意味がわかると怖い話。コミュの下弦の月 (自作)

(^^)
どうも、俺です。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

彼女は舞台女優になるのが幼い頃からの夢だった。

学校での『夢』と題された作品の全てには、舞台女優として脚光を浴び、観客達のハートを掴む女優になる、ということが書かれていたほどだ。

そんな彼女は中高と演劇部に所属し、着々と自らの『夢』を叶えようと邁進していた。
演劇部に設置してある簡易式のスポットライトによる照明ではなく、本格的なライトアップに照らされる自分の姿を想像しながら、演技に取り組んでいた。

高校卒業後、彼女は演劇の専門学校に通い、更に高度な演技力を磨いていった。
根っからの努力家であった彼女は、日を追うごとに上達し、十年に一人の逸材と賞されるまでに至っていた。

専門学校卒業後、小さいながらも地元で営業している劇場に雇ってもらえることになった。
勿論、他でアルバイトをしながらの活動だったが。

彼女の劇場での演技力に観客も徐々に惹きつけられ、彼女目当てのファンも現れるようになった。

それが彼女に初めて出来たファンであり、彼女にとっては堪らなく嬉しいことであった。

もっと自分の演技を見てもらいたい
もっと自分のファンを増やしたい
もっと明るいスポットライトの下で演技したい
もっと、もっとっ‥‥‥

彼女の想いは募るばかりだった。

『おいっ押すなっ！』
『カメラっ！カメラっ！！』
『写真、写真だけっ！！』
『ここから先はご遠慮下さいっ！！』

彼女の『夢』は叶った。

まばゆいばかりのスポットライトに照らされた彼女。

レッドカーペットに集まる視線の数々。
閃光絶え間ないフラッシュの嵐。

しかし、『夢』を追いかけ続けていた頃の輝きと希望に充ち溢れた表情は、今の彼女からは見受けられなかった。

『夢』を叶えた彼女を、雲一つ無い夜空に浮かぶ月だけが悲しげに見下ろしていた