ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

改憲阻止!民治主義を_市民の会コミュの(6/10)砂川事件 (【資料】 昭和三四年一二月一六日  最高裁判所大法廷  砂川事件本判決全文 掲載)

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
裁判官河村大助の補足意見は次のとおりである。
 わたくしは多数意見に同調するものであるが、ただ日米安全保障条約(以下安保
条約と略称する。)に対する判断につき、その理由簡に失する嫌いがあるので、こ
の点についてのみ補足意見を述べる。
- 27 -
一、憲法九条において戦争を放棄し、戦力の保持を禁止したわが国が、その生存と
安全を全うするために如何なる措置を講じ得るかの点については、憲法に特別の明
文はないが、わが国が自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために適当な
自衛のための措置をとり得ることは、国家固有の権能であつて憲法の趣旨精神にも
適合するものであることについては多数意見の述べるとおりである。
二、ところが、わが国の平和と安全を維持し、その存立を全うするという国家最高
の目的を達成するために如何なる国政方針を採用すべきかについては、法は一義的
の国政方針を予定していないのであるから、結局政治部門の合目的的考慮に基く裁
量判断に委ねられたものと解するを相当とする。すなわち、前記の如き国家目的達
成のために、他国と安全保障条約の取極をなすべきか又は永世中立主義を採用すべ
きか等の国政方針の選択は、いずれが合目的的であつて国家目的によりよく適合す
るかの裁量判断により決せられる問題であると考えられる。ことにかかる国政方針
に関する政治的判断においては一方の政策に絶対の真理があり、他方の政策には一
面の真理も含まれないとする客観的基準は存しないし、なお政治の実際に見られる
ように国政方針に関する政治的価値判断は多くの場合に多元性をもつものであつて、
価値観の対立は免れないものであるから、そのいずれを採用すべきかは原則として
政治部門の政策的乃至裁量的決定の権限に委ねられているものと解するを相当とす
る。すなわちその判断に当不当の問題は生じても直ちに違法の問題を生ずることは
ないものというべきである。しかしながら政治部門が如何なる方式内容の条約を取
結ぶべきかの裁量決定に当つては、わが憲法の基本原則である平和主義、国際協調
主義を基準として、前記国家目的達成に相応しいものをとるべきであることもまた
当然であるから、政治部門の裁量権はこれを尊重すべきではあるが、その裁量権に
は一定の限界があり、その限界を踰越し又は裁量権の濫用により、明白に憲法の平
和主義国際協調主義その他憲法の条章に反する措置に出た場合、たとえば、攻げき
- 28 -
目的のため駐留を許容したものと認められるような明白な違反が存する場合におい
ては、当該措置は司法裁判所における違憲判断の対象となるものと解するを相当と
する。
三、以上の見地に立つて合衆国軍隊の駐留の根拠となつている安保条約を見るに、
同条約は国際連合等による十分な安全保障措置が成立するまでの暫定的措置として
締結したものであつて(前文四項、四条)その前文には「平和条約は、日本国が主
権国として集団的安全保障取極を締結する権利を有することを承認し、さらに、国
際連合憲章は、すべての国が個別的及び集団的自衛の固有の権利を有することを承
認している。これらの権利の行使として、日本国はその防衛のための暫定措置とし
て、日本国に対する武力攻げきを阻止するため日本国内及びその附近にアメリカ合
衆国がその軍隊を維持することを希望する。アメリカ合衆国は、平和と安全のため
に、現在若干の自国軍隊を日本国内及びその附近に維持する意思がある」とあり、
すなわち日本の防衛のためとアメリカ合衆国の平和と安全のために軍隊の駐留に関
する取極を行うことが宣言されているのである。
四、ところで同条約第一条においては合衆国軍隊駐留の目的として、極東における
国際の平和と安全の維持に寄与し、ならびに一または二以上の外部の国による教唆
または干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱および騒じようを鎮
圧するため、日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて、外部から
の武力攻げきに対する日本国の安全に寄与するために使用する旨定められているの
であるが、右目的中「極東における国際の平和と安全の維持に寄与」するというこ
とは、これによつてわが国が自国の防衛と直接関係のない戦争に巻き込まれる虞れ
があるとの違憲論が生じている。しかしかかる虞れがあるかどうかは条約の内容だ
けでは判定し得ないものであつて、この点は、むしろ、極東情勢乃至世界情勢の評
価認識いかんによつて左右される問題である。別個の立場から見れば、極東の平和
- 29 -
はわが国の平和と安全の維持に密接な関係があり、米軍が前記の目的をもつてわが
国に駐留することが、かえつて、極東における侵略を未然に防止し、その平和を維
持することにより、ひいてはわが国の平和と安全を守ることになるといえないこと
もなく、少くともかような見地に立つて条約を結んだと認められる政治部門の評価
判断が、前記反対論に比し明らかに事態の認識を誤つた違法があると認むべき根拠
はない。又米軍を駐留させることは共産圏諸国を仮装敵国に廻すこととなり、わが
憲法の平和主義、国際協調主義の精神に反するとの説がある。勿論出来得べくんば
「対立する可能性ある諸国民を含んだ」国際連合軍の援助に期待することがわが憲
法の趣旨からいつて望ましい方式であることは疑いないが、かような安全保障の方
式は国際連合の現状では不可能であること明らかである以上、わが国がいずれの外
国軍隊の駐留をも認めない他の方式をとることが、安保条約の形で米軍の駐留を認
めることに比し、真に平和主義、国際協調主義の要請に副つてわが国の自存を全う
する唯一の方法であると断定すべき明白な根拠は存在しない。要するに安保条約は、
その明文の示すようにわが国の平和と安全を維持しその存立を全うするために締結
されたものであつて、その内容においても政治部門の裁量判断に明白な違憲違法の
廉は認められない。
五、次に安保条約が国際連合憲章に牴触するときは、憲章優位の原則により(国際
連合憲章一〇三条)憲法九八条二項違反の問題をも生ずるものと考えられるので、
右憲章と安保条約との関係についても、ここに簡単に触れておく。安保条約と同日
に締結された日本国との平和条約によれば日本国は国際連合憲章に基く義務を受諾
し(五条(a))かつ「連合国としては、日本国が主権国として国際連合憲章第五
十一条に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有すること及び日本国が集団
的安全保障取極を自発的に締結することができることを承認する」と定められてい
る(五条(c))、そして安保条約は右平和条約で認められた安全保障取極を締結
- 30 -
する権利の行使として、日本国は、その防衛のための暫定措置として、合衆国軍隊
の駐留を希望することによつて締結されたものと認むることができる(前文三、四
項)、その後日米両国は駐留軍隊の軍事行動は、すべて国際連合憲章に反しない範
囲においてなさるべきものである趣旨を確認している(昭和三二年六月二一日発表
の内閣総理大臣と大統領の共同声明及び昭和三二年九月一七日付日米安全保障条約
と国際連合憲章との関係に関する外務大臣とアメリカ大使間の日米交換公文)すな
わち、安保条約に基く合衆国軍隊の軍事行動は、国際連合の機関の決定又は勧告に
基く場合と国際連合憲章五一条の「個別的又は集団的自衛の固有の権利」の行使と
して認められる場合に限り許されるものと解すべきであつて、換言すれば安保条約
は、国際連合憲章乃至平和条約を逸脱するものでなく、却つてこれらの基本的条約
に定められた枠の中で軍事行動をとり得るという制約を受けているものと解するを
相当とする。されば安保条約乃至合衆国軍隊の駐留は国際連合憲章に牴触するもの
でなく又憲法九八条二項に違反するものとも認められない。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

改憲阻止!民治主義を_市民の会 更新情報

改憲阻止!民治主義を_市民の会のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。