夢野台高校18回生コミュの当津先生のエッセー31

教師なれば・・・②

Ｙ校での最終の授業を終えようとしたときのことである。

突然、立ち上がったこのクラスの委員長が巻紙のようなものを取り出して読み始めた。
若者らしいユーモアを交えての送別の言葉である。
精一杯感謝の気持ちを述べている。
つとめて、リラックスな表情で聞いていた小生の胸をぐぐっと突き上げたのは、
さらばミスターＹの一声で総立ちになったときであった。

続いて、レイに飾られ、花束が贈られる。
両手で握手してくれた女生徒の目がうるんでいた。校歌の合唱が始まるや、
窓が開き、扉が開け放たれ、教師や生徒たちがどっと飛び込んできて、
大合唱へと歌い上げられていった。

授業をストップしてまで盛り上げてくれたのである。
その間、小生は黒板を背に突っ立ったまま、茫然と天井を見つめていた。
校歌が歌い終わって、抱えきれないほどの花束に顔を埋めて廊下へ出た。
花吹雪が舞い、フラッシュが飛ぶ。
雲に乗った心地である。

職員室に戻ると、待ち構えていた教師仲間たちが一斉に立ち上がって、大きな拍手で迎えてくれた。
わが長い教師生活の春秋がこのひとときに凝縮された思いであった。

教師冥利に尽きるありがたい思い出である。

当津　隆