神奈川【市民と野党と労組】連帯コミュの横浜市長の学校給食に対する市民からの意見

【＊柴田豊勝さんを応援する「市民の市長をつくる会」ＨＰから転載させていただきました。】

元学校栄養士の吉田眞理子さんから、中学校給食についての文書が寄せられました。

林市長の発言について
　林市長は、体も心も健全に育てようと横浜学校給食をよくする会の質問に対して、「中学校期になると体格、食事量など個人差が大きくなり、給食などの画一的な献立よりも、子どもたちが自分の体調や栄養バランスを考慮した個々に応じた昼食の方が望ましいと考えており、家庭からの弁当持参を基本としています。」と答えています（2011年1月7日）。
　また、中学校「昼食」問題の話し合いに参加した時、「また、個人の意見ですが、」「私は給食が必要だとは思っていません。家庭力(教育の力で生まれてくるものなのに)が問われている今、家からのお弁当を持ってくることこそ大切」と発言された課長がいらっしゃいました。

これらの発言は、大切なことが欠如しています。
　中学校給食を「教育」としてとらえているのでしょうか。学校給食法(1954年)は、「昼食法」ではないのです。給食法の中身は別にして、法第４条では「義務教育諸学校の設置者は、学校給食が実施されるよう努めなければならない」と位置づけています。
　昼食を、体のことを考えずに、「食べたい」という欲求のみで考えた場合、大人の病気発生を見れば分かるように、食事の選択能力や判断能力もなしに個々が食をとっていたら日本人は一体どうなるのか、未来の社会はどうなるかと心配です。一生の内に二度と築けない未来の社会人として、人間としての健康な体と心の土台となる時期が中学校期なのですから。

　そこで、林市長の回答について、次のように考えます。
１．成長の遅い子と早い子がおり、特に中学生になったばかりの頃は個体差が大きい時期ですが、大人と同じような体の仕組みになるのは誰でもが高校入学の頃なのです。個人差的捉え方は発達という仕組みの科学を知らない人の考え方です。体の仕組みを作り上げている最後のめざましき成長・発達がこの時期なのです。

２．給食の献立は「このような子に育って欲しい」という願いを込めての教科書なのです。ですから、食環境の変化や子どもたちの体の変化、日本人としての体の変化(和食中心の体内の構造や酵素、ホルモンの働きなど)などを考慮して立てられているのです。画一的どころか月の中では一つも同じメニューは出てきません。みんな同じものを食べるからということであれば、教科書がバラバラでは、この後の指導や教育に生かしにくくなるのです。将来への実りと結びつかないことになるでしょう。

３．給食の献立では元々栄養バランスは考えられているので、自分の体調や小食などの個々に応じた量を考えつつ、判断力や自立力と重なり、盛りつけて食べることが、毎日の体験とその後の授業などで体の科学と自分の体の声とを知りつつ、育ち実っていくのです。
この時期の栄養の必要量は40歳代の大人の1.1～1.5倍必要で、特にミネラル、ビタミンをしっかりとることが健康な体作りの支えとなります。とても家庭の弁当ではとりきれません。ましてや業者弁当では、カロリーと蛋白質はあったとしても微量栄養素(ミネラル、ビタミン類)の摂取は無理です。

４．特にカルシウム、微量栄養素など、限りのある弁当箱と、食べる時間までのことを考えると、どんなに豪華な弁当でも栄養的に限界があります。そして、味付けも濃いめになり、また味付けも変化が付けにくく、時間が経てばおいしい物でも味は失われてしまいます。給食で良く出るスープなどは(これで野菜類もいっぱい摂れますが)持参しにくいでしょう。
　また、塩分の摂りすぎ(味覚形成が濃い味になれてしまい、生活習慣病になりかねない)や、性格や人格にまで影響されると言われる味覚(色々な料理味を貯えることできない)かでが、画一的になりかねないのです。ましてや業者弁当を食べるとすれば「あー、腹が減ったら業者弁当で済ましちゃえばいいや」と食を体と心の健康のみでなく、生き方まで育て上げられてしますことになるでしょう。

５．給食の大切さは、オギャーと生まれた人間はみんな平等に幸せに生きる権利があるんだという(憲法21条)ことと、教育を受ける権利との関わりがあること。

６．社会的格差の広がりを家庭に押しつけたら、子どもたちはその格差の渦に飲み込まれ、体も心も大変なことになります。ゆえに、学校給食を実施することは、健全に育っていける道を作ることでもあります。

７．「体格、食事量など個人差」の発言に対しては、文科省から出されている栄養摂取の基準量の表が載せてあります。中学校期は大人になるための繰り返しのきかない体の土台作りの時期であるために、この位は給食で摂ってくださいという数字であり、３食の内の３分の１の量(特にミネラル、微量栄養素は)ではなく、家庭だけの食事では不足しがちな量も摂るように位置づけられています。つまり、１日単位の栄養バランスを考慮した給食摂取基準になっているのです(未だに捕食給食的です) 。
　体の仕組みの形成、大人へ向けての健全なる細胞の質的発達までも考えてのものですから、現象的体格や食事量のみのことではない健全な大人となる土台の発達のために考えられた栄養バランスと言えるでしょう。
　「画一的な献立」については、給食の献立は中学校期の発達に相応しい栄養バランスを考えて立てられているのですから、画一どころではなく、成長発達をしっかり支え育てていく、まさに成長発達に見合った献立なのです。ですから社会の格差を体や心の発達、将来の人間不平等の格差として育ててはいけないのです。日本の将来の社会、人間を大切にする社会になるかならないか、するかしないかの問題でもあるのです。このことは市長を始めとする大人達が責任を持っていく問題です。

　教育という問題で一つ入れておきます。
　日本人だけではありません。「同じ釜の飯を食う」ということは、人が間を作り人間になっていくことであり、仲間同志が同じ味を味わうことによって、喜び、幸せを理屈抜きで温めあい、自然に育っていくのです。正に人間平等の教育であり、人間として人間らしく生きていく教育の典型といえるのです。
給食には、郷土料理や伝統料理、外国の料理なども取り入れていますが、その土地、環境、人間の労働、工夫によって生まれてきた文化であり、平和であればこそ受け継がれ発展し、体の健康、心の育ちも深くなり、その人々の文化として尊ばれ高まっていくのです。

　人間としての平等な意識、教育としての力は、食教育の中に潜んでいます。人間丸ごと教育の土台です。
　教育や子育てにお金や手間暇かかるのは当たり前です。社会格差が、子どもの学校選びから勉強時間、成績にまで影響しているというデータが以前出されたことがありました。
　弁当では人間の格差があって当たり前です。個人個人に良と悪があるのだと、社会格差の構造を見抜けない所が見ない捉え方になっています。
　義務教育の中でこそ育つ、ものの見方、考え方の教育が、食の教育の中にあるのです。食べなければ生きることできず、ひいては病気になっていくのですから。

【参　考】
日本国憲法　1946年11月３日公布、1947年５月３日施行
第三章　国民の権利及び義務
第25条　［生存権、国の社会的使命］　
①　すべて国民は､健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
②　国は､すべての生活部面について、社会福祉､社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
第26条　［教育を受ける権利、義務教育］　
①　すべて国民は､法律の定めるところにより､その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
②　すべて国民は、法律の定めるところにより､その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は､これを無償とする。

教育基本法　1947年３月31日施行（改正前）
われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。
　われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。
　ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。
第一条（教育の目的）教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身とも健康な国民の育成を期して行われなければならない。
第二条（教育の方針）教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によって、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。