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なつみ館(仮)コミュのけんだまっ 1

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けんだまっ!(仮)

                               録沢京

元樹(男、会社員)
ケン(女、けんだまに宿った精霊)
安永(女、元樹の同僚)
真太 (男、元樹の同僚)
晴/晴美(身体的には男、元樹の隣人。おかま)
口上(男女どちらでもいい)

0 口上
1 元樹の日常(元樹・安永・真太・晴)
2 元樹とケンの出会い(元樹・ケン)
2.5 こいつは他人には見えないらしい(元樹・ケン・晴)
3 会社の同僚は何か変だ(元樹・真太)
4 隣に住んでる人も何か変だ(元樹・ケン・晴)
5 遊んでみよう(元樹・ケン)
6 上司の勧告(元樹・安永)
7 元樹が風邪をひいた(真太・安永・晴)
7.5 ケンは同僚にも見えるらしい(真太・ケン)
8 ケンと二人の田中さん(元樹。・ケン・真太)
9 うちのマドンナ(元樹・安永)
10 捨てて下さい、名前も過去も(元樹・ケン・安永)
11 本当に伝えたかったこと(元樹・ケン・安永・晴)
12 それでも日常は流れるけれども(元樹・ケン・安永・真太・晴)

0・口上
   まず、口上が出て来る。
   軽く開幕の挨拶。
   何を話してもよいが、次の内容を入れること。

口上 今回のお芝居では、チャレンジ・シーンが出てきます。タイトルにもある通り、けんだまチャレンジです。その時はBGMを流しますんで、息をひそめて、集中して見守って下さい。成功したら、ささやかでよろしいので拍手をば、よろしくお願いいたします。

   口上、はける。

   元樹、パソコンデスクに座って仕事をしている。
   周りにはまるで機械のような動きで書類を受け、渡し、受け、渡ししている。
   元樹に光が集まっている。

元樹 今日の天気。今日のニュース。電車が何分遅れたとか、お昼何食べるとか。俺は今をささやかに生きている。昔はどんな話しをしていたっけ?もう思い出せない。編集。やり直し。再提出。上司の承認。マニュアル確認。資料検索。スマイル。そんな時にふと襲ってくる、過去の恥ずかしい記憶。あああ……

1・元樹の日常

安永 田中さん?

   ここは会社内。明りがつく。

元樹 え?
安永 どうしたんですか?
元樹 ああ、ちょっと……頭痛くて。
安永 風邪流行ってますからね、気をつけないと。
元樹 そうですね。

   安永、作業に戻っていく。

元樹 ああー安永さん、かわいいなー癒されるなー。うちの会社では一番かなあ。俺の事心配してくれるなんて、本当いい子だよなあ。彼氏とかいるんだろうか。まあそもそも……そんな対象じゃないんだろうけど。はあ。

   元樹も機械のようにパソコンに向かって、書類を渡し、受け、渡し、
   お昼の鐘が鳴る。
   午前中の仕事が終わり、休憩時間。

真太 あ、真田さん。今日もメガネ似合ってますね。黒田さん、そのヘアゴムかわいいですよ。斉藤さん、相変わらず歯が白くてうらやましいなあ。佐原さん、笑顔が素敵。矢口さん、鼻高くていいですよねー。うらやましいな、ホント。

元樹 あいつまたやってる。女とみれば何でもほめるんだから、やなやつだよ。あれで俺と同じ名字なんだから、やってられない。

   午後の仕事が終わり、アパートの前。

元樹 あー今日も疲れた疲れた。
晴  こんばんはー。
元樹 あ、こんばんはー。(家に入ろうとする)
晴  あ、田中さん。
元樹 はい?
晴  えっと……あ、また今度でいいです。すみません。
元樹 今度?
晴  あーいや、はい。(家に入る)
元樹 ……何だ、一体。(家に入る)


2・元樹とケンの出会い

   家の中。

元樹 帰ると思いっきり力が抜ける。会社から離れて素の自分に戻ったと言うのに、俺は特に解放された気分でもなく、ただただ疲れただけ。

   一旦寝ようとする。だがしぶしぶ起き上がる。

元樹 とはいえ、寝る前にやることがある。夕飯。風呂。歯磨き。明日の話題作りのために情報収集。少しの気休め。だが、その前に……片付けなくちゃ。

   元樹、段ボール箱を取り出してくる。

元樹 実家から送ってきた俺の荷物。もう要らないから、引き取って、だと。あまり気が進まないが、とにかく……

   元樹、箱を開けて思い出の品を出していく。

元樹 うわっ、汚ねー学ラン。こんなのどうすんだよ。誰かいらないかな……でも確か俺の母校はもう、ブレザー制服になってるんだっけ……みかん?の、置物?……ああ!昔図工で作った奴だ!ぶつぶつ苦労したんだよなあ。それから……

   元樹、どんどん箱を開けていく。そのうちに、一つのけんだまを見つける。

元樹 あーなっつかしー。けんだまだ。確かこれ、じいちゃんの道具箱からとってきたんだっけ。まだつかえるかな……

   けんだまチャレンジBGM。元樹、けんだまの技を決める。
   何回か失敗してもいい。出来なかったらケンが補助すること。

元樹 よっ……と。
ケン 決まった!
元樹 よっしゃ!
ケン 久しぶり!
元樹 え?
ケン あんちゃん、元気だった?
元樹 誰?どっから入った?ていうか誰?
ケン 忘れた?私のこと。
元樹 え……知らないですけど。ていうかマジどっから入ったんですか?警察……
ケン 田中安佐エ門ちゃんでしょ?
元樹 はあ?たなか……今何て言った?
ケン だから、安佐エ門ちゃんでしょ、田中安佐エ門。
元樹 それ、俺のじいちゃんの名前だよ。じいちゃんの知り合い?にしては……
ケン ええ?おじいちゃん?
元樹 とにかく、いつうちにあがりこんだんですか?不法侵入、ですよね。
ケン あたし、あんちゃんと約束してきたんだけど。
元樹 じいちゃんと?
ケン うん。
元樹 ああ、……なんか生前の約束とか……?
ケン せいぜん?
元樹 あ……その……
ケン ん?
元樹 亡くなってるんです。じいちゃん、去年の夏に……
ケン 死んじゃったの?
元樹 はい、まあ。……連絡がいってなかったようで、申し訳ないです。
ケン そっか。
元樹 親族関係、ですか?それとも旧友のお孫さんとか?
ケン んーん、あたし、それなの。

   ケンの指差した先にはけんだまがある。

元樹 けんだま?
ケン あたし、けんだまのつくも神なんだ。
元樹 つくも……?
ケン いっちゃえば、けんだまの、妖精?精霊?幽霊?みたいな。
元樹 はあ?
ケン このけんだまに魂が宿ったっていう?
元樹 あんた頭おかしいんじゃないか?
ケン おっかしいなー安佐エ門ちゃんはすぐ信じてくれたのに。
元樹 あんた本当にじいちゃんの知り合いなのか?
ケン 最後に会ったのは、あんちゃんが十歳の時だったかな。九歳の時に火鉢でやけどして、右腕の内側にひきつった跡が残ってた。小さい跡だけどね、あんちゃんずっと気にしてた。
元樹 じいちゃんが十歳の時?あんたいくつなんだよ。どう見つもっても……
ケン あたしケン。よろしく。(さわやかに握手)
元樹 ああどうも……ってだから!あんた何歳なんだよ?美魔女?美魔女とかいうやつ?
ケン ではあいさつ代わりに……けーん、だま!

   ケン、けんだまのバランスポーズ。成功。と同時に元樹がずるっとすべる。

ケン やったー久々に成功!
元樹 っととと……何今の?なんか滑ったけど……
ケン これはね、けんだまの技で、「大皿」のポーズなの。
元樹 いや聞いてないから。
ケン けんだまのポーズ。これが決まると、その場にいる人は滑る!
元樹 え?
ケン ちなみに、同じポーズを決めていれば、滑らない!
元樹 ……はあ。……ところで。
ケン 何?
元樹 御用件はなんでしょうか。
ケン だから、あんちゃんとの約束……
元樹 約束って何ですか?とにかく、それ済ませたらお引き取り願いたいんですが。
ケン 何で?
元樹 何でってあんた……ここは俺の家で、もう暗いし、そもそもあんたが不法侵入してきてるから……
ケン あたし、帰らないよ。
元樹 は?
ケン だって、約束だもん。
元樹 いやそんなこと言われてもね……
ケン ではもう一つ、けーん、だま!だま!だま!

   ケン、けんだまのバランスポーズ。成功。元樹、今度は滑るまいと工夫するが、そのために派手に滑り、転んでしまう。
   派手に家具が倒れる音。

ケン これは、大皿、小皿、剣先と移す、「日本一周」の技のポーズ!
元樹 何なんだよあんた……
ケン 大丈夫?

2.5・こいつは他人には見えないらしい

   ドアのインターホン。連続で鳴り続けるタイプのインターホンである。

ケン お客さん。(出ようとする)
元樹 ちょっと待て!出るな!隠れてろ!

   ケン、勝手にドアを開ける。
   晴が入ってくる。晴にはケンは見えていない。


晴  あれ?こんばんはー。
ケン こんばんはー。
晴  あの……田中さん?
元樹 ああ違うんです、勝手に入ってきただけで……
晴  この鍵開いてましたっけ?今自然に……
元樹 へ?
ケン 見えてないんだよ、この人には。
元樹 嘘だろ……
晴  大丈夫ですか?すごい物音したんで。
元樹 ああすみませんちょっと転んじゃって。
晴  あと……さっき。ちょっと迷惑かと思って迷ったんですけど……
元樹 何でしょうか。
晴  うちの親が、みかん大量に送ってきちゃって。よかったら田中さん、もらってくれません?
元樹 ああ、みかん大好きです。
晴  田中さん一人暮らしだから、逆に迷惑かと思ったんですけど。
元樹 ああ……はあ。あれ?
ケン ねえ、そんなことよりけんだましない?けんだま。
元樹 あんたは黙ってろよ。
晴  ああ、すみません。
元樹 いや違うんです。あなたに言ったわけじゃなくて……
晴  え?
元樹 本当に、その、見えてないんですか?
晴  何の話ですか?田中さん。
元樹 いえ、その……
ケン だから見えてないんだって。
晴  大丈夫ですか?……あ!もしかしてこのアパート、地縛霊とかいるんですか?やめて下さいよ、夜にそういう話しするの。
元樹 いや、大丈夫ですよ、大丈夫。ちょっと気が動転してて……では、おやすみなさい。
晴  あ、失礼しました。では……

   晴、ドアを閉め出ていく。
   元樹、少し考える。

元樹 ……幻覚?
ケン いやさっきドア開けたじゃん。
元樹 ……じゃあ地縛霊?嘘俺呪われてるの?
ケン だから、けんだまの精霊なんだって。
元樹 そんなのありうるのかよ?
ケン あたしがここにいるじゃん。
元樹 えーにわかには信じがたい……
ケン で、聞いてないんだけど。
元樹 へ?何を?
ケン 名前。
元樹 俺の?
ケン そう。
元樹 ……元樹。田中、元樹だよ。
ケン じゃあ、もとちゃんだね。よろしく。
元樹 よろしく……って、え?

元樹 その日からケンは俺の部屋にいつくようになった。けんだまの精霊だか幽霊だか知らないが、ケンの姿は人には見えないらしい。じいちゃんと何を約束したんだか、気になるけど。とにかく、俺は今日も会社に向かう。日常はそんなに変わらないものだ。

3・会社の同僚は何か変だ

   会社のデスクに元樹が座っている。
   元樹に聞こえる距離で安永と真太がしゃべっている。

元樹 ふう……
真太 本当、安永さんって、女っぽくて素敵ですよね。
安永 田中さん、本当口がお上手ですね。
真太 いやあ本当に。爪だって、色はいれてないけどいつもピカピカしてて、ちゃんとお手入れされてるじゃないですか。そういうのって、大変なんでしょう?
安永 よく見てますね、照れちゃいます。大したことしてないんですよ?オイルケアして、やすりで磨いて、トップコートかけてって、それだけです。……目立ちます?
真太 いや、それくらい控えめなら大丈夫と思いますよ。
安永 よかったー。こういうの嫌な人もいると思うから。
真太 僕は、女性が綺麗にしてるのはとてもいいと思いますよ。
安永 ありがとうございます。

   安永、軽く会釈して、去る。

元樹 歯の浮くような事ペラペラと……
真太 元樹さん。
元樹 へ?

   真太、元樹のデスクにやってくる。

元樹 ああいや今のは真太さんにいったわけじゃなくて……
真太 コーヒーおごりますんで、喫煙室いきません?
元樹 え?ああ……はい……

   喫煙室。
   たがいに一服している。

真太 僕も、分かってはいるんですよ。
元樹 何を?
真太 女性ばかりほめすぎだって。
元樹 ああ……そうなん……ですか……
真太 で、惚れてるんですか?
元樹 ぶっ(コーヒーを噴きだす)
真太 安永さん、美人ですもんね。
元樹 いや、安永さんは、惚れているっていうか、その彼女にしたいとかじゃなくて、ただ憧れっていうか……
真太 僕は別に、狙ってるわけじゃないですから、ご安心を。
元樹 いやだから狙ってるとかじゃなくて……
真太 僕、何て言うか女性はほめるべきものって思いこみ?そういうのあるんですよね、多分。
元樹 はあ。
真太 別に思ってもいないこと言ってるつもりはありません。本当に素敵だなって思ってるから、そう言ってる。
元樹 ただ……その……
真太 言いすぎ。そういうことでしょ?
元樹 いや、別に、悪いとかじゃ……
真太 そうなんですよね。ほめることは悪いことじゃない。でもこの間、僕にびしっと言ってくれた人がいて……その人のこと気になってるんです。
元樹 へー真太さんに気になる人が。
真太 晴美さんって言うんです。僕が晴美さんにいつものように……

   女装した晴美、登場。

真太 晴美さんって、肌きれいで目がくりっとしてて、かわいいですよね。
晴美 あんた、本気でそれ言ってる?
真太 心外だなあ。そんな顔つきに見えますか?
晴美 確かに本気で言ってる目つきよね。でも違う。あんたは、女の子が怖いんでしょう?
真太 怖い?まさか。
晴美 女の子で傷ついたことがあるから、ほめて遠ざけているんでしょ?まんべんなく全員ほめておけば、女の子から深入りされることもなく、いい人でいられるものね。

真太 僕、それを聞いて、ハッとしたんです。自分はほめることで遠ざけて自分が傷つかないようにしてたんじゃないかって。
元樹 はあ……って、え?
真太 どうしました?
元樹 この人、僕の隣人ですよ!山本さん!
真太 え、そうなんですか?ますます運命的だなあ。
元樹 いや、いやいや、この人男……ですけど。
真太 ええ?そうなんですか?
元樹 どこで会ったんですか?
真太 おかまバーあんず姫ってとこですけど。
元樹 それ男確定じゃん!おかまなんだから。
真太 ええ、おかまって男なんですか?
元樹 いや心は女だけど身体的には……っていうか、真太さん世間知らずにもほどがありますよ。
真太 そうか、あの人たちみんな男だったんですね。
元樹 まあ女になってる人もいるんでしょうけど……ていうか見た目とか声でわかりません?
真太 いやあ、綺麗な方たちだなと思っていたんで。
元樹 おかまバー恐るべし……

元樹 なんか、話してみると、ただの同僚でも変な人っているもんだな。ちょっとした発見。

4・隣に住んでる人も何か変だ

   元樹の自宅。
   ケンがみかんをぽん、ぽん、と投げている。最初は軽く。そのうち高く投げるようにして、次第に思いっきり高く投げて、キャッチに失敗する。
   キャッチに失敗したみかんが、元樹のほうに転がっていく。

元樹 ケン。
ケン ごめんごめん。
元樹 何やってんだ、みかんなんか投げて。
ケン けんだまみたいだから。
元樹 はあ……なんか調子狂う……
ケン もとちゃん、疲れてる?
元樹 最近心の中でつぶやいてることが口に出るようになってきたんだよ……
ケン へーなんかすごい。
元樹 家でお前と話してるせいだよ。まったく、おかげでいらんこと知ってしまったし……
ケン なんか投げるものないかなー。
元樹 あのな、俺はこの時間はゆっくりとテレビ見て今日のニュースと明日の天気を知っておきたいんだよ。
ケン 天気なんて、明日空見ればわかるじゃない。
元樹 そりゃそうだけど、話題として必要なの。
ケン そんなことより遊ぼうよ。
元樹 けんだまの幽霊だかつくもなんたらかは知らないけど、俺の生活リズムを乱すな。
ケン リズム?
元樹 俺は無難に生きていきたいのにさ、お前が来てからなんか……
ケン ブナン?
元樹 何事もなく、恥かいたり失敗したりせず、普通にってこと。
ケン つまんないの。
元樹 そりゃお前はな……
ケン ねえ、みかん返して。
元樹 お前のものじゃないから、これ山本さんが俺にくれたものだから。
ケン けちだなあ、もとちゃんは。
元樹 山本さんもなあ、まさかおかまだったとは……

   ドアのインターホンの音。

元樹 ケン。いいか、大人しくしてろよ。
ケン みかんは?
元樹 ダメ、怪しまれる。

   元樹、ドアを開ける。晴である。

晴  こんばんは。
元樹 ああ……山本さん。
晴  あの……話したんですって?
元樹 な、何の話しですか?
晴  田中真太さんから聞きました。
元樹 あ、ああー。あのやろう……
ケン あーこないだの人。
晴  一応誤解を解いておこうと思って。
元樹 あ、誤解だったんですか?それはすみません。
晴  いえ、誤解ではないんです。
元樹 え?
晴  ここでは何なので、ドア閉めてもいいですか?
元樹 あ……はい。

   元樹、押さえていた手を離し、ドアを閉める。

晴  手短に話しますね。私は確かにおかまバーあんず姫で働いてます。
元樹 あ……そうですか。
ケン おかまって何?
元樹 身体は男、心は乙女ってやつだよ。
晴  まあそういう認識ですよね、普通。
元樹 あ、すみません……
晴  一応誤解のないように言っておきますが、(カツラをかぶって)別にあんたは恋愛対象じゃないから。
元樹 山本さん?
晴美 あのね、おかまバーで働いてると、男の人みんな警戒すんのよね、俺に気があるんじゃないかって。言っときますけどね、こっちにも選ぶ権利ありますから。自意識過剰な人が多くって。
元樹 は、はあ。
ケン 自意識過剰って?
元樹 えーと、気にしすぎってこと。
晴美 そう、そういうこと。
ケン もとちゃんのことか。
元樹 そういうこと。
晴美 女装してると人の本質がわかってくるの。だから好き。言いたいことが何でも言えちゃう。でも、日常生活で女装してるとかは知られたくないの。わかる?
元樹 わかりません……けど、そういうことですか。口止めということですか?
晴美 話しが早いじゃない、そういうこと。
ケン すごーい、あの頭の、何の毛でできてるのかな?
元樹 つまり女装が好きだからってことですね。
晴美 女装っていうか、「女」になるってのかしら。
元樹 それってつまり……
晴美 なあに?
元樹 恋愛対象は、どっちなんですか?
ケン よっとっと……(バランスポーズをとろうとしている)
晴美 男が好きか、女が好きかってこと?……私ね、まだ本当の恋をしたことがないの。男にも、女にもね。
元樹 はあ。
晴美 でも私は今の私が好きだし、もし仮に女と本当の恋に落ちて、結婚したとしても私はおかまバーで働くと思うの。
元樹 へ、へー……
晴美 変だと思う?
元樹 いや、はあ。
晴美 自分の今を大きく変えるって、難しいもんよ。何気なくしてる事が、実はすごく大事って、いうじゃない。
元樹 何か……占い師みたいですね。
晴美 おかまなんてうさんくさいものよーやーねー。
ケン けーん、だま!

   ケン、けんだまのバランスポーズに成功。晴美、元樹同時に滑る。

ケン やったー成功。
晴美 あら、何か踏んだ?
元樹 ケン!まったく……
晴美 ケン?誰かいるの?
元樹 ああいや違うんです。
晴美 もしかして、恋人ー?ヒゲでも生えた。
元樹 断じて違います!その、あれです、ペットですペット。
晴美 うちペット禁止じゃなかったかしら。
元樹 あ、ちょっと預かっただけで。すみません。
晴美 いいわよ、別に言いつけたりしないから。その代わり……
元樹 その代わり?
晴美 なでさせてー触らせてー私動物に目がないのよー。
元樹 いやこいつかなりの不細工ですし。
ケン ぶっさいくー(ぶさいく顔)
晴美 いいわよーペットは不細工くらいがかわいいんだから。猫?犬?
元樹 ね……えーと、とかげ?
ケン とかげ?
晴美 やだー私爬虫類にも目がないのよー。見たーい。
元樹 いや、とかげ……のような、そう、凶暴な!ワニです!アリゲーター。(ケン、ワニの真似)
晴美 とかげとワニって相当違うわね!いや似てるけど!ていうか部屋で飼えるの?
元樹 あー飼えます飼えます。
晴美 でもワニなんて生で見たことないからみたーい。
元樹 いや平凡な奴なんで、本当どこにでもいる感じの。
晴美 どこにでもいないわよ、ワニなんて。
元樹 とにかく見てもつまんないですし、危険ですし。
晴美 触んないから、見るだけだから、いいでしょ?
元樹 あれなんですよ、そのーうちのワニは見る物すべて石にしちゃいますから。(ケン、メデューサの真似)
晴美 怖っ!メデューサ?メデューサなの?
元樹 だから晴美さんも危険ですから、今日はお帰り下さい。僕も明日仕事ありますんで。
晴美 それアンタも危険なんじゃないの?
元樹 僕慣れてますんで。
晴美 田中さんってすごい。
元樹 じゃあ今夜はこれで。おやすみなさい。

   元樹、強引にドアを閉める。

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