味でのいわゆる「産学共同」のレベルをはるかに超えて多面的に発展している。企業が敷地を行政に提供してベンチャー企業を育てるための研究開発機構を設立する。大学の教育研究施設建設に多額の資金を寄付する。「京都賞」やその他の研究顕彰事業を立ち上げる。京都市交響楽団の演奏活動や大学の地域活動に協賛資金を提供する。企業の産業博物館や収集美術品展示館を建設する、などなど多彩な分野にわたって企業貢献活動が行われている。

 こうした企業の社会貢献活動は、市民や行政とのコラボレーションによって“地域ブランド=京都ブランド”を一層多彩なものにする。だがここでいう“地域ブランド”は、経済誌などでよく発表されるいわゆる「地域ランキング」ではない。画一的な指標を組み合わせて全国一律の地域評価を行う(偏差値的な)地域ランキングは、地域評価の一面を示すものであっても全てではない。それは地域の個性を捨象した(質的評価にはなじまない)指標とも言うべきものであって、まちづくりの参考指標にはなっても原動力にはなり得ない。

 関西財界や大阪企業はこの点で決定的な誤りを犯している。関西財界が重視するのは工業出荷額や府内総生産、経済成長率などの量的経済指標であって、“上方=大阪ブランド”の涵養といった視点は皆無に近い。彼らにとっての地域は狭い意味での経済空間でしかなく、安倍首相が「企業が世界で最も活動しやすい日本にする」と言うのと同じ意味だ。だから「東京に追いつき追い越せ」といった目標しか目に入らず、追いつけなければ東京へ本社移転するという発想に陥るのである。

 企業の社会貢献活動に関しても同じような傾向を指摘できる。戦前の大阪には、中之島公会堂や中之島図書館のような名建築が大阪の実業家や住友財閥などの寄付金で建設される伝統があった。だが戦後はそのような気風がなくなり、上方(大阪)文化の形成に寄与する企業風土が消滅した。その象徴的事例が、大阪生え抜きの企業であるサントリーが、大阪ではなくて東京で「サントリーホール」を建設したことだろう。

 コンサート専用ホールとして1986年に東京赤坂で誕生したサントリーホールは、当時サントリー株式会社の社長だった佐治敬三氏の永年の夢の実現であり、サントリーグループが世代を超えて文化・社会貢献活動を継続して行ってきた成果の集大成だとされている。サントリーの社会貢献活動の原点は、創業者・鳥井信治郎氏が信念としていた「利益三分主義」にあるとされ、事業によって得た利益は「顧客へのサービス」「事業の拡大」「社会への還元」に役立てるというものだ。

 この「利益三分主義」の理念には異存がないものの、問題はそれがなぜ地元の大阪ではなく東京に「還元」されたのかということだ。おそらくその背景には東京でのホール建設によってサントリーの「企業ブランド」を高め、国内市場の拡大を狙った経営戦略があったのであろうが、そこに大阪の「地域ブランド」を創るという視点が皆無なのはどうしてなのか。これでは大阪企業の社会貢献活動がますます東京への一極集中を加速し、大阪の地盤沈下に拍車をかけるということにもなりかねない。

 大阪維新の会は、このような大阪の企業風土のなかで生まれるべくして生まれたと言える。橋下氏が知事時代にやったことは、大阪が世界に誇る国際児童文学館を閉館し、朝比奈隆氏が心血を注いで育ててきた大阪フィルハーモニーや日本センチュリー交響楽団への補助金を全額カットし、古典芸能文楽協会の補助金を大幅に減らすこと(だけ)だった。その代わりといっては何だが、大阪を国際都市にすると称して打ちあげたのが埋立地での「カジノ誘致構想」であり、カジノを中心とした「統合型リゾート構想」の提案だったのである。

 大阪を「バクチのまち」にする橋下氏のこんな提案を関西財界は何ひとつ批判することなく、それどころか逆に、関西経済同友会が埋立地に「統合型リゾート」の設置を求める提言(2013年1月)を発表するのだから始末が悪い。また維新のブレーンであり大阪府市特別顧問の堺屋太一氏は、大阪・ミナミの道頓堀川を巨大プール化する構想を発表し、これを真に受けた地元商店主たちが準備会社を設立するといった馬鹿げた話が進んでいる。堺屋氏は「成功すれば東京五輪の数倍の経済効果も見込める」(毎日新聞、2013年10月11日)といった荒唐無稽の発言を相変わらず繰り返しているが、知性と文化を失った都市の行方は暗い。

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