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夢野台高校18回生コミュの教師になれば 11

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高校で生物学の授業をしていたとき、講義のノートをルーズリーフノート
からカードに変えることにして、教科書の単元別に仕分けしてゆくとき、大学
入試問題の出題頻度や傾向を克明にチェックしたカードをとくに準備する必
要に迫られた。
生物学的に重要だと思う事項とか、生物学史に見られる社会的背景や学者
にまつわるエピソードなどを書き込んだカードも揃えてみたが、大学入試に
的を定めて教室にやってくる生徒たちには役に立たなかった。

大学入試に無関係の話題の全てを外す授業は、わs日のきかない刺身の
ようなものだが、入試ノイローゼの生徒たちには刺身もわさびも不要、教科
書と入試問題集の定食コースの日々に慣らされている様であった。

生活の知恵としての生物学やとっておきの面白い話とかジョークにも反応を
示さない生徒もいて、脱線話をすぐに教科書に戻さなねばならないという
強迫観念に苛まされるばかりであった。
受験準備に重要な項目であるという前置きで解説をはじめると顔を上げるが、
巷の話題ごときには関心を示さないのである。

偏差値を上げることに青春をかけろと激を飛ばす教師のパワー強い
時代になっていた。あろうことか、体育や芸術の時間を午後に回して、頭の
冴えている朝のうちに受験科目を集中的に組む時間割を提案したのに呆れ
たことがあった。

体育も徳育も無用、知育さえやれば良いという真面目に偏った精神訓話を
ぶつマインドコントロールに酔う生徒たちを見ていると教育の危機を覚えた
ものである。
そのころ、校長も同じ人種でであった。彼は着任の挨拶の冒頭に、となりの
高校に追いつけ追い越せと生徒たちに迫った。良き伝統も誇るべき校風も
無視しての演説にたまりかねて、一人で校長室へ押しかけて異議を申し立
てたことがあった。

本物の生物学の楽しさに触れずに、暗記科目と心得違いしたまま、大学に
進む高校生を不憫に思いながらも大学入試問題集を消化する授業に明け
暮れた。
医学や薬学を志す生徒まで生物学を避けて点数の取りやすいほかの理科
に流れてゆく時は教育行政の制度上の欠陥を憂いたものだ。
新世紀の人類の最大の関心事は分子生物化学と生態学であると信じるもの
にとっては国家的損失と思うのであった。

ノートは年々古くなり、カードの皺も増えて来る。二〜三年もすると体のすべ
ての細胞が入れ替わるようにノートやカードも変わってしまう。
授業もいきもの、ジョークや面白い話も時代とともに変わる。自前のマニュア
ルに沿って、教室の中を歩きながらの談論風発、縦横無尽の脱線の講義は、
教育大学や女子短期大学での講義では役に立った。

当津 隆

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